ファクタリングには審査がありますが「ローンの審査との違いが分からない」「どこを見ているのか分からない」「審査に通過するためにはどこが重要なのか知りたい」という人も多いのではないでしょうか?
ローンの審査基準は広く一般に知られていることと比較して、ファクタリングの審査基準に関してはまだまだ認知不足というのが現状です。
また、どんなに頑張ってもファクタリングでは取り扱ってもらうことができない売掛債権も存在するので注意しましょう。
ファクタリングの審査基準について徹底解説していきます。
ファクタリング審査に不安を感じている人も、審査に通過するポイントを押さえた上でファクタリングに申し込むようにしましょう。
ファクリングで審査をする理由
ファクタリングで審査が行われる理由は大きく分けて2つあります。
ファクタリング会社が確実に回収するためと、売掛債権のリスクを判定してリスクに見合った手数料を設定するためという2つの理由です。
審査必要な理由を回収とリスク判定という2つの視点から詳しく解説していきます。
ファクタリング会社が確実に回収するため
審査はファクタリング会社が確実に売掛債権を回収するために行われます。
売掛債権のデフォルトリスクをファクタリング会社側で負うため、買い取った売掛債権が未払いになってしまったらファクタリング会社にとって大きな損失です。
「この会社は売掛債権を期日通りに回収することができるかどうか」という点がファクタリング審査の第一義的な理由です。
審査は回収可能性を判断するために行われます。
リスクを判定して手数料を設定するため
審査は手数料を設定する目的でも行われます。
ファクタリングは売掛債権の回収リスクをファクタリング会社が負うものですので、売掛債権がデフォルトするリスクを判定し、「何%だったらリスクに見合ったリターンか」ということを審査で判断し、リスクに見合った手数料が設定されるのです。
リスクが低いと判断されれば手数料も低くなりますし、リスクが高いと判断されれば手数料は高くなります。
手数料を設定してもリスクをカバーしきれない場合には審査に落ちてしまうこともあるでしょう。
ファクタリング会社にとってリスクヘッジとしての手数料を設定するのが審査を行う目的です。
ファクタリング審査の基準
ファクタリング審査には以下の4つの基準があります。
- 売掛先の信用
- 売掛債権の期間
- 納入企業の信用
- 納入企業経営者の人柄
売掛先や自社の信用はもちろん、ファクタリングする売掛債権の期間、さらには経営者の人柄なども重要なポイントとして挙げられます。
ファクタリング審査で重要になる4つの視点について詳しく理解しておきましょう。
売掛先の信用
ファクタリング審査で最も重視させるのは売掛先の信用です。
ファクタリング会社へ支払義務を負うのは売掛先企業で、売掛先企業が期日通りに売掛債権代金を払うことができるかどうかが審査で最重視されます。
例えば売掛先企業が上場企業や官公庁の場合は支払能力に問題はないと考えられるので審査に通過しやすくなりますし、経営状態の悪い中小企業の場合には支払能力が疑われて審査に落ちる可能性があります。
ファクタリング審査では売掛先の与信が最重視されるので、信用のない企業でも売掛先の信用で審査に通過できることもあれば、信用のある企業でも売掛先の信用がないのであれば審査に落ちてしまいます。
売掛債権の期間
売掛債権の期日までの期間も審査で重視されます。
短期間だけの売掛債権であれば「少しの間だから支払いには問題ないだろう」と判断され審査通過の可能性があるためです。
例えば、私たち個人も「1週間だけお金を貸して」と言われれば気軽にお金を貸すこともできますが、「3ヶ月お金を貸して」と言われたらお金を貸すことを躊躇してしまいます。
このように売掛債権の期間が短ければ審査通過の可能性は高くなりますし、売掛債権の期間が長ければ審査通過の可能性が低くなります。
より確実に審査に通過したいのであれば、期間の短い売掛債権をファクタリングした方がよいでしょう。
納入企業の信用
納入企業であるファクタリングを申し込んだ企業の信用も重要になります。
特に2社間ファクタリングでは、売掛債権の期日になると売掛先は納入企業へ支払いを行い、納入企業がファクタリング会社へ送金することで、ファクタリング会社は売掛債権を回収することができます。
納入企業に信頼がなければ、このときにファクタリング会社へ支払うべき売掛債権代金を流用したり持ち逃げしたりするリスクがあるので期日通りに支払う保証を得られません。
自社の与信状況から、「今日にも明日にも倒産しそう」と判断された企業は、ファクタリング審査に通過できないこともあります。
納入企業経営者の人柄
納入企業経営者の人柄や人間性や経営者としての資質もファクタリング審査においては非常に重要なポイントです。
ファクタリングでは「納入企業が期日通りに支払うかどうか」については最後は納入企業とファクタリング会社の信頼関係に基づいて判断されます。
「この社長は信頼できる。お金がなくても約束通りに払ってくれる人だ」と判断されれば審査に通過できる可能性は高くなりますし、「信頼できない。約束を破るかもしれない」と判断されれば審査には通過できません。
経営者の人柄はほとんどのファクタリング審査で行われるヒアリングから判断されます。
ヒアリングの際には以下の点を意識しましょう。
- 嘘をつかない
- 聞かれたことには速やかに答える
- 提出を依頼された書類は快く提出する
これらのことを徹底することでファクタリング会社から「信頼できる人物だ」と判断される可能性は高くなります。
ヒアリングや面談は非常に重要な審査ですので「経営者として評価されている」ことを意識して審査担当者に応対するようにして下さい。
ファクタリングが利用できない4つの売掛債権
いくら、自社や売掛先が優良企業であったとしても以下の4つのうちいずれかに該当してしまった場合にはファクタリングを利用することはできません。
ファクタリングを利用することができない4つの売掛債権を解説していきます。
譲渡禁止特約付き債権
売掛債権には譲渡禁止特約という特約を付けることができます。
この特約は文字通りに第3者へ譲渡することを禁じている特約です。
ファクタリングも債権譲渡ですので、この特約が付いている売掛債権を譲渡することはできません。
ただし、2020年4月に施行された改正民法によって、債権譲渡禁止特約が付いた売掛債権の譲渡も解禁になっています。
改正民放では、譲渡制限特約が付されていても、これによって債権譲渡の効力は妨げられないとしています。
そのため、今は法的には債権譲渡禁止特約がついた売掛債権のファクタリングも有効です。
しかし、ファクタリング会社の中にはトラブルを忌避して債権譲渡禁止特約が付いた売掛債権のファクタリングは取り扱わないケースもあるので、債権譲渡禁止特約が付いた売掛債権でも確実にファクタリングできるとは判断しないほうがよいでしょう。
下請け代金支払遅延防止法適用の債権
下請け代金支払遅延防止法適用の債権であるにも関わらず期日が60日超になっている債権はファクタリングすることが難しくなります。
下請代金支払遅延防止法とは、下請取引の公正化や下請事業者の利益保護を目的とした法律で、親事業所が下請事業者に対して支払う下請代金の支払期日については、サービスや製品納品後60日以内と定めています。
この法律に適用されている債権であるにも関わらず支払期日が60日超になっている場合には、親会社が下請法に違反していると判断されて審査に通過することができなくなります。
手元にこのような債権がある場合には、ファクタリングに申し込む前に支払期日を60日以内と変更しなければなりません。
また、ファクタリング会社としても、期日が60日以内程度の短期間であれば、それほどリスクが大きくないため審査に通過できる可能性も高くなります。
下請法適用の債権の場合には60日以内かどうかは必ず確認するようにして下さい。
売掛先が個人の債権
売掛先が個人の場合もファクタリングの利用は不可です。
ファクタリングは売掛先が法人でなければ利用することができないためです。
売掛先が一般個人の場合はもちろん、個人事業主が売掛先というケースでは利用することはできません。
例えば「個人宅へ施工したリフォーム代金」などの債権は債務者が個人ですのでファクタリングは利用できません。
ファクタリングを利用できるのは債務者が個人の売掛債権に限定されるという点をしっかりと理解しておくようにしましょう。
売掛先に売掛債権よりも大きな買掛金を持っている
あまり知られていませんが、売掛先に売掛債権よりも大きな買掛金を持っている場合もファクタリングできないことがあります。
買掛金とは自社が売掛先へ支払わなければならない債務です。
そのため、売掛債権期日になった時に、売掛先が「代金の支払いは買掛金と相殺しておく」と言う可能性があります。
例えば、A社に対して売掛債権100万円、買掛金200万円を持っていた場合、売掛債権と買掛金を相殺して100万円の買掛金だけが残るというケースが考えられます。
こうなってしまうと、売掛債権の期日になっても現金が入金されてくることはありません。
現金が入金されないのであれば、ファクタリング会社が回収できる可能性が非常に低くなってしまいます。
売掛先と買掛先が同一企業の場合には売掛債権の回収可能性が低くなってしまうのでファクタリングは難しくなります。
2社間と3社間どちらが審査が厳しい?
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがありますが、それぞれの審査のポイントは異なり、難易度も異なります。
2社間と3社間、どちらの方が審査が厳しく、どのような場面で利用すべきでしょう?
2社間と3社間のファクタリング審査の基準や難易度について比較を行っていきます。
3社間ファクタリングは自社の与信はほとんど関係ないが同意が必要
3社間ファクタリングは売掛債権の期日になると、売掛先が直接ファクタリング会社へ支払いを行います。
自社に資金が通過するわけではないので、自社の与信はあまり関係なく売掛先の信用に問題さえなければ資金調達することができる可能性があります。
しかし、3社間ファクタリングは事前に売掛先から同意を取得し、ファクタリング会社と売掛先が契約しなければ手続きを取ることができないファクタリングです。
そして、多くの企業が売掛先から同意を得ることができなかったり、売掛先にファクタリングを利用することを知られるのを嫌がって3社間ファクタリングを断念しています。
3社間ファクタリングは売掛先の同意さえ得られれば審査通過は難しくありませんが、同意を得るまでのハードルが高いというデメリットがあります。
2社間ファクタリングは売掛先に秘密で速く資金調達可能
2社間ファクタリングは売掛先の同意を得る必要はありません。
売掛債権の期日になると売掛先企業は通常通りに自社へ支払いを行い、その代金を自社がファクタリング会社へスライドさせる形でファクタリング会社へ支払うので、売掛先企業はファクタリングしたかどうかを知ることはないためです。
自社に資金が経由するので売掛先の同意は不要ですが、その分自社の信用も審査で重視されます。
あまりにも業績が悪い企業の場合には、資金が経由した際に資金を持ち逃げしてしまったり他の目的へ流用してしまう可能性があります。
2社間ファクタリングの場合には、売掛先の同意は必要ありませんが、あまりにも自社の業績が悪いと審査に通過できないこともあります。
なお、売掛先に対する審査は2社間も3社間もそれほど難易度は変わりません。
ファクタリングの審査基準に対するよくある質問
- 審査基準が公表されていない理由を教えてください
- 審査基準とは各社が経営方針に基づいて決定するものだからです。
ハイリスクハイリターンを経営方針としている会社は審査が緩くなるでしょうし、できる限りリスクを取らない会社は審査は厳しくなります。
また、企業の経営状態によっても審査難易度はタイミングによって異なるので、一律の基準というものは公表されていません。
- 審査に落ちた後に審査落ちの理由を教えてくれますか?
- 基本的に、審査落ちの理由を聞いても「総合的な判断」としか回答を得ることはできないでしょう。
ただし、ファクタリング会社の担当者と仲良くなれば「ここに問題があったから、ここを改善すれば次は審査に通過することができるようになる」など親切に教えてくれる場合もあります。
ファクタリング会社の方針としては審査落ちの理由は明かしませんが、担当者との個人的な関係によって審査落ちの理由を確認することができる可能性はあるでしょう。
- 1社の審査に落ちたら他社の審査に通過することも難しいでしょうか?
- 審査基準はファクタリング会社によって異なるので、1社の審査に落ちたとしても他社の審査に通過できる可能性は十分にあります。
また、ローンのように信用情報に申込情報が記録されるわけでもないので、審査に落ちを繰り返しても信用には全く影響はありません。
複数のファクタリング会社へ申込をしてみましょう。
ただし、期日を過ぎた債権や、債務者が個人のものなど、そもそもファクタリングすることが不可能な債権は何社に申し込んだとしても結果は同じでしょう。
まとめ
ファクタリングの審査基準は公開されていませんが主に以下の4つの点が重視されます。
- 売掛先の信用
- 売掛債権の期間
- 納入企業の信用
- 納入企業経営者の人柄
審査では意外にも経営者の人柄が重視されることがあり、ファクタリング会社の担当者との人間的な信頼関係の構築が審査通過には非常に重要になります。
また、どれだけ信用を得ても絶対にファクタリングすることが不可能な債権も存在するので、ファクタリングを依頼する売掛債権は慎重に選定するようにしましょう。
審査に通過しやすくなることはそれほど難しくありませんので、ヒアリングなどで担当者の印象をよくすることを心がけてください。