ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあります。
ファクタリングの利用を検討している人の中には「2社間と3社間の違いが分からない」という人も多いのではないでしょうか?
ファクタリングは業務内容やルールを詳細に取り決めた法律がないので、2社間と3社間の違いを理解しておかないと悪徳業者に騙されてしまう可能性があります。
また、2社間ファクタリングは特に悪徳業者が多ファクタリングです。
2社間ファクタリングの概要とメリット・デメリットを解説します。
2社間ファクタリングについて理解を深め、会社の資金繰りの幅を広げられるようになりましょう。
2社間ファクタリングの仕組み
2社間ファクタリングの仕組みは以下の通りです。
- 納入企業が売掛金をファクタリング
- 債権譲渡・債権譲渡登記
- ファクタリング会社が納入企業に買取代金を払い込み
- 売掛先企業が納入企業に売掛金代金を払い込み
- 納入企業がファクタリング会社に代金を支払う
基本的に2社間ファクタリングは納入企業である自社とファクタリング会社の2社間でしかお金の動きがありません。
だからこそ2社間ファクタリングと言います。
2社間ファクタリングがどのような仕組みで行われるのか、ファクタリングをしてから入金になるまでの流れを解説していきます。
①納入企業が売掛金をファクタリング
まずは、納入企業とファクタリング会社が売掛債権の売買契約を締結します。
なお初めて取引をする業者とは売買契約締結の前に複数の業者と見積もりをとっておいた方がよいでしょう。
②債権譲渡・債権譲渡登記
契約を締結したらファクタリングを行う売掛債権をファクタリング会社へ譲渡します。
譲渡と言っても売掛債権には手形のように形があるわけではありません。
そのため、債権譲渡登記という登記を行うことになります。
債権譲渡登記については後ほど詳しく解説していきます。
③ファクタリング会社が納入企業に買取代金を払い込み
債権譲渡が終わると、ファクタリング会社が手数料を差し引いた金額を納入企業である自社へ振り込みを行います。
例えば100万円の売掛金を手数料10万円で売買するのであれば90万円が振り込まれることになります。
なお、2社間ファクタリングの場合には、ここまで最短即日で対応する業者も存在します。
平均的には3営業日もあればお金は振り込まれるので、2社間ファクタリングは急いでお金が必要な場面で活用できます。
④売掛先企業が納入企業に売掛金代金を払い込み
売掛金の期日になると、支払い企業が自社へ売掛金の代金を振り込みます。
ここが2社間ファクタリングのポイントです。
2社間ファクタリングでは、すでにファクタリングによって譲渡した売掛債権もファクタリングを行なっていない時と同様に、代金が自社へ振り込まれます。
このため、売掛先企業にファクタリングを行っている事実を知られることはありません。
⑤納入企業がファクタリング会社に代金を支払う
売掛先から代金が振り込まれてきたら、納入企業である自社がファクタリング会社へ代金を支払います。
売掛金代金が100万円であれば、売掛先から振り込まれてきた100万円をそのままファクタリング会社へ振り込みます。
これで「100万円の売掛金を90万円で売却した」という資金の流れが完了します。
2社間ファクタリングが登場した背景には債権譲渡登記の登場
そもそもファクタリングとは3社間が基本でした。
3社間ファクタリングとは、「売掛先企業の同意を得て、売掛金の期日になったら売掛先企業がファクタリング会社へ代金を支払う」というものです。
しかし3社間ファクタリングの場合には、「取引先にファクタリングをしている事実が知られてしまう」というデメリットがあります。
2社間であれば売掛先企業に知られることなくファクタリングができるので、取引先に「資金繰りが苦しいのかな?」などと疑われる心配はありません。
ファクタリングの基本であった3社間ファクタリングから2社間ファクタリングが登場した背景には「債権譲渡登記」の登場があります。
2社間ファクタリングが登場した背景を見ていきましょう。
債権譲渡登記とは
「債権譲渡登記制度」とは、法人が債権譲渡等を公示するため登記のことです。
債権は譲渡することができます。
しかし債権には形がないので、譲渡したことを客観的に公示する方法が債権譲渡登記なのです。
ファクタリングにおいて債権譲渡を公示するということは、納入企業がファクタリングをした際に「この債権はファクタリング会社へ譲渡したもの」と公にすることです。
納入企業が悪意を持ってファクタリング会社へ譲渡した債権を他の人や企業へ譲渡してしまっても、債権譲渡登記があればファクタリング会社は「この債権は譲渡されたものだ」と主張することができます。
これを対抗要件と言います。
債権譲渡登記によって売掛先の同意が不要に
債権譲渡登記が登場したのは平成10年からです。
この債権譲渡登記が登場したことによって、ファクタリング会社は売掛先の同意を得なくても対抗要件を備えることができるようなりました。
債権譲渡登記ができなければ、ファクタリング会社とすれば譲渡を受けたはずの債権がどこかに売られてしまうリスクを回避することはできません。
ファクタリングの本来の形は売掛先の同意が必要な3社間ファクタリングが基本です。
しかし、債権譲渡登記によって2社間ファクタリングが可能になり、取引先に知られることなくファクタリングができるようになりました。
2社間ファクタリングの審査
ファクタリンを行うためにはファクタリング会社の審査に通過する必要があります。
審査のポイントは以下の2つです。
- 売掛先の与信
- 納入企業の与信
2社間ファクタリングにおいては売掛先の信用だけでなく、納入企業である自社の与信も重視されることにポイントがあります。
それぞれの審査のポイントをもう少し詳しく解説していきます。
売掛先の与信
ファクタリング会社は売掛債権を買い取るのですから、売掛先企業に信用がなければファクタリングには応じてもらえません。
例えば、何年も未払いになっている売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらうことは不可能です。
売掛先が上場企業や官公庁などの信用力が高いところであれば、審査には通りやすくなりますので手数料も安くなる傾向にあります。
一方、売掛先が中小企業や個人などの場合には信用力は劣ってしまいますので審査は厳しくなりますし、手数料も高くなる傾向にあります。
ファクタリングの審査のウェイトは売掛先の信用力が第一です。
納入企業の与信
2社間ファクタリングにおいては納入企業である自社の信用も非常に重要になります。
2社間ファクタリングでは、売掛金の代金が一度自社に経由するためです。
この際に納入企業の業況が悪いと売掛先から支払いがあった代金を他の支払いに使ってしまったり、持ち逃げしてしまう可能性があります。
納入企業に信用があれば、このようなリスクはなくなります。
このため2社間ファクタリングにおいては、売掛先企業の信用に加えて自社の信用も重要になります。
自社の業況があまりにも悪い場合には、ファクタリング審査に通過できないことも珍しいことではありません。
2社間ファクタリングのメリット
2社間ファクタリングのメリットとしては以下の3つをあげることができます。
- 最短即日で資金化できる
- 取引先に秘密でファクタリングできる
- ほとんどのケースで償還請求権がない
資金化の速さと取引先に秘密でファクタリングができる点が最大のメリットです。
ファクタリングのメリットは具体的にどのようなものなのでしょうか?
最短即日で資金化できる
2社間ファクタリングは売掛先企業の同意が必要ありません。
3社間ファクタリングでは売掛先企業の同意を得る手続きだけで1週間程度の時間がかかってしまい、資金化までには時間がかかります。
しかし2社間ファクタリングは審査を行い、ファクタリング会社と自社の契約だけで資金化することができますので、早いファクタリング会社では最短即日で資金化することが可能です。
銀行融資や3社間ファクタリングよりも2社間ファクタリングは資金化のスピードが圧倒的に早くなっています。
このため、銀行融資を待つことができない場合などに2社間ファクタリングは重宝します。
取引先に秘密でファクタリングできる
2社間ファクタリングでは取引先の同意が必要ありません。
取引先に秘密でファクタリングを行うことができるという点は2社間ファクタリングの大きなメリットです。
ファクタリングに対する知名度は近年飛躍的に向上してはいるものの、ファクタリングに関する正しい認知は必ずしも全ての経営者に広がっているわけではありません。
このため、経営者の中には「ファクタリング」と聞くと「怪しい」とか「資金繰りに困窮している企業」とネガティブな判断をする場合もあります。
「経営状況が危ない企業とは取引をしない」と取引を切られてしまうこともあるかもしれません。
2社間ファクタリングであれば取引先にファクタリングの事実を知られることはないので、取引先からネガティブなイメージを持たれる懸念は皆無です。
2社間ファクタリングは取引先に知られることなくファクタリングができるというのは大きなメリットと言えるでしょう。
ほとんどのケースで償還請求権がない
ファクタリングには償還請求権がある場合とない場合があります。
償還請求権とは、売掛金がデフォルトした場合にその代金をファクタリング会社が納入企業である自社へ請求する権利です。
「償還請求権あり」のファクタリングでは売掛先の経営状況が悪化して債権がデフォルトした場合には自社がファクタリング会社へ売掛金代金を保証しなければなりません。
しかし、2社間ファクタリングは基本的に「償還請求権なし」になっているので、売掛先がデフォルトしたとして自社に責任は及びません。
2社間ファクタリングでは、売掛金の期日前に資金化することができると同時に、売掛金の回収リスクもファクタリング会社に売り渡すことができるというメリットもあります。
2社間ファクタリングのデメリット
2社間ファクタリングのデメリットとしては以下のようなものをあげることができます。
- 手数料が高い
- 悪徳業者が混じっていることがある
- 個人事業主は利用できないことが多い
やはり手数料が高い点が最大のデメリットです。
また、2社間ファクタリングは高額な手数料を設定することができるので、あまりにも法外な手数料を要求する悪徳業者が混じっていることも多くなっています。
2社間ファクタリングのデメリットもしっかりと理解して悪徳業者に騙されないようにしましょう。
手数料が高い
2社間ファクタリング最大のデメリットは手数料が高額になるという点です。
一度資金が自社を経由し、償還請求権もない2社間ファクタリングは3社間ファクタリングと比較してファクタリング会社にとってはリスクの高いファクタリングです。
ファクタリングの手数料はファクターの回収リスクに対するリスクプレミアムとして設定されます。
このため手数料の相場は10%〜20%程度と高額になっています。
また、20%以上の手数料が設定されていることも珍しくありません。
売掛債権金額の20%もの金額を手数料で持っていかれてしまうので、大きなコスト負担になると言わざるを得ません。
悪徳業者が混じっていることがある
ファクタリングは法律によって業務の内容が決められているわけでもなく、国などへ登録も許認可も必要ない業種です。
誰でも参入することができるので業者の中には悪徳業者も混じっています。
特に高額な手数料が設定されることが多い2社間ファクタリングは悪徳業者が入りやすくなっています。
悪徳業者の主な手口は以下のようなものです。
- 30%を超えるような手数料を設定する
- 債権金額全額を一度に買い取らない
- ファクタリングと称してお金を貸し付ける闇金
ファクタリング業者はどの業者が悪徳業者かという明確な基準がありません。
そのため業者の見極めが非常に重要になります。
悪徳業者に引っかからないように、初めて取引をする業者と取引を始める前には複数の業者から見積もりをとるようにしましょう。
悪徳業者が30%程度で設定した債権の買取を優良業社である10%前後で買い取ってももらえるような場合もあります。
業者の選定は慎重に行いましょう。
個人事業主は利用できないことが多い
2社間ファクタリングは原則的に個人事業主は利用することができません。
債権譲渡登記は法人しか登記をすることができないためです。
個人事業主に対して2社間ファクタリングをしてしまったら、ファクタリング会社は対抗要件なしで売掛債権の買取をしなければならなくなってしまいます。
ファクタリング会社にとってリスクが高くなりすぎてしまうので、個人事業主は基本的に2社間ファクタリングを利用することはできません。
ただし、業況が良好で信用力のある個人事業主であれば2社間ファクタリングに応じてくれる業者も存在するようです。
2社間ファクタリングに関するよくある質問
- 2社間ファクタリングの審査に通過しやすい条件を教えてください。
- ファクタリングの審査は売掛先の与信が最も重視されるので、優良企業の売掛債権をファクタリングすればファクターのリスクが下がり手数料が低くなる可能性があります。
- 2社間ファクタリングの手数料を下げる方法ありますか?
- 優良企業の売掛債権をファクタリングする、期間の短い債権をファクタリングする、同じファクターと取引してファクターからの信用を得るという方法で手数料が低くなることがあります。
- 2社間ファクタリングでは債権譲渡登記は必須ですか?
- 原則的に債権譲渡登記は必須です。しかしファクターによっては債権譲渡登記なしでファクタリングに応じていることもあります。対応はファクターによって異なるのでまずは相談してみましょう。
まとめ
2社間ファクタリングのポイントは以下の通りです。
- 最短即日で資金化できる
- 売掛先企業の秘密でファクタリング可能
- 手数料は高い
- 悪徳業者に注意が必要
高額な手数料を受け入れることができれば、2社間ファクタリングは3社間ファクタリングや銀行融資よりもメリットがある資金調達方法です。
業者の選定をしっかりと行なって、できる限り低いコストでファクタリングを行なっていくようにしましょう。