予備知識として債権・債務の違いを理解しよう
債権譲渡の予備知識として必要な債権とは、特定の行為・給付を請求できる権利です。一方、債務は債権を請求されて債権者へ行為・給付を行う義務です。たとえば、ビジネスローンだと融資を行った銀行が債権者、借入をした企業が債務者となります。
債権・債務の給付は金銭による支払い・返済、行為は強制執行などで債務者の資産を売却するといったケースです。また、金銭だけではなく特定物債権のように動産・不動産を請求できる債権もあります。以下の表は、債権の種類の一例です。
債権の種類 |
概要 |
特定物債権 |
土地・中古品などを請求できる債権 |
金銭債権 |
代金債権・賃金債権など金銭を要求できる債権 |
公債権 |
行政の処分によって発生する債権 |
利息債権 |
利息の支払いを受け取る権利 |
債権の売買である「債権売却(債権譲渡)」とは?
債権売却とは一般的に債権譲渡と呼ばれ、自分の保有する債権を第三者に売却する行為です。原則として債権は自由に売却・譲渡できますが、債権譲渡禁止特約などが付帯している場合は対応がやや異なります。
法的には債権を売り渡す人を譲渡人、受け取る人を譲受人と呼びます。企業同士による代表的な債権譲渡の流れは、以下のとおりです。
- AがBに商品を納入して売掛債権100万円が発生する
- 売掛債権が発生した時点で、AはBに100万円の支払いを要求できる債権を得る
- 何らかの理由でAは100万円分の売掛債権をCに90万円で譲渡する
- AとBの債権・債務関係は解消し、代わりにCがBに対して100万円の支払いを要求する債権を得る
- 3~4の例ではAを債権の譲渡人、Cを譲受人と呼ぶ
上記の例でAは10万円の損失を出す代わりに、売掛債権の早期現金化や債権回収の手間の軽減といったメリットを得られます。一方、Cは譲渡された売掛債権を満額回収できれば10万円の利益が生まれます。
上記の例のほかにも、以下のようなケースがあります。
- AとBがお互いの債権を相殺
- BがAに対して支払えない債務を、保有する第三者の債権で支払う
- 不良債権を債権回収会社に売却
債権譲渡の大半は、資金調達・債権回収・不良債権処理という3つの目的で行われます。
債権譲渡の目的とは
債権譲渡の目的と手段・仕組みについて、以下の表にまとめました。
債権譲渡の目的 |
手段・仕組み |
手元資金を確保 |
第三者に債権を譲り渡して売掛債権を早期現金化 |
債務者が所有する債権の譲渡 |
債務者である取引先が保有する債権を譲り受けて滞納分を回収 |
取引先の代金不払いに備える債権譲渡担保 |
取引先が保有する債権を担保に設定し、未払いの場合は債権で代金を回収 |
未回収債権の売却 |
回収の見込みがない債権を、債権回収会社に売却 |
何のために行うのかという目的を明確に設定し、適切な手段で賢く債権譲渡を活用しましょう。表にまとめた債権譲渡の目的と手段・仕組みについて、さらに詳しく解説します。
手元資金を確保
債権譲渡は、手元資金を確保して資金繰りを改善するために行われるケースが多く見られます。
債権譲渡によって資金調達を行う方法としては、ファクタリングが一般的です。ファクタリングとは売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料が差し引かれた代金を受け取れる仕組みです。
最短即日で資金調達ができるうえ、オンラインファクタリングならパソコン・スマートフォンさえあればどこからでも申し込めます。
ファクタリング以外に、他社に債権譲渡を行って手元資金を確保する方法もあります。ファクタリングのような手数料は不要ですが、合意形成や手続きに時間がかかるため急いでいるときには向いていません。
債務者が所有する債権の譲渡
債務者が支払いを行えない場合、保有している第三者の債権を債権者に譲渡して弁済するケースがあります。たとえば、債務者が保有している優良な売掛債権なら回収できる見込みは高いです。
経営状態が悪い債務者に対して行われる債権譲渡で、倒産前に実施されるケースも少なくありません。ただし、債権者は譲渡される債権の内容について十分な調査が必要です。債権の信用力・時効・二重譲渡などの調査を踏まえ、適切な価格設定をして譲り受けましょう。
取引先の代金不払いに備える債権譲渡担保
取引先の経営状態が思わしくない場合、代金の不払いに備えるために債権譲渡担保を用いるケースがあります。債権譲渡担保とは代金の不払いが発生したとき、担保にとっていた債権を回収する仕組みです。
経営状態が悪い場合以外に、新製品の販売などで売上や利益が見通せないケースでも用いられます。
未回収債権の売却
回収の見込みがない不良債権はファクタリングで取り扱えないため、債権回収会社に売却します。債権回収会社とは債務者が支払いに応じない不良債権を買取し、債権者の代わりに回収する民間企業です。
不良債権をいつまでも保有しておくと、自己資本比率が小さくなり企業価値が低くなります。債権回収会社に不良債権を売却すると、以下のようなメリットがあります。
- 不良債権を損金として無税償却できる
- 未回収債権を回収する手間・時間を省ける
- 損金として処理し、不良債権による自己資本比率の低下を回復できる
- 債権回収会社に額面の1%~5%で買取してもらえる
自己資本比率が回復すれば企業価値が高くなり、銀行融資などの資金調達ができる可能性も大きくなります。不良債権の回収にかかる手間・時間を削減し、本業にリソースを投下して売上向上・事業拡大を目指しましょう。
債権売却(債権譲渡)のメリット・デメリット
債権売却(債権譲渡)のメリット・デメリットを、譲受人・譲渡人別に解説します。
- 譲受人のメリット・デメリット
- 譲渡人のメリット・デメリット
自社の立場によってメリット・デメリットが異なるため、債権譲渡前にポイントを把握しておきましょう。
譲受人のメリット・デメリット
債権譲渡における譲受人は、債権を額面より安く受け取れるのがメリットです。
大半の債権譲渡は債権の額面から割り引いた金額で売却されるため、全額回収できれば利益が発生します。たとえば、100万円の債権を90万円で買取した場合、100万円を回収できれば10万円の利益となります。
ただし、債権の回収には専門的な知識・ノウハウが必要ですので注意しましょう。
一方、未回収リスクの大きい債権を譲渡される可能性があるのがデメリットです。未回収リスクが大きいほど売却額は割り引かれますが、その分だけ回収できる見込みも少ないので的確な判断が求められます。
譲渡人のメリット・デメリット
譲渡人にとって債権譲渡は、早期現金化ができて確実に回収できるのが最大のメリットです。資金繰りに困窮していて手元資金を確保したいときや、取引先の経営状態が悪く未回収リスクが大きい場合に債権譲渡を活用しましょう。
一方、譲渡人にとって本来の額面より回収できる金額が少なくなるのがデメリットです。また、ファクタリングでは手数料が差し引かれるため売掛債権の満額を受け取れません。
未回収リスクの高い債権ほど売却額が小さくなるため、どの時点で手放すのかという判断が求められます。くわえて、必要書類の作成や債務者への債権譲渡通知などの手間がかかるのも債権譲渡のデメリットのひとつです。
債権売却(債権譲渡)に必要な手続きの流れ
債権売却(債権譲渡)をするための手続きの流れは、以下のとおりです。
- 譲渡人・譲受人の合意形成
- 債務者へ債権譲渡の事実を通知
- 確定日付のある証書を発行
あらかじめ流れを把握し、トラブルを回避してスムーズな債権譲渡契約の締結を目指しましょう。
1.譲渡人・譲受人の合意形成
最初に譲渡人と譲受人で、債権譲渡の合意を形成しましょう。
なお、お互いに合意形成して契約しても、この時点で債権者は債務者に対して債権譲渡を主張できません。
2.債務者へ債権譲渡の事実を通知
次に債務者へ、譲渡人・譲受人が債権譲渡契約を締結した事実を通知する必要があります。
譲渡人・譲受人の間で合意が形成されても、債務者は通知されるまで債権譲渡契約が締結された事実を知り得ません。そのため、現在の債権者がわからずに二重弁済してしまう恐れがあります。
また、通知されていない状態だと債務者は債権者に対して譲渡が無効だと主張できます。したがって、債権譲渡を3者間で有効にするには譲渡人・譲受人の連名で債務者へ通知、または承諾が必要です。
3.確定日付のある証書を発行
譲渡人・譲受人・債務者の3者間以外に、第三者へ債権譲渡の事実を主張するため確定日付のある証書の発行が求められます。
確定日付とはあとから変更できない日付であり、公証人が確定日付印を証書に押印したときから有効になります。確定日付のある証書の具体例は、以下のとおりです。
第三者に債権譲渡の事実を主張するのは、二重譲渡を防止するためです。たとえば、AがBに対して債権譲渡した事実を忘れておりCにも売却したとします。もしBが確定日付のある証書を発行していれば、Aの債権の権利は自分にあるとCに対して主張できます。
なお、二重譲渡していても確定日付が同じだった場合、債権者同士の優劣は生じません。そのため、債権者から訴訟を起こされる可能性はあるものの、債務者はどちらか一方に弁済するだけですみます。
対抗要件の具備とは?
債権譲渡で重要な用語である「対抗要件の具備」を分解すると、それぞれ以下のような意味になります。
用語 |
意味 |
対抗 |
相手に対抗する・主張する |
要件 |
主張するための条件 |
具備 |
条件が整った・備えた状態 |
対抗要件の具備を簡単に言い換えると、「相手に対して主張する条件を整えた状態」になります。たとえば、債権譲渡された債権者が「その債権は自分のものだ」と主張できる条件を整えるのが対抗要件の具備です。
対抗要件を具備する対象は債務者・第三者の2パターンで、それぞれ方法・手段が異なります。
債務者への対抗要件を具備する方法
債務者への対抗要件を具備する2つの方法と、押さえておくべき注意点を解説します。
- 債務者からの承諾
- 債権譲渡通知の送付
- 債権に保証人が含まれている場合はどうなる?
債務者への対抗要件の具備は必須事項ですので、債権譲渡の予備知識として頭に入れておきましょう。
債務者からの承諾
譲受人は債務者からの承諾を得れば、債権の効力を主張できます。
債務者からの承諾を証明するため、双方が公証役場で公正証書を作成するのが一般的な方法です。公証役場とは、法務局に属する公証人がいる公的機関を指します。債務者からの承諾のほか、遺言・任意後見契約・企業の定款の認証などを行っています。
ただし、債務者が多い場合は承諾を得るのに大きな手間がかかるため、債権譲渡通知の送付がおすすめです。
債権譲渡通知の送付
債権譲渡対象の債権・債務者の数が多い場合は、債権譲渡通知を送付するのが一般的です。債権譲渡通知とは、譲渡人が債務者に対して内容証明郵便を送付して債権譲渡を通知する方法です。
原則的に譲受人が送付した債権譲渡通知は無効ですが、譲渡人から委任された場合は有効となります。また、2021年に産業競争力強化法などが改正され、国の認定を受けた事業者の情報システムで通知できるようになりました。国の認定を受けた事業者の情報システムによる通知は、確定日付のある証書と同様の効力があるとみなされます。
ただし、2024年2月時点ではオーナーシップ株式会社・株式会社リンクスの2社しか認定を受けていません。
参考:経済産業省「債権譲渡の通知等に関する特例に係る新事業活動計画の認定」
債権に保証人が含まれている場合はどうなる?
債権譲渡しても、債権に含まれている保証人の債務は消滅しません。ただし、譲受人は取得した債権の保証人に対して対抗要件を具備する必要があります。
対抗要件の具備方法としては、債務者と同様に「承諾をとる」「債権譲渡通知を送付する」という2つの方法があります。
第三者への対抗要件を具備する債権譲渡登記
債権譲渡では二重譲渡の防止のため、第三者への対抗要件を具備する債権譲渡登記を求められるケースがあります。
債権譲渡登記とは、債権を譲渡する事実を公的に登記して第三者への対抗要件を具備する手続きです。1998年の債権譲渡特例法により制定され、債権がいつ譲渡人から譲受人に譲渡されたのかを公的に証明できるようになりました。
債権譲渡登記を活用すれば、債務者が多数の場合でも簡単に対抗要件の具備が可能です。なお、債権譲渡登記には以下の費用がかかります。
費用の種類 |
料金 |
債権譲渡登記 |
7,500円/1件 |
司法書士への報酬 |
数万円~10万円ほど |
ただし、自分で書類を作成して債権譲渡登記を行えば司法書士への報酬は必要ありません。費用対効果が得られるか慎重に検討し、必要と判断したらできる限り早めに債権譲渡登記を行っておきましょう。
参考:e-Gov法令検索「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」
利用するメリット
債権譲渡登記の最大のメリットは、第三者への対抗要件が具備できる点です。くわえて、登記した日付が確定日付の代わりとなるため、債務者への通知を内容証明郵便ではなく一般郵便ですませられます。
また、債権譲渡登記をしておけば二重譲渡を防止してトラブルを予防できます。もしトラブルが発生して訴訟に発展しても、債権譲渡登記をしていれば勝訴できる可能性が高いです。
手続きの流れ
債権譲渡登記を自分で行う場合は、譲渡人・譲受人がそろって東京法務局で申請を行います。
債権譲渡登記の申請をするとき、譲渡人・譲受人どちらも代表者の資格証明書が求められるので準備しておきましょう。代表者の資格証明書とは法人が申請人の場合に必要となる証明書で、法務局・登記所の窓口やオンラインで取得できます。
債権譲渡登記を申請する流れは、以下のとおりです。
step 1. 事前準備(CD-R等が必要です。)※
step 2. 申請書の作成
step 3. 申請データの作成
step 4. 申請データのチェック
step 5. 添付書面の準備?
step 6. チェックリストで不備がないかを確認
step 7. 提出
引用:法務局「(債権譲渡登記等)書面による登記申請の手続」
なお、申請は窓口での受付のほかに、郵送での送付も認められています。細かな申請の流れについては、引用した法務局のリンクから確認できます。
債権売却(債権譲渡)で注意するポイント
債権売却(債権譲渡)で注意するポイントは、以下の4つです。
- 債権の二重譲渡
- 譲渡人が第三債務者への債務を保有
- 債権の効力が有効か
- 債権の時効
譲渡された債権が無効であった場合、回収が非常に困難になると予想されます。事前に債権譲渡で注意するポイントを押さえ、トラブルに発展するリスクを最小限にしましょう。
債権の二重譲渡
債権譲渡では、二重譲渡が行われていないか十分に確認をとりましょう。
すでに第三者が対抗要件を具備している場合、譲渡人と債権譲渡契約を締結しても債務者に弁済を求められません。二重譲渡されていないか確認するには、譲渡人を管轄している法務局から以下の証明書を取得しましょう。
証明書の種類 |
特徴 |
手数料 |
登記事項概要証明書 |
登記原因・日付・存続期間・譲渡債権の総額などがすぐに反映される |
250円~300円
※オンライン・窓口などにより異なる |
概要記録事項証明書 |
商業・法人登記とリンクしているが、債権譲渡の事実の反映に時間がかかる |
無料~300円
※オンライン・窓口などにより異なる |
上記の書類の取得方法は、法務局「債権譲渡登記に係る登記事項概要証明書・登記事項証明書の交付申請」で確認してください。
参考:法務局「債権譲渡登記制度について>第4 オンラインによる手続」
譲渡人が第三債務者への債務を保有
譲受人が債権譲渡のときに気を付けるべき点は、譲渡人が債権の債務者に対して債務があるケースです。たとえば、以下のケースでは債権譲渡を実施しても譲受人のAに不利益が生じる事態があり得ます。
- BはCに対して保有している売掛債権を、Aへ譲渡する
- しかし、CがBの債権を保有していた
- CはBに対して保有している債務と債権を一方的に相殺できるため、Aは譲渡された売掛債権を回収できない可能性がある
上記のような事態に陥らないために、事前に債務者と第三債務者の関係を十分に調査しましょう。
債権の効力が有効か
債権譲渡のときに、債権の効力が有効かどうかも十分に調査しましょう。債権の効力が無効となる可能性があるのは、以下の3つのパターンです。
- 債権に債権譲渡禁止特約が付帯していないか
- すでに弁済が終わっている債権ではないか
- 債務者に弁済する能力があるか
債権譲渡禁止特約が付帯している債権でも、2020年の民法改正により債権譲渡は可能です。しかし、債権譲渡が成立するには「譲受人が債権譲渡禁止特約を知らなかった」、または「債務者の承諾」といった条件があります。
トラブルに発展する恐れがあるため、債権譲渡禁止特約が付帯している債権を譲り受けるのはおすすめできません。
次に、すでに弁済が終わっている債権には効力がありませんので注意しましょう。譲渡人に要請し、債務者との取引内容についてあらかじめ確認してください。
債務者に弁済する能力がなければ、債権があっても回収は困難です。債務者の与信状況について事前に調査し、リスク・リターンを適切に判断しましょう。
債権の時効
債権の時効が来ていないかどうかも、債権譲渡前に必ず確認しておきたいポイントです。
2020年より施行された民法改正で、債権の時効は原則5年に一本化されました。なお、有効な債権であれば裁判所への申し立てや内容証明郵便による督促書類の送付で時効の中断ができます。もし債権譲渡で譲り受けた債権時効が迫っているなら、中断に関する措置を素早く行いましょう。
参考:法テラス「借金や利息は、何年で時効によって消滅しますか?」
債権売却(債権譲渡)以外で債権を回収する方法
債権売却(債権譲渡)以外で債権を回収する方法を4つ紹介します。
- 法的手段に訴える
- 代物弁済
- 債権者代位権の行使
- 債権同士の相殺
未回収債権が発生した場合、債権譲渡を含めて状況にあわせた適切な手段を検討しましょう。
法的手段に訴える
未回収債権を回収したいなら、法的手段に訴えるのが一般的な方法です。法的手段である民事調停・支払督促・民事訴訟という3つの方法について、以下の表にまとめました。
法的手段の種類 |
特徴 |
メリット |
デメリット |
民事調停 |
和解を目的として裁判所の調停委員が仲介のもと、債務者と話しあう |
|
- 裁判所からの強制力がない
- 和解が成立しない可能性がある
|
支払督促 |
裁判所を経由して債務者に支払いを督促する |
|
- 債務者からの異議申し立てがあると、訴訟へ移行するリスクがある
|
民事訴訟 |
裁判所に債務者の支払いを訴える |
- 判決で白黒がはっきりとする
- 債権者に落ち度がなければ勝てる可能性が高い
|
|
民事訴訟で債権者が勝訴したにもかかわらず債務者が弁済しない場合、強制執行により資産を差し押さえる必要があります。強制執行手続きをとれば裁判所が債務者の資産を差し押さえて競売を実施し、売却した代金が債権回収にあてられます。
代物弁済
債権譲渡と似た債権回収方法として、代物弁済が用いられるケースもあります。代物弁済とは、債務者の資産を譲渡してもらい債務を弁済する手続きです。
たとえば、債務者が100万円の債務を弁済できない場合、同等の価値がある土地・車・宝石などを代わりに債権者に譲り渡します。債権譲渡と異なるのは、譲渡する資産が債権だけに限らず動産・不動産を含められる点です。
代物弁済は契約書に特約を設定すれば、資産価格が債権額にたりなかったときに残高の請求も可能です。ただし、譲り受けた資産を売却するのに時間がかかる可能性があるので注意しましょう。
債権者代位権の行使
債権者代位権とは債務者の返済ができない状況、かつ債権を保有している場合に行使できる権利です。債権者は債権回収のため、債務者が保有している債権を代わりに請求できます。
2020年の民法改正から債権者代位権は明文化され、債権回収のときに活用できるようになりました。改正された民法では、以下のように規定されています。
(債権者代位権の要件)
第四百二十三条 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。
2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
3 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。
引用:e-Gov法令検索「民法」
債権者代位権の行使は債権の保全が必要な場合にのみ行使できる権利で、債務者の個人的な権利などの差し押さえはできません。債務者の個人的な権利の具体例としては、生活保護受給権・身体の自由・プライバシー権などを指します。
また、以下の状況では債権者代位権の行使はできません。
- 債権の弁済期限前
- 債務者がすでに破産している
- 法律上で差し押さえが禁止されている
債権同士の相殺
お互いに債権を保有しあっている場合、相殺して債権を回収するのもひとつの手段です。
たとえば、AとBがお互いに100万円分の債権を保有しあっている状態では、どちらかの意思表示によって相殺ができます。なお、相殺する場合の意思表示方法としては内容証明郵便を送付するのが一般的です。
民法505条では、以下のように定められています。
第五百五条 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
引用:e-Gov法令検索「民法」
ただし、相殺が可能なケースは双方の債権が弁済期になっている場合のみです。
債権譲渡禁止特約と民法改正に伴う変更
2020年の民法改正で、債権譲渡禁止特約が付帯している債権も債権譲渡できるようになりました。改正前の民法では、債権譲渡禁止特約が付帯している債権は債権譲渡できないとされていました。
債権譲渡禁止特約が付帯していても譲渡できる旨は、民法466条に記載されています。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
引用:e-Gov法令検索「民法」
経済産業省によれば、資金調達目的での債権譲渡は契約解除・損害賠償の理由とはなりません。また、譲渡されても債務者が不利益を被らない場合の取引打ち切りなどは、不当行為になり得るとしています。
参考:経済産業省「債権法改正により資金調達が円滑になります」
売却・譲渡できない債権の種類
債権は原則として自由に売却できますが、なかには債権譲渡が制限されるケースもあります。債権譲渡の制限対象となる債権は、性質上・法律上の2つに分類されます。
債権の分類とそれぞれの具体例は、以下のとおりです。
債権の分類 |
債権の種類の具体例 |
性質上で制限される債権 |
|
法律上で制限される債権 |
- 給与・年金・賞与など収入にかかわる債権
- 効力のある財産分与請求権
- 遺留分侵害額請求権
|
使用借権とは、無償で第三者の土地・ものなどを借りて使用する権利です。たとえば、自宅を建てるのに親から無料で土地を借りているケースが該当します。
遺留分侵害額請求とは遺言や生前贈与が不公平で納得できない場合、金銭での清算を求める仕組みです。具体的には、両親の死亡によって財産の1,000万円が自分以外の兄弟で分けられた場合に遺留分侵害額請求ができます。
上記の表のような債権は、譲り受けても効力を得られませんので注意しましょう。
売掛債権の売却で資金調達するならファクタリングがおすすめ!
ファクタリングは、企業や個人事業主が資金調達目的で利用できる債権売却(債権譲渡)手段です。売掛債権を売却して資金調達ができるファクタリングを、以下のポイントから解説します。
- ファクタリングとは
- ファクタリングのメリット・デメリット
- ファクタリングの手数料相場
- ファクタリング会社の選び方
資金繰りに困窮して債権譲渡を考えているなら、オンライン完結・即日資金調達ができるファクタリングの利用を検討しましょう。
ファクタリングとは
ファクタリングとは売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料が差し引かれた代金を受け取れる仕組みです。
ファクタリングには、2社間ファクタリング・3社間ファクタリングという2つの契約形態があります。2社間ファクタリング・3社間ファクタリングそれぞれの特徴について、以下の表にまとめました。
ファクタリング形態 |
特徴 |
メリット |
デメリット |
2社間ファクタリング |
- 利用者・ファクタリング会社で契約を締結
- 売掛金を利用者が回収し、ファクタリング会社に入金
|
- 最短即日で資金調達できる
- 売掛先に利用を知られない
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3社間ファクタリング |
- 利用者・ファクタリング会社・売掛先で契約を締結
- 売掛先が直接ファクタリング会社に入金
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急な支払いで悩んでいるなら2社間ファクタリング、手数料を抑えて資金調達したいなら3社間ファクタリングがおすすめです。
ファクタリングのメリット・デメリット
ファクタリングを利用するメリットは、以下のとおりです。
- 最短数十分~即日で資金調達ができる
- 業績が悪くても審査通過が可能
- 負債が増えず決算書に悪影響を及ぼさない
ファクタリングは売掛先の支払い能力を重視するため、利用者の業績が悪くても審査の通過が可能です。さらに、3社間ファクタリングは売掛金の着服リスクがないため利用者の信用力は審査対象ではありません。信用力のある売掛債権なら、ファクタリング審査の通過は融資などと比較するとハードルが低いです。
また、ファクタリングは売掛債権の売却であり、借入ではないため負債が増えません。将来的に融資を検討しているなら、決算書・信用情報に悪影響を与えないファクタリングの利用がイチオシです。
一方、ファクタリングを利用するデメリットは以下のとおりです。
- 資金調達コストが高い
- 調達できる資金額は売掛債権の範囲内まで
ファクタリングの手数料は、年利換算すると20%~90%になるケースも少なくありません。あくまで一時的な資金繰り改善のために利用し、賢く計画的にファクタリングを活用しましょう。
ファクタリングの手数料相場
ファクタリングの手数料相場を、以下の表にまとめました。
ファクタリングの種類 |
手数料の相場 |
2社間ファクタリング(面談) |
10%~20% |
2社間ファクタリング(オンライン) |
2%~12% |
3社間ファクタリング |
1%~9% |
ファクタリングの手数料をほかの資金調達方法と比較するなら、年利換算する必要があります。手数料を年利換算するには、以下の式を用いてください。
12か月÷支払いサイト×手数料率=年利換算相当
たとえば、支払いサイト2か月・手数料8%でファクタリングすると年利換算で48%になります。
12か月÷2か月(支払いサイト)×8%(手数料率)=48%(年利換算相当)
自分が許容できる資金調達コストを計算し、できる限り手数料の安いファクタリングサービスを選びましょう。
ファクタリング会社の選び方
ファクタリング会社の選び方のポイントは、以下の5つです。
- 手数料の安さ
- 入金スピード
- 必要書類の数
- オンライン完結かどうか
- 売掛債権の買取可能額
資金調達コストを安く抑えたいなら、上限手数料が低いファクタリング会社を選びましょう。また、「複数社で相見積もりをとる」「3社間ファクタリングを利用する」といった方法もあります。
入金スピードは2社間ファクタリングなら最短即日、3社間ファクタリングは数日~1週間ほどです。必要書類はファクタリング会社によって、2点~7点と大きく異なります。準備に時間と手間をかけたくないなら、必要書類の少ないファクタリング会社がおすすめです。
オンライン完結ならパソコン・スマートフォンでどこからでもファクタリングを申し込めるため、さらに手間と時間が軽減できます。ほかに、買取可能額の下限・上限があるファクタリング会社も多いため、自分の事業規模にあっているか検討しましょう。
資金繰り改善におすすめのファクタリングサービス3選!
資金繰り改善におすすめのファクタリングサービス3選を紹介します。
- ベストファクター | 審査通過率92%以上で柔軟な対応が特徴!
- ビートレーディング | 必要書類は2点だけ!最短2時間で資金調達!
- 日本中小企業金融サポート機構 | 経営革新等支援機関として中小企業を支援!
資金調達目的で債権譲渡を検討しているなら、ファクタリングの利用はもっともおすすめの選択肢です。
| 審査通過率92%以上で柔軟な対応が特徴!
種類 |
・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング
・診療報酬ファクタリング
・注文書ファクタリング(BESTPAY) |
買取可能額 |
30万円~ |
手数料 |
2%~20% |
入金スピード |
最短即日 |
手続き方法 |
オンライン・電話(契約時は要面談) |
公式サイト |
https://bestfactor.jp/ |
ベストファクターは、2%からと業界最安クラスの手数料を誇るファクタリングサービスです。
審査通過率が92%以上と高く、経営状態・財務状況が悪い事業者でも資金調達が可能です。また、同じ企業が運営するBESTPAYでは注文書ファクタリングを提供しています。注文書ファクタリングは受注時点で資金調達できるため、コストの関係で見送っていた取引を逃さなくてすみます。
ベストファクターの年間相談件数は9,000件以上で、豊富な実績と高い信頼性が大きな特徴です。ファクタリング利用者には無料財務コンサルティングを提供しており、専門知識豊富な担当者からアドバイスがもらえます。
口コミでベストファクターは「信頼性が高い」「対応がスピーディー」と、大きな支持を得ています。資金調達と財務状況の両方で悩んでいるなら、ベストファクターにまずは相談しましょう。
| 必要書類は2点だけ!最短2時間で資金調達!
種類 |
・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング
・注文書ファクタリング
・診療報酬ファクタリング |
買取可能額 |
下限・上限なし |
手数料 |
2社間ファクタリング:4%~12%
3社間ファクタリング:2%~9% |
入金スピード |
最短2時間 |
手続き方法 |
オンライン・LINE |
公式サイト |
https://betrading.jp/ |
ビートレーディングは申し込みから入金まで最短2時間で完了する、スピーディーなファクタリングサービスです。
累計の取引実績5万2,000社以上、買取額1,000億円以上と豊富な実績・ノウハウを誇ります。利用者の手間を軽減するため手続きを簡素化し、必要書類は請求書・通帳のコピーの2点だけです。注文書ファクタリングにも対応しており、幅広い資金調達ニーズに応えられます。
さらに、東京・仙台・名古屋・大阪・福岡に拠点を持つ業界最大手のファクタリング会社でもあります。ビートレーディングの口コミでは、「地方からでも契約しやすい」「オンライン完結もできるので手軽」と高い評価を得ています。
信頼性と資金調達スピードを両立したいなら、ビートレーディングはもっともおすすめの選択肢です。
日本中小企業金融サポート機構 | 経営革新等支援機関として中小企業を支援!

日本中小企業金融サポート機構は中小企業を中心に、専門的な知識でサポートするファクタリングサービスです。
経営革新等支援機関に政府から認定されており、豊富なノウハウで企業経営を支援します。さらに、一般社団法人のため利益だけを追求せず、リーズナブルな手数料を実現しました。
申し込みから入金まで最短3時間という入金スピードと、安い手数料は日本中小企業金融サポート機構の大きな特徴です。また、
ファクタリング以外にも「助成金・補助金サポート」「財務コンサルティング」を提供しています。
「手数料が安くて助かった」「信頼性が高く安心」など、日本中小企業金融サポート機構のポジティブな口コミが多く見られました。リーズナブルな手数料で資金調達コストを抑えたいなら、日本中小企業金融サポート機構の利用を検討しましょう。
債権売却(債権譲渡)に関するよくある質問
債権売却(債権譲渡)に関するよくある質問を解説
します。
- 債権売却(債権譲渡)の手数料に消費税はかかる?
- 債権売却益・債権売却損とは何かわかりやすく教えて
- 不良債権が売却できる債権回収会社の買取価格はどれくらい?
- 「債権を売る」とは?「債権譲渡」の意味と一緒?
- 債権譲渡通知書を無視していると取り立てがはじまる?
あらかじめ疑問を解消し、トラブルを予防してスムーズな債権譲渡を目指しましょう。
債権売却(債権譲渡)の手数料に消費税はかかる?
債権譲渡の手数料は非課税であり、消費税はかかりません。国税庁でも質疑応答事例として、以下のように回答しています。
(前略)
割引料又は手数料等は金銭債権の取立てという役務の提供の対価の側面も有しますが、契約上金銭債権の譲受けであれば金銭債権の譲受対価として非課税となります。
引用:国税庁「金銭債権の買取り等に対する課税関係」
債権売却益・債権売却損とは何かわかりやすく教えて
債権売却益とは、帳簿上の債権価格より高く売れて利益が出た状態です。逆に、債権売却損は債権の売却によって損失を出した状態を指します。
債権売却益の勘定科目は償却債権取立益ですが、債権売却損は売掛債権売却損・支払手数料・雑損失などに計上されます。
不良債権が売却できる債権回収会社の買取価格はどれくらい?
不良債権が売却できる債権回収会社の買取価格ですが、(株)整理回収機構では平均3.7%でした。ほかの債権回収会社でも、買取価格の相場は1%~5%ほどとなります。
参考:(株)整理回収機構「整理回収機構の業績」
「債権を売る」とは?「債権譲渡」の意味と一緒?
「債権を売る」「債権売却」「債権譲渡」はそれぞれ、まったく同じ意味です。法律用語として通用する「債権譲渡」が、一般的にも使用されています。
債権譲渡通知書を無視していると取り立てがはじまる?
支払い期日を迎えていない債権は問題ありませんが、滞納しているなら督促がはじまります。とくに滞納して債権回収会社にわたった債権は、債権譲渡通知書が来てからすぐに取り立てがスタートします。
債権譲渡通知書を受け取ったら、内容を確認して速やかに債権者へ連絡してください。また、弁護士に相談して債務整理を検討するのもひとつの案です。滞納がある状況で弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。
- 現在の状況にあった債務整理方法を提案してもらえる
- 債権回収会社との交渉を一任できる
- 弁護士に依頼すると受任通知が送付され、債権回収会社からの取り立てが止まる
まず、「決済期日まで期間がある」「滞納している」といった状況を確認し、そのうえで対応を決定しましょう。
スムーズに債権売却(債権譲渡)を進めてトラブルを回避しよう!
債権譲渡は原則的に自由ですが、企業間の合意や対抗要件の具備などの手間もかかります。しかし、ファクタリングを利用すれば、最短即日で売掛債権を売却して資金調達が可能です。
売掛債権以外の債権譲渡を行う場合は、債務者への承諾・通知や債権譲渡登記といった対抗要件の具備を適切に行いましょう。また、債権譲渡で債権が回収できない事態に陥ったときは、法的手段・代物弁済・債権同士の相殺といった方法を検討してください。
債権譲渡の知識を深め、資金繰り改善・債権回収・不良債権処理などをスムーズに実現しましょう。