デイサービスは開業するために膨大な投資が必要で、毎月の運転資金も高額です。
デイサービスの開業や運転に必要な資金を自己資金で調達している人は少なく、多くの人が外部からの資金調達で必要資金を賄っています。
デイサービスは銀行や日本政策金融公庫から資金調達するのが一般的ですが、資金調達の際は開業前から入念な資金繰り計画を立てた上で申し込みを行わなければなりません。
デイサービスの開業と運転にはどの程度の資金が必要で、開業前と開業後にどんな方法で資金調達すべきなのか、詳しく解説していきます。
デイサービス運営に必要な運転資金
デイサービスの運営は多額の運転資金が必要です。
人手を多く必要とする仕事ですので人件費が高額になりますし、多額の施設費も支払っていかなければなりません。
また、開業時には今後数ヶ月分の運転資金を手元に保有しておかなければならないという点にも留意しておきましょう。
介護報酬が入金になるのは、介護サービスを提供した月の翌々月で、最大3ヶ月先になるためです。
介護サービス運営に必要な運転資金としては「人件費」「施設費」「水道高熱費」などが挙げられます。
それぞれ、どの程度の費用がかなるのか詳しく見ていきましょう。
人件費
デイサービス事業の運営で最も高額になる運営コストが人件費です。
デイサービスの人員に関しては基準が設けられており、利用者の定員が10人以下か10人超によって基準は異なるものの、おおよそ以下の5つの役割を果たす人員を設置しなければなりません。
- 管理者
- 生活相談員
- 機能訓練指導員
- 看護職員
- 介護職員
デイサービスには管理者の設置が必要です。
特に資格は必要ありませんが、一般的には事業所の代表者という認識であり、その分他の職員よりは給料は高くなります。
なお、給料は月25万円程度となっていることが一般的です。
施設利用者や家族とやりとりを行なう生活相談員や看護職員には月20万円ほどの給料が平均的です。
また、PT、ST、OT、柔道整復師、あんまマッサージ指圧師、看護師、准看護師の資格を持っている機能訓練指導員には管理者と同じ程度の給料である25万円ほどの支払いをしなければなりません。
一般の介護職員の給料は施設や地域によって違いはあるものの月15万円〜20万円というのが相場です。
人件費だけで毎月100万円〜200万円の支出になります。
家賃等の施設費
デイサービスを運営するためには多くの利用者が利用することができる広い施設が必要になります。
建物が広いことはもちろん、送迎の車を停められるような広い駐車場も必要です。
このような物件は家賃が高くなるだけでなく、保証金として家賃の6ヶ月分程度も必要になるので、場合によっては施設の賃貸にかかる費用だけで1,000万円近く必要になります。
水道光熱費等
この他、施設を運営していく上で必要な水道光熱費やガソリン代や雑費なども必要です。
施設の規模にもよるものの、規模が大きいと水道光熱費やガソリン代だけで1ヶ月100万円程度になってしまう可能性もあります。
デイサービス(デイケア)開業にかかる設備資金
デイサービスを開業するためには多額の設備投資も必要になります。
改装費や車両費などへ大きな投資を行わなければデイサービスを開業することができません。
デイサービスの開業にかかる設備費がどの程度なのか詳しく解説していきます。
改装費
居抜きでデイサービスに利用できる物件はほとんど存在しないので、デイサービス施設として利用できるように内装もリフォームしなければなりません。
リフォーム費用も、程度や規模によって異なるものの数千万円以上になってしまうこともあり、開業の際には施設費が最も大きな費用になります。
なお、デイサービスを運営するのであれば、最低限、以下のような設備が必要になります。
- 事務室:普段職員が仕事をする事務室が必要です。
- 相談室:利用者や家族と話ができる個室が必要です。
- 静養室:利用者が静養できるようベットを配置した部屋を作らなければなりません。
- 調理場:利用者へ提供する食べ物や飲み物を提供することができるキッチンが必要になります。
- 機能訓練を行う場所:食堂及び機能訓練室については「面積が1人あたり3平方メートル以上」と定められています。利用者が10人であれば30平方メートル以上の広さが必要ということであり、機能訓練を行う場所はかなりの広さを確保する必要があります。
- トイレ:普通のトイレではなく、車椅子の利用者でも利用でき、介助者と一緒に利用することができるなど、広い作りのトイレが必要です。
- 浴室:入浴介助をサービスとして行うのであれば浴室が必要です。浴室には手すりを設置し、浴室内での事故防止に努めるとともに、浴室と脱衣所は広いスペースの確保が必要です。
車両費
デイサービスを運営するためには福祉車両の導入も必要です。
福祉車両の購入費(レンタル費)が必要ですが、施設の規模によっては10台以上用意しなければならない場合もあります。
利用者の人数に応じた数の車両の導入が必要になり、こちらも購入する場合には合計で数千万円以上必要になることもあります。
備品
施設の運営に必要なテーブル、椅子、ベット、机、パソコン、その他の備品を購入しなければなりません。
こちらも施設の規模などにもよりますが、場合によっては数百万円〜1,000万円以上の資金が必要になります。
デイサービスの開業資金の調達方法
デイサービスの開業資金の調達方法は主に銀行融資と日本政策金融公庫からの借入という2つだけです。
高額な開業資金は銀行と日本政策金融公庫以外から借りることは原則的に不可能で、他から開業に必要な資金調達を行うことはできません。
デイサービス開業の2つの資金調達方法について詳しく見ていきましょう。
銀行や信用金庫から借りる
銀行や信用金庫などの民間の金融機関から借りるというのは最も有効な方法です。
ただし、デイサービスの開業資金は1億円以上になることもあるので、これまで何も取引がない金融機関へ相談したとしても相手にしてもらえないこともあります。
高額な開業資金を借りるのであれば、これまで取引のある金融機関へ相談した方が審査には有利です。
自社についてある程度把握していている金融機関へ相談することによって高額な開業資金融資を受けることができる可能性があります。
日本政策金融公庫から借りる
日本政策金融公庫からデイサービス開業の資金を借りるという方法もあります。
政府系の金融機関ですので、事業計画がしっかりとしており認可を得られる見込みであるのであれば融資を受けることができる可能性は低くありません。
なお、日本政策金融公庫を施設を建築するメーカーなどが紹介してくれることもあるので、融資の申込先に悩んだ場合には、施工業者に相談してみるのもよいでしょう。
デイサービスの資金調達の4つの注意点
デイサービスが資金調達する際には注意すべき点がいくつかあります。
- 認可を受ければ借りやすい
- 売上の入金は最大3ヶ月後
- 開業後1年以内は借りにくい
- 開業時に運転資金も借りておく
デイサービスの開業資金は認可を受けられれば借りやすい
デイサービスの開業資金を銀行や日本政策金融公庫から借りる場合には、行政から認可を受けることができる見込みを具体的に立てた上で借入の申し込みを行いましょう。
認可を受けることができれば、その事業所は介護保険が適用される保険適用事業所になります。
保険適用事業所は保険から売上が入金になるので、金融機関にとっては「売上が安定する取引先」という扱いなります。
病院や歯科が融資を受けやすいように、デイサービスも認可を受けることができれば銀行にとっては優良取引先に変わるので高額融資も受けやすくなります。
保険適用事業所は審査で圧倒的に有利になるため、開業資金の融資資産を有利にするために認可取得の目処がついてから融資の申し込みをすることで資金調達は容易になるでしょう。
デイサービスは売上の入金が3ヶ月先になる
デイサービスの売上の入金はサービスの提供から最大3ヶ月後になります。
これは介護保険が請求から入金までに時間がかかることに起因しています。
介護保険は前月分の保険料を翌月に請求し、入金になるのは請求月の翌月末です。
1月に提供した介護サービスは2月に請求。入金になるのは3月末になり、介護サービス提供から入金までは最大3ヶ月先になります。
開業時は翌々月末まで入金がないため、手元には最低でも3ヶ月分の運転資金を保有しておかなければなりません。
デイサービスの運転資金は人件費などによって膨大になるので開業時にはかなりの金額を手元に残して置かなければならないことは頭に入れておくべきでしょう。
開業後1年以内の銀行融資は難しい
また、開業後に「やはり運転資金が必要」と気づいて借入を希望しても、簡単に銀行や日本政策金融公庫から融資を受けることはできません。
開業1年以内では決算書ができていない状態です。そして決算書のない状態での融資は創業融資という形になりますが、開業時の設備資金ですでに創業融資を借りてしまっている場合には2度も創業融資を借りることは難しいのが実情です。
すでに開業前に開業に必要な資金を銀行から借りてしまっている場合、その1年以内に銀行や日本政策金融公庫から新たな融資を受けることは難しいと考えた方がよいでしょう。
開業時に運転資金の借入も忘れずに
開業後1年以内に運転資金を借りることは難しいのが実情です。
そもそも開業後に最初の介護保険が入金になるまで資金繰りが苦しいことは事前に把握できているはずですので、開業資金を借りる時には、少なくとも3ヶ月分の運転資金を一緒に借りるようにしてください。
開業後に追加で運転資金の借入を行うことは難しいですが、開業前であれば当面の運転資金を借りることは難しいことではありません。
手元に自己資金がない場合には、設備資金などの開業資金の借入と一緒に当面の運転資金の借入をすることも失念することがないようにしてください。
運転資金が足りなくなったら介護報酬ファクタリング
万が一、開業1年以内に運転資金が足りなくなった場合、銀行からは運転資金を借りるのが難しいのが実情です。
お金が足りなくなったら介護報酬ファクタリングを利用して資金調達する方法も検討する必要があります。
介護保険の債権をファクタリング
介護報酬ファクタリングとは、介護保険債権をファクタリング会社へ売却する方法です。
国保連に請求済みで未入金の請求書はデイサービス事業所にとって売掛債権ですので、ファクタリング会社へ売却することで早期に資金化することができます。
介護報酬ファクタリングは入金サイトを半分にできる
介護報酬ファクタリングを利用すれば最大3ヶ月先になる入金までの時間を半分にすることできます。
例えば1月の介護報酬を2月10日に請求し、その後すぐに介護報酬ファクタリングを利用すれば2月15日くらいには入金を受けることが可能です。
介護報酬ファクタリングを利用しなければ3月末まで入金を受けることができない売掛債権が2月半ばには入金になるため、介護報酬ファクタリングの利用によって入金サイトを半分の1ヶ月半にすることができます。
介護報酬ファクタリングは手数料が低い
介護報酬ファクタリングは手数料が低いのがメリットです。
ファクタリングの相場は2社間ファクタリングであれば10%〜20%程度ですが、介護報酬ファクタリングの手数料は1%〜2%前後と非常に低利です。
これは、介護報酬債権の債務者が国保連という公的機関で、未払いのリスクが限りなくゼロに近いということが起因しています。
毎月のように利用してもファクタリングによるコスト負担で経営が圧迫されるほどではありません。また審査通過の可能性も非常に高いファクタリングです。
手元に運転資金がなく資金繰りが不安定なデイサービス事業者の方は利用を検討してみるとよいでしょう。
まとめ
デイサービスは開業資金も運転資金も膨大な金額になります。
また、開業してから3ヶ月先まで介護保険の入金がないので手元には当面の運転資金を確保しておかなければなりません。
デイサービスが資金調達をする場合には銀行や日本政策金融公庫などから融資を受けることが一般的です。
開業前であれば設備資金に加えて当面の運転資金を借りることもできますが、開業後になると借入は難しくなってしまいます。
銀行や日本政策金融公庫などに相談しても芳しい返答を得ることができない場合には、介護報酬ファクタリングの利用も検討するとよいでしょう。