正規のファクタリングは貸金ではなく、またファクタリングを業として行うファクタリング会社は、貸金業登録が不要です。つまり、貸金業未登録の会社がファクタリング業を営んでいても、法律違反ではありません。

金融庁ホームページの「(4) 貸金等に関する相談事例等及びアドバイス等」では、ファクタリングについて以下のように言及されています。

ファクタリング」とは、一般に、企業が取引先に対し有する売掛債権をファクタリング会社が買い取り、買い取った債権の管理・回収を自ら行う金融業務をいいます。
このようなファクタリングの法定性質は、売買契約に基づく指名債権の譲渡であり、金銭の貸し借りではないので、貸金業の登録は必要ありません。

参考:(4) 貸金等に関する相談事例等及びアドバイス等|金融庁

では、貸金業者ではないファクタリング会社は、どのような法律を根拠としてファクタリングサービスを提供しているのでしょうか?

今回はファクタリングと法律をテーマに、債権譲渡の法的根拠と違法ファクタリングの事例を解説します。

ファクタリングの法的根拠は民法

ファクタリングは民法を法的根拠としています。ここでは、3社間ファクタリングおよび2社間ファクタリングに関連する民法について解説します。

民法第466条「債権の譲渡性」|3社間ファクタリングの法的根拠①

(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

引用:民法|e-Gov法令検索

3社間ファクタリングによる債権の譲渡は民法第466条を法的根拠としています。

民法第466条1項では、売掛債権(売掛金)は、譲渡人(利用者)と譲受人(ファクタリング会社)の合意があれば、譲渡人の売掛先の承諾なしに自由に売買できる性質があると規定しています。

また、利用者と売掛先が譲渡しないという特約を交わした債権(債権譲渡禁止特約)は原則として譲渡できませんが、民法第466条2項では、第三者(債権の二重譲受人、差押債権者、破産管財人など)がこの特約を知らないで譲り受けた場合も、その譲渡は有効としています。

旧民法では、譲渡禁止特約が付された債権の譲渡は無効とされていましたが、2020年4月からの改正民法では、譲渡禁止特約が付されていても、債権譲渡の効力は妨げられないとされました。

ただし、利用者が複数のファクタリング会社に対し、同一の売掛債権を二重譲渡して金銭を得ることもできてしまいます。ファクタリング会社が第三者に対して、自身が債権者であることを主張するには、後述の民法第467条で規定された「対抗要件」という手続きが必要になります。

民法第467条「債権の譲渡の対抗要件」|3社間ファクタリングの法的根拠②

(債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

引用:民法|e-Gov法令検索

債権が二重に譲渡された場合には、どちらの譲受人の権利が優先するかという問題が発生します。利用者がファクタリング会社Aとファクタリング会社Bに売掛債権を二重譲渡した場合に、AとBはどちらが優先されるかということです。

民法第467条では、債権の譲受人が債務者や第三者に自身が債権者であることを法的に主張できる「対抗要件」という手続きについて規定しています。

対抗要件は「譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾」して、なおかつ「確定日付のある証書」を交わすことが具備の条件となります。この手続きにより、3社間ファクタリングでは債務者が誰に対して支払いをするのかが明確になります。したがって、債権の譲受人(ファクタリング会社)が直接、債務者(売掛先)から支払いを受けることができるのです。

民法第555条「売買」|2社間ファクタリングの法的根拠①

(売買)
第五百五十五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

引用:民法|e-Gov法令検索

売買契約は、契約当事者の一方がある目的物について有償で所有権を移転させる契約のことです。

小売店で商品を買ってお金を払う、自動車や不動産を売ってお金を得るといった契約も売買契約に該当します。つまり、売買契約は食料品や日用品、自動車、土地建物に至るまで、あらゆる売買取引に利用されています。

2社間ファクタリングは、売掛債権(売掛金)を売却し、その対価としてお金を得るため、売買契約に該当します。3社間ファクタリングのように売掛債権の債権者が利用者からファクタリング会社に移転するのではなく、あくまで利用者に留保される形を取ります。したがって、債務者である売掛先へ通知や同意は不要で、当事者間(利用者・ファクタリング会社)の合意のみで契約が成立します。

さらに、売掛債権を売却することで売買契約の目的は達成されます。万が一、売掛先が売掛金の支払いに応じなくても、ファクタリング会社が利用者に対して買い戻しを請求する「償還請求権」はありません。これをノンリコース契約と言います。

動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律|2社間ファクタリングの法的根拠②

(債権の譲渡の対抗要件の特例等)
第四条 法人が債権(金銭の支払を目的とするものであって、民法第三編第一章第四節の規定により譲渡されるものに限る。以下同じ。)を譲渡した場合において、当該債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、当該債権の債務者以外の第三者については、同法第四百六十七条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなす。この場合においては、当該登記の日付をもって確定日付とする。
2 前項に規定する登記(以下「債権譲渡登記」という。)がされた場合において、当該債権の譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことについて、譲渡人若しくは譲受人が当該債権の債務者に第十一条第二項に規定する登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしたときは、当該債務者についても、前項と同様とする。

引用:動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律|e-Gov法令検索

民法第467条1項では、債権の譲受人(ファクタリング会社)が債務者(売掛先)に対して、自身が債権者であることを主張するためには、譲渡人(利用者)から債務者に対して債権譲渡の事実を通知するか、債務者の承諾を得なければならないと規定しています。

さらに民法第467条2項では、債権譲渡の事実を債務者以外の第三者(債権の二重譲受人、差押債権者、破産管財人など)に対しても主張するためには、債務者への通知または承諾の手続きを確定日付ある証書によって行わなければならないと規定しています。

2社間ファクタリングは当事者間(利用者・ファクタリング会社)の合意のみで契約が成立します。売掛先への通知および同意を必要としないため、ファクタリング会社は第三者に対して法的効力を主張することができません。

そこで、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」の第4条を法的根拠として、法人がする金銭債権の譲渡等については、登記をすることにより債務者以外の第三者に対する対抗要件を得ることができるとしたものが債権譲渡登記制度です。

ただし、債権譲渡登記は法務局で行いますが、申請すればだれでも閲覧できてしまうため、債権譲渡の事実を完全秘密にすることができません。2社間ファクタリングを提供しているファクタリング会社の中には、手数料を引き上げる代わりに債権譲渡登記を留保してくれるところもあります。

ファクタリングの手数料を規制する法律はない

ファクタリングは貸金ではなく、出資法や利息制限法など手数料を規制する法律もありません。ファクタリング会社は自由な買取価格、手数料を設定できます。

ファクタリングの手数料はファクタリング会社のリスクに応じて決定します。ファクタリング会社のリスクが大きくなると手数料は高く、またファクタリング会社のリスクが小さくなると手数料は低く設定されます。

売掛先の同意を得て、なおかつファクタリング会社が売掛先から直接代金を回収する3社間ファクタリングは、二重譲渡リスクや、利用者が売掛先から回収した売掛金を自身の資金繰りに流用する「使い込みリスク」の懸念がないため、手数料は2%~9%が相場です。

一方の2社間ファクタリングは売掛先の同意が不要、なおかつ売掛金の回収はファクタリング会社に代わって利用者が行うため、二重譲渡リスクや使い込みリスクが懸念されます。よって、3社間ファクタリングよりも高い10%~20%が手数料の相場です。

このように、ファクタリング手数料に法規制はなくとも、「ファクタリング会社のリスクに応じる」という妥当性が手数料の根拠となります。

悪質業者による違法ファクタリングの事例

前述の通り、ファクタリング会社を開業するにあたり、貸金業登録のような許可や免許は必要ありません。

そのため、規制が厳しくなった貸金業からファクタリング業にシフトしてきたヤミ金業者が、悪質なファクタリングによって事業者の方の大切な財産を騙し取る事例が報告されています。

ここでは、違法性が疑われるファクタリングの事例について解説します。優良業者と悪質な業者を見分ける際の参考になさってください。

偽装ファクタリング

偽装ファクタリングは、売掛先の同意が不要な2社間契約を隠れ蓑にした高利貸しの手口です。闇金業者が表向きはファクタリング業者を名乗りながら、その実態は売掛債権を担保に、法定金利を超える高い利息で貸付けを行います。

売掛債権を担保とした貸付は売掛債権担保融資(ABL)にあたり、なおかつ資金回収の責任を利用者側が負うウィズリコース契約(償還請求権あり)です。貸金業登録を行っていない業者が、金銭の貸し付けや利息の請求、および資金回収の責任を負わせることは貸金業法違反となります。

さらに、貸金を業として行う場合は、利息制限法に定められた法定金利を遵守しなければなりません。法定金利は債務者の金利負担の軽減を図るための法律です。

高利の貸付に限らず、強引な取り立てを行ったり、違法な手数料を設定したりするといった事例も報告されています。契約の際に少しでも不審に感じた場合は、金融庁などに相談しましょう。

「償還請求権あり」のファクタリング

ファクタリングは、ファクタリング会社が売掛先の支払い不能リスクを負う「ノンリコース契約(償還請求権がない)」でなければなりません。

売掛先の倒産等が原因で売掛金が支払われなかった場合に、ファクタリング会社がすべてのリスクを引き受ける代わりに、法定金利を超える手数料を設定してリスクヘッジとすることができるのです。

一方で、「償還請求権あり」のファクタリング取引を持ちかける業者が存在しています。

償還請求権ありのファクタリングは法律上、手形割引や売掛債権担保融資(ABL)と同じ貸金と見なされるため、業として取り扱うには貸金業登録が必要で、なおかつ手数料には利息制限法が適用されます。

貸金業登録をしていないファクタリング会社が償還請求権ありのファクタリング契約を結び、利用者に高額な手数料を請求して裁判になった事案※があります。裁判所は結論として、この取引がファクタリング(債権譲渡)ではなく、債権譲渡担保付の貸金であるとして、利息制限法の適用を認めています(大阪地裁平成29年3月3日判決)。

※参考:https://www.aiben.jp/page/155soku.html

分割返済ができる

2社間ファクタリング契約後、利用者は売掛先から回収した売掛金を、ファクタリング会社に一括で送金する必要があります。ファクタリングに分割返済を認めると、契約期間を過ぎた支払いには利息が発生しなければなりません。すなわち、利息が発生する取引は貸付とみなされ、貸金業法に抵触してしまいます。

「分割返済OK」をうたっているファクタリング業者があれば、闇金業者の可能性があるため注意が必要です。

担保や保証人が要求される

融資で多額の資金を借りるときや、申込者が赤字続きの場合には、金融機関が万が一の貸し倒れリスクを懸念して、担保や保証人を要求する場合があります。返済が滞った場合に、担保の不動産等を売却したり、保証人に代位弁済させたりして、貸したお金の一部または全部を回収できるようにするためです。

ファクタリングは貸付ではないため、担保や保証人を必要としません。しかし、売掛先の同意が不要な2社間ファクタリングで契約することを条件に、担保や保証人を要求されたという事例が報告されています。

ファクタリングで担保や保証人を要求する行為は、売掛債権が回収できなかった場合の債権の保全とみなされ、貸金業法に抵触します。いかなる理由があれ、ファクタリングで担保や保証人を要求する取引は違法です。

個人の給与債権を買い取る給与ファクタリング

給料ファクタリング」とは、個人の給与を債権とみなし、その給与債権をファクタリング会社が買い取って早期資金化するサービのことを言います。利用者は給料日よりも前に、手数料を差し引かれた分の代金を手に入れることができます。一方、業者側は利用者の給料日に給与債権を回収させた後、回収した給与(売掛金)を原資として送金させる2社間ファクタリングの形式を採用しています。

2019年~2020年ごろに給与ファクタリングを取り扱う業者が次々に登場しましたが、10万円以下の給与債権に対して40%以上の手数料を請求するという実態がありました。

金融庁は2020年(令和2年)年3月5日の「金融庁における法令解釈に係る照会(ノンアクションレター)」にて、給与ファクタリングを「ファクタリングを装ったヤミ金融の可能性がある」という見解を示しています。

さらに、原告の給与ファクタリング業者が、被告の債務者に対し、7万円の給料債権を4万円で買取り、4日後に支払う契約で買い戻し日の設定がなされたが、債務者がその支払いを履行できなかったことにより、業者が債務者に対して支払いを求める訴訟を提起した事案※があります。

※参考:http://www.j-factoring.or.jp/15834645406852

判決では、本件取引における債権譲渡代金の交付は、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」による金銭の交付であり、貸金業法や出資法にいう「貸付け」に該当するという判決が出ています。

現在、給与ファクタリングは貸金と認定され、無登録業者および法定金利を超える手数料は、貸金業法・出資法違反で刑事罰の対象となっています。

ファクタリングと法律に関するQ&A

Q.債権譲渡登記を行わない2社間ファクタリングは違法ではありませんか?
A.違法にはなりません。ファクタリング会社が債権譲渡登記を留保して、なおかつ償還請求権がない場合、利用者には一切の不利益が発生しないからです。ただし、債権譲渡登記を行わない場合、ファクタリング会社は二重譲渡対策および対抗要件の具備ができないため、手数料を引き上げることでリスクヘッジとしています。
>>「債権譲渡登記」について詳しく見る
Q.ファクタリングの手数料が妥当かどうか、どのように調べれば良いですか?
A.複数のファクタリング会社から見積もりを取りましょう。1社にだけ見積もりを取っても、その手数料が相場より高いのか、低いのか、妥当性があるのかの判断はできません。同じ売掛債権、調達希望額で複数のファクタリング会社から見積もりを取ることで、手数料の比較検討ができます。できればファクタリング会社に直接問い合わせ、手数料の内訳や理由について聞いておくと良いでしょう。
Q.個人事業主でも債権譲渡登記はできますか?
A.できません。債権譲渡登記は「法人が債権を譲渡した場合」にのみ可能な手続きです。2社間ファクタリングを契約するにあたり、債権譲渡登記を必須とするファクタリング会社では、個人事業主が2社間ファクタリングを利用することができません。個人事業主の方が2社間ファクタリングでの契約を希望される場合は、債権譲渡登記の留保が可能なファクタリング会社を選びましょう。

ファクタリングに規制はないが違法取引には注意

ファクタリングの法的根拠および違法なファクタリングの事例について解説しました。

ご覧のように、ファクタリングは貸金ではないため、出資法、貸金業法、利息制限法といった法律の規制を受けず、手数料の設定もファクタリング会社の自由です。

このようなファクタリングの柔軟性を利用して、事業者の方から金銭を騙し取る悪質業者や闇金業者が存在します。

今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、事業者の資金ニーズは高まっており、借金にならない資金調達方法としてファクタリングが注目を集めています。

ファクタリングを利用される事業者の方の多くは、金融機関の融資の対象となりにくく、緊急性の高い資金ニーズがある方たちです。

その弱みにつけ込む悪質業者の存在を認識したうえで、安全で信頼できるファクタリング会社と取引を行うことが大切です。