IT導入補助金は、デジタル化を図る多くの企業が利用する補助金制度です。しかし、IT導入補助金が具体的にどのような制度か詳しく知らない方も多いでしょう。
IT導入補助金は、経済産業省中小企業庁が運営する補助金制度です。ITツール導入費用の一部を補助し、企業の生産性向上・業務効率化を支援する目的があります。
今回は経済産業省中小企業庁が運営するIT導入補助金について、対象ソフト一覧・2024年申請スケジュールも紹介します。本記事を読めば、IT導入補助金について詳しく理解してスムーズな申請が可能です。IT導入補助金を活用し、自社の生産性向上・競争力強化を図りましょう。
IT導入補助金とは経済産業省中小企業庁が運営する補助金制度
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者のデジタル化をサポートする制度です。経済産業省中小企業庁が主導するIT導入補助金は、企業の生産性向上と競争力強化を目指しています。
具体的には、業務効率化・売上アップにつながるITツールの導入費用の一部を国が補助します。例えば、顧客管理システム・会計ソフト・受発注システムなどの導入費用が補助対象です。ITツールを導入すれば業務プロセスの改善や経営の可視化が可能となり、中小企業の成長に貢献します。
IT導入補助金の特徴は単なる資金援助にとどまらず、IT導入を通じた企業変革を促進する点にあります。デジタル化に不安を感じる経営者にとっても、IT導入支援事業者のサポートを受けながら安心して取り組めるのが魅力です。
IT導入補助金は全部で5つの申請枠がある
IT導入補助金には、企業のニーズや状況に応じて選択できる以下5つの申請枠が用意されています。
申請枠 | 概要 |
通常枠 | 事業のデジタル化を目的としたソフトウェア・システムの導入を支援する枠 |
インボイス枠(インボイス対応類型) | インボイス制度に対応した会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・PC等を導入し労働生産性の向上をサポートする枠 |
インボイス枠(電子取引類型) | インボイス制度に対応した受発注システムを商流単位で導入する企業を支援する枠 |
セキュリティ対策推進枠 | サイバー攻撃の増加に伴う潜在的なリスクに対処するため、サイバーインシデントに関する様々なリスク低減策を支援する枠 |
複数社連携IT導入枠 | 業務上つながりのある複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツールを導入し、生産性の向上を図る取り組みを支援する枠 |
上記の多様な枠組みにより、幅広い中小企業・小規模事業者が課題にあわせてIT導入を進められるようになっています。自社の状況・目標に最適な枠を選択すれば、効果的なIT導入が実現可能です。
IT導入補助金の活用事例|経済産業省の公開事例を紹介
IT導入補助金の活用事例として、経済産業省が公開している事例を以下3つ紹介します。
- 経営課題の可視化|株式会社後藤
- 労働環境の改善|小幡建設工業株式会社
- 業務効率化|有限会社天女山
自社の経営課題にあわせて、上記事例を参考にIT導入補助金を活用しましょう。
経営課題の可視化|株式会社後藤
株式会社後藤は、統計関連商品を扱う総合卸売会社です。インボイス制度対応のために基幹システムの更新を考えていたところ、取引先からIT導入補助金について聞いたのが導入のきっかけになりました。
インボイス制度対応の会計ソフトを新規導入し、年間の経費予測が可視化できるようになったのが大きな変化です。経費予測をもとに達成すべき粗利目標も正確に設定できるうえ、社内でイメージを共有しやすくなりました。期中での事業戦略の見直しもしやすくなり、売上向上にも貢献しています。
参考:株式会社後藤 ITツール活用事例 | IT導入補助金2024
労働環境の改善|小幡建設工業株式会社
小幡建設工業株式会社は、青森県八戸市で民間と公共の建築・土木工事を手掛ける会社です。タイムカード打刻で出退勤管理を行っており、現場から本社に移動する時間で労働が長時間化していたのが課題でした。
そこで、IT導入補助金を活用して勤怠・労務管理ソフト「就業大臣」を導入しました。スマートフォンから出退勤の打刻ができるようになり、残業時間を3分の1ほど削減できています。
従来は打刻されたタイムカードを手作業で入力していましたが、勤怠管理業務についても大幅に効率アップしました。2日かかっていた作業が、1日で完了できるようになっています。
業務効率化|有限会社天女山
有限会社天女山は、山梨県で林業を営む会社です。利益確保に課題を感じており、森林調査・整備などの業務を効率化したいと考えるようになったのがIT導入補助金活用のきっかけです。
知り合いの建設会社からIT導入支援事業者の紹介を受け、3D GISツール「ScanSurvey Z Pro」を導入します。ドローンを使った森林解析ができるようになり、調査人員を約8割削減させるのに成功しました。調査コストを大きく削減し、従来よりも利益を確保できるようになっています。
IT導入補助金における2023年度からの変更点
2024年度のIT導入補助金制度には、2023年度から以下の変更点が導入されました。
- デジタル化基盤導入枠が廃止されて新たにインボイス枠が導入される
- ECサイト制作が補助金の対象外となる
- 通常枠のA類型・B類型は廃止され、1つの申請枠に統合される
他にも、審査における加点・減点項目も一部変更となっています。詳しくはIT導入補助金の公式ホームページより確認してください。
IT導入補助金の対象となるITツール・ソフト一覧
IT導入補助金の対象となるITツール・ソフトの例は、以下の通りです。
- 顧客管理システム(CRM)
- 会計ソフト
- 勤怠管理システム
- 在庫管理ソフト
- 受発注システム
特に、通常枠の場合は業務効率化・売上向上につながるITツールは幅広く対象です。ただし、インボイス枠・セキュリティ対策推進枠・複数社連携IT導入枠は、導入対象ツールの条件が細かく設定されています。自社の目的に適したツールが導入できるか、IT導入補助金の公式ホームページで確認しましょう。
IT導入補助金の対象事業者は中小企業・小規模事業者(個人事業主)
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者(個人事業主)を対象としています。対象となる事業者の定義は中小企業基本法に基づいており、業種ごとに従業員数や資本金の基準が設けられています。中小企業・小規模事業者として認められる条件は、以下表の通りです。
【中小企業として認められる条件】
以下表の「資本金」「従業員」のいずれかを満たす場合。
業種分類・組織形態 | 資本金(資本金の額または出資の総額) | 従業員(常時使用する従業員) |
製造業・建設業・運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
その他の業種(上記以外) | 3億円以下 | 300人以下 |
【小規模事業者として認められる条件】
業種分類・組織形態 | 従業員(常時使用する従業員) |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
他にも、医療法人・学校法人などの組織も対象となっており、以下の従業員数を満たす必要があります。
業種分類・組織形態 | 従業員(常時使用する従業員) |
医療法人・社会福祉法人 | 300人以下 |
学校法人 | 300人以下 |
商工会・都道府県商工会連合会および商工会議所 | 100人以下 |
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 | 主たる業種に記載の従業員規模以下 |
特別の法律によって設立された組合または連合会 | 主たる業種に記載の従業員規模以下 |
財団法人・社団法人(一般・公益) | 主たる業種に記載の従業員規模以下 |
特定非営利法人 | 主たる業種に記載の従業員規模以下 |
IT導入補助金を申請する際は、上記条件にあてはまるか確認しておきましょう。
対象外となる事業者
IT導入補助金は幅広い中小企業・小規模事業者を支援する制度ですが、以下の事業者は対象外となります。
対象外となる事業者 |
次の①~⑥のいずれかに該当する事業者
①:発行済株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業・小規模事業者等 ②:発行済株式の総数または出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業・小規模事業者等 ③:大企業の役員または職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業・小規模事業者等 ④:発行済株式の総数または出資価格の総額を①~③に該当する中小企業・小規模事業者等が所有している中小企業・小規模事業者等 ⑤:①~③に該当する中小企業・小規模事業者等の役員または職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業・小規模事業者等 ⑥確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業・小規模事業者等 |
IT導入補助金2024においてIT導入支援事業者(構成員を含む)に登録されている事業者、または登録を行おうとする事業者 |
経済産業省または中小機構から補助金等指定停止措置または指名停止措置が講じられている事業者 |
風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律第2条各項に規定する営業を営む事業者 |
過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者 |
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団等の反社会的勢力に関係する事業者 |
宗教法人 |
法人格のない任意団体(例)同窓会・PTA・サークル等 |
他の補助金等において不正行為等を行った事業者 |
その他、本事業の目的・趣旨から適切でないと中小企業庁および中小機構ならびに事務局が判断する者 |
他にも、IT導入補助金の交付を受けた場合は同一年度内に同じ枠での再度申請はできません。ただし、申請した枠と異なるカテゴリーの場合は複数申請が可能です。
2024年IT導入補助金の補助金額・補助率
2024年IT導入補助金の補助金額・補助率について、以下5つの申請枠ごとに紹介します。
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数社連携IT導入枠
IT導入補助金は多様な企業ニーズに応えるため、複数の枠を設けて補助金額と補助率を設定しています。企業規模や導入するITツールの種類に応じて、最適な支援を受けられるのが特徴です。
通常枠
通常枠の補助金額・補助率は、以下表の通りです。
補助額 | 1プロセス以上:5万円以上150万円未満
4プロセス以上:150万円以上450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 |
補助金額は5万円から450万円までとなっており、補助率は1/2以内となっています。例えば、100万円のITツールを導入する場合、最大50万円の補助を受けられます。
なお、上記の表の「プロセス」とはITツールが対応できる業務・機能で、具体的な内容は以下の通りです。
種別 | プロセス名 | |
業務プロセス | 共通プロセス | 顧客対応・販売支援 |
決済・債権債務・資金回収 | ||
供給・在庫・物流 | ||
会計・財務・経営 | ||
総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス | ||
業種特化型プロセス | 業種固有プロセス | |
汎用プロセス | 汎用・自動化・分析ツール
(業種・業務が限定されないが生産性向上への寄与が認められる業務プロセスに付随しない専用のソフトウェア) |
通常枠を申請する際は、導入予定のITツールが対応するプロセスを確認しておきましょう。
インボイス枠(インボイス対応類型)
インボイス枠(インボイス対応類型)の具体的な補助金額・補助率は、以下表の通りです。
補助対象経費区分 | ソフトウェア購入費、導入関連費、ハードウェア購入費 |
補助率 | 2/3以内~4/5以内
※ハードウェア購入費の補助率は1/2以内 |
補助下限額・上限額 | ソフトウェア購入費・導入関連費:下限なし~350万円
PC・タブレット等:下限なし~10万円 レジ・券売機等:下限なし~20万円 |
引用:公募要領 インボイス枠(インボイス対応類型)|IT導入補助金2024
補助金額は最大350万円までで、補助率は2/3以内〜4/5以内です。例えば、300万円のインボイス対応の会計システムを導入する場合、最大200万円〜240万円の補助を受けられます。対象となるITツールにはインボイス制度に対応した会計ソフトはもちろん、PC・POSレジなどのハードウェアも含まれます。
インボイス枠(電子取引類型)
インボイス枠(電子取引類型)の補助金額・補助率は、以下表の通りです。
補助対象経費区分 | クラウド利用費
※ただし、契約する受注側のアカウント総数のうち、取引先である中小企業・小規模事業者等に供与するアカウント数の割合を乗じた額を補助対象経費とする |
補助率 | 中小企業・小規模事業者等:2/3以内
その他の事業者等:1/2以内 |
補助下限額・上限額 | クラウド利用費:下限なし~350万円 |
引用:公募要領 インボイス枠(電子取引類型)|IT導入補助金2024
補助金額は最大350万円まで、補助率は1/2以内〜2/3以内です。なお、インボイス枠(電子取引類型)の対象経費は、以下のように計算されます。
- 補助対象経費=ITツールの導入費用×{受注側の中小企業・小規模事業者等(取引先)が利用するアカウントの数÷契約する受注側アカウントの総数}
例えば、以下のケースがあったとしましょう。
- ITツールのクラウド利用費が300万円
- 受注側アカウント総数は5つ契約
- 実際に受注側に割り振ったアカウントの数が4つ
上記の場合、300万円×{4アカウント÷5アカウント}の計算式となり、補助対象経費は240万円です。
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠の補助金額・補助率は、以下表の通りです。
補助対象経費区分 | サービス利用料(最大2年分) |
補助率 | 1/2以内 |
補助下限額・上限額 | 5万円~100万円 |
引用:公募要領 セキュリティ対策推進枠|IT導入補助金2024
補助金額は5万円から100万円まで、補助率は1/2以内となっています。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」のサービスが補助対象です。例えば、80万円のセキュリティ対策サービスを導入する場合、最大40万円の補助を受けられます。
複数社連携IT導入枠
複数社連携IT導入枠の補助金額・補助率は、以下表の通りです。
補助対象経費 | 補助率 | 補助額 | |||
基盤導入経費 | ソフトウェア | 3/4〜4/5 | 50万円以下×グループ構成員数 | 3000万円以下 | |
2/3 | 50万円超〜350万円以下×グループ構成員数 | ||||
ハードウェア | PC・タブレット等 | 1/2 | 10万円×グループ構成員数 | ||
レジ・券売機等 | 20万円×グループ構成員数 | ||||
消費動向等分析経費 | 2/3 | 50万円以下×グループ構成員数 | |||
その他経費 | 2/3 | 200万円以下 |
補助金額は最大3000万円までで、補助率は1/2〜4/5です。対象となる経費としてITツールはもちろん、参画事業者のとりまとめに必要な事務費・専門家費なども含まれます。
IT導入補助金で対象外の経費
IT導入補助金は多くのITツール導入をサポートしますが、一部の経費は対象外となります。例えば、通常枠では補助対象外となる経費として、以下の具体例が挙げられています。
- 補助事業者の顧客が実質負担する費用がITツール代金に含まれるもの(売上原価に相当すると事務局が判断するもの)
- ITツールの利用料が、交付申請時に金額が定められないもの
- 対外的に無料で提供されているもの
- リース・レンタル契約のITツール(サイバーセキュリティお助け隊サービスを除く)
- 中古品
- 交付決定前に購入したITツール
- 交通費、宿泊費
- 補助金申請、報告にかかる申請代行費
- 公租公課(消費税)
- その他、本事業の目的・趣旨から適切でないと中小企業庁および中小機構ならびに事務局が判断するもの
ITツール導入に関わる費用であっても、支援業者との打ち合わせにかかった交通費・宿泊費や申請代行の依頼費用などは対象外です。
2024年IT導入補助金の申請スケジュール
2024年の各申請枠における直近の申請スケジュールは、以下表の通りです。
申請枠 | 公募回 | 締切日 | 交付決定日 | 事業実施期間 | 事業実績報告期限 |
通常枠 | 6次締め切り分 | 2024年8月23日(金)17:00 | 2024年10月3日(木)(予定) | 交付決定〜2024年12月9日(月)17:00 | 2024年12月9日(月)17:00 |
インボイス枠(インボイス対応類型) | 11次締め切り分 | 2024年8月23日(金)17:00 | 2024年10月3日(木)(予定) | 交付決定〜2024年12月9日(月)17:00 | 2024年12月9日(月)17:00 |
インボイス枠(電子取引類型) | 6次締め切り分 | 2024年8月23日(金)17:00 | 2024年10月3日(木)(予定) | 交付決定〜2024年12月9日(月)17:00 | 2024年12月9日(月)17:00 |
セキュリティ対策推進枠 | 6次締め切り分 | 2024年8月23日(金)17:00 | 2024年10月3日(木)(予定) | 交付決定〜2024年12月9日(月)17:00 | 2024年12月9日(月)17:00 |
複数社連携IT導入枠 | 3次締め切り分 | 2024年8月23日(金)17:00 | 2024年10月3日(木)(予定) | 交付決定〜2024年12月9日(月)17:00 | 2024年12月9日(月)17:00 |
申請締切日から事業実施・実績報告期間まで、細かく期限が指定されています。申請の際には、上記スケジュールの期日に間に合うよう余裕を持って手続きを進めましょう。
IT導入補助金におけるIT導入支援事業者とは
IT導入支援事業者は中小企業・小規模事業者がITツールを効果的に導入し、最大限の効果を得られるようサポートする事業者です。IT導入支援事業者の主な役割は、適切なITツールの選定から申請手続き・導入後のフォローアップまで多岐にわたります。
各企業の課題や目標を深く理解し、最適なITツールを提案してくれるのが特徴です。また、複雑な申請手続きをサポートし、審査のポイントを押さえた効果的な申請書類の作成も支援してくれます。なお、IT導入補助金を受給する場合は、IT導入支援事業者からITツールを購入する必要があるため注意しましょう。
IT導入支援事業者はIT導入補助金公式サイトから一覧で検索可能
IT導入補助金の公式サイトでは、認定された全てのIT導入支援事業者を簡単に検索できる便利な機能が提供されています。具体的には、公式サイト内にある「ITツール・IT導入支援事業者検索」からIT導入支援事業者を検索可能です。
上記の検索機能を使用すれば、自社のニーズに最も適した事業者を効率的に見つけられます。検索オプションで地域・利用する申請枠・対応可能な業種など、様々な条件でIT導入支援事業者の絞り込みが可能です。
例えば、「東京都内で小売業向けのPOSシステムを提供している事業者」などの具体的な条件で検索ができます。希望するIT導入支援事業者が見つけられた場合は、直接業者へ連絡してIT導入補助金の申請手続きを進める流れです。
IT導入補助金の4つのメリット
IT導入補助金には、中小企業・小規模事業者にとって魅力的な4つの大きなメリットがあります。
- 返済の必要がない
- 業務効率化・生産性向上を図れる
- 従業員のモチベーション維持・離職率低下が期待できる
- 対象となるITツールが幅広い
上記は、企業の成長と競争力強化に直接的に寄与するメリットばかりです。以下、各メリットについて詳しく解説します。
①返済の必要がない
IT導入補助金の最大のメリットは、返済の必要がない点です。補助金として交付されるため、導入したITツールが適切に活用されて所定の効果が得られれば返済の心配をする必要はありません。企業は財務的な負担を最小限に抑えつつ、必要なITツールを導入できます。
特に、資金繰りに課題を抱える中小企業や新規事業に取り組もうとするスタートアップ企業にとって非常に魅力的です。導入後の事業展開に集中でき、ITツールの効果を最大限に引き出せます。
また、返済不要であるため、より積極的なIT投資に乗り出せます。通常なら躊躇してしまう高額なITツールの導入も、補助金の活用で導入が可能です。
②業務効率化・生産性向上を図れる
IT導入補助金の大きなメリットは、業務効率化と生産性向上を図れる点です。適切なITツールを導入すれば企業の業務プロセスは大きく改善され、結果として全体的な生産性が向上します。
例えば、顧客管理システム(CRM)の導入により、顧客情報の一元管理が可能です。営業活動の効率が上がり、顧客満足度の向上にもつながります。また、会計ソフトの導入は経理業務の大幅な効率化を実現し、財務状況の即時把握が可能です。
さらに、在庫管理システムの導入は適正在庫の維持と欠品防止を両立させ、経営の安定化に寄与します。ITツールを活用すれば手作業で行っていた業務が自動化され、人為的ミスの減少にも貢献可能です。
業務効率化によって生まれた時間と労力は、より創造的な業務や戦略的な取り組みに充てられます。結果として、IT導入補助金を活用したITツールの導入は企業全体の生産性向上と収益性の改善をもたらします。
③従業員のモチベーション維持・離職率低下が期待できる
IT導入補助金のメリットは、従業員のモチベーション維持と離職率の低下が期待できる点です。適切なITツールの導入は単に業務効率を上げるだけでなく、従業員の働き方や職場環境にも大きな影響を与えます。
まず、ITツールの導入で従業員の業務負担が軽減されるのがメリットです。例えば、データ入力や集計作業が自動化されれば、従業員はより創造的で付加価値の高い業務に集中できます。仕事のやりがいを高め、職務満足度の向上につながります。
また、クラウドツールの導入で自宅からでも業務環境にアクセスでき、リモートワークの導入も容易です。従業員のワークライフバランスが改善され、働きやすい環境の整備が期待できます。結果として、従業員の会社に対する帰属意識が高まり、離職率の低下につながります。
④対象となるITツールが幅広い
IT導入補助金のメリットは、対象となるITツールの幅広さです。様々な業種・規模の企業が自社の具体的なニーズにあわせてITツールを選択し、導入できます。
対象となるITツールには基本的な業務効率化ツールから、高度な分析ツールまで多岐にわたります。例えば、会計ソフト・人事管理システム・在庫管理システムなど幅広いツールが対象です。
また、業種特化型のITツールも対象となっています。例えば、小売業向けのPOSシステム・建設業向けの工程管理ツールなど各業界の特殊なニーズに対応したITツールも選択可能です。自社の成長戦略にあわせてITツールを選択し、効果的にデジタル化を推進できる点がIT導入補助金の大きな魅力です。
IT導入補助金の4つのデメリット
IT導入補助金は多くのメリットがある一方で、以下のデメリットも存在します。
- 審査に通過できなければ補助金を受給できない
- 必要書類の準備・手続きに労力がかかる
- 受給までに必要な経費を立て替える必要がある
- 交付が決定されるまでITツールを導入できない
上記のデメリットに対しては、事前に対策を講じておきましょう。
①審査に通過できなければ補助金を受給できない
IT導入補助金のデメリットは、審査に通過しなければ補助金を受給できない点です。審査プロセスは厳格で、多くの申請者にとってハードルが高くなっています。
審査では、ITツール導入の目的・期待される効果・導入後の活用計画などが詳細に評価されます。単に「ITツールを導入したい」という漠然とした理由では、審査通過は困難です。
企業は「ITツールが自社の経営課題解決にどのように貢献するのか」について、具体的に説明する必要があります。さらに、「選定したITツールが補助金の対象要件を満たしているかどうか」も重要な審査ポイントです。要件を満たしていないツールを選択してしまうと、たとえ他の面で優れた申請内容であっても補助金を受給できません。
審査に落ちた場合の再申請は可能ですが、時間とリソースを再度投入する必要があります。初回の申請時に十分な準備が必要です。
②必要書類の準備・手続きに労力がかかる
IT導入補助金の申請プロセスにおいて、必要書類の準備と手続きには相当な労力がかかります。具体的には申請情報の入力・ITツールの利用を証明する資料などが必要です。書類を正確に作成し、漏れなく提出するのは時間と労力を要する作業です。
また、申請後も審査過程で追加資料の要求・質問への対応などが発生する可能性があります。上記に迅速かつ適切に対応するためには、継続的な労力・リソースが必要です。
さらに、補助金交付後も成果報告などの手続きが必要となり、企業にとって負担となる可能性があります。上記の手続きは本来の業務に支障をきたす可能性があり、特に人的リソースの限られた中小企業にとっては大きな課題です。
③受給までに必要な経費を立て替える必要がある
IT導入補助金のデメリットは、補助金の受給までに必要な経費を企業自身が立て替える必要がある点です。補助金は、ITツールの導入・支払い完了後に交付されます。つまり、企業は導入するITツールの全額を一旦自社で支払い、補助金が交付されるまでの期間は立て替えなければなりません。
手続きにかかる時間・審査の進捗度合いによって変動しますが、入金までに半年以上かかるケースもあります。企業は大きな資金を拘束されるため、他の事業活動・投資に影響を与える可能性があります。
また、補助金の交付が予定より遅れる・審査で不採択となる場合のリスクにも対処が必要です。資金面での課題に対応するため、企業は事前に十分な資金計画を立てる必要があります。場合によっては、他の資金調達を実施するなどの対策が必要です。
④交付が決定されるまでITツールを導入できない
IT導入補助金のデメリットは、補助金の交付が決定されるまでITツールを導入できない点です。補助金の申請から交付決定までには、通常数ヶ月程度の時間がかかります。
交付決定までの間、企業は選定したITツールを導入できません。ビジネス環境の急激な変化や突発的な課題に対し、即座にITツールを活用して対応できない点がデメリットです。
例えば、競合他社の動きに素早く対応するためにCRMシステムの導入を決めたとしても、補助金の交付決定までは導入できません。ビジネスチャンスを逃す・競合他社に後れを取る可能性があります。
デメリットに対処するためには、長期的な視点でIT戦略を立てて補助金申請のタイミングを慎重に検討する必要があります。緊急性の高いITツール導入については、補助金に頼らない代替案も同時に検討しておきましょう。
IT導入補助金を申請する8つのステップ
IT導入補助金の申請には、以下のステップを踏む必要があります。
- ITツール・IT導入支援事業者の選定
- gBizIDプライムの取得など必要な準備を実施
- ITツールの見積書など必要書類を用意
- IT導入補助金のマイページ開設
- 申請者がマイページで必要情報を入力
- IT導入支援事業者による申請情報の確認・入力
- 採択決定後にITツールを契約・導入
- 事業実績報告を提出して補助金が交付
申請は8つのステップに分かれており、各項目で必要な手続きや注意点があります。上記のステップを熟知してスムーズに申請手続きを行いましょう。
①ITツール・IT導入支援事業者の選定
申請プロセスの第一歩は、ITツール・IT導入支援事業者の選定です。IT導入補助金は、事前に登録されたIT導入支援事業者から導入したITツールのみが対象となります。よって、まずは信頼できるIT導入支援事業者を見つけるのが不可欠です。
「ツールが自社の業務改善に適しているか」「導入後のサポートが充実しているか」などを確認し、最適なツールと事業者を選びましょう。また、事業者の過去の実績や評判も参考にすれば、より安心して依頼できる相手を見つけられます。
②gBizIDプライムの取得など必要な準備を実施
IT導入補助金を申請するためには、gBizIDプライムの取得が必須となります。gBizIDは政府が提供する認証システムで、オンラインでの行政手続きを一元管理できるアカウントです。gBizIDプライムは、利用できる行政サービスが最も多いアカウントとなっています。
gBizIDプライムを取得すれば、補助金申請の際に必要なマイページの開設・情報の入力がスムーズに行えます。オンライン申請であれば、最短即日でアカウント発行が可能です。
また、gBizIDプライム以外にも「SECURITY ACTION」への宣言が申請時に求められます。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する制度で、公式ホームページより手続きが可能です。通常枠を申請する場合は、みらデジ経営チェックの実施も必要となります。
③ITツールの見積書など必要書類を用意
次に必要なのが、ITツールの見積書など申請に必要な書類の準備です。IT導入補助金では、導入するツールの具体的な内容・費用・導入後の効果の説明が求められます。
見積書には導入予定のツールの詳細な仕様・費用が記載されている必要があるため、支援事業者と協力して正確な書類を作成しましょう。他にも、申請時には以下の書類が必要です。
【法人の場合】
- 履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
- 税務署で発行された直近分の法人税の納税証明書
【個人事業主の場合】
- 運転免許証(有効期限内のもの)、運転経歴証明書もしくは住民票(発行から3ヶ月以内のもの)
- 税務署で発行された直近分の所得税の納税証明書
- 税務署が受領した直近分の確定申告書の控え
④IT導入補助金のマイページ開設
必要な準備が整ったら、次に行うのはIT導入補助金公式サイト上でのマイページ開設です。マイページは申請者が補助金申請の進捗を管理し、必要な情報を入力するための専用ページです。
マイページの利用には、IT導入支援事業者から招待を受けて利用する必要があります。また、マイページの開設には事前に取得したgBizIDプライムが必要です。
⑤申請者がマイページで必要情報を入力
マイページを開設したら、申請者は補助金申請に必要な情報を入力します。企業の基本情報や導入予定のITツールに関する詳細などを正確に記載しましょう。
基本的には申請画面の指示に従い、導入するITツール詳細・事業計画値など必要な情報を入力します。入力した情報に誤りがあると申請が遅延する可能性もあるため、記入内容の確認を怠らないようにしましょう。
⑥IT導入支援事業者による申請情報の確認・入力
申請者がマイページに入力した情報は、IT導入支援事業者によって確認されます。支援事業者は「入力内容が正確であるか」「申請条件を満たしているか」をチェックし、必要に応じて修正・補足を行う流れです。支援事業者が申請情報の最終確認を行った後、正式に申請が提出されて審査に移ります。
⑦採択決定後にITツールを契約・導入
申請が無事に採択されると、次に行うのはITツールの契約および導入です。採択後に導入したITツールのみが補助金の対象となります。採択決定前に発注・契約・支払い等を行った場合は、補助金が交付されないため注意しましょう。
契約時は、導入するITツールが申請内容と一致しているかを再度確認しましょう。契約書にサインする前に、細かい条件・サポート体制についても十分に確認しておきます。
⑧事業実績報告を提出して補助金が交付
ITツールの導入が完了したら、マイページから事業実績報告の提出が必要です。事業実績報告では導入したツールの支払い情報を入力し、請求書など関連する証憑を添付して提出します。
報告をもとに確定検査が行われて交付額が決定されるため、詳細な情報を漏れなく記載する必要があります。報告書提出後の確定検査で問題がなければ、決定された交付額が入金される流れです。
IT導入補助金の審査を通過するための2つのポイント
IT導入補助金の審査を通過するためのポイントとして、以下の2つが挙げられます。
- 審査項目を把握して申請内容を作成する
- 加点項目を多く満たす
上記のポイントを押さえれば、審査で評価を得やすくなります
①審査項目を把握して申請内容を作成する
IT導入補助金の審査を通過するためには、審査項目をしっかりと把握して申請内容を作成するのが重要です。審査基準は申請枠によって若干異なりますが、通常枠では以下の項目が公募要領に記載されています。
審査項目 | 審査事項 |
事業面からの審査項目
(事業面の具体的な審査) |
|
計画目標値の審査 | 労働生産性の向上率 |
政策面からの審査項目 |
|
審査では、導入するITツールが企業の生産性向上や業務改善に寄与するかが重視されます。申請内容入力時に、上記の審査基準を満たしているかを確認しながら手続きを進めましょう。申請枠ごとに審査項目は異なるため、詳しくはIT導入補助金の公式ホームページから確認してください。
②加点項目を多く満たす
審査を通過するための重要なポイントは、加点項目を多く満たすことです。IT導入補助金では通常の審査基準に加えて、特定の要件を満たして加点される項目が設けられています。例えば、通常枠で設けられている加点項目は以下の通りです。
加点項目 | 補足 |
地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認を取得 | 承認取得 |
地域未来牽引企業に選定され、目標を経済産業省に提出 | 交付申請時点で選定および目標提出 |
クラウド製品を選定 | ITツールとしてクラウド製品を選定 |
「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を選定 | ITツールとして選定 |
インボイス制度対応製品を選定 | ITツールとして選定 |
補助金申請額150万円未満での事業計画 |
|
事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上にした場合、さらなる加点 | 上記条件を満たす場合 |
補助金申請額150万円以上で、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上にする | 申請者が条件を満たす |
健康経営優良法人2024に認定された事業者 | 令和5年度に認定 |
地域DX促進活動支援事業の支援コミュニティ・コンソーシアムから支援 | 支援を受けた事業者 |
介護保険法に基づくサービスを提供し、特定処遇改善加算を取得している法人 | 介護事業所を運営 |
女性の職業生活における活躍推進法または次世代育成支援対策推進法に基づく認定を受けた者 | 応募申請時点で該当 |
例えば、クラウド製品の選定・指定された条件の賃上げを実施した場合などが挙げられます。加点項目を多く満たせば、審査において有利な評価を得られます。申請時には自社の取り組みがどの加点項目に該当するかを確認し、申請内容に反映させるのが重要です。
IT導入補助金の申請書の記載例|経済産業省の公開事例から紹介
IT導入補助金の申請書記載例について、経済産業省が公開する以下2つの事例を紹介します。
- 事例①:荏原印刷株式会社
- 事例②:有限会社ミラベル
上記事例を参考に、IT導入補助金の申請手続きをスムーズに進めましょう。
事例①:荏原印刷株式会社
荏原印刷株式会社は、東京都大田区にある印刷会社です。給与計算業務が煩雑になっており、業務効率化のため新規システム導入を検討したのが補助金申請のきっかけでした。申請内容をマイページから入力し、以下の申請書を作成しています。
引用:補助金の申請事例・IT導入補助金①|経済産業省 中小企業庁
事例②:有限会社ミラベル
有限会社ミラベルは、1979年に創業した静岡県の洋菓子店です。同社では、コロナ禍の影響を受けてオンライン販売に力を入れるようになりました。
POSレジと連動したオンライン受注システムの導入を検討したのが、IT導入補助金活用のきっかけです。IT導入補助金申請の際は、以下の申請書を作成しています。
引用:補助金の申請事例・IT導入補助金②~洋菓子店で、オンライン受注システムを導入~|経済産業省 中小企業庁
IT導入補助金の活用には支援者・支援機関に相談
IT導入補助金を最大限に活用するためには、専門家や支援機関に相談するのが不可欠です。補助金の申請プロセスは複雑であり、申請内容の精度が採択結果を大きく左右します。
最も相談しやすいのは、IT導入支援事業者です。補助金を受けるためには、IT導入支援事業者からITツールを購入する必要があります。商談と同時に補助金の申請・活用についても相談しましょう。
他にも、認定経営革新等支援機関に相談するのもおすすめです。認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援の専門的知識・実務経験が一定レベル以上にあると認定された支援機関です。
経営の見える化・事業計画の作成など、中小企業のあらゆる経営課題に対して相談に乗ってくれます。補助金など資金調達に関するサポートも行っているため、積極的に活用しましょう。認定経営革新等支援機関は、中小企業庁が運営する「認定経営革新等支援機関検索システム」から探せます。
IT導入補助金を活用して生産性向上・競争力強化を図ろう
IT導入補助金は、中小企業がITツールを導入する際に経済産業省中小企業庁から受けられる補助金制度です。申請にはgBizIDプライムの取得・IT導入支援事業者の選定など多くの手続きが必要となります。
審査を通過するためには審査項目を把握し、加点項目を多く満たすのが重要です。申請手続きは複雑なため、専門家や支援機関に相談すればスムーズに進められます。IT導入補助金を活用して自社の経営課題を克服し、生産性向上・競争力強化を図りましょう。
この記事を書いた専門家
藤田 春樹