ファクタリングには2社間ファクタリンと3社間ファクタリングがあります。
ファクタリングについて「売掛金を買い取ってもらうこと」という認識がある人でも、2社間と3社間の違いがよく分かっていないという人も多いのではないでしょうか?
2社間と3社間は売掛金を売却するという点が同じだけで、他は全く異なるものです。
ファクタリングには手数料がかかりますので、2社間と3社間の違いを理解しておかないと、必要以上の手数料を払わなければならなくなってしまう可能性もあるので注意が必要です。
あらゆる角度から2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いを解説します。
2社間と3社間の違いを理解して、自社に最適なファクタリングを選択できるようになりましょう。
ファクタリング手数料の違い
ファクタリングには手数料が発生します。
この手数料は2社間ファクタリングと3社間ファクタリングでは大きく異なることになります。
まずは手数料相場の違いを理解しておきましょう。
2社間の相場
2社間ファクタリングの手数料は3社間と比較して高額になります。
10%〜20%というのが相場です。
しかし、業者によっては30%近くの高額手数料が設定されることもあります。
手数料は業者によって大きく異なるので、複数の業者から相見積もりを取ることをおすすめします。
3社間の相場
3社間の手数料は2社間ファクタリングと比較して安くなります。
おおよそ5%〜10%程度となっており、場合によっては2%台の手数料が設定されることもあります。
3社間は2社間と比較してファクタリング会社のリスクやコストがかからないため、手数料は2社間ファクタリングよりも安く設定されています。
ファクタリングの資金化までの速度の違い
2社間と3社間では資金化までの速度も全く異なります。
2社間は資金化が早く、3社間は時間がかかります。
資金化までの速度の違いを理解しておかないと、必要なタイミングで必要な資金を手に入れることができないことにもなりかねません。
2社間、3社間の資金化までの速度の違いを解説します。
2社間は最短即日で資金化可能
2社間ファクタリングは最短即日買取に応じてくれる業者も少なくありません。
「すぐに資金を用意しないと、銀行や取引先への支払いが危うい」というような場合には2社間ファクタリングであれば緊急の資金繰りにも対応することができます。
3社間は1週間程度の時間がかかる
3社間ファクタリングは資金化までに早くても1週間程度の時間がかかってしまいます。
3社間ファクタリングは取引先への同意を得る必要があります。
取引先へ同意書を郵送し、その返送を待つだけでも最低でも1週間程度の時間がかかってしまいますので、緊急の資金繰りの際には3社間ファクタリングは活用することが難しいと言えます。
ただしその分、手数料は2社間よりも低く設定されています。
取引先への秘匿性の違い
ファクタリングを利用する人の多くが「取引先に秘密でファクタリングをしたい」と考えています。
この際に2社間と3社間の違いをよく理解しておかないと、取引先に秘密でファクタリングを行うことができなくなってしまいます。
2社間と3社間で取引先への秘匿性はどのように異なるのか解説していきます。
2社間は売掛先に秘密にできる
2社間ファクタリングの大きなメリットの1つが売掛先企業に対してファクタリングを秘密にすることができるという点です。
ファクタリングに関する認知は以前よりも広がってきたものの、まだまだファクタリングに対して「怪しい」などとネガティブなイメージを持った人が多いのが事実です。
ファクタリングに対してネガティブな認識を持つ人にファクタリングの事実を知られてしまうと「この会社は経営が危うい」などと思われてしまう可能性があります。
2社間ファクタリングであれば取引先の同意なしにファクタリングができるので、このような心配は不要です。
3社間は売掛先の同意が必須
一方、3社間ファクタリングは取引先の同意を得て、売掛金の期日になったら売掛先企業がファクタリング会社へ代金を支払う契約です。
そのため、3社間ファクタリングにおいては必ず売掛先企業へファクタリングをしたことを知られてしまうことになります。
また、売掛先企業もわざわざファクタリング会社の口座へ代金を払う必要があるので、振込手続や売掛金台帳への記帳が面倒になり、ある程度迷惑をかけてしまうことになります。
とはいえ、ファクタリング会社も自社のマイナスにならないように売掛先企業への説明をフォローしてくれる場合もあります。
3社間ファクタリングが必ずしも自社にマイナスになるとまでは言い切れないでしょう。
ファクタリングでの登記の必要性
ファクタリングには登記が必要な場合とそうでない場合があります。
これも2社間と3社間によって違いがありますので理解しておきましょう。
2社間は債権譲渡登記が必要
2社間ファクタリング行うためには債権譲渡登記という登記の手続きが必要になります。
債権譲渡登記とは債権の譲渡の対抗要件を登記するものです。
つまり、2社間ファクタリングで売却したはずの債権を自社がファクタリングをした事実を悪意を持って隠してどこかに転売してしまった場合に、ファクタリング会社は「その売掛債権は自社のものだ」と対抗するための登記です。
この登記があることによって、売掛先企業に同意を得なくてもファクタリング会社とすれば債権をどこかへ譲渡される心配はなくなります。
2社間ファクタリングが成立するのは債権譲渡登記が存在するためで、債権譲渡登記が存在しなければファクタリング会社のリスクが高くなるので、2社間ファクタリングは成立しません。
なお、債権譲渡登記には費用がかかりますので、この費用の分も含めて2社間ファクタリングの手数料は高額になっているとも言われています。
3社間は登記が不要
3社間ファクタリングにおいては、売掛先がファクタリング会社へ代金を直接支払うので債権譲渡登記は必要ありません。
売掛先企業が同意していれば、その債権をどこかに譲渡することは不可能だからです。
3社間ファクタリングにおいては債権譲渡登記が不要であるがために手数料が低く設定されている側面もあるようです。
個人事業主のファクタリング利用の可否
個人事業主もファクタリングを利用したいと考えている人がいるのではないでしょうか?
しかし「個人事業主が利用できるファクタリングは限られている」という点を理解しておく必要があります。
2社間と3社間で個人事業主が利用できるかどうか異なりますので、理由とともに解説していきます。
2社間は原則利用不可
2社間ファクタリングは個人事業主は利用することはできません。
なぜならなば債権譲渡登記は法人しか登記することができないためで、個人事業主が保有している債権は債権譲渡登記の設定が不可能だからです。
債権譲渡登記ができなければファクタリング会社は対抗要件なしにファクタリングをしなければならず、あまりにもリスクが高すぎます。
そのため、原則的に2社間ファクタリングができるのは法人のみとなっています。
ただし、業況が良好な個人事業主であれば、2社間ファクタリングに応じてくれる業者も存在します。
どうしても2社間ファクタリングをしたいという個人事業主の方はまずはファクタリング会社へ相談してみましょう。
3社間は個人事業主でも利用可能
3社間ファクタリングにおいては債権譲渡登記の必要がないので、個人事業主でも問題なくファクタリングを利用することができます。
逆に言えば、個人事業主は原則的に3社間ファクタリングしか利用できないことになります。
2社間ファクタリングという即日資金化ができる資金調達ツールがないということですので、個人事業主は法人よりも資金繰りの計画が重要になるということも併せて理解しておきましょう。
審査における自社のウェイト
ファクタリングにおいて、代金を支払うには売掛先企業ですので、審査で売掛先企業の与信が重要になることは言うまでもありません。
しかし売掛先企業の与信に加え、自社の信用状況がどの程度重視されるのかについては2社間と3社間では異なります。
2社間では自社の信用も重視されることに対して、3社間では自社の信用はそれほど審査では考慮されません。
「銀行から融資を断られたからファクタリングで資金調達したい」という企業にとっては自社の審査のウェイトが非常に重要になります。
審査における自社のウェイトの違いも見ていきましょう。
2社間は自社の信用も重要
2社間ファクタリングは審査に際に自社の信用も重視されます。
2社間ファクタリングにおいては売掛金の代金は一度自社に振り込まれ、自社がファクタリング会社に支払うためです。
この際に自社の経営状態が悪ければファクタリング会社は「代金を支払わずに逃げてしまうかもしれない」「他の支払いに代金を使ってしまうかもしれない」と懸念します。
このため、売掛先企業の与信に加えて、2社間ファクタリングでは自社の与信状況も重視されます。
3社間は自社の信用のウェイトが低い
一方、3社間ファクタリングにおいては自社の信用はそれほど重視されません。
3社間ファクタリングは売掛金の代金を売掛先が直接ファクタリング会社へ支払うためです。
自社が資金を他に回したり、持ち逃げするリスクが3社間ファクタリングにはないので、自社の経営状態が悪くても売掛先企業の経営状態さえ良好であればファクタリングに応じてもらうことができる可能性があります。
銀行からお金を借りることができないほど経営状態が悪化した時に審査に通過しやすいのは3社間ファクタリングの方です。
ただし、3社間ファクタリングは資金化までに時間がかかってしまうので早めに申し込みをするようにしてください。
大手ファクタリング会社と取引できるか
ファクタリングは法律の整備がほとんどなされていない業界です。
このため、どんな業者でも参入することができ、その中には悪徳業者も相当数混じっています。
悪徳業者に騙されないためには、大手ファクタリング会社と取引をすることが重要です、
大手と取引ができるかどうかは2社間ファクタリングをするのか3社間なのかによって異なります。
2社間に大手は少ない、悪徳業者に注意
2社間ファクタリングに大手業者は参入していません。
ほとんどが資本金1億円未満程度の小規模ファクタリング業者です。
2社間ファクタリングは手数料が高いですが、この手数料は利息制限法を超えていることが珍しくありません。
ファクタリングは借入ではなく売買ですので、利息制限法を守る必要はありません。
しかし「ファクタリングは実質的な売掛金担保の貸付と同じだ!利息制限法を守れ!」といいう声が大きいのも事実です。
銀行系の大手ファクタリング会社はこのようなリスクを考慮して利息制限法を守った手数料を設定しています。
そして、リスクの高い2社間ファクタリングでは利息制限法を必ず遵守していたら経営が成り立ちませんので、銀行系の大手ファクタリング会社は2社間ファクタリングを行なっていないのです。
2社間ファクタリングを行なっているのは、一般の人であればほとんど耳にしたことがないような業者がほとんどです。
このような業者の中には悪徳業者も相当数混じっているので事業者選びには十分に注意する必要があります。
「銀行系の大手ファクターと取引したい」という人は2社間ファクタリング不向きと言えるかもしれません。
3社間は大手が提供している
一方、3社間ファクタリングは基本的に大手ファクタリング会社が提供しています。
三菱UFJ、みずほ、三井住友、りそななどの大手銀行は全て傘下にファクタリング会社を持っていますが、これらの会社が提供している買取ファクタリングは全て3社間ファクタリングです。
3社間ファクタリングは取引先に知られるというデメリットがありますが、これらの大手ファクタリング会社であれば取引先に知られても自社をネガティブに判断されることはないのではないでしょうか?
また3社間ファクタリングであれば悪徳業者に引っかかるリスクも2社間と比較して排除できるという点も大きなメリットです。
2社間・3社間ファクタリングに関するよくある質問
- すぐに資金が必要になった場合には2社間と3社間のどちらを選択すべきでしょうか?
- すぐにお金が必要な時には資金化までに時間がかかる3社間を選択すべきではありません。
- 即日資金化に対応した2社間ファクタリングを選択しましょう。
- 2社間も3社間も面談が必要でしょうか?
- 2社間ファクタリングは面談不要でファクタリングできる業者が多いようです。3社間ファクタリングは売掛先も関係するので面談が必要になるファクターが多くなっています。
- 3社間ファクタリングの手数料が低い理由を教えてください。
- 3社間ファクタリングは債権譲渡登記が不要で、売掛先がダイレクトにファクターへ代金を支払うので2社間よりも回収リスクが低いという2点から手数料は低くなります。
まとめ
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングは「共通しているのは売掛債権を期日前に売却することだけ」と言っても過言ではないほど違いが数多くあります。
違いをまとめると以下のようになります。
手数料の目安 | 資金化の速度 | 売掛先への秘匿性 | 債権譲渡登記 | 個人事業主の利用 | 自社の審査ウェイト | 大手との取引 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2社間 | 10%〜20% | 最短即日 | 売掛先に秘密にできる | あり | 原則不可 | 重要 | 不可能 |
3社間 | 5%〜10% | 最短1週間程度 | 売掛先の同意必須 | なし | 可能 | 重要度は低い | 可能 |
このように、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングではメリットとデメリットがはっきり分かれています。
2社間ファクタリングにおいては
- 売掛先に秘密にできる
- 資金化までが早い
- 高額手数料を受け入れられるか
- 悪徳業者の見極め
という点が重要になります。
一方、3社間ファクタリングにおいては
- 手数料が安い
- 取引先に知られても問題がないか
- 資金化までに時間がかかっても問題ないか
という点が重要になります。
自社が享受したいメリットと、受け入れることができるデメリットをしっかりと整理して2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの適切な選択ができるようになりましょう。