ROE(Return On Equity)とは自己資本利益率という財務分析の指標の1つです。
「アールオーイー」と読みます。

ROEから「どれだけ資本を効率よく使い利益を得ているか」という経営の効率性を知ることができます。

ROEの計算式やROEの具体的な改善方法などについて詳しく解説していきます。

 

ROEの計算式

ROEの計算式は次の通りです。

ROEの計算式

ROE=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

当期純利益=売上高 - 売上原価 - 販管費 - 営業外損益 - 特別損益 - 法人税等

自己資本=総資本 - 負債

ROEは、株主資本利益率とも呼ばれ、株主の資本である自己資本を分母に置くことで、会計期間中に株主の資本1単位で何倍の純利益を生み出したかを測ることができる指標です。多くの場合、同業界の他社と比較してその優劣を判断します。

例えば自己資本が100当期純利益が10であれば、ROEは10%となり、自己資本が50当期利益が10であれば、ROEは20%です。

自己資本 100 50
当期純利益 10 10
ROE(自己資本)利益率 10% 20%

ROEが高く、少ない自己資本で高い利益を上げられるという事は、より多くの資本があればより多くの利益を見込める可能性があるということです。

そのため、REOが業界平均よりも高く自己資本が少ない企業は、増資をすることでさらに多くの利益を期待することができます。

ROEは企業のM&Aや資本戦略の指標としても活用することができます。

ROEの計算式は分解できる

さらにROEの計算式は次の3つに分解することができます。

ROEの分解計算式①

ROE=EPS(一株当たり利益)÷ BPS(一株当たり純資産)×100

EPS=当期純利益÷発行済株式総数…(収益性指標)

BPS=純資産÷発行済株式総数…(安定性指標)

こちらは、一株当たりの利益は一株当たりの純資産の何倍なのか、ということを知ることができます。

一株あたりの利益が大きければ大きいほどROEも大きくなるので、株主にとって投資効率のよい会社だということが分かります。

さらにROEは次の計算式に分解することも可能です。

ROEの分解計算式②

ROE=当期純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ×100

当期純利益率=当期純利益÷売上高

総資産回転率=売上高÷総資産…(効率性指標)

財務レバレッジ=総資産÷自己資本

ROEの分解計算式③

ROE=ROA×財務レバレッジ×100

ROA=当期純利益の額÷総資産額

これらの計算式では次の指標を高めることでROEが向上します。

  • 当期純利益率(会社全体の収益力を示す)
    →利益を高める・同じ利益で純資産を減らす。
  • 総資産回転率(資産が効率的に売上に結びついているかを表す)
    →売上を高める・少ない純資産で同じ売上出す。
  • ROA(総資産を使って、どれだけの利益を上げているかを示す)
    →利益を高める・同じ利益で総資産を減らす。
  • 税務レバレッジ(自己資本を梃子にどれだけ負債を活用しているかを示す)
    →借入金を活用して設備投資を行う・借入金の割合を増やす。

売上を向上させる、利益率を引き上げるなどの経営努力をしていけばROEは上昇します。

また、借入金を活用して財務レバレッジを上げることでもROEは高くなります。

効率のよい経営をするため、どこを改善すべきなのかという経営改善のヒントをROEの計算式から知ることが可能です。

ROAとの違い

ROEと似た指標としてROA(Return On Assets)総資産利益率という指標があります。
「アールオーエー」と読みます。

計算式は次の通りです。

ROAの計算式

ROA=当期純利益 ÷ 総資産 × 100

ROEは、自己資本からどの程度の利益を生み出しているかを示すものです。

これに対して、ROAは総資産からどの程度の利益を生み出しているのかを示しています。

少ない資産で利益を出しているほどROAは高くなります。

自己資本からどれだけの収益性があるかを示すROEは、投資家や株主が投資効率を検討する際に頻繁に用いられる指標です。

他方、ROAは資産をどれだけ有効活用しているかを示す指標ですので、経営者が効率的な経営を検討する際に用いられることが多くなります。

ROEで何がわかる?

ROEによって分かることは、その会社の経営効率です。

一般的にROEは「10%以上が1つの目安」などと言われますが、実際には業種によって平均的なROEは大きく異なります。

ROEは業界・業種によってその平均値が異なり、その優劣はそれぞれを比較して判断されます。この平均を超えるようなROEを目指す経営設計を行う事を目指します。

業界・業種別平均ROE

経済産業省の「2019年企業活動基本調査速報(2018年度実績)」によると 業種別の平均的なROEは次の通りです。

業界・業種 平均ROE
鉱業・採石業・砂利採取業 3.5
製造業 8.4
電気・ガス業 5.9
情報通信業 10.2
卸売業 10.7
小売業 7.3
クレジットカード業・割賦金融業 2.6
物品賃貸業 8.7
学術研究・専門技術サービス業 4.8
飲食サービス業 8.5
生活関連サービス業・娯楽業 7.4
個人教授書 8.2
サービス業 14.3
全体平均 8.6

参考:経済産業省|2019年企業活動基本調査速報-2018年度実績-

業種によっては高額な借入によって設備投資をしなければならないので、業種によって自己資本の割合は異なり、その結果ROEも業界によって異なります。

まずは業界平均程度のROEを目指して、当期純利益率、総資産回転率、ROAなどの改善を図るのがよいでしょう。

ROEの注意点

ROEが高い方が経営効率がよいことは間違いありません。

しかしROEは財務レバレッジが大きいと上昇するという特徴があります。

これは自己資本によって行った多額の借入により純利益を増加したしたケースが当てはまります。

借入金が多すぎるとROEは上昇する

借入金が多くなった時に、財務レバレッジ効果が発揮され利益が大きくなるとROEは上昇します

しかし、借入金が大きくなると自己資本比率が下がるということでもあります。

借入金を活用して利益の最大化を目指すあまりに自己資本比率が下がってしまったら、いくらROEが上昇しても企業の安全性を損なうことになりかねません。

借入金を上手に活用することで利益を生み出すことができそれによってROEも上昇します。

しかし財務レバレッジ効果を追求するあまりに借入過多にならないように注意しましょう。

自社株買いにも注意

また、借入金で調達した資金で、自社株を購入する方法も要注意です。

社債を発行して、債権市場から調達した金額で自社株を購入する手法があります。株価の下支えや敵対的買収に備ええるために稀に行われることがあります。

確かに自社株を購入すれば自己資本が減少しROEは確かに上昇するものの、自己資本比率を大きく損なうことになります。

この方法でも企業の安全性を損なっているので、この方法でROEが上昇しても良好な経営状態とは言えません。

ROEの改善方法

ROEは経営努力によって改善することができます。

方法は様々ですが主に次の2つの方法で改善をすることが可能です。

  1. 付加価値をつけて売価を上げる
  2. コストを下げる

ROEの2つの改善方法をご紹介していきます。

付加価値をつけて利益率を上げる

付加価値とは、事業活動の結果として生み出された製品・サービスなどの価値の中で、会社の事業活動自体から生み出した価値のことで、付加価値は企業の実力そのものです。例付加価値は「控除法」と「積上法」で算出することができます。

控除法

控除法とは、自社の売上高から他社の価値を控除する方法

付加価値 = 売上高 - 外部購入価値(材料費、購入部品費、運送費、外注加工費)
(中小企業庁方式)

控除法では、外部から購入する費用を抑えることで付加価値が上昇します。

積上法

積上法とは、自社が生み出した価値を加算する方法

付加価値=経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課
(日銀方式)

付加価値=労務費+売上原価の減価償却費+人件費+地代家賃+販管費の減価償却費+従業員教育費+租税公課+支払利息・割引料+経常利益
(りそな)

積上法では、生産の過程で生み出される価値(人件費や経常利益など)を高めていくことによって付加価値が上昇します。

企業が付加価値を上昇させる方法としては次のような方法を考えることができます。

  • マーケティングを徹底し、顧客のニーズにあった商品を開発する
  • 外注費を抑えて自社生産をする
  • 利益率の高い商品を特化して販売する

顧客が何を求めているのか、徹底的にリサーチして付加価値の高い商品を開発したり、自社の商品ラインナップの中でも利益率の高い商品の販売に力を入れることで売上総利益を拡大することが可能です。

また、外注費を抑えれば外部購入価値が下がるので、付加価値は上昇します。

これらの方法で売上を大きくすれば純利益も上昇して、ROEは高くすることができるでしょう。

コストを下げて利益率を引き上げる

売上原価や経費を圧縮することによって売上は変わらなくても純利益は大きくなります。

具体的には次のような方法です。

  • 仕入れコストを引き下げる
  • 人員配置を効率化し残業代を削減する
  • 機械化によって人員を合理化する

売上の増加を達成することは簡単ではありません。

しかし、コストダウンは社内の努力によって達成することができ、売上の増加と同じだけの効果をもたらします。

コストダウン前 コストダウン後
売上 1,000万円 1,000万円
コスト 950万円 800万円
純利益 50万円 200万円
自己資本 1,000万円 1,000万円
ROE 5% 20%

この事例では、売上は1,000万円で同じでも、コストダウンを図ったことによって、利益もROEも4倍となっています。

コストダウンという経営努力を行うことによって売上を伸ばさなくてもROEを伸ばすことは可能です。

売上原価や販売費及び一般管理費など、削減できる部分がないか、もう一度社内で点検を行ってみましょう。

ROEを維持する企業が真の優良企業

ROEはどれだけ自己資本を効率的に使用して利益を出すことができているかの指標です。

ROEが高いほど、自己資本を効率的に使用できていることは間違いありません。

しかし、短期的には借入金による資金調達を行うことでもROEは上昇するので、短期的にROEが高いことについてはそれほどポジティブに評価することはできません。

ROEが高い水準で毎年安定している企業が真の優良企業です。

毎年利益を積み重ね、自己資本が安定していなければROEを高水準で維持することは不可能です。

ROEの計算式から「どこを改善すれば自社の指標は良くなるのか」を分析し、収益性の高い企業を目指しましょう。