「売上の入金までにまとまった資金が必要」といった資金ニーズに対しては、銀行融資やビジネスローンよりも、ファクタリングのほうが適している場合があります。

ファクタリングは経産省も利用を推奨する資金調達方法ですが、まだまだ日本では認知度が高いとは言えません。

今回はファクタリングの利用を検討している方を対象に、ファクタリングのメリットとデメリットをまとめて解説します。

これまで、資金調達に銀行融資やビジネスローンを利用してきた方は、融資とファクタリングとの違いを比較してみましょう。

ファクタリングは「債権売買契約」による資金調達方法

ファクタリングは貴社が保有する売掛債権(=請求書)をファクタリング会社に売却して、所定の手数料を差し引いた買取代金を早期に受け取るサービスです。

売掛先(取引先、クライアント)が一切関与しない「2社間ファクタリング」と、契約を結ぶにあたって売掛先の同意が必須な「3社間ファクタリング」の2種類に大別されます。

そのメリット・デメリットをまとめると、以下の表のようになります。

ファクタリングのメリット ファクタリングのデメリット
  1. 即日の資金調達が可能(2社間)
  2. 柔軟審査で赤字決算・債務超過でも利用可
  3. 担保や保証人が不要
  4. 売掛先が倒産しても貴社に支払い義務が生じない
  5. 売掛先に秘密で資金調達ができる(2社間)
  6. 信用情報や決算書に影響がない
  7. オフバランス化により企業価値が向上
  8. 資金繰りの改善に期待できる
  1. 手数料が上がる場合がある
  2. 3社間取引は売掛先の同意が必須
  3. 債権譲渡登記が必要な場合がある
  4. 売掛債権の額面以上の資金調達ができない
  5. 悪質な業者も存在する

ファクタリングを利用するにあたっては、メリットとデメリットの両方を天秤にかけた上で、自社の資金ニーズや資金繰り改善に役立つかどうかの判断が必要です。

次章からは、ファクタリングの利用前に知っておくべき8つのメリット・5つのデメリットと、その対策について解説します。

ファクタリングのメリット

まずはファクタリングのメリットから見ていきましょう。

即日の資金調達が可能(2社間)|メリット1

ファクタリングの最大のメリットは、最短即日の資金調達が可能なことです。

貴社とファクタリング会社の2社間で契約する「2社間ファクタリング」は、売掛先に同意を得るプロセスを省略して、当日中に買取代金の振込を確認できます。

さらに、2社間ファクタリングの中には、経営者とファクタリング会社の担当者が面談したうえで契約を結ぶ「対面契約」と、面談不要でオンライン契約を結ぶ「非対面契約」があります。

資金調達までのスピードは、電話一本もしくはオンライン完結の非対面契約のほうが、圧倒的に優れています。貴社の近隣にファクタリング会社の店舗がない場合や、一刻も早い資金調達を希望する場合は、非対面式のファクタリングがおすすめです。

柔軟審査で赤字決算・債務超過でも利用可|メリット2

ファクタリングは申込者の信用情報が重視される融資に比べ、審査基準が緩めに設定されています。

そもそも、ファクタリング会社は売掛先が期日どおりに売掛金を支払えなければ、利用者に先払いした代金を回収できません。したがって、ファクタリングの審査は申込者の信用情報よりも、「売掛先の信用力」や「売掛金の支払サイト」、「自社と売掛先の取引状況」を重視する傾向にあります。

貴社が赤字決算や債務超過、税金滞納などの不利な条件にあっても、貴社と長期にわたって良好な取引を継続してきた売掛先の売掛債権があれば、ファクタリングで資金調達が可能です。

返済能力や信用情報に問題があって融資が難しい場合は、ファクタリングでの資金調達をおすすめします。

担保や保証人が不要|メリット3

ファクタリングは売掛債権を売買するサービスですので、融資と違って担保や保証人が必要ありません。

銀行融資や公的金融機関の融資制度は、申込者の信用のみでは融資が難しい場合、担保や保証人を求められる場合があります。

とくに中小企業や個人事業主は、銀行のプロパー融資を受けることが難しく、担保や保証人をつけるか、信用保証協会の保証を受けるかの二択になることがほとんどです。

ファクタリングは前述のとおり、売掛先(売掛債権)が買い取り可否や手数料を左右する要因となるため、担保や保証人が準備できない方でも利用できます。

売掛先が倒産しても貴社に支払い義務が生じない|メリット4

ファクタリング契約後に売掛先の倒産や廃業が原因で債権回収不能となっても、貴社に支払い義務は発生しません。

なぜなら、ファクタリングは償還請求権がない「ノンリコース契約」だからです。

償還請求権とは、売掛先の倒産等で債権を回収できなかった場合に、ファクタリング会社が利用者などに支払いを求めることができる権利を指します。

ノンリコース契約の特徴を応用すれば、倒産が危ぶまれる売掛先の債権をファクタリングで早期に資金化、債権回収不能リスクに備えるといった使い方もできます。

ただし、ファクタリング会社が償還請求権ありの「ウィズリコース契約」を提案してきた場合は、違法な契約の可能性があるので注意しましょう。

売掛先に秘密で資金調達ができる(2社間)|メリット5

債権売却の事実を売掛先に知られたくない場合は、貴社とファクタリング会社の2社間で契約を結ぶ「2社間ファクタリング」をおすすめします。

ファクタリングを利用するにあたって懸念される問題の一つが、売掛先に債権売買の事実を知られてしまうことです。

他社に債権を売却するという行為は、ファクタリングを知らない売掛先の立場からすると「あの会社は銀行から借入できないほど、経営が悪化しているのか」というネガティブなイメージを持ってしまいます。

さらには、連鎖倒産をおそれた売掛先が発注数を減らしたり、取引自体を停止したりといったデメリットにつながる可能性もあります。

2社間ファクタリングを利用すれば、売掛先に秘密で売掛債権を資金化できます。

さらに、ファクタリング会社によっては、2社間ファクタリングでは原則必須となる「債権譲渡登記」という手続きも省略可能な場合があります。

信用情報や決算書に影響がない|メリット6

ファクタリングを利用しても信用情報や決算書に記録が残らないため、将来の融資の審査に影響を気にすることなく資金調達ができます。

一方で融資やビジネスローンでお金を借りると、貸借対照表に負債として残ります。

さらに、信用情報機関にも借入先や借入金、返済状況が記載されるため、金融機関で融資の申し込みをした際に信用情報が照会されることになります。

ファクタリングは売掛債権という資産を売買して資金化するサービスですので、融資と違って貸借対照表の負債の部が増えることはなく、信用情報機関にも記録が残りません。

オフバランス化により企業価値が向上|メリット7

オフバランスとは、貸借対照表(バランスシート)の資産や負債の項目を消す(オフする)ことを指します。

ファクタリングは売掛債権という資産を現金化するため、貸借対照表の資産の部が減ります(=オフバランス化)。

さらに、その現金を使って借金を返す=負債を減らす(=オフバランス化)ことで、決算書の内容がより改善されます。

決算書の内容が改善されると企業価値が向上するため、銀行や公的金融機関の融資の審査で有利になります。

資金繰りの改善に期待できる|メリット8

ファクタリングを利用して通常1ヶ月~2ヶ月かかる売上入金のタイムラグを解消すれば、資金繰りを一気に改善することができます。

資金繰りが悪化する要因のひとつに、「売上代金の回収時期が遅い(支払サイトが長い)」があります。

企業間の取引では、商品やサービスを納入してから1ヶ月~2ヶ月後に売上代金が支払われる「掛取引」が一般的です。業種によっては売上代金の回収が季節やイベント等の影響を受け、先延ばしになる場合もあります。

さらに、仕事を受注してから商品やサービスを納入するまでには、仕入れ費や人件費といった先出しの経費がかかります。売上代金が入金されるまでの期間が長いと、その間の運転資金が不足してしまい、融資などに頼らざるを得ません。

資金繰りが悪化すれば、銀行からの融資も難しくなり、倒産や廃業の危機にさらされてしまいます。

ファクタリングによって回収前の債権を早期に資金化して資金繰りが改善されれば、金融機関からの評価もアップして、融資を受けやすくなります。

ファクタリングのデメリットとその対処法

続いて、ファクタリングのデメリットとその対処法について解説します。

先ほど解説したメリットと比較しながら、貴社の資金調達方法としてファクタリングが適しているかどうかご判断ください。

手数料が上がる場合がある|デメリット1

ファクタリングの手数料は、貴社の状況や売掛先の状況、売掛債権の性質、ファクタリング契約の種類など、さまざまな要因で変動します。

手数料が変動する要因は以下のとおりです。

手数料が<上がる>要因 手数料が<下がる>要因
2社間ファクタリングで契約する 3社間ファクタリングで契約する
面談必須の対面式ファクタリングサービスを利用する 面談不要の非対面式ファクタリングサービスを利用する
売掛先の信用力が低い 売掛先の信用力が高い
売掛先との取引履歴が浅い 売掛先と長期の取引履歴がある
入金サイトが45日超 入金サイトが短い
赤字決算・債務超過・税金滞納がある 自社の業績が好調である
債権譲渡登記を留保する(2社間の場合) 債権譲渡登記を行う(2社間の場合)
初回契約である 継続利用(2回以上)である

2社間ファクタリングの手数料は10%~20%(非対面は10%以下)、3社間ファクタリングの手数料は1%~9%が相場です。

手数料の高いファクタリングを繰り返し利用すると、本来受け取れるはずの売掛金の20%程度が手数料として差し引かれるため、慢性的な資金繰りの悪化を引き起こしてしまうリスクがあります。

したがって、ファクタリングは本当に資金繰りが苦しいタイミングでの単発利用にとどめておくべきです。

ファクタリングの手数料を抑えるには、信用力の高い売掛先の債権を売却すること、3社間ファクタリングを契約すること、債権譲渡登記を行うことなどが挙げられます。

そのなかでも、2社間取引の「売掛先の同意が不要」「最短即日の入金が可能」というメリットを受け継ぎつつ、10%以下の手数料できる非対面契約のファクタリングサービスがおすすめです。すべての手続きがオンラインで完結するため、来店や出張での面談も必要ありません。

3社間取引は売掛先の同意が必須|デメリット2

3社間ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に売却するにあたって、売掛先の同意を得る必要があります。

ファクタリングは借入に代わる新たな資金調達方法として経産省も利用を推奨していますが、日本での認知度はまだまだ低いと言わざるを得ません。

債権を他社に売却するという行為に対して、売掛先が好意的に捉えてくれるとは限らないため、信用不安を招くおそれがあります。

売掛先の信用不安を招きたくない場合は、貴社とファクタリング会社の2社間だけで契約を結ぶ2社間ファクタリングがおすすめです。

実際に2社間ファクタリングは、売掛先に対して立場の弱い小規模事業者に選ばれています。

債権譲渡登記が必要な場合がある|デメリット3

2社間ファクタリングでは、売掛先に債権譲渡の同意を得ない代わりに、原則として債権譲渡登記が必要です。

債権譲渡登記とは、債権がだれからだれに対し、いつ譲渡されたものかを公的に証明する手続きのことを指します。

ファクタリング会社は、すでに他の業者に売却されている売掛債権を買い取ってしまう「二重譲渡リスク」や、買い取った売掛金が別の用途に使い込まれるリスクに備える「対抗要件の具備」のために、債権譲渡登記を行います。

債権譲渡登記は完了までに時間がかかることや、法務局に申請すればだれでも閲覧可能であることがデメリットと言えます。

ファクタリング会社のなかには、利用者の要望に応えて債権譲渡登記が省略可能なところもあります。

ファクタリングの利用を完全に秘密にしたい場合は、債権譲渡登記の省略が可能なファクタリング会社を選びましょう。

ただし、登記を省略する代わりに手数料が引き上げられるケースもあるため、見積もり時にしっかりと確認しておきましょう。

売掛債権の額面以上の資金調達ができない|デメリット4

ファクタリングは売掛債権の額面以下の資金調達しかできません。

たとえば、100万円の売掛債権を手数料10%で買い取ってもらう場合、利用者が手にすることができる現金は、100万円-10万円(100万円×10%)=【90万円】となります。

売掛債権の支払期日まで待てば満額を受け取ることができますが、ファクタリングは手数料分が控除される代わりに、支払期日までのタイムラグをショートカットして早期に資金を受け取ることができるのです。

厳密にはデメリットと言えませんが、ファクタリングを利用するにあたっては、しっかりとした資金繰り計画を立てておく必要があります。

ファクタリングでの調達額だけでは足りない場合は、銀行融資やビジネスローンなど、他の資金調達方法と組み合わせましょう。

融資が受けられないときや負債を増やしたくないときは、仕事を受注した段階の注文書を現金化できる「注文書買取サービス(注文書ファクタリング)」を利用するという方法もあります。

悪質な業者も存在する|デメリット5

ファクタリング会社の開業には銀行や消費者金融会社のような許可・資格が不要で、規制自体もまだまだ緩いと言わざるを得ません。

その間隙をついて、規制の厳しい貸金業からファクタリング業にシフトした闇金業者や悪質業者も存在しています。実際に、ファクタリング業者を装った悪質業者が摘発された事例もあります。

悪質業者は、資金繰りに困っている事業者をターゲットに、「信用ブラックOK」や「低手数料」といった条件をちらつかせてきます。

しかし、そのような業者と実際に取引してみると、ファクタリングを装った高利貸しであったというケースや、保証金や手付金といった本来のファクタリングには無い手数料を徴収されたというケースが報告されています。

ファクタリング会社が優良か悪質かは、ホームページの会社情報や実績、利用者の口コミ・評判で確認するようにしましょう。電話やメールで問い合わせをして、担当スタッフの対応を見ることも大切です。

ファクタリングのメリット・デメリットに関するQ&A

ファクタリングのデメリットに関して、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。

Q.ファクタリングを初めて利用するのですが、それでも即日の資金調達は可能ですか?
A.ファクタリング会社によっては初回に限り、経営者とファクタリング会社の担当者との面談での契約が必要となります。
その場合は、2社間取引であっても即日の資金調達が難しい場合があります。初回利用でも即日で資金調達を希望する方は、事前に必要な書類を揃えておき、当日の午前中には申込みを済ませるようにしておきましょう。
Q.個人事業主がファクタリングを利用する際のデメリットを教えて下さい。
A.申込者が個人事業主か・法人かの違いは、ファクタリングの有利・不利には直接関与しませんが、ファクタリング会社によっては「個人事業主は3社間ファクタリングのみ利用可」としているところがあります。
なぜなら、2社間ファクタリングで(原則として)必須の債権譲渡登記は、法人を対象とした登記であり、個人事業主では登記ができないからです。個人事業主の方が2社間取引を希望する場合は、債権譲渡登記の省略が可能なファクタリング会社を選びましょう。
>>「債権譲渡登記」について詳しく見る
Q.ファクタリングは弁済を分割できますか?
A.できません。
ファクタリングは売掛金の支払期日に一括弁済ですので、分割払いができる融資と比べて不利な点と言えるでしょう。
Q.赤字決算・債務超過・税金滞納といった不利な条件でもファクタリングは利用できますか?
A.ファクタリングは売掛先(売掛債権)の信用力が重視されるため、貴社が赤字決算・債務超過・税金滞納であっても利用できます。
ただし、2社間ファクタリングは「利用者が売掛先から通常どおりに債権を回収して、ただちにファクタリング会社に弁済する」という性質上、回収した債権を自社の資金繰りに使ってしまう「使い込みリスク」が好条件の利用者よりも高いと考えられるため、手数料が引き上げられる傾向にあります。

ファクタリングのポイントを押さえて資金繰り改善を|まとめ

ファクタリングは2社間取引、3社間取引ともに異なるメリット・デメリットがあります。

2社間取引はスピードに優れていますが、資金調達にかかる手数料が債権額面の10%~20%と高めです。

一方の3社間ファクタリングは手数料が2%~9%と低めですが、売掛先の同意を得るプロセスが必要なため、資金調達までに時間がかかります。

ただし、記事本文で解説したように、いずれのデメリットにも対処法があるため、メリットを最大化して資金調達が可能です。

ファクタリングのメリット・デメリットを理解したうえで、貴社の資金ニーズに最適な資金調達方法かどうかを見極め、資金繰り改善にお役立てください。