事業再構築補助金は、中小企業や個人事業主などの思い切った事業再構築を支援する補助金制度です。
申請するにはたくさんの手続きが必要で必要書類も多いため、難しく感じる方もいるでしょう。時間をかけて用意して申請しても採択されるのはほんの一握りなのでは?と疑問に思う方もいるかもしれません。
本記事では、事業再構築補助金の概要や対象要件、申請から採択の流れ、採択されるポイントと注意点を解説します。気になる過去の採択率もご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
事業再構築補助金とは?
まずは、事業再構築補助金の目的や概要、公募期間、補助金額を解説します。
事業の目的や概要
事業再構築補助金とは、思い切った事業再構築を試みる事業者を支援するための補助金です。
事業再構築補助金の公募要項には、事業再構築補助金の目的を次のように記載しています。
“新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。”
事業再構築補助金には6つの申請枠があり、それぞれ申請要件が異なります。採択された申請者に、一定の範囲内で補助金を支給するという内容です。
公募期間
第7回事業再構築補助金の公募期間は、次のとおりです。
2022年7月1日(金)~10月5日(金)18:00
なお、第8回事業再構築補助金の詳細は、10月には発表される見込みです。
補助金額
事業再構築補助金には6つの申請枠があり、それぞれの枠で補助金額が次のように異なります。
なお、補助率はそれぞれの枠ごとに1/3~3/4の範囲で決められています。
通常枠
従業員数 | 補助金額 |
---|---|
20人以下 | 100万円~2,000万円 |
21~50人 | 100万円~4,000万円 |
51~100人 | 100万円~6,000万円 |
101人以上 | 100万円~8,000万円 |
大規模賃金引上枠
従業員数101人以上:8,000万円超~1億円
回復・再生応援枠
従業員数 | 補助金額 |
---|---|
5人以下 | 100万円~500万円 |
6~20 人 | 100万円~1,000万円 |
21人以上 | 100万円~1,500万円 |
最低賃金枠
従業員数 | 補助金額 |
---|---|
5人以下 | 100万円~500万円 |
6~20 人 | 100万円~1,000万円 |
21人以上 | 100万円~1,500万円 |
グリーン成長枠
企業規模 | 補助金額 |
---|---|
中小企業者等 | 100万円~1億円 |
中堅企業等 | 100万円~1.5億円 |
緊急対策枠
従業員数 | 補助金額 |
---|---|
5人以下 | 100万円~1,000万円 |
6~20 人 | 100万円~2,000万円 |
21~50人 | 100万円~3,000万円 |
51人以上 | 100万円~4,000万円 |
事業再構築補助金の採択率はどれくらい?
事業再構築補助金の第1回~第6回までの採択率は、次のとおりです。
回数 | 採択率※ |
---|---|
第1回 | 55% |
第2回 | 45% |
第3回 | 44% |
第4回 | 45% |
第5回 | 46% |
第6回 | 50% |
※小数点以下四捨五入
なお、第1回公募と第2回公募では、申請者のうち要件を満たしていない申請件数も公表しており、要件を満たす申請者の採択率は第1回で66%、第2回で51%です。
事業再構築補助金のホームページでは、それぞれの申請枠ごとの採択率を公開しています。詳しく知りたい方は確認してみてください。
補助対象要件
事業再構築補助金の補助対象要件は、申請枠によって異なります。
それぞれの申請枠の概要と補助対象要件を解説します。
通常枠
通常枠は、下記の要件を満たす場合に申請可能です。
- コロナ以前と比較して、売上が10%以上または合計付加価値額が15%以上低下している
- 新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組む
- 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援に関する専門的な知識や実務経験があると国から認定を受けた支援機関のことです。例えば、税理士、公認会計士、商工会、金融機関などが挙げられます。
大規模賃金引上枠
大規模賃金引上枠は、多くの従業員を雇用し、継続的な賃金の値上げと従業員の増加に取り組む事業者を対象とした枠です。
大規模賃金引上枠では、通常枠の要件のほか、補助事業実施期間の終了から3~5年の事業計画期間終了までの間に下記の要件を満たす必要があります。
- 最低賃金を年間45円以上の水準で引き上げる
- 従業員数を年間平均1.5%以上(初年度は1.0%以上)増加させる
回復・再生応援枠
回復・再生応援枠は、新型コロナウイルスの影響による業績の悪化や、事業再生に取り組む事業者を対象に支援を実施する枠です。
通常枠の要件のほか、下記の要件を満たす必要があります。
- 2021年10月以降の月の売上高が、2020年または2019年の同月日と比べて30%以上減少している
- 中小企業活性化協議会などから支援を受け、再生計画を策定している
最低賃金枠
最低賃金枠は、最低賃金引上げにより原資の確保が難しく、特に業状が厳しい事業者を支援する枠です。
通常枠の要件のほか、下記の要件を満たす必要があります。
- 2020年10月~2021年6月までの間に、3カ月以上最低賃金から+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いる
- 2020年4月以降の売上高が、前年または前々年の同月から30%以上減少している(付加価値額45%以上の減少でも可)
グリーン成長枠
グリーン成長枠は、グリーン分野で事業再構築によって成長が見込める事業者を支援する枠です。
対象要件は次のとおりです。
- 事業再構築指針に則した事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること
- 補助事業終了後3~5年に、付加価値額の年率平均5.0%以上または従業員一人あたり付加価値額の年率平均5.0%以上増加が見込める事業計画書を作成すること
- グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題を解決する取り組みに該当し、その取り組みに関して2年以上の研究開発・技術開発または従業員の人材育成を合わせてすること
緊急対策枠
緊急対策枠は、原油価格や物価高騰などの経済・環境の影響を受けている事業者の事業再構築を支援する枠です。
通常枠の要件のほか、原油価格や物価高騰により売上が一定割合減少している、またはコロナの影響を受けている場合に申請が認められます。
申請から採択までの流れ
事業再構築補助金の申請から採択までのおおまかな流れは次のとおりです。
- 認定経営革新等支援機関を決める
- 必要書類を準備する
- 申請手続きをする
申請の流れを詳しく確認していきましょう。
1.認定経営革新等支援機関を決める
事業再構築補助金のすべての枠で、事業計画を認定経営革新等支援機関と策定することが要件に含まれているため、まずは支援を受ける認定経営革新等支援機関を決める必要があります。
こちらの認定経営革新等支援機関検索システムから、地域や種別、相談内容、実績などを指定して認定支援機関を検索できます。
検索システムでは、事業再構築補助金の支援実施の有無や採択率が記載されているので、実績のある認定支援機関に目を向けるのがいいでしょう。
2.必要書類を準備する
続いて、申請に必要な書類を用意します。
それぞれの枠で必要書類が異なりますが、ここではすべての枠で共通する必要書類をご紹介します。
- 事業計画書
- 認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書
- コロナ以前に比べて売上高または付加価値額が減少したことを示す書類
- 決算書
- ミラサポplus「電子申請サポート」の事業財務情報
- 従業員数がわかる書類
- 建物を新築する費用を経費に計上している場合、建物の新築が必要であることを証明する書類
- リース料軽減計算書
- リース会社が適切にリース取引を行うことについての宣誓書
詳しくは事業再構築補助金の公募要領に記載しているので、応募時は公募要領をよく確認して書類を用意しましょう。
3.申請手続きをする
次は、申請手続きをします。
申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。GビズIDとは、電子で行政サービスを受けられるシステムのことです。未取得の方は、まずは取得手続きを済ませましょう。
アカウントを取得したら、GビズIDプライムアカウントで必要事項を入力し、必要書類を添付して送信します。
締め切り間際は応募殺到することが予想されるので、申請手続きがスムーズにいかない可能性があります。そのため、余裕を持って手続きをするようにしましょう。
4.審査結果が通知される
続いて、審査結果が通知されます。
審査結果は、登録した担当者のメールアドレスに通知されるので、Gビズ IDにログインして確認しましょう。
なお、第7回の採択結果は11月下旬から12月上旬頃に通知される予定です。
採択されるためのポイント
事業再構築補助金の採択されるポイントは、次のとおりです。
- 審査項目を熟読して事業計画書を作成する
- 申請書類の不備や不足がないようにしっかりと確認する
それぞれの内容を詳しく解説します。
審査項目を熟読して事業計画書を作成する
事業計画書は、事業再構築補助金の公募要項に記載されてある審査項目に即して、主に事業計画の妥当性や実現性などを総合的に審査されます。
ポイントは、抽象的であいまいな事業計画ではなく、補助金が必要な理由や事業の内容を明確にすること。どうして事業再構築が必要なのか、事業を再構築してどのような影響があるのかなどを、具体的にわかりやすく記載することが大切です。
事業再構築補助金ホームページの採択事例のページで、これまでの採択事例を紹介しているので、事業計画書に不安がある方は参考にするといいでしょう。
申請書類の不備や不足がないようにしっかりと確認する
申請書類に不備があると審査に通らない可能性があります。そのため、申請時には記入漏れや書類の不足がないように、しっかりと確認することが重要です。
ちなみに、第1回、第2回の公募では、応募者の1~1.5割程度に書類の不備があったと公表しています。
次のページによくある申請時の不備を公開しているので、確認するといいでしょう。
『交付申請にあたってご注意いただくこと|令和二年度第三次補正事業再構築補助金』
申請の注意点
申請の注意点は、下記の3点です。
- 「GビズIDプライムアカウント」の取得は早めに済ませておく
- 高額な成功報酬を請求する悪質な業者には要注意
- 補助金は後払いのため、補助事業実施期間中の資金繰りを考えておく
それぞれを詳しく解説します。
「GビズIDプライムアカウント」の取得は早めに済ませておく
事業再構築補助金の申請手続きに必要なGビズIDプライムアカウントは、発行するのに1週間程度の時間がかかります。そのため、早めにアカウントを発行しておく必要があります。
締め切りが近い場合は申請期限に間に合わない可能性があるため、早めに手続きを進めておきましょう。
高額な成功報酬を請求する悪質な業者には要注意
事業再構築補助金に関して外部の支援を受ける際は、サービスの内容とかけ離れた報酬を請求する悪質な業者には注意です。
参考程度にお伝えすると、ものづくり補助金の総合サイトでは支援者への成功報酬を公開しており、平均で10%程度とのことです。こちらも一つの目安になるでしょう。
外部支援を受ける際は、金額や条件が不透明なまま契約を勧められたり、申請時に虚偽の内容を書くように勧められたりするなどの不信な点を感じたら、下記のトラブル窓口に通報してください。
<トラブル等通報窓口>
受付時間:9:00~18:00(土日祝日を除く)
電話番号:03-6810-0162
補助金は後払いのため、補助事業実施期間中の資金繰りを考えておく
補助金は後払いなので、補助金を受け取るまでの資金繰りを事前に考えておく必要があります。補助金は1年程度の補助事業実施期間のあとに受給するので、まずは補助事業を実施するための資金を用意していおかなければいけません。
補助金は100万円~1億円で、補助率は1/3~3/4です。金額が大きい補助金を申請する場合は、銀行で借り入れが必要な場合もあるでしょう。申請の前に、資金調達の方法を考えておくとスムーズかもしれません。
事業再構築補助金第8回公募について
事業再構築補助金第8回公募について、最低賃金枠の要件が緩和されることが発表されています。
最低賃金枠の第7回までの内容と、第8回からの変更点を下記にまとめました。
第7回公募まで | 第8回からの変更点 | |
最賃売上高等減 少要件 |
2020年4月以降の売上高が、 前年または前々年の同月から 30%以上減少している (付加価値額45%以上の減少でも可) |
要件なしとなった |
最低賃金要件 | 2020年10月~2021年6月までの間に、 3カ月以上最低賃金から+30円以内で 雇用している従業員が全従業員の 10%以上いる |
期間が2021年10月~2022年8月 までに変更となった |
「事業再構築」の定義に該当する 事業であることを示すための要件 である製品等の新規性要件 |
①過去に製造等した実績がないこと ②製造等に用いる主要な設備を変更すること ③定量的に性能又は効能が異なること |
②が任意要件となった |
出典:事業再構築補助金「最低賃金枠」の要件見直しについて|事業再構築補助金
最賃売上高等の減少要件が撤廃され、最低賃金要件と製品等の新規性要件が変更となりました。
詳しくは、10月に発表される予定の第8回公募の詳細を確認してください。
事業再構築補助金に関してよくあるQ&A
- 事業再構築補助金に採択されるには、早く申請したほうが有利になりますか?
- 受付の順番は採択と関係ありません。提出していただいた資料をもとに審査をし、採択者を決定しています。
参考:事業再構築補助金 よくあるご質問【その他】
事業再構築補助金の概要や申請の流れを把握し、ポイントを押さえて申請手続きしよう
事業再構築補助金は、売上が減ってしまった企業にとっては大変魅力的な補助金ですが、申請手続きが複雑でハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。
まずは事業の概要と申請の流れを把握し、注意点や採択されるポイントを参考にして申請の用意を進めてください。
事業再構築補助金のホームページや公募要領を参考にしてもよくわからない点がある場合は、認定経営革新等支援機関に相談したり、事業再構築補助金事務局に問い合わせたりして、疑問点を解消しましょう。
事業再構築補助金事務局コールセンター
ナビダイヤル:0570-012-088
IP電話用:03-4216-4080
受付時間: 9:00~18:00 (土日祝日は除く)
参考サイト
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo007.pdf
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/shinsei_fubi.pdf