売掛債権を売却する先としてファクタリングと債権回収会社(サービサー)があります。

どちらも売掛債権を売却することができるという点では共通しているものの、中身は大きく異なります。

用途に応じて使い分けないと、会社の資金繰りに影響してしまうことも。

ファクタリングと債権回収会社の違いと使い分け方法について詳しく解説していきます。

 

買取の対象となる債権

ファクタリングと債権回収会社は対象になる売掛債権が大きく異なります。

基本的には正常な債権はファクタリングで、不良債権が債権回収会社が買い取るものだと理解しておきましょう。

それぞれが対象としている債権の違いについて詳しく理解していきましょう。

ファクタリングは期限内の債権を買い取る

ファクタリングで買取の対象となる債権は期限内の債権です。

売掛債権には「支払期限」というものが設定されており、ファクタリングではこの支払期限内のものしか買い取ってもらうことができません。

例えば、10月31日が支払期限の売掛債権は10月31日以降にファクタリングすることは不可能です。

ファクタリングで買い取ってもらうことができるのは、期限が到来していない正常な売掛債権のみと考えておきましょう。

債権回収会社は特定金銭債権を買い取る

一方、債権回収会社が買い取るのは、特定金銭債権です。

特定金銭債権とは

  • 金融機関などが保有する貸付債権
  • リース・クレジット債権
  • 資産の流動化目的で保有する金銭債権
  • ファクタリング業者が保有する金銭債権
  • 法的倒産手続き中の者が保有する金銭債権
  • 保証契約に基づく金銭債権
  • そのほか政令で定める金銭債権

特定金銭債権に該当しない債権として、一般的な売掛代金債権や請負代金債権が挙げられます。つまり債権回収会社が回収するのは不良債権です。

債権回収会社による売掛債権の最終は「債権管理回収業に関する特別措置法」という法律を根拠としています。

この法律では「バブル崩壊後に大量に発生した不良債権を迅速に処理する」という目的のために、本来であれば弁護士しか行うことができなかった債権回収業務と特定金銭債権に限って債権回収会社が行うことができるようにしたものです。

そのため、債権回収会社は不良債権しか買い取ることができません。

また、債権回収会社のことをサービサーということもあります。

ファクタリングと債権回収会社の用途の違い

ファクタリングと債権回収会社の用途の違い

ファクタリングと債権回収会社は利用する側の企業の用途も異なります。

ファクタリングは早期資金化や売掛債権のリスク管理のために利用され、債権回収会社は不良債権処理のために利用されます。

ファクタリングと債権回収会社の利用者による用途の違いについても詳しく解説していきます。

ファクタリング は早期資金化のため

ファクタリングを利用する目的は早期に資金化するためです。

正常な売掛債権であっても期日になるまでは資金化することができません。

資金繰りのために売掛債権を期日を待たずに早期に資金化する目的でファクタリングが利用されます。

ファクタリングを利用することによって、売掛債権期日よりも早く資金化を行うことができ、短縮した分だけ企業の資金繰りは安定します。

また、ファクタリング会社の中には申込日当日に資金化に応じてくれる業者も存在します。

このような業者でファクタリングを利用することによって「突然お金が必要になった」という緊急の資金繰りにも対応することができます。

入金サイトの短縮や緊急の資金繰りを目的としてファクタリングは利用されます。

債権回収会社は不良債権の処理のため

一方、債権回収会社を利用する目的は不良債権の処理です。

債権回収会社が買い取るのは不良債権のみとなっているため、例えば「取引先が未入金のまま倒産してしまった」というような債権がある場合には、債権回収会社へ買取を依頼することによって買取に応じてくれる場合があります。

何年も前の債権というのは回収しにくいものですし、回収することも困難です。

不良債権をとにかく処理したい」という時には債権回収会社に依頼することによって、不良債権を処理することができます。

ただし、不良債権は二束三文程度の非常に低い価格でないと売却することができませんし、一般の企業が少額の不良債権の買取を依頼しても断られてしまうことも多いという点は把握しておきましょう。

ファクタリングサービスと債権回収会社の使い分け方法

ファクタリングサービスと債権回収会社の使い分け方法

では、ファクタリングサービスと債権回収会社はどのように使い分けるべきでしょうか?

以下のケースでそれぞれ適した資金調達方法をご紹介していきます。

  • 新規取引先のリスクが心配な時
  • 早期に資金調達が必要な時
  • 銀行融資やビジネスローンの審査に通過できない時
  • 不良債権を早く処理したい時

新規取引先のリスクが心配な時

取引先の倒産や貸し倒れや支払いの遅れなどが心配という場合にはファクタリングを利用しましょう。

ファクタリングは正常な売掛債権を売却するものですが、売掛債権を売却する際には一緒に売掛債権の回収リスクも売却することになります。

そのため、ファクタリングでは万が一売掛先企業が売掛債権の期日前に倒産したり資金ショートした場合でも自社は一切責任を負う必要はありません。すべてファクタリング会社が責任を負ってくれます。

初めての取引を行う企業に対しては「ちゃんと期日通りに代金を払うか心配」と考えるものですが、ファクタリングであれば売掛先企業が万が一倒産したとしても自社に責任は及びません

倒産やデフォルトのリスクが心配な場合にはファクタリングを利用するとよいでしょう。

保証ファクタリングも活用できる

また、売掛債権の売却をせずに、売掛債権に保証をつけることができる保証ファクタリングというファクタリングも存在します。

こちらは早期に資金化することはできませんが、売掛債権が万が一デフォルトした場合にファクタリング会社が売掛債権の代金を保証する保険のような商品です。

「初めての取引先で未払いが怖い」という時には保証ファクタリングを利用することによって、取引先のデフォルトリスクに対応することができます。

資金繰りは苦しくなく、売掛先のデフォルトだけが怖いという時には保証ファクタリングを利用するのがよいでしょう。

早期に資金調達の必要がある時

早期に資金調達しなければならない時にはファクタリングを利用すべきです。

ファクタリングは本来であれば期日になるまで資金化することができない売掛債権を早期に資金化することができます。

例えば、10月31日が支払期日の売掛債権を9月1日にファクタリングすることによって約2ヶ月も早く売掛債権が現金になるので資金繰りは圧倒的に楽になるでしょう。

さらに2社間ファクタリングであれば多くのファクタリング会社が申込日当日に資金調達に応じてくれます。

「取引先から突然入金が遅れるとの連絡が入り、本日が期日の支払いができない」

「手形の期日で決済する代金がない。このままだと不渡りになる」

このような時にファクタリングは活用することができます。

銀行融資であれば申し込みから入金まで2週間程度の時間がかかってしまうので、緊急の資金繰りの際にはファクタリングを活用することができます。

銀行融資やビジネスローンの審査に通過できない

銀行融資やビジネスローンの審査に通過することができない場合もファクタリングを利用すべきです。

銀行融資やビジネスローンは自社の決算内容などに対して審査を行うので、あまりにも業況が悪い場合には審査に通過することができません。

一方、ファクタリングの審査対象となるのは売掛先企業です。

いくら自社の業況がボロボロであったとしても、売掛先企業に問題がなければ審査に通過できる可能性があります。

内容が悪く「どこからも資金調達することができない」という時にファクタリングは活用することができます。

不良債権を早く処理したい

債権回収会社を利用するタイミングは「不良債権を早く処理したい」というケースに限られるでしょう。

例えば取引先が倒産したケースを考えてみましょう。

取引先が倒産した場合は債権者が集まり、債権者会議が開かれ倒産企業の財産の分配を話し合います。

債権者の中には反社会的勢力が混じっていることは珍しいことではなく、他の債権者相手に一般の企業が話し合いを行うことは困難です。

また、資産の分配に関しては銀行などの有力債権者が優先して回収してしまうものですので、一般企業が倒産した会社から少しでも取り戻すことは現実的に不可能で、多くのケースで泣き寝入りになってしまいます。

このような時に債権回収会社を使うことで、少しだけでも取り戻すことができますし、面倒な他の債権者との話し合いをする必要もありません。

不良債権処理は時間も労力も使いますが、債権回収会社を利用することによってスムーズに回収処理を終えることができます。

ファクタリングと債権回収会社のデメリット

ファクタリングと債権回収会社のデメリット

ファクタリングと債権回収会社には共通したデメリットがあります。

手数料の高さと入金金額の少なさです。

ファクタリングと債権回収会社に共通するデメリットを詳しく解説していきます。

それぞれ手数料が高い

ファクタリングも債権回収も手数料は非常に高くなってしまいます。

ファクタリングの手数料は2社間ファクタリングで20%前後になることもありますし、債権回収は額面金額のほとんどが手数料です。

ファクタリングも債権回収もメリットは多いものの、手数料負担が高額になってしまうはデメリットです。

入金金額が少なくなる

ファクタリングも債権回収も額面金額よりも入金金額が少なくなってしまいます。

ファクタリングは手数料分が控除された額が入金になるため、入金金額は80%程度になります。

債権回収会社の場合には買取金額は額面金額の1割とか数%程度にしかならないことはよくあります。

また自力で回収するよりも、債権回収会社に依頼した方が確実に手元に残る金額は少なくなります

債権回収会社へ依頼するからどうかは慎重に検討した上で利用するようにしましょう。

ファクタリング と債権回収に関してよくある質問

債権回収会社にもグレーの業者は存在しますか?
債権回収会社にグレーの業者は存在しません。
債権回収会社を営むには法務大臣の許可を得なければなりません。
そして、資本金5億円以上、取締役に弁護士1名以上などの厳しいハードルを超えなければ債権回収会社を営むことはできません。
債権回収会社は非常にしっかりとした会社ですので、ファクタリング会社のようにグレーな業者が混在していることはあり得ないと考えてよいでしょう。
ファクタリングで期日を経過した売掛債権を買い取ることができないのはなぜですか?
回収することが困難だからです。期日を過ぎた売掛債権をファクタリング会社が買い取ってしまったらファクタリング会社に損失が発生する可能性があります。
ファクタリング会社は回収に問題ないと判断される売掛債権に限って買い取りを行い、収益を得ているため、そもそも回収に問題がある期日を過ぎた売掛債権を買い取ることはしません。

まとめ

ファクタリングと債権回収は売掛債権を売却するという点では共通しています。

正常な売掛債権を売却して早期資金化するのがファクタリング。不良債権を売却するのが債権回収です。

目的や保有する売掛債権に応じて、ファクタリングと債権回収は適切に使い分けるようにしましょう。