自社にもものづくり補助金を活用できないか検討するためには、要件・申請の流れ・補助上限額などの基礎知識が必要不可欠です。ものづくり補助金とは、新しい製品・サービスの開発や設備投資に活用できる中小企業・小規模事業者向けの補助金です。

今回の記事では、ものづくり補助金の基本要件・補助額・採択率・活用事例をわかりやすくまとめました。さらに、ものづくり補助金を活用するメリット・デメリットや必要書類についても解説します。

本記事を読めば、ものづくり補助金の活用を検討するために必要な予備知識を得られます。ものづくり補助金で将来の柱となる事業を育成し、業績向上・地域への貢献・持続的な経営を実現しましょう。

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経済産業省が主導するものづくり補助金の仕組み・概要とは

ものづくり補助金とは、新製品開発や新たな設備投資のために役立つ中小企業・小規模事業者のための補助金です。特例を利用すれば最大1億円までの交付が受けられ、大規模・高額な設備投資にも活用が可能です。

2013年に経済産業省が、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」として設けました。2020年に制度内容が変更され、名称は現在の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」になります。

経済産業省・中小企業庁によれば、中小企業・小規模事業者が直面する以下の制度変更に対応するため作られた補助金です。

  • 働き方改革
  • 被用者保険の適用拡大
  • 賃上げ
  • インボイスの導入

新製品開発・新規設備投資などによる生産性向上・技術革新・効率化を、政府はものづくり補助金で支援しています。

なお、ものづくり補助金は事業内容に応じた枠・類型が用意されており、申請時に事業計画書などの提出が求められます。申請者全員が利用できるわけではなく、審査を通過して採択された事業者のみ受給が可能です。

ものづくり補助金の基本要件

ものづくり補助金の受給後3年間~5年間の事業計画期間に、以下の成果を達成するよう求められます

  • 特定条件の付加価値額を年平均で3%アップさせる
  • 給与支給額の1.5%の向上を達成する
  • 対象事業では最低賃金より30円以上高い時給を支払う

政府はものづくりによる生産性向上・革新によって、国民所得の向上を目指しています。上記の目標を達成できるよう、現実的な事業計画の策定を行いましょう。

特定条件の付加価値額を年平均で3%アップさせる

ものづくり補助金では、年平均で3%の付加価値額の向上が求められます。ものづくり補助金における付加価値額は、以下の計算式で算出します。

付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費

事業計画書を策定する段階で、どのように事業を成長させて付加価値額を向上させるのかを慎重に検討しましょう。実現性・堅実性・客観性のある事業計画であるほど、ものづくり補助金の審査に通過できる可能性が高まります。

なお、目標達成できなかった場合でも「給与支給総額増加率>付加価値額増加率÷2」であれば補助金の返還は免除されます。くわえて、地震・水害・コロナ禍などの天災による理由での目標未達は返還を求められません。

給与支給額の1.5%の向上を達成する

ものづくり補助金を受給すると、事業計画期間に全従業員の給料支給総額を年平均で1.5%以上の増加が求められます

給与支給総額とは、非常勤を含む全従業員と役員に支払った給料・賃金・賞与・役員報酬です。なお、福利厚生費・法定福利費・退職金は給与支給総額には含まれません。

もし、申請時点で賃上げ計画を策定していないと発覚した場合は、補助金を全額返還する必要があります。また、事業計画期間終了時点で目標未達の場合は、以下の計算式の金額を返さなければなりません。

返還する補助金額=残存簿価等×補助金額÷実際の購入金額

目標未達に終わらないよう、事業計画期間に給与支給総額を上げても資金繰りに困窮しない事業計画を立てましょう。

対象事業では最低賃金より30円以上高い時給を支払う

ものづくり補助金を受給すると、従業員の時給を地域別最低賃金より30円以上高く設定する必要があります

地域別最低賃金とは最低賃金法で定められた、事業主が労働者に支払わなければならない時給の最低額です。都道府県ごとに最低賃金は異なり、東京都が1,113円で全国1位、岩手県が893円で47位となっています。

毎年10月に引き上げが行われるため、最低賃金アップにあわせて従業員の時給を上げる必要があります。なお、賃金については申請時点で引き上げ計画を策定していなければなりません。もし補助金交付後に賃上げ計画がなかったと発覚すると、補助金の全額返還が求められます。

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ものづくり補助金の3つの枠と類型

ものづくり補助金には、以下の3つの枠があります

  1. 省力化(オーダーメイド枠)
  2. 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型)
  3. グローバル枠

ただし、2024年(令和6年)の17次ものづくり補助金の公募は、省力化(オーダーメイド枠)のみですので留意しましょう。18次ものづくり補助金では、製品・サービス高付加価値化枠やグローバル枠の公募が行われる予定です。

省力化(オーダーメイド枠)

省力化(オーダーメイド枠)は、人手不足解消のための効率化を目的とした専用設備・システム投資を支援する申請枠です。たとえば、以下のような活用方法が考えられます。

  • 手作業だった工程に自動組み立てロボットを導入
  • 物流センターの自動化
  • ロボット・情報通信技術を用いたスマート農業
  • 画像判別技術による医療のAI診断支援システム

省力化(オーダーメイド枠)の追加要件は、以下のとおりです。

(1) 3~5年の事業計画期間内に、補助事業において、設備投資前と比較して労働生産性が2倍以上となる事業計画を策定すること

※ 労働生産性は「付加価値額(付加価値額の算出が困難な場合は生産量)/(労働人数×労働時間)」とする。完全自動化の場合は「(労働人数×労働時間)」を便宜的に「0.1」とする。

(2) 3~5年の事業計画期間内に、投資回収可能な事業計画を策定すること

※ 投資回収年数は「投資額/(削減工数×人件費単価)」とする。

(3) 外部SIerを活用する場合、3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス契約を中小企業等とSIer間で締結することとし、SIerは必要な保守・メンテナンス体制を整備すること

※事業終了後、実績報告時点で確認をします。

※保守・メンテナンスに係る費用は補助対象外です。

(4)本事業に係る資金について金融機関(ファンド等を含む。)からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出いただく必要があります。金融機関は、事業所の所在地域にある必要はございませんので、任意の機関を選定してください。

 

引用:経済産業省「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(17次締切分)省力化(オーダーメイド)枠 1.2版

上記の追加要件に関する引用をわかりやすく、以下の表にまとめました

事業計画の要件 内容
生産性の向上
  • 3年~5年で補助事業の生産性を2倍以上にする事業計画を立てる
  • 労働生産性の定義は「労働生産性=付加価値額÷労働人数×労働時間」
  • 完全自動化の場合は「労働人数×労働時間」を0.1として計算
投資が回収できる可能性を高める
  • 3年~5年で投資の回収が可能な事業計画を立てる
  • 投資回収の年数の計算方法は「投資額÷(削減工数×人件費単価)」
保守・メンテナンス契約の締結
  • 外部SIerを利用する場合、実績報告時点で確認が行われる
  • 保守・メンテナンス費用は補助の対象外
資金調達と事業計画の確認
  • 金融機関からの融資を受けるなら事業計画を必ず確認してもらう
  • ものづくり補助金を受けるには金融機関からの確認書の提出が必要
  • 金融機関は自由に選択してかまわない

省力化(オーダーメイド枠)は申請しやすいものづくり補助金枠ですので、自社に最適な効率化・生産性向上の計画を立てましょう。

製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型)

製品・サービス高付加価値化枠は、通常類型・成長分野進出類型の2種類があります

通常類型は、革新的な新製品・サービス開発への取り組みに必要な設備・システム投資を支援する仕組みです。たとえば、通常類型の活用例は以下のとおりです。

  • 先進的な技術・設備の導入によって自社製品を改良
  • 情報通信技術・AIを活用したサービスで顧客体験を向上

通常類型・成長分野進出類型の両方に共通する追加要件は、以下のとおりです。

(1)3~5年の事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計額が、企業全体の売上高の10%以上となる事業計画を策定すること

(2)本事業に係る資金について金融機関(ファンド等を含む。)からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出いただく必要があります。金融機関は、事業所の所在地域にある必要はございませんので、任意の機関を選定してください。

 

引用:経済産業省「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)1.0版

成長分野進出類型(DX・GX)は、成長が見込まれるDX・GX分野の新製品・サービス支援のための枠組みです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは情報通信技術を活用し、業務プロセス・ビジネスモデル・組織を変革する概念です。一般的に、システムの導入で業務効率化だけを目的とする場合はデジタル化と呼ばれます。一方、DXは業務効率化によるコスト削減だけではなく、付加価値向上に貢献する情報通信技術の活用方法です。

たとえば、スマート家電・オンラインスクール・配車サービスなどもDXの一例として知られています。

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、再生可能エネルギーを利用してCO2削減・生産性向上の両立を目指す概念です。ものづくり補助金の成長分野進出類型であるGXは、グリーン枠と呼ばれる場合も多々あります。

成長分野進出類型(DX・GX)の追加要件は、以下のようになります。

(3)DX:DXに資する革新的な製品・サービスの開発であること

GX:グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する革新的な製品・サービスの開発であること

※1 DXに資する革新的な製品・サービスの開発とは、例えば、AI、IoT、センサー、デジタル技術等を活用した遠隔操作や自動制御、プロセスの可視化等の機能を有する製品・サービスの開発(部品、ソフトウェア開発を含む)等をいう。

※2 グリーン成長戦略「実行計画」14分野とは、令和3年6月18日付で策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、「実行計画」が策定されている14分野をいいます。分野毎に「現状と課題」として記載のある「課題」の解決に資する取組であることが必要となります。14分野のうちどの分野のどの課題の解決に資する取組であるかあらかじめご確認ください。

 

引用:経済産業省「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)1.0版

グローバル枠

グローバル枠とは、海外での事業展開を促進するための設備・システムの導入に対し、補助金を交付する制度です。たとえば、新製品を海外に輸出するためのブランディング費用・開発費用にグローバル枠は活用できます。

グローバル枠の主な追加要件は、以下のとおりです。

(1)本事業に係る資金について金融機関(ファンド等を含む。)からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出いただく必要があります。金融機関は、事業所の所在地域にある必要はございませんので、任意の機関を選定してください。

(2)以下のいずれかの要件に該当するものであること。

 

引用:経済産業省「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)1.0版

グローバル枠の4つの事業ごとに異なる追加要件を、以下の表にまとめました。

事業の種類 追加要件
海外への直接投資に関する事業
  • 国内本社が主体で、海外支店や子会社の経費が半分以上を占める事業を行う
  • 海外事業と連携して国内での設備投資を行う
  • 応募時と実績報告時に、事業の詳細資料を提出する
海外市場開拓(輸出)に関する事業
  • 最終販売先の半分以上が海外顧客で、補助金額を上回る売上を上げる事業計画を立てる
  • 海外市場調査報告書と試作品の性能評価報告書を提出する
インバウンド対応に関する事業
  • 製品・サービスの販売先の半分以上が訪日外国人で、補助金額を上回る売上を上げる事業計画を立てる
  • インバウンド市場調査報告書とプロトタイプの検証報告書を提出する
海外企業との共同で行う事業
  • 国内で実施し、成果物の権利の一部または全部が補助事業者に帰属する事業
  • 共同研究契約書や業務提携契約書、進捗報告書を提出する

詳細については、経済産業省の「18次ものづくり補助金公募要領(18P)」を参照してください。

ものづくり補助金の応募期間・対象者

ものづくり補助金の対象となる中小企業の定義は、以下の表のとおりです。

業種 資本金 常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業、旅行業 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業(※1) 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
ゴム製品製造業(※2) 3億円以下 900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下
その他の業種(上記以外) 3億円以下 300人以下

※1 ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く
※2 自動車タイヤ・航空機用タイヤ・チューブ製造業・工業用ベルト製造業を除く
出典:経済産業省「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(17次締切分)省力化(オーダーメイド)枠 1.2版

ものづくり補助金では、企業の組合・商工組合・NPO法人・社会福祉法人なども対象に含まれます。それぞれの要件については、「ものづくり補助金17次公募要領(P8)」から確認できます。

ものづくり補助金は毎年、年に4回ほどの公募が実施されています。大まかなものづくり補助金のスケジュールの流れは、以下のとおりです。

  1. 2か月~4か月の応募期間が設けられる
  2. 公募締め切り後、1か月~2か月の間に審査が行われる
  3. 公募締め切りから約2か月後に採択結果が発表される

2024年3月時点で発表されているものづくり補助金17次・18次のスケジュールを、以下の表にまとめました。

公募回数 第17次ものづくり補助金 第18次ものづくり補助金
公募期間 2023年12月27日17時~2024年3月1日17時まで 2024年12月31日17時~2024年3月27日17時まで
採択発表 2024年5月中旬を予定 2024年6月下旬を予定

次の公募が知りたい場合は、定期的に「ものづくり補助金総合サイト」を確認しましょう。

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ものづくり補助金の補助率・上限金額

ものづくり補助金の補助率は一般的に1/2ですが、小規模事業者・再生事業者の場合は2/3となります。小規模事業者とは、公募要領によれば以下の表の定義にあてはまる企業・個人事業主です。

業種 常勤従業員数
製造業その他 20人以下の法人・個人事業主
商業・サービス業 5人以下の法人・個人事業主
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 20人以下の法人・個人事業主

ただし、ものづくり補助金の交付決定までに小規模事業者の定義からはずれた場合は、通常の補助率となります。

再生事業者とは中小企業活性化協議会などから支援を受けつつ再生計画を策定中、もしくは3年以内に計画が成立した事業者です。再生事業者は従業員の数にかかわらず、ものづくり補助金の補助率が2/3となります。

ものづくり補助金枠の種類ごとの補助率・上限額について、以下の表にまとめました

補助金枠の種類 省力化(オーダーメイド枠) 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型DX・GX) グローバル枠
補助上限額
  • 5人以下 750万
  • 6~20人 1,500万円
  • 21~50人 3,000万円
  • 51~99人 5,000万円
  • 100人以上 8,000万円
  • 5人以下 750万円
  • 6~20人 1,000万円
  • 21人以上 2,500万円
  • 3,000万円
補助率 1/2
※小規模・再生事業者:2/3
※1,500万円までは1/2、1,500万円を超える部分は1/3
通常類型:1/2
成長分野進出類型:2/3
※小規模・再生事業者:2/3
※新型コロナ加速化特例:2/3
1/2
※小規模企業:2/3

ものづくり補助金で対象となる経費

ものづくり補助金で対象となる経費は、以下の表のとおりです。

対象となる経費 経費の概要
機械装置・システム構築費 機械・装置・専用ソフトウェアの改良・修繕などに必要な費用
技術導入費 事業に必要な知的財産権などの導入にかかる費用
専門家経費 事業で取引を依頼した専門家に支払われる費用
運搬費 運搬・宅配・郵送などの費用
クラウドサービス利用費 クラウドサービス・Webプラットフォームの利用費
原材料費 試作品開発に必要な原材料・副資材の購入費
外注費 新製品・サービスの開発に必要な加工・設計・デザイン・検査などの一部を外注する場合の費用
知的財産権等関連経費 新製品・サービス事業化に必要な特許権などの知的財産権取得に関する弁理士手続代行費用や翻訳料など

グローバル枠では、上記の経費のほかに海外旅費・通訳費・翻訳費、広告宣伝・販売促進費も含みます。すべての経費が対象になるわけではありませんので、補助率・上限額と照らし合わせて事業計画を綿密に立てましょう。

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ものづくり補助金の採択率

ものづくり補助金の採択率を、以下の表にまとめました

締切回 採択発表日 申請者数 採択者数 採択率
第14次 2023年(令和5年)6月23日 4,865 2,470 50.77%
第15次 2023年(令和5年)9月29日 5,694 2,861 50.24%
第16次 2024年(令和6年)1月19日 5,608 2,738 48.82%

採択率は5割程度が平均となっており、半数ほどの事業者が審査に通過しているのがわかります。なお、ものづくり補助金の申請代行サービスを活用すれば7割~9割ものの採択率が期待できます

ものづくり補助金を本気で活用するなら、申請代行サービスの活用も視野に入れて検討しましょう。

2024年(令和6年)のものづくり補助金で注目するポイント

2024年(令和6年)のものづくり補助金で、前年度から変更などで注目するポイントは以下のとおりです。

  • 新型コロナ回復加速化特例
  • 大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例
  • 対面での口頭審査の導入

変更点を十分に理解し、審査に通過する確率を上げてものづくり補助金の受給を実現しましょう。

新型コロナ回復加速化特例

「新型コロナ回復加速化特例」は、コロナ禍からの回復を目指しつつ最低賃金引き上げに取り組む事業者を支援する特例です。製品・サービス高付加価値化枠の通常類型で、以下の2つの要件を満たせば補助率が2/3となります。

  • 給与支給額の1.5%向上
  • 最低賃金より30円以上高い時給

ただし、後述する「大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例」とは併用できませんので注意しましょう。

大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例

「大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例」は、大幅な賃上げに取り組む事業者に対して補助上限額が引き上げられる制度です。「大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例」が適用される追加要件は、以下のとおりです。

(1) 事業計画期間において、基本要件である給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加させることに加え、更に年平均成長率4.5%以上(合計で年平均成長率6%以上)増加させること。

(2) 事業計画期間において、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金+50円以上の水準とすることを満たしたうえで、さらに、事業場内最低賃金を毎年、年額+50円以上増額すること。

(3) 応募時に、上記(1)(2)の達成に向けた具体的かつ詳細な事業計画(大幅な賃上げに取り組むための事業計画)を提出すること。

 

引用:経済産業省「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(17次締切分)省力化(オーダーメイド)枠 1.2版

上記の簡単な要約を以下の表にまとめました

要件 要約
給与支給総額の増加 基本要件の年1.5%にくわえて、さらに4.5%以上増加させた年6%を目指す
事業場内最低賃金の増額 最低賃金より50円高い時給を設定し、くわえて毎年50円アップする
事業計画の提出 上記の条件達成に向けた事業計画を提出する

条件を満たした場合の補助上限引き上げ額は、以下の表のとおりです。

補助金枠の種類 省力化(オーダーメイド枠) 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型DX・GX) グローバル枠
補助上限引き上げ額
  • 5人以下 最大250万円
  • 6~20人 最大500万円
  • 21~50人 最大1,000万円
  • 51~99人 最大1,500万円
  • 100人以上 最大2,000万円
  • 5人以下 最大100万円
  • 6~20人 最大250万円
  • 21人以上 最大1,000万
  • 5人以下 最大100万円
  • 6~20人 最大250万円
  • 21人以上 最大1,000万
補助率 1/2
※小規模・再生事業者:2/3
※1,500万円までは1/2、1,500万円を超える部分は1/3
通常類型:1/2
成長分野進出類型:2/3
※小規模・再生事業者:2/3
※新型コロナ加速化特例:2/3
1/2
※小規模企業:2/3

「大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例」は条件が厳しめですが、補助上限額の大幅な引き上げを目指すなら検討してみましょう。

対面での口頭審査の導入

第17次・第18次ものづくり補助金から、対面での口頭審査が導入されました。Zoomなどオンラインで実施される口頭審査の内容は、以下のとおりです。

  • 事業計画の適格性・革新性・優位性・実現性
  • 意思決定の背景・マーケティング調査など事業計画書に記載のない項目

なお、オンラインでの口頭審査はヘッドセット・イヤホンの使用が禁じられています。パソコン内蔵・外付けのWebカメラ・マイク・スピーカーが必要となるため、準備しておきましょう。

審査は申請事業者の代表者1名での対応が求められ、コンサルタント・社外顧問などの同席は一切認められません。

補助金は専門家に相談しましょう|ものづくり補助金、IT導入補助金、事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、などすべてご相談できます。

ものづくり補助金の活用事例をわかりやすく解説

ものづくり補助金の実際の活用事例をいくつか紹介します

  • ポアソン洋菓子店
  • 堀田畳製作所
  • 上北農産加工株式会社
  • 斉藤工業株式会社
  • アロン電機株式会社
  • うみの株式会社
  • おみ農園

自社の事業にものづくり補助金がどのように活用できるか、事例を参考にしつつ検討しましょう。

参考:ものづくり補助金総合サイト「令和4年度 ものづくり・商業・サービス補助金成果活用 グッドプラクティス集」,「茨城特産の糖度の高い干し芋の安定かつニーズに応じた供給体制の確立」,「ものづくり・商業・サービス補助金成果活用 グッドプラクティス集(Web用・A4)

ポアソン洋菓子店

ポアソン洋菓子店は、ものづくり補助金を活用して生産性向上・働き方改革を目指しました

1992年に鳥栖(とす)市で創業されたポアソン洋菓子店は、ケーキ・焼き菓子専門店です。地元食材にこだわった新しい焼き菓子「塩ブッセ」と「と」を開発し、地域で高い人気を得ています。

ブッセとはフランス語で「ひとくち」を意味し、ビスキュイと呼ばれるさっくりした生地でクリームやジャムを挟んだ焼き菓子です。「と」はポアソン洋菓子店の独自製品で、鳥栖市産の米粉とさがほのか苺を使ったまんじゅうです。「人と人・人とお菓子・人と地域をつなぐ存在」をイメージして開発されました。

ポアソン洋菓子店が、ものづくり補助金を活用して行ったのは包装機・包餡機の導入です。機械化によって手作業による生産の限界を克服し、作業の効率化と生産性向上を実現しました。さらに、製造した商品は冷凍保存が可能となり計画的な生産ができるようになりました。

今後は新たな「と」の味として、地元の大豆を使用した大豆餡を開発して売上向上を目指しています。事業をとおして地元生産者とのつながりを深め、原材料の特性・農業の現状について学べたとポアソン洋菓子店は言います。

堀田畳製作所

堀田畳製作所は、ものづくり補助金を活用して畳製造工程の改革と国産畳の需要開拓を目指しました

堀田畳製作所は1913年(大正2年)に創業された山梨県甲府市にある畳店です。100%国産の畳表・畳床を使用した国産畳にこだわりつつ、製造工程における自動化・省力化を推進しています。

ものづくり補助金を活用して堀田畳製作所は、以下の設備を新たに導入しました

  • 表面・框縫付け自動片框裁断用のマルチロボット機
  • 畳縁の縫着と巾寸法の裁断用の両用ロボット
  • 畳検寸器・部屋の寸法・図面起こし畳割付計算ソフト

堀田畳製作所の堀田代表は、長男が家業を継いでくれると決定しているため新たなビジネスモデルを構築中です。国産畳専門店としてのブランド力を高めつつ、和室のトータルコーディネート事業を計画しています。

ものづくり補助金をとおして堀田代表が学んだのは、畳が日本の四季にマッチした最良の床材だとアピールする重要性です。また、設備導入時には機械メーカーに丸投げせず、畳職人の経験とノウハウを盛り込んだ独自提案が重要だとのことです。

上北農産加工株式会社

上北農産加工株式会社は、廃棄されていた青森県産の酒粕を再利用して「赤酢」という新商品を開発しました

上北農産加工株式会社は、青森県十和田市にある企業で1940年(昭和15年)に創業しました。地元のソウルフードとして親しまれている代表商品「スタミナ源たれ」は、以下のような材料で作られています。

  • 青森県産リンゴ
  • ニンニク
  • 自社醸造醤油など

ものづくり補助金を活用し、従来は廃棄されていた酒粕の再利用による新商品開発を以下の3つの目的で行いました

  • 地元酒造メーカーの酒粕廃棄という課題解決
  • 6次産業化の促進
  • SDGs

6次産業とは、「農林水産物の生産(1次産業)」「加工・製造(2次産業)」「販売(3次産業)」を一体化させた産業構造です。SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年に国連で採択された国際的な開発目標です。「貧困をなくす」「持続可能な世界を目指す」といった目標が、SDGsでは掲げられています。

上北農産加工株式会社は、新商品開発のほかに循環型農業への取り組みや赤酢を利用した土壌改良材の開発も行っています。赤酢を新たな事業の柱に位置づけ、今後は関連商品を拡充して販売する計画です。たとえば、「飲む赤酢」「赤酢を使用した焼肉のタレ」「業務用食品の調味料として用途拡大」などを目指しています。

ものづくり補助金の活用と新商品の開発をきっかけに、若い社員たちと経営陣が課題解決に向けて理解を深める機会となったそうです。今後も上北農産加工株式会社は、地域社会への貢献につながる事業に取り組む予定です。

斉藤工業株式会社

斉藤工業株式会社はものづくり補助金を活用し、新たな設備投資で生産性向上を果たしました

創業以来、高品質なプラスチック成型加工技術で医療機器・精密機器の製造に斉藤工業株式会社は特化しています。

最新技術を取り入れた生産設備をものづくり補助金によって導入し、効率化・コスト削減を実現しました。さらに、製品の品質向上・納期短縮といった効果により顧客満足度が高まりました。斉藤工業株式会社が導入した機器は、以下のとおりです。

  • 電動射出成形機
  • 取り出し機
  • ベルトコンベア
  • 粉砕機
  • ローダー付属乾燥機

上記の機器でもとくに電動射出成形機の導入は、品質・生産性の向上に大きく寄与しました。品質向上により歩留率99.9%を達成し、24時間稼働によって生産可能な個数が大幅に増加しました。

また、最新の生産設備そのものが営業ツールとして役立ち、工場見学をとおして顧客との信頼関係構築もできます。今後は持続可能な成長を目指し、技術開発・人材育成に注力する予定です。

アロン電機株式会社

アロン電機株式会社はものづくり補助金によって最新設備を導入し、精密機器の精度・生産性の向上を果たしました

1971年に創業したアロン電機株式会社は、金型・治具・半導体製造装置部品などの設計・製造・組み立てまで一貫して行います。

ものづくり補助金を活用して平面研削盤を導入し、従来では不可能だった平面度2μmの精度を可能にしました。さらに、高精度縦型マシニングセンタの導入により難削材加工の時間短縮と自動化が叶います。2つの最新機器の導入で、生産性向上による現場作業者の負荷軽減が実現しました。

今後は既存顧客との信頼関係構築により、持続的な事業活動を続けるのが重要だと斉藤工業株式会社は考えています。生産現場のロボット化・機械化を進め、さらなるレベルアップを目指しています。

うみの株式会社

うみの株式会社はものづくり補助金を活用し、三倍体マガキ種苗(稚貝)の生産体制を確立しました

1986年に設立された研究所を出発点として、2010年からうみの株式会社は法人化されました。全国の真珠・牡蠣養殖業者に稚貝を販売する種苗生産業を事業の柱としています。ほかにも、専門知識とノウハウが求められる水生生物分野の研究開発受託サービスを提供しています。

うみの株式会社はものづくり補助金で三倍体マガキ種苗(稚貝)の生産体制を確立し、養殖業者への普及に努めました。三倍体マガキとは、生殖機能を抑制して産卵にエネルギーを使わないため大きく成長する牡蠣の一種です。

また、ものづくり補助金によって牡蠣サイズ選別機・高圧洗浄機などの機材を導入して品質・生産性向上を実現しました

うみの株式会社は今後、さらに多くの漁業者にサービスを提供しつつ事業拡大を目指しています。さらに、「Webサイト・ECサイトの強化」「飲食店への直売ルートの開拓」などをとおして販売力強化に努めています。

うみの株式会社はものづくり補助金事業をとおして、「顧客を勝ち組にする」という理念を掲げました。顧客とともに成長し、その成功が自社の業績拡大にもつながる好循環を目指しています。

おみ農園

おみ農園はものづくり補助金で低温除湿乾燥機を導入し、天日干しと比較して干し芋の生産性が向上しました

おみ農園は、手作りの干し芋とミニトマトを事業の柱とする農園です。干し芋は紅はるかを原料とし、長期熟成・天日干しによって高い糖度とねっとりとした食感を実現しています。干し芋に対する高い評価を受けて生産を本格化しましたが、以下の2つの課題に直面しました。

  • 異常気象による生産の不安定化
  • 生産量が需要に追いつかない

上記の問題を解決するため、おみ農園は低温除湿乾燥機・真空包装機をものづくり補助金で導入します

低温除湿乾燥機で表面を軽く乾燥させたあとに天日干しを行い、従来より生産性が大幅に向上しました。さらに、異常気象に左右されないため生産量が2倍となり、真空包装機の個包装もあわせて顧客満足度が向上しました

現在、おみ農園では丸干し・平干し・スティックの3タイプの干し芋を生産しています。今後はインターネット販売の強化を図り、さらなる需要の掘り起こしを目指す予定です。

ものづくり補助金を申請するメリット

ものづくり補助金を申請するメリットは、以下のとおりです。

  • 新規事業に挑戦できる
  • 借入ではないため返済が必要ない
  • 事業を見直すきっかけになる
  • 設備の導入で生産性向上が可能

メリットを十分に理解し、賢くものづくり補助金を活用しましょう。

新規事業に挑戦できる

ものづくり補助金を活用すれば、新規事業に挑戦できる機会を得られます

中小企業・小規模事業者にとって、数百万円~数千万円という資金は決して小さくありません。ものづくり補助金に採択されれば、返済の必要がない新規事業のための資金を調達できます。

自己負担が軽減できるため、財務状態が悪化するリスクを最小化しつつチャレンジが可能です。また、新規事業の展開の過程では技術力・競争力の強化を実現した企業も多いです。

現在、構想している新規事業があるのなら、ものづくり補助金にチャレンジして損はありません。

借入ではないため返済が必要ない

ものづくり補助金は借入ではないため、銀行融資・ビジネスローンのような返済が不要です。くわえて、金利も発生しないため資金調達コストは申請・採択後の実績報告などの労力だけです。

返済・金利がなく財務状況へのリスクを最小化できるものづくり補助金は、キャッシュフローの安定化にもつながります。さらに、返済の必要がないためプレッシャーを感じずに、より長期的な視点で事業計画に取り組めます

経営状態・財務状況に余裕がなくて新規事業に手を出せないのなら、ものづくり補助金の活用がおすすめです。

事業を見直すきっかけになる

ものづくり補助金の申請過程では事業計画が必要となるため、自社を見直すきっかけになります

事業計画書の作成は客観的な視点が必要となり、普段は気がつかない問題点・課題・改善の余地を発見する機会につながります。また、停滞気味の経営陣や現場が新規事業に取り組めば、社内のモチベーションアップや一体感の向上が可能です。

新規事業をとおして若手は既存事業や自社の強みを理解し、新たな発想を生み出す機会を得られます。自社の活性化のためにも、ものづくり補助金を活用した新規事業に取り組みましょう。

設備の導入で生産性向上が可能

ものづくり補助金で最新の設備・技術を導入すれば、効率化・省力化による生産性向上が可能です。

生産の効率化はコスト削減につながり、財務基盤への好影響が長期的に期待できます。さらに、品質向上は顧客満足度につながるだけでなく、付加価値アップによる利益率増加も図れます。また、これまで需要に追いつかなかった生産体制が効率化すれば、機会損失を最小化できるのも大きなメリットです。

生産性の向上は、効率化・コスト削減・付加価値アップ・品質向上をとおして競争力を強化します。市場での優位性を確保するためにも、ものづくり補助金を導入して生産性向上を実現しましょう。

補助金は専門家に相談しましょう|ものづくり補助金、IT導入補助金、事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、などすべてご相談できます。

ものづくり補助金を申請するデメリット

ものづくり補助金を申請するときのデメリットは、以下のとおりです。

  • 申請作業に時間・手間がかかる
  • 不採択の場合は受給できない
  • 補助金の受給は補助事業終了後になる
  • 対象外の経費がある

デメリットをあらかじめ理解しておき、どのように課題を解決して交付を受けるのか検討しましょう。

申請作業に時間・手間がかかる

ものづくり補助金の申請作業には、多くの時間と手間がかかるのがもっとも大きなデメリットです。ものづくり補助金の申請には事業計画書が必須であり、以下のような項目を記載しなければなりません。

  • 事業内容
  • 導入する設備
  • 客観的な数値による売上の見込み
  • 将来の展望
  • 市場の状況

本業の傍らで事業計画書を作成するのは、経営者にとって大きな負担となります。ただし、事業計画書を作成すれば経営の見直しにもつながるためデメリットばかりではありません。

申請から採択結果の発表までの長さも、ものづくり補助金におけるデメリットです。申請から採択結果の発表までには数か月かかり、さらに採択されても交付申請がとおるまで満額支給されるかどうかわかりません。

実際の交付まで不確定要素が残り続けるため、事業者にとって手間と時間が無駄になるリスクをはらんでいます。採択率を上げるためには、「事業計画書を綿密に作成」「専門家・申請代行サービスを利用」といった対策が必要です。

不採択の場合は受給できない

ものづくり補助金は申請が不採択となった場合、受給できずに事業計画が破綻するリスクがあります

ものづくり補助金の採択率は平均して約50%であり、半数の事業者は審査に通過できません。また、社内のモチベーションにも悪影響を及ぼす可能性が高いため注意しましょう。事業計画書を作成するためのリソースや人件費も、不採択となればすべて無駄に終わります

もし再度、ものづくり補助金にチャレンジするなら、同じかそれ以上の手間と時間が必要となります。さらに、不採択となっても事業を進める場合は、新たな資金調達手段を見つけなければなりません。

不採択の場合に備えて、「どのように資金を手当てするのか」「再度チャレンジするのか」といった想定もしておきましょう

補助金の受給は補助事業終了後になる

ものづくり補助金だけに限らず、大半の事業者向け補助金は補助事業終了後にしか受け取れません

補助事業が終了とみなされるのは実績報告を行ってからであり、採択発表後のおおよそ1年後となります。そのため、補助事業を実施するための資金は一時的に自社で用意する必要があります。つなぎ融資は、銀行・信用金庫・日本政策金融公庫・POファイナンス・ファクタリングを検討しましょう。

POファイナンスとは補助金交付決定情報を電子記録債権化し、担保にして融資を受けられる仕組みです。銀行・信用金庫・日本政策金融公庫より金利は高いものの、補助金の交付が決定していれば融資を受けやすいのがメリットです。

ファクタリングを利用すれば売掛債権を売却して、手数料が差し引かれた代金をファクタリング会社から受け取れます。補助金の交付決定通知書も交付債権としてファクタリングできるため、POファイナンス以外の選択肢として注目されています。

なお、資金の確保の遅延は補助金事業そのものの遅れを意味します。あらかじめ交付決定後にどのような資金調達方法を用いるのか、慎重に計画を立てておきましょう。

対象外の経費がある

ものづくり補助金には対象外の経費があり、すべてを補助金でまかなえるわけではありません。たとえば、以下のような経費がものづくり補助金の対象外となっています。

  • 補助事業以外の諸経費
  • 工場建屋・構築物・簡易建物など
  • 整備工事・基礎工事費用
  • 事務所にかかる家賃・保証金・仲介手数料・光熱費
  • 事務用品などの消耗品や新聞代
  • 不動産・自動車などの購入費
  • 接待費

上記のほかにも、申請に先立って発生した市場調査・コンサルティングなどの費用も対象とはなりません。また、補助率や補助上限額も設定されているため、あらかじめどれくらいの金額を自己負担する必要があるのか計算しておきましょう。

ものづくり補助金を申請するときの注意点

ものづくり補助金を申請するときは、以下のポイントに気をつけましょう

  • 税抜きで単価50万円以上の設備投資をする必要がある
  • 事業終了後も状況報告しなければならない

注意点について社内で共有し、どういった業務が必要になるのか計画を策定しましょう。

税抜きで単価50万円以上の設備投資をする必要がある

ものづくり補助金で採択されるためには、税抜きで単価50万円以上の設備投資が必要です。

設備投資費とは、機械・装置・工具・器具などの購入や製作・借用に必要な経費です。なお、専用ソフトウェアや情報システムは一式をすべて含めて50万円以上の設備投資として計上できます。

あらかじめ事業に必要な設備投資について詳細に検討し、単価が50万円以上かどうか確認しておきましょう。

事業終了後も状況報告しなければならない

ものづくり補助金は採択の約1年後に受け取れますが、5年間の事業状況報告が求められます。交付が決定されてから5年間は、決算後60日以内に事業報告をして調査を求められたら協力しなければなりません。

「事業報告がない」「虚偽報告があった」などの場合、補助金の返還を求められる可能性があります。また、事業にかかわる資料はすべて事業報告が終わる5年後まで保管が必要です。なお、ものづくり補助金の事業進捗確認のため抜き打ち検査が行われるケースもあります。

ものづくり補助金を受給したあとも、上記のような事務作業が必要になるので留意しておきましょう。

補助金は専門家に相談しましょう|ものづくり補助金、IT導入補助金、事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、などすべてご相談できます。

ものづくり補助金で採択されるためのポイント

ものづくり補助金で事業が採択されるための主なポイントは、以下の3つです。

  • 公募要領を十分に確認する
  • 審査項目・加点項目を満たせる事業計画を申請する
  • 事業計画書に必要な内容を盛り込む

事業計画を立てる前にポイントを確認し、ものづくり補助金の受給を実現しましょう。

公募要領を十分に確認する

ものづくり補助金に採択されるためには、公式サイトから公募要領をダウンロードして内容を確認しましょう。公募要領でとくに確認しておかなければならないポイントは、以下のとおりです。

  • 補助金の目的と対象分野
  • 申請資格
  • 補助金の内容と規模
  • 申請受け付け期間と締め切り日
  • 提出書類と形式
  • 選考基準と評価ポイント
  • 問い合わせ先

補助金の具体的な内容・補助率・補助上限額は事業計画に直結するため、詳細に理解する必要があります。申請受け付け期間と締め切り日は把握し、期間内に必要な書類を準備できるように計画を立てましょう

審査項目・加点項目を満たせる事業計画を申請する

ものづくり補助金の審査項目・加点項目を確認し、採択の見通しが立つ事業計画を策定しましょう。たとえば、以下のようなポイントがものづくり補助金で書面審査されます。

  • 補助対象事業者として適格か
  • 製品・サービスの開発が革新的であるか
  • 課題の解決方法が明確・妥当であるか
  • 雇用を含め、地域の経済成長を牽引する事業になるか

ものづくり補助金の加点項目の一例は、以下のとおりです。

  • 創業・第二創業から5年以内の事業者
  • 事業再生のための私的整理手続きをしている再生事業者
  • 健康経営優良法人に認定された事業者

なお、条件に合致すると自動的に加点されるわけではなく、事業者が申請しなければなりません。上記は審査項目・加点項目の一部ですので、詳細は「第17次ものづくり補助金公募要領6章」で確認してください。

事業計画書に必要な内容を盛り込む

必要書類のなかでも重要な事業計画書には、ものづくり補助金で求められている内容を適切に盛り込みましょう。ものづくり補助金の基本要件である以下の3つは、必ず盛り込んでください。

  • 特定条件の付加価値額を年平均で3%アップ
  • 給与支給額の1.5%の向上を達成
  • 対象事業では最低賃金より30円以上高い時給を実現

また、上記3つの基本要件を満たせるという根拠を提示する必要があります。そのためには、綿密な市場調査や現在の財務状況の把握が必要不可欠です。

より実現性の高い事業計画書を目指すなら、申請代行サービスに依頼してサポートを受けましょう

ものづくり補助金の必要書類と準備

ものづくり補助金はプロセスがすべて電子化されており、以下の流れで申請を行います

  1. 公募要領を確認
  2. JグランツのGビズIDプライムアカウントを取得
  3. 必要書類の準備
  4. Jグランツにログイン
  5. 申請内容の入力・必要書類のアップロード・内容の確認
  6. 審査が実施され採択通知が行われる

Jグランツとは、補助金申請・社会保険手続きなど事業者向けの行政手続きに対応したサービスです。ものづくり補助金の申請はJグランツにログインして行うため、あらかじめGビズIDプライムアカウントを取得しておきましょう。なお、GビズIDプライムアカウントを申請すると、最長2週間の書類審査がありますので注意してください。

ものづくり補助金は申請手続きだけでなく、採択通知後の中間検査・実績報告・補助金の交付などすべて電子化されています。申請に必要となるインターネット環境・パソコンは、あらかじめ契約・購入しておきましょう。なお、プリンターは購入以外にコンビニのネットプリントを活用する方法もあります。

補助金は専門家に相談しましょう|ものづくり補助金、IT導入補助金、事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、などすべてご相談できます。

ものづくり補助金の採択後の流れ

ものづくり補助金を申請して採択されたあとの流れは、以下のとおりです。

  1. 採択通知を受け取る
  2. 交付申請を行う
  3. 交付が決定する
  4. 補助事業の実施と遂行状況報告書の提出
  5. 中間監査・確定検査を受ける
  6. 実績報告をする
  7. 補助金交付額が確定して請求を行う
  8. 事業化状況の報告を行う

採択後・受給後もさまざまな事務作業が必要となるため、事前に目をとおしておきましょう。

1.採択通知を受け取る

ものづくり補助金が採択されると申請者に通知のメールが届き、ものづくり補助金公式ページに採択者の一覧が公表されます。ほかにも、JグランツにGビズIDプライムアカウントでログインして採択結果を確認できます。

なお、採択されても交付申請に不備があると再提出・修正などによって事業開始が遅れますので注意しましょう。

2.交付申請を行う

ものづくり補助金に採択されたら、交付申請を行う必要があります。採択はあくまで交付が内定した段階であり、補助金を満額受け取れるかどうかは交付申請で決まります。

事務局は提出書類の経費の妥当性を調査し、修正・削除があった場合は補助金が減額される事態になりかねません。減額されないためにも、事業計画書を十分に練り上げて完成度を高めておきましょう。

交付決定通知が届くまで、ものづくり補助金事業にかかわる支出・設備の発注は禁止されています。補助事業の開始が遅れると事業実施期間が短くなるため、早めに交付申請するのがおすすめです。

3.交付が決定する

交付申請をすると約1か月で交付決定通知のメールが届き、補助事業を開始できます。補助事業の開始にあわせて、必要設備などの発注・納品・支払いも可能となります。

交付決定通知を受けたら、自社の補助事業完了期限日がいつなのかを通知書で確認しましょう。補助事業の実施期間は、おおよそ10か月~12か月に設定されています。

4.補助事業の実施と遂行状況報告書の提出

補助事業を開始し、事務局から指示があった場合には遂行状況報告書を提出する必要があります。求められた内容をまとめて、Jグランツ上から遂行状況報告書を提出しましょう。

5.中間監査・確定検査を受ける

遂行状況報告書以外にも、中間検査・確定検査などが補助事業実施期間に行われます

中間検査・確定検査とは、事務局の担当者が補助事業の実施場所を訪問して行う調査です。書類の保管状況・計画内容の無断変更の有無・補助事業の進捗状況などが、中間検査・確定検査で確認されます。

確定検査は補助事業実施期間が終わり、実績報告書を提出したあとに行われる調査です。中間検査・確定検査の結果によっては、補助金額が減額となる可能性もあるので注意しましょう。

6.実績報告をする

設備などの納品・検収・支払い・効果検証を行い、補助事業の実施結果を調査した補助事業実績報告書を事務局に提出しましょう

実績報告書が提出されないと補助金の支払いが行われませんので、早めに準備しておくのが大切です。実績報告書はJグランツで提出する前に、地域事務局に事前確認をしてもらう必要があります。事務局によって要求される内容が異なる場合もあるため、担当官とやりとりして内容をまとめなければなりません。

7.補助金交付額が確定して請求を行う

実績報告書を提出して確定検査に不備がなければ、1週間~2週間後に補助金の交付額が確定します。この時点以降で、補助金が減額される心配はまずありません。

交付額が確定したらJグランツ上で補助金を請求し、入金を確認しましょう。

8.事業化状況の報告を行う

ものづくり補助金を受給した事業者は、補助事業の終了後を初回として5年間の事業化状況の報告が求められます。事業化状況の報告の報告で求められるのは、以下の項目です。

  • 事業の状況
  • 付加価値額
  • 給与支給総額
  • 事業内最低賃金
  • 知的財産権など

また、補助事業終了後に会計検査院や事務局による実施検査が行われるケースがあります。検査の結果、補助金返還命令などの指示が出された場合は従わなければなりません。

ものづくり補助金は補助事業終了後も、事業化状況などの手続きが必要な点に留意しておきましょう。

ものづくり補助金の採択を目指すなら申請代行サービスがおすすめ

ものづくり補助金の採択を目指すなら、採択率がアップする申請代行サービスの活用がおすすめです。

ものづくり補助金の採択率は平均して50%ですが、申請代行サービスを利用すれば7割~9割の高い確率で審査通過が見込めます。認定経営革新等支援機関に認定されている金融機関や、税理士の行っている申請代行サービスがおすすめです。

認定経営革新等支援機関の金融機関は、中小企業庁の「認定支援機関検索」から検索できます。ほかにも、弁護士・税理士・行政書士などの士業が補助金の申請代行をしているケースもあります。ただし、申請代行サービスごとに得意とする分野が異なるケースも多いため、あらかじめ問い合わせて確認しましょう。

ものづくり補助金で申請代行サービスを活用するため、以下のポイントを解説します。

  • 申請代行サービスが利用される理由
  • 申請代行サービスのメリット
  • 申請代行サービスのデメリット

本業にリソースを集中しつつものづくり補助金の受給を目指すため、申請代行サービスの利用を検討しましょう。

申請代行サービスが利用される理由

申請代行サービスが利用される理由は、以下のとおりです。

  • 申請に手間をかけず、本業にリソースを集中したい
  • 採択率を高めたい
  • 専門家によるアドバイスが受けられる
  • 補助金を含めた資金繰り対策を相談したい

経験豊富な専門家からのアドバイスが受けられれば、申請の手間を最小化して本業にリソースを集中できます。また、補助金の交付までの資金繰りについても専門家に相談できるため、適切な資金調達方法を選びやすいのもメリットです。

申請代行サービスのメリット

申請代行サービスを利用するメリットは、以下のとおりです。

  • 採択率7割~9割ほどを期待できる
  • 申請準備の手間と時間の削減が可能
  • 事業計画の実現性が向上する

申請代行サービスの豊富な経験・ノウハウにより、事業計画の精度が高まるのがもっとも大きなメリットです。事業計画の精度が高まれば、採択率が上がるだけでなく事業の成功率の向上も見込めます。

申請代行サービスのデメリット

申請代行サービスを利用するデメリットは、以下のとおりです。

  • 依頼には費用がかかる
  • 専門家と事業計画を十分に練り上げる必要がある
  • 信頼性の高いサービスを見極めなければならない

申請代行サービスを活用すると、着手金・成功報酬といった費用が発生します。補助金の申請代行サービスの費用相場は着手金15万円、成功報酬10%ほどに設定されているケースが多いです。

申請代行サービスのなかには、信頼性の低い業者が存在するリスクは無視できません。信頼性の高い申請代行サービスを選ぶ主なポイントは、以下のとおりです。

  • 公式サイトで実績が公開されている
  • ポジティブな口コミ・評判が多い
  • 成功報酬を含めた料金体系やサービス内容が明確
  • 認定経営革新等支援機関・士業など専門性が高い
  • アフターフォローの有無

ひとつの業者だけに絞るのではなく、相見積もりをとって信頼性を慎重に見極めましょう。

補助金は専門家に相談しましょう|ものづくり補助金、IT導入補助金、事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、などすべてご相談できます。

ものづくり補助金に関するよくある質問

ものづくり補助金に関するよくある質問を解説します。

  • 個人事業主・フリーランスでもものづくり補助金は交付される?
  • 結局ものづくり補助金はいくらもらえるの?
  • 2024年(令和6年)のものづくり補助金のスケジュールは?
  • ものづくり補助金のグリーン枠とは?

計画を立てる前に疑問を解消し、スムーズな申請・採択・受給を実現しましょう。

個人事業主・フリーランスでもものづくり補助金は交付される?

ものづくり補助金は業種を問わず、個人事業主・フリーランスでも申請できます。ただし、採択された人数に対して個人事業主の割合は10%~15%ほどでしかありません。

ものづくり補助金に個人事業主が申請しづらい主な理由は、以下の3点です。

  • 技術的なハードルが高い
  • 補助事業を行う体制作りが難しい
  • 財務状況で採択されないケースもある

ものづくり補助金の審査では、技術面・実施体制・財務状況が重視されます。たとえば、革新的な製品・サービスの新規開発は個人事業主にとって非常に高いハードルです。

また、製品・サービスが開発できたとしても生産し続けられるかどうかも課題になります。ものづくり補助金を受給してから5年間は、状況報告の義務があるからです。

個人事業主でものづくり補助金に挑戦するなら、費用・手間・技術などの面を克服できるかどうか十分に検討しましょう。

結局ものづくり補助金はいくらもらえるの?

ものづくり補助金を申請し、採択されて受け取れる金額を以下の表にまとめました。多くの事業者が申請する省力化枠では、従業員の人数によって最大8,000万円までものづくり補助金を受給できます。

補助金枠の種類 省力化(オーダーメイド枠) 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型) グローバル枠
補助上限
  • 5人以下 750万
  • 6~20人 1,500万円
  • 21~50人 3,000万円
  • 51~99人 5,000万円
  • 100人以上 8,000万円
  • 5人以下 750万円
  • 6~20人 1,000万円
  • 21人以上 2,500万円
  • 3,000万円
補助率 1/2
※小規模・再生事業者:2/3
※1,500万円までは1/2、1,500万円を超える部分は1/3
通常類型:1/2
成長分野進出類型:2/3
※小規模・再生事業者:2/3
※新型コロナ加速化特例:2/3
1/2
※小規模企業:2/3

必要な金額を受け取るためにも、綿密な事業計画を立ててものづくり補助金の要件を十分に満たしましょう。

2024年(令和6年)のものづくり補助金のスケジュールは?

2024年(令和6年)の第17次・第18次ものづくり補助金のスケジュールを、以下の表にまとめました

公募回数 第17次ものづくり補助金 第18次ものづくり補助金
公募期間 2023年12月27日17時~2024年3月1日17時まで 2024年12月31日17時~2024年3月27日17時まで
採択発表 2024年5月中旬を予定 2024年6月下旬を予定

2024年3月現在、第19次ものづくり補助金のスケジュールは公表されていません。申請を予定しているなら、定期的にものづくり補助金総合サイトを確認しましょう。

なお、ものづくり補助金のスケジュールに関して詳細に知りたいなら以下の記事がおすすめです。

関連記事:2024年ものづくり補助金のスケジュール一覧|申請から採択後の流れも解説

ものづくり補助金のグリーン枠とは?

ものづくり補助金のグリーン枠は第16次まで存在しましたが、第17次から再編されて違う名称となりました

ものづくり補助金のグリーン枠とは、CO2削減に役立つ革新的な製品・サービスの開発などを支援する制度です。第17次ものづくり補助金からは、製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型DX・GX)に再編されました。

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、再生可能エネルギーの活用でCO2を削減しつつ競争力向上を目指す概念です。補助率は2/3となっており、採択されれば750万円~2,500万円の補助上限額が交付されます。

ものづくり補助金で将来の柱となる新規事業を育てよう!

ものづくり補助金とは、新製品・サービスの開発のための設備投資に活用できる中小企業・小規模事業者向けの補助金です。3つの枠と2つの類型があり、それぞれ事業の内容・補助率・補助上限額が大きく異なります。

ものづくり補助金は返済の必要がなく設備投資に活用できる反面、申請には手間と時間がかかります。しかし、申請代行サービスを利用すれば手間・時間を減らしつつ採択率の向上を目指せるためおすすめです。

なお、申請代行サービスへの問い合わせは「補助金Bizアシスト ものづくり補助金」から行えます。ほかにも、自社が利用できる補助金・助成金を探しているなら「補助金Bizアシスト」で検索しましょう。どんな補助金を受け取れるのかを専門家に相談でき、採択率90%以上を記録した実績があります。

ものづくり補助金で将来の柱となる新しい事業を生み出し、自社の業績向上と持続的な経営を実現しましょう。

この記事を書いた専門家

高橋 聡

高橋 聡

金融・ビジネス・ITなどを専門とするWebライターです。

「わかりやすい」「知りたい情報があった」「こんな情報知らなかった」と思っていただける記事作りを心がけています。

座右の銘は「楽するために努力する」。
なぜか、未だに楽はできていません。

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