中小企業・小規模事業者にとってデジタル化やDXの推進は重要課題ですが、コストや専門知識の不足が障壁となっています。しかし、IT導入補助金2024を活用すれば、企業は効果的にデジタル化を進めつつ生産性向上や競争力強化を実現できます。

今回の記事では、IT導入補助金2024の概要・申請枠・対象のITツール・申請方法・注意点などをわかりやすくまとめました。さらに、具体的な活用事例や申請時のよくある質問についても解説します。

本記事を読めば、IT導入補助金2024の仕組みを理解し、自社に最適な申請枠や導入すべきITツールを選択できます。IT導入補助金2024を効果的に活用して、デジタル化やDXによる生産性向上を実現しましょう。

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IT導入補助金2024とは?わかりやすく解説

IT導入補助金2024について、いくつかのポイントに分けてわかりやすく解説します。

  • IT導入補助金の目的・概要
  • IT導入補助金は法人・個人事業主が対象
  • 2024年度における主な変更点

IT導入補助金2024の大まかな内容を理解し、申請するかどうかを検討しましょう。

IT導入補助金の目的・概要

IT導入補助金2024は、中小企業・小規模事業者のITによる業務効率化や生産性向上を支援する制度です。2017年から実施されており、中小企業のIT化を促進して日本経済全体の生産性向上と競争力強化が期待されています。正式名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業補助金」で、ITツール導入費用の一部を補助金として受け取れます。

IT導入補助金2024の申請枠は5つあり、補助額・補助率・補助対象となる費用がそれぞれ異なるのが特徴です。IT導入補助金2024の新たな特徴として、インボイス制度対応に特化したインボイス枠が新設されています。インボイス枠(インボイス対応類型)では、会計ソフト・受発注ソフト・PCやレジなどのハードウェアも支援対象となっています。

IT導入補助金の申請の際は交付規程や公募要領を熟読し、自社が申請対象に該当するか確認が必要です。採択率を向上させるには、経営課題の明確化・労働生産性の向上計画・セキュリティ対策などの公募要領への理解が求められます。

IT導入補助金は法人・個人事業主が対象

IT導入補助金の対象となる事業者は、以下の2点を満たしている中小企業・小規模事業者です。

  • 日本国内で法人登記をしている
  • 国内で事業を営んでいる

IT導入補助金2024における中小企業の定義は、以下の表のように業種ごとに異なります。

業種分類・組織形態 資本金の額および出資の総額 従業員(常勤)
製造業・建設業・運輸業 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
ゴム製品製造業(自動車および航空機用タイヤおよびチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) 3億円以下 900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

小規模事業者の定義についても、以下の表にわかりやすくまとめました。

業種・組織形態 従業員(常勤)
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) 5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 20人以下
製造業その他 20人以下

申請枠によっては対象外となる場合もあるため、自社が中小企業・小規模事業者の定義にあてはまるかを十分に確認しましょう。なお、「大企業が発行済み株式や出資価格の半分以上を保有」「前年度にIT導入補助金を受けた」などの場合も対象外となります。

2024年度における主な変更点

IT導入補助金2024は2023年度と比較して、申請枠と対象ツールが変更されました。従来のデジタル化基盤導入枠を廃止し、インボイス枠として「インボイス対応類型」「電子取引類型」が新設されました。

また、2023年まではデジタル化基盤導入枠でEC関連の申請ができましたが、IT導入補助金2024では対象外となります。くわえて、2023年度の通常枠にあったA・B類型が廃止され、補助額の区分のみで分類されるようになりました。

さらに、IT導入補助金2024では特定の条件下で大企業も対象企業に含まれるようになりました。特定の条件とは、中小企業・小規模事業者と電子取引を行うためのITツールを取引先となる大企業などが導入する場合です。

IT導入補助金2024の主な特徴

IT導入補助金2024の主な特徴の主

な特徴は、以下のとおりです。

  • 補助金であるため返済が不要
  • 採択率が高い
  • 少額からの申請が可能

IT導入補助金の特徴をあらかじめ把握しておき、自社事業が申請対象かどうか検討しましょう。

補助金であるため返済が不要

IT導入補助金は給付型の支援制度であり、返済の必要がないのが大きな特徴のひとつです。銀行からの融資や借入とは異なり、企業の財務負担を軽減しつつ必要なITツールの導入が可能です。

ただし、申請時には厳正な審査があり、採択後も導入したITツールの効果測定および報告義務があります。また、不正受給や目的外使用が発覚した場合、補助金の返還を求められる可能性があります。

採択率が高い

IT導入補助金は、ほかの補助金や支援制度と比較して非常に採択率が高いのが特徴です。IT導入補助金2024の採択率を、以下の表にまとめました。

申請者数 採択数 採択率 (%)
通常枠 1,576 1,189 75.47
セキュリティ対策推進枠 18 14 77.78
インボイス枠 1,607 1,531 95.27
合計 3,201 2,734 85.42

採択率が高い理由はIT化のため、多くの中小企業・小規模事業者にIT導入補助金を活用してもらいたいからです。IT導入支援事業者が申請をサポートするため、申請書類の質が向上するのも採択率が高い要因のひとつです。

しかし、採択率が高いからといってすべての申請がとおるわけではありません。審査では「経営課題の理解」「具体的な問題意識」「労働生産性向上の計画目標値」「セキュリティ対策」などが評価されます。採択率を上げるにはIT導入支援事業者と相談しながら、自社の課題を的確に分析して実現可能な計画を立てるのが重要です。

参考:中小企業庁「「IT導入補助金2024」「通常枠:1次締切」、「セキュリティ対策推進枠:1次締切」及び「インボイス枠(インボイス対応類型):1次締切」の補助事業者を採択しました

少額からの申請が可能

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が少額の投資からでもITツールを導入できるよう設計されています。たとえば、IT導入補助金2024のセキュリティ対策推進枠では、補助額が5万円から100万円まで幅広く設定されています。

IT導入補助金2024の補助額を、以下の表にわかりやすくまとめました。

申請枠 補助率 補助額
通常枠 1/2以内 5万円~150万円未満(1プロセス以上)
150万円~450万円以下(4プロセス以上)
インボイス枠(インボイス対応類型) 3/4以内(中小企業)
4/5以内(小規模事業者)
2/3以内(50万円超)
50万円以下(下限なし)
50万円超~350万円以下
インボイス枠(電子取引類型) 2/3以内(中小企業・小規模事業者)
1/2以内(その他の事業者)
350万円以下(下限なし)
セキュリティ対策推進枠 1/2以内 5万円~100万円以下
複数社連携IT導入枠 3/4以内(中小企業)
4/5以内(小規模事業者)
2/3以内(50万円超)
50万円以下×グループ構成員数

IT導入補助金は申請額が少額の場合は補助率が高くなるため、事業規模の小さな事業者ほど負担の軽減が可能です。財務状況に懸念がある中小企業経営者・小規模事業者は、IT導入補助金を活用して効果的に生産性向上を図りましょう。

参考:IT導入補助金2024「IT導入補助金とは

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IT導入補助金の申請枠

IT導入補助金2024の申請枠は、以下の5つに分類されます。

  • 通常枠
  • インボイス枠(インボイス対応類型)
  • インボイス枠(電子取引類型)
  • セキュリティ対策推進枠
  • 複数社連携IT導入枠

それぞれの特徴を把握し、自社に最適な申請枠に申請するための準備を進めましょう。

通常枠

IT導入補助金2024の通常枠は、業務のデジタル化を図るためにITツールを導入する費用を補助する制度です。通常枠では、以下の7種類のプロセスが補助対象となります。

  • 顧客対応・販売支援
  • 決済・債権債務・資金回収管理
  • 調達・供給・在庫・物流
  • 会計・財務・資産・税務
  • 人事・給与・労務・教育
  • 業種固有のプロセス
  • 汎用・自動化・分析

補助対象となる主な経費は、以下のとおりです。

  • ソフトウェア購入費
  • クラウドサービス利用料(最大2年分)
  • オプションサービス(機能拡張やセキュリティ対策)
  • 導入に関するコンサルティング
  • マニュアル作成
  • ITツール導入のための研修
  • 保守サポート

IT導入補助金2024通常枠の補助率・補助額などを、以下の表にまとめました。

補助額 補助率 プロセス数 賃上げ目標 補助対象
5万円~150万円未満 1/2以内 1以上 加点項目 ソフトウェア購入費および導入するソフトウェアに関連するオプション・役務の費用
150万円~450万円以下 1/2以内 4以上 必須要件 ソフトウェア購入費および導入するソフトウェアに関連するオプション・役務の費用

IT導入補助金2024の通常枠における必須要件は、以下のとおりです。

要件 必須かどうか
労働生産性の向上計画の策定と実行 必須
1年後の労働生産性向上目標 必須
3年間の労働生産性向上目標 必須
給与支給総額の年平均1.5%以上向上 150万円以上の補助金を申請する場合は必須
最低賃金の地域別最低賃金+30円以上の引き上げ 150万円以上の補助金を申請する場合は必須

通常枠を利用すれば、業務効率化やデジタル化を進めつつ導入コストを軽減できます。ITツールを導入する予定があるなら、まずは通常枠での申請を検討しましょう。

インボイス枠(インボイス対応類型)

インボイス枠(インボイス対応類型)は、2023年に開始されたインボイス制度対応のためのITツール導入を支援する枠です。中小企業・小規模事業者が、インボイス制度に対応した会計ソフト・受発注ソフトなどを導入するための経費の一部を補助します。

インボイス対応類型はソフトウェアだけでなく、PCやレジなどのハードウェアも補助対象となります。ソフトウェアとハードウェアを一体的に導入できるため、より効果的なインボイス対応が可能です。

インボイス枠(インボイス対応類型)の補助額・補助率などは、以下の表のとおりです。

補助項目 補助額 補助率 補助対象
ITツール
  • 50万円以下
  • 50万円超~350万円
  • 50万円以下は 3/4以内 (小規模事業者は4/5)
  • 50万円超~350万円は2/3以内
ソフトウェア購入費・クラウド利用費(最大2年分)・ハードウェア関連費・導入関連費
パソコン・タブレットなど ~10万円 1/2以内 ITツールの使用に資するもの
レジ・券売機など ~20万円 1/2以内 ITツールの使用に資するもの

インボイス枠(インボイス対応類型)を活用し、インボイス制度への対応に必要なITツールを低コストで導入しましょう。

インボイス枠(電子取引類型)

インボイス枠(電子取引類型)は、インボイス制度に対応した企業間取引のデジタル化を推進するための枠です。中小企業・小規模事業者が、電子的な受発注システムや請求書の発行・受領システムを導入するための費用の補助が目的です。

電子取引類型補助対象には、以下のようなITツールが含まれます。

  • EDIシステム
  • クラウド型の受発注システム
  • 電子インボイスの発行・受領システム

なお、EDIとは企業間でネットワーク接続し、伝票・文書などの電子データを自動交換する仕組みです。

電子取引類型は、中小企業・小規模事業者と取引している大企業も補助対象となる可能性があるのが特徴です。電子取引類型はサプライチェーン全体のデジタル化を促進し、中小企業と大企業の取引の円滑化を目指しています。

IT導入補助金2024インボイス枠(電子取引類型)の補助額・補助率は、以下のとおりです。

補助対象経費区分 補助率 補助額
  • ソフトウェア購入費
  • クラウド利用費(最大2年分)
  • 導入関連費
  • 中小企業・小規模事業者など:2/3以内
  • その他の事業者など:1/2以内
350万円まで

インボイス枠(電子取引類型)を活用し、企業間の取引の効率化・ペーパーレス化・連携の強化を目指しましょう。

セキュリティ対策推進枠

セキュリティ対策推進枠は、中小企業や小規模事業者のサイバーセキュリティ対策を強化するために設けられた枠です。中小企業・小規模事業者が、セキュリティ対策に特化したITツール

を導入するための費用の補助が目的です。

セキュリティ対策推進枠で対象となる主なセキュリティツールは、以下のようになります。

  • サイバーセキュリティお助け隊サービス
  • ウイルス対策ソフト
  • パスワード強化ツール

IT導入補助金2024セキュリティ対策推進枠の補助額・補助率を、以下の表にわかりやすくまとめました。

補助額 補助率
5万円~100万円 1/2以内

セキュリティ対策推進枠を利用すれば、セキュリティツールを低コストで導入してサイバー攻撃のリスクを軽減できます。セキュリティ対策はデジタル化が進む現代のビジネス環境において、企業の競争力維持と持続可能な成長に不可欠な要素です。

複数社連携IT導入枠

複数社連携IT導入枠は、複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツールを導入する際に利用できる特別な枠です。複数の事業者が共同でITツールを導入し、業務プロセスの共通化などによりグループ全体の生産性の向上を支援するのが目的です。

複数社連携IT導入枠では、連携する企業グループ内で共通のITツールの導入が求められます。対象は、同じサプライチェーン内の企業群や地域の事業者グループなどです。

IT導入補助金2024の複数社連携IT導入枠の補助額・補助率は、以下の表のとおりです。

種類 補助額 補助率
①インボイス対応類型の要件に属する経費 ~350万円 50万円以下:中小企業3/4・小規模事業者4/5

50万円超~350万円:2/3

②インボイス対応類型の要件に属さない複数社類型特有の経費 補助上限額は50万円×グループ構成員数 2/3以内
①+②の合算 最大3,000万円まで -
事務費・専門家費 (①+②)×10%×2/3

もしくは200万円のいずれか低い方

-

ソフトウェアだけでなく、クラウドサービスの利用料やハードウェアの購入費用なども補助対象となる場合があります。なお、連携するすべての事業者が中小企業・小規模事業者の定義に該当しなければ申請できません。

複数社連携IT導入枠を活用し、サプライチェーン内の生産性向上による売上アップを実現しましょう。

2024年のIT導入補助金の申請スケジュール

IT導入補助金2024のスケジュールは、以下のとおりです。

【通常枠】

締切分 締切日 交付決定日 事業実施期間 事業実績報告期限
6次締切分 2024年8月23日(金)17:00 2024年10月3日(木)(予定) 交付決定~2024年12月9日(月)17:00 2024年12月9日(月)17:00

【インボイス枠(インボイス対応類型)】

締切分 締切日 交付決定日 事業実施期間 事業実績報告期限
6次締切分 2024年8月23日(金)17:00 2024年10月3日(木)(予定) 交付決定~2024年12月9日(月)17:00 2024年12月9日(月)17:00
9次締切分 2024年7月19日(金)17:00 2024年8月30日(金)(予定) 交付決定~2024年11月29日(金)17:00 2024年11月29日(金)17:00
10次締切分 2024年8月2日(金)17:00 2024年9月9日(月)(予定) 交付決定~2024年11月29日(金)17:00 2024年11月29日(金)17:00
11次締切分 2024年8月23日(金)17:00 2024年10月3日(木)(予定) 交付決定~2024年12月9日(月)17:00 2024年12月9日(月)17:00

【インボイス枠(電子取引類型)】

締切分 締切日 交付決定日 事業実施期間 事業実績報告期限
6次締切分 2024年8月23日(金)17:00 2024年10月3日(木)(予定) 交付決定~2024年12月9日(月)17:00 2024年12月9日(月)17:00

【セキュリティ対策推進枠】

締切分  

締切日

交付決定日 事業実施期間 事業実績報告期限
6次締切分 2024年8月23日(金)17:00 2024年10月3日(木)(予定) 交付決定~2024年12月9日(月)17:00 2024年12月9日(月)17:00

【複数社連携IT導入枠】

締切分 締切日 交付決定日 事業実施期間 事業実績報告期限
3次締切分 2024年8月23日(金)17:00 2024年10月3日(木)(予定) 交付決定~2024年12月9日(月)17:00 2024年12月9日(月)17:00

補助金は専門家に相談しましょう|ものづくり補助金、IT導入補助金、事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、などすべてご相談できます。

対象ソフトウェア一覧

IT導入補助金2024の対象ソフトウェアは、「IT導入補助金2024対象ツール(ソフトウェア)一覧」から確認できます。また、ソフトウェア・IT導入支援事業者の検索は「ITツール・IT導入支援事業者検索」から行ってください。

IT導入補助金2024の補助対象は、業務効率化やデジタル化を促進するITツールが中心です。IT導入補助金2024の対象となる主なITツールの種類を、以下の表にわかりやすくまとめました。

ITツールの種類 使用目的
受発注ソフト 受注および発注業務の効率化と管理
会計ソフト 財務管理・帳簿記録・決算業務の効率化
給与計算ソフト 給与計算・給与明細作成・労務管理の効率化
販売管理ソフト 販売データの管理・販売活動の最適化
顧客管理ソフト(CRM) 顧客情報の管理・営業活動の最適化
在庫管理ソフト 在庫の把握・発注管理・棚卸業務の効率化
生産管理ソフト 生産計画・進捗管理・生産実績の管理
電子商取引(EC)ソフト オンラインショップの運営・注文管理・決済処理
グループウェア チームのコミュニケーションと協働作業の効率化
プロジェクト管理ソフト プロジェクトの計画・進捗管理・タスク管理
セキュリティソフト システムやデータの保護・ウイルス対策
電子契約ソフト 電子署名・契約書の管理と保存
データ分析ソフト データの収集・分析・レポート作成
マーケティングオートメーションソフト マーケティング活動の自動化・効果測定
コールセンターシステム コールセンター業務の効率化・顧客対応の最適化
人事管理ソフト 人事情報の管理・勤怠管理・採用業務の効率化
電子決済システム オンライン決済・支払い処理の効率化
電子請求書発行システム 請求書の作成・送信・管理
スケジューリングソフト スケジュール管理・予定の共有と調整
ワークフロー管理ソフト 業務プロセスの管理・自動化・承認業務の効率化

なお、補助対象はIT導入支援事業者が提供するITツールに限定されるため、留意が必要です。

自社の業務プロセスや課題に合致し、補助金の要件を満たすITツールを選ぶのが重要です。導入後の効果測定や報告が求められるため、導入目的や期待される効果を明確にしたうえでITツールを選定しましょう。

IT導入補助金の利用方法

IT導入補助金の利用方法について、以下のポイントを解説します。

  • 申請手順から入金までの流れ
  • IT導入補助金の申請に必要な書類
  • 導入するITツールの選び方

あらかじめ申請の流れ・選び方・必要書類などを押さえ、計画的に準備を行いましょう。

申請から入金までの流れ

IT導入補助金2024の申請から入金までの流れは、以下のとおりです。

  1. IT導入支援事業者・ITツールの選定:申請者によるIT導入支援事業者とITツールの決定
  2. 申請準備:必要書類の準備
  3. 交付申請:IT導入支援事業者の協力を得ての補助金事務局への申請
  4. 審査・採択:事務局による申請内容の審査と採択結果の通知
  5. 交付決定:採択された場合の交付決定通知の受領
  6. ITツール導入・代金支払い:交付決定後のITツール導入と代金支払い
  7. 事業実績報告:ITツール導入後の事業実績報告書の提出
  8. 補助金額の確定:事務局による実績報告の確認と補助金額の確定
  9. 補助金の請求:確定通知受領後の補助金請求
  10. 補助金の入金:審査後の申請者指定口座への補助金の振込

IT導入補助金2024の申請には、「gBizIDプライム」のアカウントが必要となります。gBizIDプライムは、複数の行政サービスをひとつのアカウントで利用可能にするシステムです。

また、交付申請の要件として「SECURITY ACTION」の宣言が求められます。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」は、中小企業・小規模事業者がセキュリティ対策に取り組むと自己宣言する制度です。

なお、ITツールの契約・導入・支払いは交付決定後にしなければなりません。交付決定前にITツールの導入や支払いをすませると、補助対象外となるため注意しましょう。

申請手順から入金までの流れをさらに詳しく知りたいなら、公式サイトの「新規申請・手続きフロー」を確認してください。

IT導入補助金の申請に必要な書類

IT導入補助金2024の通常枠の申請に必要な書類は、以下のとおりです。

【法人】

必要書類 詳細
実在証明書 履歴事項全部証明書(発行から3か月以内のもの)
事業実態確認書類 税務署で発行された直近分の法人税の納税証明書

【個人事業主】

必要書類 詳細
本人確認書類 運転免許証(有効期限内のもの)、運転経歴証明書、住民票(発行から3か月以内のもの)
事業実態確認書類1 税務署で発行された直近分の所得税の納税証明書
事業実態確認書類2 税務署が受領した直近分の確定申告書の控え

申請枠によって必要とされる書類が異なるため、あらかじめ公募要領を十分に確認してから申請しましょう。

導入するITツールの選び方

IT導入補助金2024でITツールを選ぶときは、まず自社の業務課題や目標を明確にするのが重要です。現状の業務プロセスを分析し、非効率な部分や改善が必要な箇所を特定しましょう。

課題解決に適したITツールを探すには、IT導入支援事業者のサポートを受けるのがおすすめです。IT導入支援事業者は補助金制度に精通しており、適切なツールの提案や申請手続きのサポートを行ってくれます。

補助対象は登録ずみのITツールだけですので、「IT導入補助金2024対象ツール(ソフトウェア)一覧」を確認しましょう。ITツールを選定するには、以下のポイントに気をつけましょう。

  • 課題を解決できる機能があるか
  • 導入後の運用に問題がないか
  • サポート体制が充実しているか
  • 将来的な拡張性はあるか
  • 自社の既存システムと連携が可能か

また、ITツールの導入によって期待される効果を具体的に想定し、実現可能な数値目標を設定してください。数値目標は補助金申請時の事業計画書作成や、導入後の効果測定の報告で求められます。自社の課題・要件の確認・運用面の検討など、多角的な視点で導入するITツールを選定しましょう。

補助金は専門家に相談しましょう|ものづくり補助金、IT導入補助金、事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、などすべてご相談できます。

IT導入補助金の効果的な使い方がわかる3つの実例

IT導入補助金の効果的な使い方がわかる3つの実例を紹介します。

  • 【製造業】株式会社マルサン
  • 【広告業】株式会社シンク
  • 【福祉業】社会福祉法人三恵会

IT導入補助金の成功事例を参考に、自社での活用方法を十分に検討しましょう。

【製造業】株式会社マルサン

株式会社マルサンは、在来木造住宅用の建築資材の製造および販売を手がけている企業です。2025年の4号特例の見直しを契機と捉え、IT導入補助金でCADソフト「ARCHITREND ZERO」を導入しました。4号特例とは、建築基準法に基づく建築確認手続きの簡素化を目的とした制度です。

CADソフトの導入によって自社で木造住宅の構造計算ができるようになり、取引先の工務店にもメリットがあると考えました。そして、複数のソフトウェアを比較検討し、協力会社の利用実績がある「ARCHITREND ZERO」の導入を決定したのです。

タイミングよく構造計算のスキルを持つ新入社員が入り、スムーズな導入が実現しました。現在は新入社員だけでなく、既存社員2名もCADソフトのスキル習得に取り組んでいます。

今後の展望として、社内ワークフロー全体のデジタル化を進める計画を立てています。人事労務や勤怠のシステム化を検討しており、いくつかのツールの見積もりをとっている最中です。株式会社マルサンは今後も現場の声を拾い上げ、効果的なIT活用を進めていく方針です。

参考:IT導入補助金2024「株式会社マルサン ITツール活用事例

【広告業】株式会社シンク

大分県大分市府内町に本社を構える株式会社シンクは、広告制作・代理店業務・ホームページ制作などを手がける会社です。コロナ禍の影響で業界全体のデジタルシフトが進む中、IT導入補助金を活用してオンライン英会話レッスンの提供を開始しました。

同社は従来、タウン誌を活用した集客施策などのオフライン媒体の活用を得意としていました。しかし、コロナ禍によりオンライン媒体への移行が加速し、広告主のニーズもオンラインコミュニケーションへと変化したのです。

コンサル会社やウェビナーでIT導入補助金の活用を学び、オンラインレッスン予約システム「WTE」の導入を決定しました。ほかのシステムも検討しましたが、「パッケージ化されている」「価格帯

が合致した」という点が決め手となったのです。

申請手続きはスムーズに進み、交付決定後は「ぺらぺらEnglish.com」というマッチングサイトを立ち上げました。IT導入補助金を活用した新しい取り組みは、会社の宣伝にもつながっていると感じています。

現在は、オンライン英会話レッスンを軌道に乗せるのを最優先課題として取り組んでいるところです。また、将来的には「中国語・韓国語など対応言語を増やす」「絵画教室などの生涯学習分野への展開」も検討しています。

参考:IT導入補助金2024「株式会社シンク ITツール活用事例

【福祉業】社会福祉法人三恵会

社会福祉法人三恵会は、昭和63年に開設された特別養護老人ホームを運営しています。老人ホーム運営に必要不可欠な介護用ソフトの導入にあたり、IT導入補助金を活用しました。

既存の介護記録ソフトが古くなってきたため、サーバー更新時期に合わせて新しいソフトウェアへの切り替えを検討していました。そんななか、以前から取引のあった企業に、新しいソフトウェアとIT導入補助金の活用を提案されたのがきっかけとなったのです。

優先課題として、信頼性が高く継続利用できる業界トップシェアのソフトウェアを選びました。新しいシステムは文字や入力欄が大きく、オンラインで完結するため持ち運びできるタブレットにも対応しています。現場からは使い勝手がよくなったとの声もあり、作業工数も1人あたり10分~20分ほど削減されました。

今後は、「睡眠覚醒状態を判定」「バイタルデータ測定とデータ連携」などの機能を持つソフトウェアの導入を検討しています。導入すれば、見守り業務のサポートや半自動化による業務効率化と職員の負担軽減が実現する予定です。

社会福祉法人三恵会はIT導入補助金を活用し、介護現場のデジタル化でより質の高いサービスの提供を目指しています。

参考:IT導入補助金2024「社会福祉法人三恵会 ITツール活用事例

IT導入補助金を申請するときの注意点

IT導入補助金を申請するときには、以下のポイントに注意してください。

  • よくあるミスと対策
  • 申請内容の一貫性が重要

あらかじめ注意点を押さえておき、対策を講じてIT導入補助金の交付を実現しましょう。

よくあるミスと対策

IT導入補助金2024の申請時には、交付規程と公募要領に沿っているかを事前に確認する必要があります。とくに、「申請の対象となる事業者及び申請の要件」に記載されている申請対象企業の定義を十分にチェックしましょう。

審査項目は公開されているため、あらかじめ十分に理解したうえで申請すれば採択率を上げられます。IT導入補助金2024の主な審査項目を、わかりやすく表にまとめました。

審査項目 内容
事業面からの審査項目 自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか
計画目標値 労働生産性を向上させる具体的な目標を設定しているか
政策面からの審査項目 生産性の向上および働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか
賃上げ目標 賃上げに取り組んでいるか

よくあるミスとその対策としては、以下のようなものがあります

ミスしやすい項目 対策
申請書類の不備や記入漏れ
  • 申請前に複数の目で書類をチェック
  • 必要な情報がすべて正確に記入されているか確認
補助対象となる経費の誤った計上
  • 補助対象外の経費や期間外の経費を計上しないよう交付規程を熟読
  • 不明点はIT導入支援事業者に確認
申請期限の見落とし
  • 申請期間を十分に把握
  • 余裕のあるスケジュールで準備を進める
導入するITツールの選定ミス
  • 選定時には対象リストを確認
  • 自社の課題解決に適したツールを選ぶ
IT導入支援事業者との連携不足
  • IT導入支援事業者と密に連絡をとる
  • 必要な情報や書類をタイムリーに共有

採択されるためには「早めの準備」「十分な情報収集」「IT導入支援事業者との緊密な連携」が大切です。

申請内容の一貫性が重要

IT導入補助金2024において、申請内容の一貫性は審査を通過する可能性を高めるために非常に重要です。申請内容に一貫性があれば、導入するITツールの機能と自社の抱える問題が明確に結びついていると示せます。

IT導入補助金は申請時に、企業が直面している課題や目標を明確にし、ITツールがどのように貢献するかの説明が求められます。また、補助金獲得の手段としてではなく、事業改善や生産性向上のために活用しようとしていると示すのが重要です。

申請内容の一貫性は、導入後のITツールの効果的な活用にもつながります。導入目的と期待される成果が明確であれば、実際の導入プロセスや運用においても焦点を絞った取り組みが可能です。

自社の課題と導入するITツールの関連性を示し、期待される効果を明示した説

得力のある申請書類を作成しましょう。

補助金は専門家に相談しましょう|ものづくり補助金、IT導入補助金、事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、などすべてご相談できます。

IT導入補助金に関するよくある質問

IT導入補助金に関するよくある質問を解説します。

  • IT導入補助金は何回まで申請が可能?
  • IT導入補助金はいつ振り込まれるの?
  • IT導入補助金はいつから始まったの?
  • IT導入補助金は何に使えるか教えて
  • パソコンの購入にIT導入補助金は利用できる?

あらかじめ疑問を解消しておき、適切な申請枠に応募してIT導入補助金2024の交付を目指しましょう。

IT導入補助金は何回まで申請が可能?

IT導入補助金2024は申請回数に上限がなく、何度でも申請が可能です。ただし、同じ年度内では制限があり、事業者あたり1回のみの採択となっています。

なお、申請して不採択になった場合や申請を辞退した場合には、同じ年度内でも再申請ができます。

過去に採択を受けている場合でも、一定の条件を満たせば再申請できるのもIT導入補助金の特徴です。たとえば、「前回の交付から12か月以上経過」「前回とは異なる申請類型である」などが条件になります。

2回目以降の申請の場合、審査において減点対象となる可能性があります。具体的には、以下のようなケースが減点対象です。

  • 通常枠では前年度にデジタル化基盤導入枠で交付決定を受けている
  • 同じ年度内にほかの枠で申請または交付決定を受けている

IT導入補助金はいつ振り込まれるの?

IT導入補助金の振込時期は、補助金確定内容を承認してから約1か月後となるのが一般的です。ただし、実際の入金までの期間は申請時期・ITツールの導入にかかる時間・事務局の対応などの要因によって変動します。

入金時期の目安ですが、交付決定日からおおむね4か月から8か月後に入金されると想定しておきましょう。

なお、IT導入補助金では申請者が先にITツールの導入費用を全額支払う必要があり、補助金は後払いの形式となります。申請者は自己資金でITツールを購入し、その後の手続きを経て補助金が振り込まれる仕組みです。

交付決定後は、POファイナンスやファクタリングなどによる資金調達が可能です。自己資金が心許ない場合は、交付決定を担保に資金調達を検討しましょう。

IT導入補助金はいつから始まったの?

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者などの生産性向上を支援するため、2017年度から始まりました。当初は「サービス等生産性向上IT導入支援事業」という名称でしたが、現在は「IT導入補助金」として広く知られています。

IT導入補助金は何に使えるか教えて

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が業務効率化や生産性向上を目的としたITツールの導入に活用できる制度です。

業務効率化・生産性向上・インボイス対応などに資するITツール全般に、IT導入補助金は対応しています。また、インボイス枠ではPC・レジなどのハードウェアも補助対象です。

パソコンの購入にIT導入補助金は利用できる?

IT導入補助金2024でパソコンの購入は可能ですが、次のような条件があります。

  • インボイス枠(インボイス対応類型)で申請する
  • 補助対象となるITツール(会計ソフトなど)とあわせて導入する
  • パソコン購入費用が50万円以下
  • パソコン購入の補助上限額は10万円
  • インボイス制度対応に必要なハードウェアとして認められる

パソコン以外にインボイス対応のITツールの導入も必要なため、IT導入補助金を活用するかどうか慎重に検討しましょう。

IT導入補助金を利用して事業のデジタル化・DXを実現しよう!

IT導入補助金2024は、中小企業・小規模事業者のIT活用を支援する制度です。業務効率化やデジタル化を促進するITツール導入費用の一部を補助し、生産性向上を後押しします。

通常枠やインボイス対応枠などが設けられており、目的によって適切な申請枠に申請するのが大切です。IT導入支援事業者のサポートを受けながら、十分な事前準備を行うのが審査に通過するための重要なポイントです。

IT導入補助金のサポートを受けたいなら、「補助金Bizアシスト」が無料相談を受け付けています。専門家によるサポートを受ければ、採択率は9割と非常に高くなるのでおすすめです。

IT導入補助金2024を活用して自社のデジタル化やDXを推進し、競争力強化と持続可能な成長を実現しましょう。

この記事を書いた専門家

高橋 聡

高橋 聡

金融・ビジネス・ITなどを専門とするWebライターです。

「わかりやすい」「知りたい情報があった」「こんな情報知らなかった」と思っていただける記事作りを心がけています。

座右の銘は「楽するために努力する」。
なぜか、未だに楽はできていません。

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