ものづくり補助金の活用を検討しているなら、公募要領を十分に理解するのが大切な一歩です。ものづくり補助金の公募要領では、申請枠・上限額・補助率・審査項目・事業計画書のポイントなどが記載されています。
今回の記事では、ものづくり補助金の公募要領のポイントを誰にでもわかりやすくまとめました。さらに、事業計画書のポイント・事業の実例・必要書類・ものづくり補助金の流れを解説します。
本記事を読めばものづくり補助金の公募要領のポイントを理解し、申請に必要な予備知識が得られます。将来の事業の柱を育てるために、ものづくり補助金の公募要領を理解して採択を目指しましょう。
ものづくり補助金の公募要領とは
ものづくり補助金の公募要領とは、申請・交付に必要なルールや手順を提示した文書です。
ものづくり補助金は2012年に、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」として公募が開始されました。2020年に「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」として改正され、2024年に第17次・第18次の公募を行っています。
公募要領には、ものづくり補助金の交付を受けるために必要な基本事項がまとめられています。申請を検討しているなら、必ず公募要領の確認を行いましょう。
なお、公募要領の内容は締め切り回ごとに異なるため、申請予定の回の公募要領を確認するのが大切です。第17次ものづくり補助金の公募要領の目次は、以下のとおりです。
- 第1章 補助事業の概要
- 第2章 補助金の申請
- 第3章 申請枠、補助対象経費
- 第4章 補助事業者の義務
- 第5章 事業計画書・添付書類
- 第6章 事業計画書の審査(書面審査、口頭審査等)
- 第7章 補助金交付候補者決定後の動き
引用:ものづくり補助金総合サイト「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(17次締切分)省力化(オーダーメイド)枠 1.2版」
「ものづくり補助金総合サイト」から確認できますので、公募期間や締め切りとあわせてチェックしてください。
2024年(令和6年)の第17次・第18次ものづくり補助金の公募要領のポイント
2024年の第17次・第18次ものづくり補助金の公募要領のポイントは、以下のとおりです。
- 第1章 補助事業の概要
- 第2章 補助金の申請
- 第3章 申請枠、補助対象経費
- 第4章 補助事業者の義務
- 第5章 事業計画書・添付書類
- 第6章 事業計画書の審査(書面審査、口頭審査等)
- 第7章 補助金交付候補者決定後の動き
- ものづくり補助金の公募要領概要版でわかるポイント
基本的な公募要領のポイントは、今後のものづくり補助金の公募でも引き継がれる傾向にあります。ポイントをあらかじめ把握しておき、採択される事業計画書を練り上げて完成させましょう。
第1章 補助事業の概要
補助事業の概要では、ものづくり補助金の目的・申請枠・対象事業者について記載されています。
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者などの生産性向上のための設備投資を支援するのが目的です。ものづくり補助金は事業のタイプに合わせて、以下の3つの枠を設定しています。
- 省力化(オーダーメイド)枠
- 製品・サービス高付加価値化枠
- グローバル枠
なお、第17次は省力化(オーダーメイド)枠のみ、第18次は上記3つすべて公募対象です。
ものづくり補助金の補助対象事業者は、以下のようになります。
- 中小企業
- 小規模事業者
- 特定事業者の一部
- 特定非営利活動法人
- 社会福祉法人
一方、事業者はみなし大企業や課税所得の平均額が15億円を超える事業者は補助対象外です。また、親会社と子会社は同一法人とみなされ、どちらか1社しか申請は認められません。概要はものづくり補助金の全体像を把握するのに役立つため、最初に目をとおしましょう。
第2章 補助金の申請
第2章「補助金の申請」では、申請するための方法・公募期間・基本要件などが書かれています。
デジタル庁が運営する補助金申請システム「jGrants」で、ものづくり補助金のすべての手続きが行えます。jGrantsでGビズIDを取得する必要がありますが、アカウント登録時に審査があり最長2週間かかるので注意しましょう。
第17次・第18次の公募期間はそれぞれ、以下の表のとおりです。
締め切り回 | 公募期間 |
第17次ものづくり補助金 | 2023年12月27日(水)17時~2024年3月1日(金)17時まで |
第18次ものづくり補助金 | 2024年1月31日(水)17時~2024年3月27日(水)17時まで |
ものづくり補助金には3つの基本要件が定められており、3年~5年の事業計画で達成する必要があります。ものづくり補助金の基本要件は、以下のとおりです。
- 給与支給総額の年平均成長率1.5%以上の増加
- 事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準
- 付加価値額の年平均成長率3%以上の増加
給与支給総額1.5%の増加ですが、非常勤を含む全従業員を対象としています。なお、福利厚生費・法定福利費・退職金は対象ではありません。
最低賃金とは、毎年10月に引き上げられる法律で定められた最低時給を指します。地域ごとに最低賃金として定められる時給が異なるため、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で確認しましょう。
付加価値額とは、公募要領によれば「付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費」で算出される数値です。給与支給総額・最低賃金・付加価値額の3点を達成できる見込みの事業計画書になるよう、十分な検討を重ねましょう。
もし基本要件を事業計画期間内に達成できなければ、受給したものづくり補助金の返還義務が生じる点には留意してください。
第3章 申請枠、補助対象経費
第3章「申請枠、補助対象経費」では、申請枠の概要や補助対象となる経費について書かれています。ものづくり補助金の申請枠・補助率・補助上限額を、以下の表にまとめました。
補助金枠の種類 | 省力化(オーダーメイド枠) | 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型DX・GX) | グローバル枠 |
補助上限額 |
|
|
|
補助率 | 1/2 ※小規模・再生事業者:2/3 ※1,500万円までは1/2、1,500万円を超える部分は1/3 |
通常類型:1/2 成長分野進出類型:2/3 ※小規模・再生事業者:2/3 ※新型コロナ加速化特例:2/3 |
1/2 ※小規模企業:2/3 |
第17次ものづくり補助金は省力化(オーダーメイド)枠のみの公募で、以下のような追加要件があります。
- 生産性の向上:3年~5年で補助事業の生産性を2倍以上にする事業計画を立てる
- 投資が回収できる可能性を高める:3年~5年で投資の回収が可能な事業計画を立てる
- 保守・メンテナンス契約の締結: 外部SIerを活用する場合はメンテナンス契約を結ぶ
- 資金調達と事業計画の確認:金融機関からの融資を受けるなら事業計画を必ず確認してもらう
以下のような支出が、補助対象経費の一例として挙げられます。
- 機械装置
- システム構築費
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 外注費
- 知的財産権など関連経費
補助対象外経費としては、工事費用・家賃・水道光熱費・消耗品代・飲食費などが挙げられています。
第18次ものづくり補助金の公募要領では、製品・サービス高付加価値化枠とグローバル枠について同様に記載されています。
追加要件は、省力化(オーダーメイド)枠・製品・サービス高付加価値化枠・グローバル枠で異なるため確認しておきましょう。なお、補助対象経費・補助対象外経費については大きな違いはありません。
また、第18次ものづくり補助金から「大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例」が追加されました。大幅な賃上げに取り組む事業者は、250万円~2,000万円の補助上限額の引き上げが認められます。
補助金枠の種類 | 省力化(オーダーメイド枠) | 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型DX・GX) | グローバル枠 |
補助上限引き上げ額 |
|
|
|
補助率 | 1/2 ※小規模・再生事業者:2/3 ※1,500万円までは1/2、1,500万円を超える部分は1/3 |
通常類型:1/2 成長分野進出類型:2/3 ※小規模・再生事業者:2/3 ※新型コロナ加速化特例:2/3 |
1/2 ※小規模企業:2/3 |
適用には、「給与支給総額が年平均6%以上アップ」「最低賃金+50円以上」といった要件を満たす必要があります。補助上限額の引き上げの詳しい要件は、以下の表のとおりです。
要件 | 要約 |
給与支給総額の増加 | 基本要件の年1.5%にくわえて、さらに4.5%以上増加させた年6%を目指す |
事業場内最低賃金の増額 | 最低賃金より50円高い時給を設定し、くわえて毎年50円アップする |
事業計画の提出 | 上記の条件達成に向けた事業計画を提出する |
第4章 補助事業者の義務
第4章「補助事業者の義務」では、交付を受けた事業者が遵守するべき義務について記載されています。交付を受けた事業者が守るべき主な義務は、以下のとおりです。
- 補助金で導入した50万円以上の機械などの処分・譲渡・貸付には承認が必要
- 処分制限期間内の処分は、交付された補助金の返納が求められる
- 補助金等適正化法に違反すると、交付取り消し・返還・不正内容の公表などが行われる
- 補助事業の内容・経費配分の変更・中止・廃止には事前の承認が必要
- 補助事業の書類・資料は事業終了後も5年間保存する義務がある
- 事務局・会計検査院などの検査・指示に協力し、したがう必要がある
- 事業計画期間が終わったあとの5年間で補助事業による収益が出た場合、補助金額を上限として収益を納付しなければならない
義務に違反すると補助金の返還を求められる可能性があるため、採択されたあとに必ず読んでおきたい箇所です。
第5章 事業計画書・添付書類
公募要領の第5章「事業計画書・添付書類」では、事業計画書の書き方や添付書類について書かれています。たとえば、事業計画書には以下のようなポイントの具体的な記載が求められます。
- 機械・システムなどを導入する必要性
- いま抱えている課題を解決する方法
- 事業のスケジュール
- 競争力をどのように強化するか
- 事業の将来の展望
- 想定している具体的なユーザー
- 市場規模・競合調査などのリサーチ
- 運転資金の調達計画
- ものづくり補助金の基本要件を満たせる根拠
客観的な数字を交えつつ上記のポイントに重点をおいて事業計画書を作成すれば、採択率を向上させられます。
事業計画書以外に必ず提出が求められる添付書類は、以下の5点です。
- 補助経費に関する誓約書
- 賃金引き上げ計画の誓約書
- 決算書など(直近2年分の貸借対照表・損益計算書など)
- 従業員数の確認資料(法人事業概況説明書・所得税青色申告決算書など)
- 労働者名簿
なお、任意の添付書類としては加点項目を提示するためのエビデンス資料が求められます。加点項目とは、ものづくり補助金の採択を決定する審査で有利になる要因を定めた項目です。ものづくり補助金の枠によって異なりますが、一例として以下の項目が挙げられます。
- 創業・第二創業5年以内の事業者
- 再生事業者
- 健康経営優良法人に認定された事業者
添付書類はPDFでアップロードし、決められたファイル名にする必要があります。
第6章 事業計画書の審査(書面審査、口頭審査等)
公募要領の第6章「事業計画書の審査(書面審査、口頭審査等)」では、書面・口頭それぞれの審査のポイントが記されています。
書面審査で採択されるために大切なポイントは、以下のとおりです。
- 補助事業の適格性・技術面・事業化面・政策面
- 成長性加点・政策加点・災害加点・賃上げ加点などの加点項目
- 過去3年間の類似補助金の交付などの減点項目
とくに重要な補助事業の適格性ですが、ポイントは以下の2つです。
- 基本要件・公募要領を満たしているか
- 製品・サービスの開発が革新的か
そのほかに、補助事業の実現性や地域経済への貢献なども審査の対象となります。
第17次ものづくり補助金から導入された口頭審査は、補助申請額が一定規模以上の事業者に実施されます。口頭審査のポイントや注意点は、以下のとおりです。
- 審査方法はZoomなどのオンライン
- 所要時間は15分ほどを予定しており、接続テストのため5分前には入室が必要
- コンサルタントなどの同席は不可
- ヘッドセットは不可となっており、カメラ・スピーカー・マイクの準備が必要
- 指定日に審査ができない・本人確認ができないといった場合は不採択
- 口頭審査では適格性・革新性・優位性・実現可能性をヒアリングされる
なお、パソコンに内蔵されているスピーカー・マイクの使用は許可されています。
書類審査・口頭審査のポイントを適切に把握し、採択を目指して事業計画書や面談時のPR対策を十分に練り上げましょう。
第7章 補助金交付候補者決定後の動き
第7章「補助金交付候補者決定後の動き」では、補助金が採択されたあとの流れについて解説があります。ものづくり補助金が採択されたあとは、以下のような流れになります。
- 採択後は交付申請のため、jGrantsから申請内容ファイルをダウンロード
- 必要に応じて修正・記入し、関係書類とあわせて速やかに提出する
- 交付申請書類が審査され、問題なしなら交付が決定される
- 交付決定日から補助事業を開始できる
- 10か月~12か月ほどの期間で補助事業を完了後、期日内に補助事業実績報告書と必要書類を提出する
なお、採択はあくまで内定であり、交付申請に不備があれば補助金の減額・交付の停止などがあり得ます。交付申請で求められる主な必要書類は、以下のとおりです。
- 機械装置などの価格の妥当性を証明する有効な見積書
- 履歴事項証明書
- 確定申告書
- 補助事業計画書
ものづくり補助金が採択されたら、必ず交付申請とその後の流れについて公募要領で把握しておきましょう。
ものづくり補助金の公募要領概要版でわかるポイント
ものづくり補助金の公募要領概要版は、全体像の把握にたいへん役立つ資料です。公募要領概要版は、以下の2つの目的でリリースされています。
- ものづくり補助金の概要を、わかりやすく簡潔に説明するため
- ものづくり補助金への興味・関心を喚起し、活用・申請を促すため
公募要領概要版は、ものづくり補助金の目的・対象・スケジュール・要件・申請方法にポイントを絞って書かれています。よくある質問も記載されており、ものづくり補助金の活用を検討している事業者の疑問に答える形になっています。
さっとものづくり補助金の全体像を把握したいなら、まずは公募要領概要版に目をとおしましょう。
参考:ものづくり補助金総合サイト「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金1 7 次 公 募 要 領 概 要 版」,「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金1 8 次 公 募 要 領 概 要 版」
第17次・第18次ものづくり補助金公募要領の変更点
第17次・第18次ものづくり補助金公募要領の大きな変更点は、以下のとおりです。
- 申請枠の再編
- 「大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例」の拡充
- 口頭審査・減点対象の追加
- 18次から付加価値創出をしない設備投資は不可
第16次ものづくり補助金との違いを適切に把握し、基本要件・追加要件・審査方法などを理解して準備を進めましょう。
申請枠の再編
第17次ものづくり補助金から、以下の表のように申請枠が再編されました。
新設 | 継続 | 廃止 |
|
|
|
新設・継続した申請枠の補助率・補助上限額などは、以下のとおりです。
補助金枠の種類 | 省力化(オーダーメイド枠) | 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型DX・GX) | グローバル枠 |
補助上限引き上げ額 |
|
|
|
補助率 | 1/2 ※小規模・再生事業者:2/3 ※1,500万円までは1/2、1,500万円を超える部分は1/3 |
通常類型:1/2 成長分野進出類型:2/3 ※小規模・再生事業者:2/3 ※新型コロナ加速化特例:2/3 |
1/2 ※小規模企業:2/3 |
「大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例」の拡充
第17次ものづくり補助金から、「大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例」が拡充されました。「大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例」の要件を満たすと、250万円~2,000万円の補助上限額が上乗せされます。
「大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例」の要件は、以下の3つです。
- 給与支給総額の平均成長率を基本要件より4.5%高い6%成長にする
- 事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金より50円以上高い水準にする
- 応募時に上記2つの目標達成に向けた実現性のある事業計画書を提出する
ただし、目標未達の場合には上乗せされた金額の全額返還が求められますので注意しましょう。
口頭審査・減点対象の追加
第17次ものづくり補助金から、書面審査にくわえて補助申請額が一定以上の事業者には口頭審査が実施されます。口頭審査はオンラインで、ひとつの事業者につき15分ほど行われる予定です。
また、第17次ものづくり補助金から減点項目が追加されました。公募要領によれば減点項目は、以下のとおりです。
7)減点項目
① 応募締切日から過去3年間に、類似の補助金※の交付決定を1回受けている場合
(過去3年間に、既に2回以上交付決定を受けた事業者は申請対象外となります。)
※ ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業
② 令和元年度補正予算ものづくり補助金以降に交付決定を受けている場合であって、収益納付をしていない事業者(十分な賃上げによって公益に相当程度貢献し、収益納付を免除された事業者を除く。)
引用:ものづくり補助金総合サイト「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(17次締切分)省力化(オーダーメイド)枠 1.2版」
「3年以内に類似補助金を受給した」「ものづくり補助金で収益が出たのに納付していない」といった事業者が減点対象です。ただし、十分な賃上げによって公益に貢献し、収益納付を免除された事業者は減点されません。
18次から付加価値創出をしない設備投資は不可
第18次の製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)から、新たな付加価値を創出しない設備投資は不可となりました。公募要領に記載されている該当箇所2点は、以下のとおりです。
(1)3~5年の事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計額が、企業全体の売上高の10%以上となる事業計画を策定すること
引用:ものづくり補助金総合サイト「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)1.0版(P17)」
※ 革新的な製品・サービス開発とは、顧客に新たな価値を提供することを目的に、導入した設備・システムを用いて、自社の技術力等を活かして製品・サービスを開発することをいいます。単に設備・システムを導入するにとどまり、製品・サービスの開発を伴わないものは該当しません。また、業種ごとに同業の中小企業(地域性の高いものについては同一地域における同業他社)において既に相当程度普及している製品・サービスの開発は該当しません。
引用:ものづくり補助金総合サイト「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)1.0版(P16)」
上記の引用のポイントをまとめると、以下のような意味になります。
- 新製品・サービスの売上高合計が企業全体の10%以上となる事業計画が必要
- 設備投資は新製品・サービスを開発するために導入する必要がある
- 同業の中小企業が提供している製品・サービスは革新的とは認められない
省力化に関する設備投資は、ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠にて申請しましょう。
ものづくり補助金で採択されるための事業計画書作成のポイント
ものづくり補助金で採択されるための、事業計画書を作成するポイントは以下のとおりです。
- ものづくり補助金の趣旨の把握
- 要件・審査項目・加点項目を踏まえる
- スケジュールには余裕を持たせる
- 具体的かつ客観的な内容を記載
- 妥当な金額を算出
- 新規事業の将来の展望を明確化
- 地域に貢献できるとアピール
- 技術・製品・サービスの専門性や新規性をわかりやすく明示
- 専門家のアドバイスを受ける
ものづくり補助金の審査通過を目指し、魅力的な事業計画書を練り上げましょう。
ものづくり補助金の趣旨の把握
事業計画書を作成するとき、ものづくり補助金の趣旨を理解するのがもっとも重要です。中小企業などによる革新的な製品・サービスを開発するための設備投資を支援するのが、ものづくり補助金の趣旨です。
まずは公募要領を十分に確認してものづくり補助金の趣旨を把握し、そのうえで事業計画書の策定を進めましょう。また、自社の取り組みがものづくり補助金の趣旨に合致していると、事業計画書で明示する必要があります。単なる設備投資ではなく、生産性向上に直結する革新的な取り組みであると強調するのが重要です。
さらに、自社の独自性を活かした他社にはない取り組みであるとアピールしましょう。
要件・審査項目・加点項目を踏まえる
ものづくり補助金の基本要件を満たせるよう、3年~5年の事業計画を策定する必要があります。ものづくり補助金の基本要件は、以下の3つです。
- 付加価値額の年率平均3%以上の増加
- 給与支給総額の年率平均1.5%以上の増加
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
付加価値額とは、公募要領によれば「付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費」で算出される数値です。上記3つの基本要件を満たさない場合、どのような事業計画書を作成しても採択されません。
ものづくり補助金の公募要領では、審査項目が具体的に公表されています。公募要領に記載された審査項目を、以下の表でわかりやすくまとめました。
審査項目 | 概要 |
補助対象事業としての適格性 |
|
技術面 |
|
事業化面 |
|
政策面 |
|
大幅な賃上げに取り組むための事業計画の妥当性 |
|
第17次ものづくり補助金からは、加点項目が大きく変更されました。公募要領に記載されている加点項目を、以下の表にまとめました。
加点項目 | 概要 |
成長性加点 |
|
政策加点 |
|
災害等加点 |
|
賃上げ加点 |
|
女性活躍等の推進の取り組み加点 |
|
表にある専門用語の解説を、以下にまとめました。
用語 | 概要 |
パートナーシップ構築宣言 | 企業が発注者の立場から自社の取引方針を宣言する取り組み |
DX認定事業者 | デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に積極的で、その取り組みが一定の基準に達している企業や組織に与えられる認定 |
サイバーセキュリティお助け隊サービス | 個人や企業が直面するサイバーセキュリティの問題や脅威に対応するための支援を提供するサービス |
健康経営優良法人認定 | 従業員の健康管理を積極的に支援する組織に与えられる日本の公式認定 |
技術情報管理認証制度 | 企業や組織が保有する技術情報の管理と保護の水準が一定の基準に達していると認証する制度 |
J-Startup・J-Startup地域版 | 日本国内で将来性の高いスタートアップ企業を支援・育成するための政府主導のプログラム |
J-クレジット制度 | 日本国内での温室効果ガス削減や吸収量の増加に寄与する活動を行った結果、発生した削減量や吸収量をクレジットとして認定し、これを売買できるシステム |
GXリーグ | 日本の企業が取り組む環境イノベーションや持続可能なビジネスモデルの開発を促進し、支援するプラットフォーム |
カーボンフットプリント(CFP) | 製品やサービスが生涯にわたって直接・間接に排出する二酸化炭素(CO2)およびその他の温室効果ガス(GHG)の総量を量的に表した指標 |
事業継続力強化計画 | 災害や緊急事態が発生した際に企業が迅速に事業を再開し、継続する能力を高めるために経産省が認定する計画 |
えるぼし認定 | 女性の活躍推進に積極的な取り組みを行っている企業や組織を評価・認定する制度 |
くるみん認定 | 子育て支援の取り組みを積極的に行っている企業に対して、日本の厚生労働省が与える認定 |
加点項目が多ければ多いほど、ものづくり補助金で採択される可能性は高くなります。たとえば、以下のグラフでは加点項目が多いほど採択率が上がる傾向にあります。
出典:ものづくり補助事業公式ホームページ「データポータル」
基本要件・審査項目・加点項目を公募要領で十分に確認し、自社の強みを活かした事業計画書を作りましょう。
スケジュールには余裕を持たせる
ものづくり補助金を申請するなら、事業計画書の策定や必要書類の準備を早めに行いましょう。スケジュールに余裕を持たせるためには、以下のポイントに注意してください。
- 事業計画書策定のスケジュールは無理のない範囲で設定する
- 想定外の遅延・トラブルに備えて猶予期間を設ける
- 関連部署・外部との調整が必要な工程は時間を多めに見積もる
- スケジュールの進捗管理を行う体制を整える
スケジュールを過度に詰め込みすぎると、自社のリソースが事業計画書の策定にとられて本業に支障をきたしかねません。また、想定外の遅延・トラブルが発生しても対応できるように猶予期間を設けておきましょう。
くわえて、外部とのやりとりが必要な工程は、意思決定・承認に時間がかかる可能性を考慮する必要があります。全体的なスケジュールの進捗管理を行う体制を整え、余裕を持ってものづくり補助金の申請に臨みましょう。
具体的かつ客観的な内容を記載
事業計画書を作成するにあたり、具体的・客観的な内容で説得力を持たせましょう。グラフや数値を活用して、審査員に読みやすくわかりやすい事業計画書に仕上げるのが大切です。
事業計画書の作成では、以下のポイントが大切です。
- 事業の目的・目標を具体的かつ明確に記載する
- 事業の実施内容について、専門知識がなくても理解しやすいように説明する
- 市場調査・競合分析などの客観的なデータを活用する
- 事業の実現性を裏付ける根拠を提示する
- 事業をスタートした場合の売上・利益・地域経済への貢献などの効果を定量的に予測する
- 実現性の高い資金計画・収支予測を明示する
ものづくり補助金の事業計画書では数値を重視し、具体性を持たせてわかりやすく伝えるのがポイントです。審査員には自社業界の専門知識がないため、設備投資による生産性向上・革新性などを伝わりやすく記載しましょう。
ものづくり補助金では理念や理想を掲げるより、実現性の高い事業計画書を採択する傾向が非常に強いです。説得力のある事業計画書を策定すれば、採択される可能性は大幅にアップします。
妥当な金額を算出
ものづくり補助金では、申請内容・申請金額の妥当性も確認されます。金額が妥当だと提示するためにも、以下の内容を事業計画書に盛り込みましょう。
- 事業計画に必要な費用を細かく調査する
- 複数の見積もりをとりコストの妥当性を検証する
- 過去の類似事業の実績を引き合いに出す
- 専門家にアドバイスを受け、必要であれば査定・監査を検討する
ものづくり補助金で対象となる経費を細かく洗い出し、どの程度の支出が必要なのか調査してください。くわえて、外注する設備投資・システムは相見積もりをとってコストの妥当性に説得力を持たせましょう。
新規事業の将来の展望を明確化
ものづくり補助金で提出する事業計画書では、新規事業の将来の展望を明確に示しましょう。説得力のある将来の展望を示すためには、以下のポイントが大切です。
- 事業の3年後・5年後・10年後の将来像を具体的に説明する
- 新規事業がシェア獲得を目指す市場・顧客層を提示する
- 自社の強み・独自性・他社との差別化ポイントをアピールし、競争優位性を示す
- 価格設定・販売方法を記載し、収益モデルを明確にする
- 事業拡大のための施策・投資計画を策定し、成長戦略を述べる
- 新規事業が社会や業界にどのようなインパクトを与えるのかを強調する
将来の展望予測は非常に難しく、提示したとおりに実現するケースは多くありません。しかし、説得力のある将来展望を示せばものづくり補助金の採択率は確実に向上します。
根拠に基づいた将来の展望を提示し、新規事業が地域経済・業界・顧客に大きなインパクトを与える点を強調しましょう。
地域に貢献できるとアピール
ものづくり補助金の事業計画書では、地域に貢献できる点も非常に重要視されています。地域経済への貢献をアピールするためには、以下からあてはまるポイントを強調しましょう。
- 雇用創出・地元企業との取引拡大など補助事業が地域経済に与える直接的な影響
- 高齢化・交通の利便性・環境保全など地域特有の課題・問題・要望の解決に貢献
- 地元の原材料・技術・伝統・文化を活かした地域のブランド育成
- 地域住民・自治体・地元団体と交流し、アイディアを取り入れて協働体制を構築
- 学生向けの就業体験をとおして、地元の若手人材を育成
- 補助事業で培ったノウハウ・技術・知見を地域の他企業・団体と共有
ものづくり補助金でよく見られる活用事例は、地域雇用の創出や地元の農産物・原材料を活かした地域ブランドの育成です。地元ならではの強みを活かした補助事業を計画し、地域貢献と売上拡大を同時に達成しましょう。
技術・製品・サービスの専門性や新規性をわかりやすく明示
事業計画書を作るときは、専門性・革新性をわかりやすく説明するのがポイントです。どれほど革新的な技術や新製品であっても、専門知識を持たないものづくり補助金の審査員に伝わらなければ意味がありません。
製品・技術・サービスの専門性・新規性をわかりやすく説明するポイントは、以下のとおりです。
- 既存の技術・製品・サービスとの違い・優位性・独自性を示す
- 特許取得状況・先行研究などとの比較で革新性をアピールする
- 技術・製品・サービスの将来的な発展の可能性を明示する
ものづくり補助金の審査に臨む前に、専門知識を持たない社外人材に事業計画書を確認してもらうのもひとつの案です。
専門家のアドバイスを受ける
事業計画書の完成度をより高めるなら、専門家によるアドバイスを受けるのがおすすめです。とくに補助金の申請代行サービスを提供している専門家なら、事業計画書を練り上げて採択率の向上が期待できます。
専門家を選ぶときは、以下のポイントに注意しましょう。
- 複数の専門家の実績・経験・評判を比較して総合的に判断する
- 自社の事業・業界について知識がある専門家を選ぶ
相談する専門家が決まったら、アドバイスを真摯に受け止めて事業計画書に反映させましょう。さらに、1人ではなく複数の専門家にアドバイスしてもらうのも有効な方法です。
事業計画書の策定段階だけではなく、ものづくり補助金が交付されたあともサポートを受けられる体制が望ましいです。専門家とのコミュニケーションは、ものづくり補助金に採択されたあとも継続的に行いましょう。
採択されない可能性が高まるものづくり補助金の事業計画書の例
採択されない可能性が高まる、不適切な事業計画書の例は以下のとおりです。
- 過剰・不適切な投資
- 一過性の経費を計上
- 競合との優位性が弱い事業内容
十分に採択の可能性がある事業計画書を策定し、ものづくり補助金の受給を実現しましょう。
過剰・不適切な投資
事業計画書の設備投資の金額が不適切・過剰だと判断されると、ものづくり補助金に採択される可能性が下がります。不適切・過剰だと判断される可能性がある設備投資のポイントは、以下のとおりです。
- 事業規模に対して、必要以上の設備投資を計画している
- 事業内容と直接関連しない設備・機器への投資が含まれている
- 運用・保守・メンテナンスのコストが十分に考慮されていない
- 優先順位の低い設備への投資が見られる
- 予測される売上高・利益に対して設備投資の金額が大きすぎる
ものづくり補助金の事業計画書では、設備投資がどの程度の効果をもたらすか記載しなければなりません。十分に投資が回収できるという根拠を明確に示し、実現性の高い事業計画書を完成させましょう。
一過性の経費を計上
ものづくり補助金では一過性の経費は補助の対象外であるため、申請額に計上しないようにしましょう。ものづくり補助金の対象外経費を、以下の表にまとめました。
対象外経費の種類 | 説明・補足 |
販売目的の製品・商品などの生産に関係する経費 | 原材料費を除く |
工場や建物などの取得・組み立て費用 | 工場建屋・構築物・簡易建物・組み立て用部材の取得費用 |
再生可能エネルギー発電設備など | 再生エネルギーの発電設備や付属設備 |
設置場所の整備工事など | 設置場所の整備工事や基礎工事の費用 |
事務所などの家賃 | 事務所などに関係する家賃・保証金・敷金・仲介手数料・光熱水費 |
通信費 | 電話代・インターネット利用料金などの通信費(クラウドサービス利用費に含まれる付帯経費は除く) |
販促品など | 金券代・事務用品代・消耗品代・雑誌購読料・新聞代・団体などの会費 |
飲食・接待などの費用 | 飲食・奢侈・娯楽・接待などの費用 |
不動産・車両などの購入費 | 不動産・自動車などの購入費・修理費・車検費用 |
税理士・公認会計士などに支払う費用 |
|
収入印紙 | - |
振込手数料 | 振込などの手数料(代引手数料を含む)・両替手数料 |
公租公課 | 公租公課(消費税・地方消費税額など) |
各種保険料 | - |
借入金の支払利息など | 借入金などの支払利息・遅延損害金 |
書類作成・送付に関係する費用 | 事務局に提出する各種書類の作成・申請・送付に関係する費用 |
汎用性があるものの購入費 | 汎用性があり目的外使用になり得るものの購入費(事務用のパソコン・プリンタ・文書作成ソフトウェア・タブレット端末・スマートフォン・キュービクル・乗用エレベータなど) |
中古品・自社製品 |
|
参考:ものづくり補助金総合サイト「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(17次締切分)省力化(オーダーメイド)枠 1.2版(P19)」
公募要領に目をとおして十分に経費計上できる科目を把握し、適切な補助金額を申請しましょう。
競合との優位性が弱い事業内容
競合との優位性が弱い事業は、ものづくり補助金で採択される可能性が低くなります。
競合優位性とは、自社の事業が競合他社や新規参入事業者より有利な性質を持っているという意味です。たとえば、自社独自の技術で他社がまねできない製品・サービスを展開しているなら、競合優位性が強いと判断できます。
競合優位性を確保するためには、事業を展開する市場調査がかかせません。客観的な数値をもとに市場調査を行い、補助事業の競合優位性をどのように確保するのか検討しましょう。
ものづくり補助金を活用したプロジェクト事例
ものづくり補助金を活用したプロジェクトの事例の一部を紹介します。
- 株式会社なかひら農場
- 有限会社かつれつ亭
- 北海道クリエイティブ株式会社
- 染付窯屋眞窯
実際の事例を参考にしつつ、自社がものづくり補助金をどのように活用するのか検討しましょう。
株式会社なかひら農場
株式会社なかひら農場は1991年に法人化し、約60種類の果汁100%ジュースを製造しています。2017年にものづくり補助金を活用し、酸化防止剤を使用しない完全無添加100%ジュースの試作・開発に取り組みました。
ものづくり補助金の交付を受けて加熱・冷却型酵素失活装置を導入し、酸化によるジュースの褐色変化の抑制に成功しました。さらに、試作品のデータ収集を積み重ねて安定した生産体制の構築を目指しています。
ほかにも、ジュース加工用リンゴの新品種開発に取り組み、すでに2品種を種苗登録しています。また、南信州りんご大学院をとおして果樹農家の担い手育成に取り組み、後継者不足の解決への足がかりにしたいとのことです。
参考:ものづくり補助金総合サイト「独自の加熱・冷却技術による「完全無添加100%ジュース」の試作・開発」
有限会社かつれつ亭
有限会社かつれつ亭は、1966年に創業したとんかつ専門店です。厳選した国産豚肉やオリジナルレシピのパン粉、自家製ソースにこだわった商品を提供しています。
急速冷凍機の導入により、自社冷凍食品「助っ豚(すけっとん)」の生産性向上と品質改良を実現しました。窒素ガス置換包装で味や食感を維持しつつ賞味期限を延長できたため、業務用冷凍庫の導入で計画的な生産が可能になりました。
今後は揚げ物惣菜の需要拡大を見据え、「Suketton」ブランドの確立と新商品開発で大都市の富裕層の取り込みを目指します。自社サイトでのインターネット販売にくわえ、通信販売での市場展開も検討中です。
参考:ものづくり補助金総合サイト「急速冷凍機器等の能力向上による自社冷凍食品の生産性向上及び品質改良計画」
北海道クリエイティブ株式会社
北海道クリエイティブ株式会社は、広報・PR戦略プロデュース・動画企画制作・PRツール企画制作などを行う企業です。
ものづくり補助金を活用して、プロ品質の共感動画を手軽にスピーディに制作できる「北海道ストーリーラボ」を創設しました。北海道ストーリーラボには、以下のような特徴があります。
- 共感を呼ぶストーリー動画の制作プロセスを効率化
- プレゼンテーション力の向上を重視
北海道ストーリーラボでは、以下の機材や技術の導入でプレゼンテーション品質の向上と編集の後工程の簡略化を実現しました。
- マルチカメラ収録
- プロンプター
- 背景画像とのリアルタイム合成
- 3方向撮影のスイッチング
今後は、北海道ストーリーラボを価値発信拠点とし、北海道の中小企業を応援する予定です。くわえて、企業・地域・行政などの魅力や価値を伝える総合的なプロデュースを目指しています。
参考:ものづくり補助金総合サイト「PR動画制作・配信拠点「北海道ストーリーラボ」の創設」
染付窯屋眞窯
染付窯屋眞窯(しんがま)は、100年以上の歴史を持つ瀬戸染付焼の技術を継承する窯元です。窯主の加藤眞也氏が1999年12月20日に愛知県瀬戸市で設立し、現在は3人の専従者で和食器を製造しています。
眞窯はものづくり補助金を活用して、以下の3つの成果を実現しました。
- 釉薬をかけない珍しい製法で高付加価値の食器を製造
- 不良品率を大幅に減少させ、品質と生産性の向上を実現
- 自社ブランド「FLOW」を立ち上げ、国内外で製品を展開
今後は伝統技術を守りつつ、時代に合わせた製品開発でブランド価値を高めていきます。「ぬくもりある食器を作り続けたい」という思いを胸に、手仕事のあとが残るものづくりを大切にします。
製品の質だけでなく窯元のストーリーやこだわりを発信し、消費者との新たな関係構築を目指すとのことです。
参考:ものづくり補助金総合サイト「伝統的工芸品・瀬戸染付焼の技術を活かした高付加価値製品の製造における品質・生産性の向上」
ものづくり補助金の申請時に求められる必要書類・準備作業
ものづくり補助金の交付申請は、経済産業省がリリースした電子申請システム「jGrants」から行えます。jGrantsは補助金の申請で、以下のように活用できます。
- 利用可能な補助金の検索
- 24時間365日いつでも申請手続きが可能
- 申請後もマイページから申請状況を確認できる
jGrantsのアカウントを作成するには最長2週間かかるため、早めに登録作業をすませておきましょう。ものづくり補助金の申請時に必要な書類は、以下のとおりです。
提出物 | 提出対象者 | 提出方法 | 提出ファイル形式 |
事業者情報 | 全事業者 | システム入力 | なし |
経費明細 | 全事業者 | システム入力 | なし |
事業計画名・事業計画書の概要 | 全事業者 | システム入力 | なし |
事業計画書 | 全事業者 | 書類添付 | |
事業計画書算出根拠 | 全事業者 | 書類添付 | |
補助経費に関する誓約書 | 全事業者 | システム入力 | なし |
賃金引き上げ計画の誓約書 | 全事業者 | システム入力 | なし |
決算書など | 全事業者 | 書類添付 | |
従業員数の確認書類 | 全事業者 | 書類添付 | |
労働者名簿 | 全事業者 | 書類添付 | |
再生事業者 | 要件該当者 | 書類添付 | |
最低賃金要件に関する確認書 | 新型コロナ加速化特例に申請する事業者のみ | システム入力 または 書類添付 | |
大幅な賃上げ計画書 | 大幅賃上げ特例申請事業者のみ | 書類添付 | |
金融機関による確認書 | 金融機関から借り入れを行う事業者のみ | 書類添付 | |
加点に関するエビデンス | 加点申請事業者のみ | システム入力(加点により異なる) | なし |
事業計画書には指定された様式はありませんが、ものづくり補助金総合サイトの事業計画書記載項目を参考に作成しましょう。そのほかに、以下の書類についても様式が公式サイトに掲載されています。
- 補助経費に関する誓約書
- 大幅な賃上げ計画書
- 金融機関確認書
必要書類の種類・様式などを調べる場合は、ものづくり補助金総合サイトをサイト内検索するのがおすすめです。Chromeなら拡張機能「Search the current site (サイト検索)」を使い、簡単にサイト内検索ができます。
必要書類の準備を十分にすませて、万全の体制でものづくり補助金の審査に挑みましょう。
ものづくり補助金の全体の流れ
ものづくり補助金を申請してから交付されるまでの全体の流れは、以下のとおりです。
- ものづくり補助金を申請して採択される
- 交付申請
- 補助事業をスタート
- 実績報告して確定検査を受ける
- 補助金の請求と振込
- 事業化状況の報告
事前に全体の流れを把握しておき、スムーズにものづくり補助金の受給までたどり着きましょう。
1.ものづくり補助金を申請して採択される
ものづくり補助金の申請時には、以下の書類をそろえる必要があります。
- 事業者情報
- 経費明細
- 事業計画名・事業計画書の概要
- 事業計画書
- 事業計画書算出根拠
- 補助経費に関する誓約書
- 賃金引き上げ計画の誓約書
- 決算書など
- 従業員数の確認書類
- 労働者名簿
事業者が保有している公的資料のほか、jGrantsで入力したりPDFで提出したりと書類ごとに形式が異なります。なお、採択結果は申請締め切り日の約2か月後に発表されます。
2.交付申請
ものづくり補助金を申請して採択されると、次に交付申請を行う必要があります。交付申請に必要な書類は、以下のとおりです。
書類名 | 説明 |
機械装置などの価格の妥当性を証明する有効な見積書 |
|
履歴事項証明書・確定申告書 |
|
補助事業計画書(別紙) |
|
採択は内定と同じような意味で、交付申請後の交付決定で正式に補助金額が決定されます。交付申請の書類に不備があると、補助金の減額・遅延・取りやめが発生する可能性があるので注意しましょう。
交付申請は、採択結果の発表から1か月以内に行うのが目安となっています。超過してもペナルティはありませんが、補助人事業の開始が遅れてしまうため早めに手続きをするのがおすすめです。
3.補助事業をスタート
交付申請の内容が認められて交付が決定されると、補助事業を開始できます。交付決定前の支出は補助対象外となるため、必ず対象経費は交付決定後に支払いましょう。
なお、事務局から求められた場合は、補助事業遂行状況報告書の提出や実施検査が必要となります。補助事業遂行状況報告書とは、補助事業が計画どおりに実施されているかを確認するための書類です。もし書類提出を怠ったり虚偽の報告をしたりすると、補助金の交付決定が取り消される可能性があります。
補助事業遂行状況報告書は、事務局が指定した日までにjGrantsから提出しましょう。
実施検査では事務局の担当者が補助事業の実施場所を訪問し、物品の入手・支払い・進捗などを確認します。実施検査が行われるケースは多くありませんが、求められた場合は速やかに応じましょう。
4.実績報告して確定検査を受ける
補助事業の完了後は補助事業実績報告書を1か月以内、または補助事業実施期限日までに提出しなければなりません。補助事業実績報告書には、補助事業の成果・経費の使用状況などを詳細に記載する必要があります。
補助事業実績報告書を提出すると、事務局が必要に応じて補助事業実施場所に訪問して確定検査を行います。確定検査で確認されるポイントは、以下のとおりです。
- 補助対象となる機械装置などが適切に購入・設置されているか
- 補助対象経費が適切に支出され、帳簿などの証拠書類が整理されているか
- 補助事業の成果が事業計画に沿っているか
事務局は補助事業実績報告書と確定検査をとおして、補助金の額を確定させます。報告を怠ったり虚偽を記載したりした場合は、補助金の返還を求められる可能性があるので注意しましょう。
5.補助金の請求と振込
ものづくり補助金の確定検査で問題なければ事務局が補助金額を確定し、補助金確定通知書で通知します。
通知書を受け取ったら補助金精算払請求書を提出し、補助金が振り込まれるのを待ちましょう。ものづくり補助金が入金されるのは、確定検査から約1か月後です。
補助事業者はものづくり補助金の交付決定を受けたら、約10か月以内に補助事業を完了します。その後、ものづくり補助金事務局に対して実績報告を行い、確定検査を受けて通過する期間が約1か月です。つまり、交付決定から約1年で補助金が振り込まれます。
6.事業化状況の報告
補助事業者は事業完了後から5年間、決算を終了して60日以内に事業化状況等報告書を提出しなければなりません。
事業化状況等報告書では補助事業の収益状況などを報告し、求められれば調査に協力する必要があります。事業化状況の報告も確定検査と同様に、正確な報告をしなければ補助金の返還を求められる可能性があるため注意しましょう。
申請代行サービスでものづくり補助金の採択率をアップ!
ものづくり補助金で申請代行サービスを利用すると、採択率のアップが期待できます。ものづくり補助金の採択率の平均は、以下の表のとおりです。
締め切り回 | 採択発表日 | 申請者数 | 採択者数 | 採択率 |
第14次 | 2023年(令和5年)6月23日 | 4,865 | 2,470 | 50.77% |
第15次 | 2023年(令和5年)9月29日 | 5,694 | 2,861 | 50.24% |
第16次 | 2024年(令和6年)1月19日 | 5,608 | 2,738 | 48.82% |
申請代行サービスを利用すれば7割~9割ほどの採択率が期待できるうえ、以下のようなメリットもあります。
- 採択の可能性が上がる
- 申請準備の時間が削減できる
- 実効性の高い計画策定が担保される
補助金の申請を熟知した専門家に依頼すれば、申請内容を採択されやすい形に改善できます。
また、ものづくり補助金では申請時に多くの書類が求められますが、申請代行サービスを利用すれば書類作成を専門家に任せられます。そのため、自社が申請に費やす時間を大幅に削減し、本業へのリソースの集中が可能です。
さらに、専門家に依頼すれば多くのノウハウを活かし、実効性の高い事業計画を練り上げられます。ものづくり補助金の採択率が上がるだけでなく、事業が成功する可能性を向上させられるのがメリットです。
「補助金Bizアシスト ものづくり補助金」では、いまなら無料相談を受け付けていますので確認しておくのがおすすめです。
ものづくり補助金の公募要領に関するよくある質問
ものづくり補助金の公募要領に関するよくある質問を解説します。
- ものづくり補助金は何回まで受け取れるの?
- ものづくり補助金を個人事業主が受ける条件は?
あらかじめ疑問を解消しておき、ものづくり補助金へチャレンジするかどうか検討しましょう。
ものづくり補助金は何回まで受け取れるの?
ものづくり補助金は、基本的に何回でも交付を受けられます。ただし、以下のような制限がありますので留意しましょう。
- 3年間でものづくり補助金を受け取れるのは2回まで
- 3年以内に交付決定を受けていると減点項目になる
過去3年間に2回までという制限内なら、何度でもものづくり補助金は活用できます。実際にものづくり補助金を複数回、受給した企業も存在します。
ものづくり補助金を何度も受給するには、加点項目に留意して体制を整えましょう。たとえば、経営革新計画の認定を定期的に取得し、期間中にものづくり補助金を申請すれば加点されて採択率が上がります。
ものづくり補助金は今後も継続されると予想されますので、自社の事業拡大に向けて効果的に活用しましょう。
ものづくり補助金を個人事業主が受ける条件は?
ものづくり補助金を個人事業主が受ける条件は、中小企業・小規模事業者と変わりません。ものづくり補助金の基本要件は、以下のとおりです。
- 特定条件の付加価値額を年平均で3%アップさせる
- 給与支給総額の1.5%向上を達成する
- 対象事業では最低賃金より30円以上高い時給を支払う
ただし、個人事業主は以下の理由で受給のハードルは低くありません。
- 技術的なハードルが高い
- 事業実施の体制構築が困難
- 財務状況が厳しい
個人事業主のものづくり補助金の活用は、採択数全体の10%~15%ほどにとどまっています。決してハードルは低くありませんが、交付を受けた例も存在するため余力があるときにチャレンジしてみましょう。
ものづくり補助金の公募要領を十分に理解して採択を実現しよう!
ものづくり補助金の公募要領は、申請・交付に必要なルールや手順を提示した重要な文書です。
補助事業の概要・申請方法・申請枠・補助対象経費・補助事業者の義務など、採択されるための基本事項がまとめられています。申請を検討している事業者は公募要領を確認し、要件・審査項目・加点項目を踏まえた事業計画書を作成しましょう。
ものづくり補助金の概要を確認するなら、補助金Bizアシスト「ものづくり補助金」がたいへん役立ちます。申請代行サービスへの問い合わせも可能ですので、まずは相談をしたいという経営者におすすめです。なお、申請代行サービスを利用すれば、採択率のアップ・申請準備の時間削減・実効性の高い計画策定が期待できます。
ものづくり補助金の公募要領のポイントを社内で共有し、採択を目指して万全の準備を行いましょう。
この記事を書いた専門家
高橋 聡
金融・ビジネス・ITなどを専門とするWebライターです。
「わかりやすい」「知りたい情報があった」「こんな情報知らなかった」と思っていただける記事作りを心がけています。
座右の銘は「楽するために努力する」。
なぜか、未だに楽はできていません。