ファクタリングの判例を理解すれば違法・合法の境界が明確になり、悪質な業者とのトラブルを回避できます。ファクタリング会社が売掛債権の未回収リスクを負うかどうかが、違法・合法の境界であると判例は示しています。

今回の記事では、ファクタリングの判例8選・基礎知識・調べ方などについてまとめました。くわえて、信頼性の高いファクタリング会社の選び方も解説します。

本記事を読めば、裁判所の原文や専門家の論文をもとにしたファクタリングの判例のポイントがわかります。合法的なファクタリングのポイントを理解し、悪質な業者を回避して安全に資金を調達しましょう。

記事の目次 表示

裁判所の判例の基礎知識

最高裁判所が示した判決は判例と呼ばれ、高等裁判所や地方裁判所の裁判例とは区別されます

ただし、最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所のすべての判決を判例と呼ぶのが一般的です。本記事でも同様に、裁判例も判例として扱います。

なお、判決は最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所の順に実務面での拘束力を持ちます。とくにファクタリングは規制する法律がなく、判例がより大きな影響を及ぼすため非常に重要です。

ファクタリングの判例・事件の主なパターンは3つ

ファクタリングの判例・事件の主なパターンは、以下の3つです。

  • 給与ファクタリング
  • 偽装ファクタリング
  • 架空債権・二重譲渡

それぞれの概要・仕組みについてあらかじめ押さえておき、判例を分類して参照すれば理解しやすくなります。

給与ファクタリング

給与ファクタリングは給料ファクタリングとも呼ばれ、給与を債権として業者に買取してもらうファクタリングサービスです。給料日前に現金が手に入るため、急な出費が必要な場面で利用されました。

しかし、最高裁判所の判例と金融庁の判断によれば、給与ファクタリングは貸付であり貸金業登録していなければ違法です。また、貸付であるため貸金業法の利息制限・総量規制の対象となります。貸金業法では金利の上限を制限しており、年利換算で20%超の手数料は法律違反です。

貸金業登録していないファクタリングを装ったヤミ金は、以下のような悪質な取り立てをする可能性があります。

  • 法外な手数料の請求
  • 大声での恫喝
  • 勤務先への連絡

くわえて、高額な手数料を支払うと受け取れる金銭が少なくなるため、かえって経済的に困窮するケースも見られます。給与ファクタリングは違法性があり、トラブルに発展する恐れが強いため決して利用しないでください

参照:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起

偽装ファクタリング

偽装ファクタリングとは、ファクタリングを装って売掛債権を担保とした貸付をする違法行為です。大阪府によれば、偽装ファクタリングには以下のような特徴があります。

  • 買取業者との契約書に「売買契約」である旨が明確に定められていない。
  • 売却した売掛債権が回収できない場合に、不払い債権の支払いを求められたり、債権の買戻しを求められる。
  • 売掛債権を売却したのに、売主が債権を全て回収するまで買取代金の一部しか支払わない、最終的に債権の全額を回収できなくなった場合には、買取代金から減額する条件が付けられている。

引用元:大阪府「ファクタリングの利用について

上記の特徴に合致するファクタリング業者は、違法な偽装ファクタリングの可能性が高いので注意しましょう。ファクタリングを利用するときには契約内容を慎重に確認し、不明な点があるなら質問して明らかにしてください。

訴訟に発展するトラブルの多くは、偽装ファクタリングが関係しています。偽装ファクタリングが少しでも疑われる場合は、利用を中断してトラブルを回避しましょう。

架空債権・二重譲渡

架空債権・二重譲渡の事件の被害者は、利用者ではなくファクタリング会社である点が特徴です。

架空債権とは取引事実がないにもかかわらず発行された、本来は存在しない売掛債権です。たとえば、請求書の偽造・捏造をしてファクタリング会社から代金をだまし取るといった手口があります。

二重譲渡とは売掛債権を、別々のファクタリング会社に売却する行為です。二重譲渡された売掛債権を買取したファクタリング会社は、支払った代金の回収ができず損失を被ります。

架空債権・二重譲渡ともに詐欺罪に問われる可能性があり、警察が犯人を逮捕した事例も発生しています。ファクタリングを利用するなら、うっかり二重譲渡にならないように注意してください。

ファクタリングに大きく関連する判例4選

ファクタリング業界に大きな影響を与えた判例は、以下の4つです。

  • 最高裁判決 令和5年2月20日「給与ファクタリングは貸付」
  • 東京地裁 令和2年9月18日「償還請求権入りのファクタリング契約は実質融資」
  • 大阪地裁 平成29年3月3日「売掛債権額とは無関係な資金供与は融資」
  • 東京地裁 平成29年5月23日「ファクタリング会社の手続きは正当で利息制限法が適用されない」

代表的な4つの判例について、ポイントを絞ってわかりやすく解説します。

最高裁判決 令和5年2月20日「給与ファクタリングは貸付」

令和5年(2023年)2月20日の最高裁判所の判例によれば、給与ファクタリングは貸付にあたるとの判決が下りました。貸付とは貸金業法第2条1項と出資法第5条3項で規定された、利息などの条件を決めて金銭・権利・物品を貸す行為です。

最高裁判所は給与ファクタリングが貸付であり、業者は貸金業登録していないヤミ金であると認定しました。最高裁判所の判例のポイントは、以下のとおりです。

  • 賃金は会社が労働者に直接支払わなければならない
  • よって、給与ファクタリング業者は会社から直接、賃金を受け取れない
  • 給与ファクタリング業者は、利用者に賃金債権の買い戻しをさせて金銭を回収していた
  • 実質的な買戻特約は貸付とみなされるため、貸金業登録が必要
  • 給与ファクタリング業者は貸金業登録していないためヤミ金だと認定

令和3年(2021年)1月26日の東京地方裁判所でも、給与ファクタリングは違法との判決が下されていました。令和5年の最高裁判所の判決は、給与ファクタリングの違法性を追認した形になります。

参照:裁判所 - Courts in Japan「令和4年(あ)第288号 貸金業法違反、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反被告事件 令和5年2月20日 第三小法廷決定」,TKCローライブラリー「いわゆる「給与ファクタリング」に係る契約の法的性質と有効性」,e-Gov法令検索「貸金業法

東京地裁 令和2年9月18日「償還請求権入りのファクタリング契約は実質融資」

令和2年(2020年)9月18日の東京地方裁判所の判例によれば、償還請求権のあるファクタリング契約は実質的な貸付です。この判例では、訴えられたファクタリング会社が償還請求権なしの契約だったために勝訴しています。

償還請求権とは売掛債権の未回収時に、ファクタリング会社が利用者に弁済を求める権利です。東京地方裁判所の判決のポイントは、以下のとおりです。

  • 利用者である運送業者が、ファクタリングは貸金業にあたるとして訴訟
  • 訴えられたファクタリング業者は、売掛債権の未回収リスクを負っている
  • 手数料についても、適正な範囲内であると判断される
  • ファクタリング契約に償還請求権がなく、東京地方裁判所は貸金業にあたらないと判断

償還請求権が入っていないからこそ、東京地方裁判所は被告であるファクタリング業者の取引を正当だとしました。逆に、償還請求権のある契約は貸付にあたり貸金業登録が必要との判例でもあります。

参照:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」,TKCローライブラリー「事業者間のファクタリングの法的性質に関する一事例

大阪地裁 平成29年3月3日「売掛債権額とは無関係な資金供与は融資」

大阪地方裁判所の平成29年(2017年)3月3日の判例によれば、売掛債権と無関係の資金供与は融資との判決が下されました被告のファクタリング会社は、売掛債権の未回収リスクをほぼ負っていませんでした

原告が売掛債権を再度購入せざるを得ない条件があったのが、判決を大きく左右したポイントです。平成29年(2017年)の大阪地方裁判所の判例は非常に込み入っているため、ポイントになる箇所を以下に引用します。

また,被告が上げた利益は,専ら原告との間で繰り返し授受された金員の差額によるものであり,債権を売買の対象としたとはいえ,その代金を一部しか支払わないで済むとか,債権のうち一定の金額分のみをあえて売買の対象とするなど,債権の額面とは無関係に金員の授受がなされていた。

加えて,原告が買戻しを行わなかった場合には,譲渡債権の全額が回収できたときに初めて債権譲渡代金全額の支払を受けるとか,債権の一定金額分のみの譲渡のために各債務者に債権譲渡通知が発送されてしまうといった不利益を受けるから,本件取引において原告は,買戻しを行わざるを得ない立場にあったものといえる。

そうすると,本件取引では,金銭消費貸借契約の要素たる返還合意があったものと同視することができる。

 

引用元:裁判所 - Courts in Japan「事件番号:平成26(ワ)11716 裁判年月日:平成29年3月3日

判例ではファクタリング会社がリスクを負っているかどうかによって、貸付か債権譲渡かを判断しています。ほかの資金調達方法より高いファクタリングの手数料は、売掛債権の未回収リスクを負うからこそ許容されます。

東京地裁 平成29年5月23日「ファクタリング会社の手続きは正当で利息制限法が適用されない」

平成29年(2017年)5月23日の東京地方裁判所の判例によれば、ファクタリング取引に利息制限法は適用されません

原告である運送業者は、ファクタリング契約が金銭消費賃借にあたるとして訴訟を起こしました。しかし、東京地方裁判所は以下のような理由からファクタリング契約が正当であるとの判決を下しました

  • 手数料は支払いサイトの長短ではなく、売掛債権の実在・売掛先の信用力によって算定されている
  • ファクタリング会社は売掛先への債権譲渡通知も作成していた
  • ファクタリング会社はジャンプと呼ばれる弁済期限の繰り延べに応じていない
  • ファクタリング契約に償還請求権が含まれていない
  • よって、金銭貸借契約ではなく利息制限法は適用されない

この判例から正当なファクタリング取引と認定されるポイントは、以下のとおりです。

  • 売掛先の与信調査に基づいた手数料設定
  • 利用者から売掛金の入金が遅れた場合、売掛先に債権譲渡通知を送付する
  • 分割払いや支払いの繰り延べを認めない
  • ファクタリング契約に償還請求権が含まれない

逆に分割払い・支払いの繰り延べや審査なしを謳っているファクタリング業者は、違法業者の可能性が高いので注意しましょう。

参照:国際ビジネス研究センター「ファクタリングを偽装したヤミ金融の被害に関する事例調査(P6)」

ファクタリングに大きく関連する事件2選

ファクタリングに大きく関連する事件を2つ紹介します。もし違法なファクタリング被害に遭った場合は、弁護士の前に警察への相談も検討しましょう。

参照:国際ビジネス研究センター「ファクタリングを偽装したヤミ金融の被害に関する事例調査(P5)」

大阪府警 平成29年1月「違法業者による偽装ファクタリング」

平成29年(2017年)1月に大阪府警は、2社間ファクタリング業者を日本ではじめて摘発しました。逮捕理由は、実質的な経営者・社員による貸金業法と出資法違反の容疑です。

摘発されたファクタリング業者は利息を受け取り、金銭消費貸借でジャンプと呼ばれる支払いの繰り延べをしていました。さらに、摘発されたファクタリング業者は過去にもヤミ金を営んでいて逮捕された経歴があります。

偽装ファクタリングの被害に遭わないよう、分割払い・支払いの繰り延べを行う業者には気をつけましょう。

栃木県警 平成29年7月「架空債権によるファクタリング詐欺」

平成29年(2017年)7月に栃木県警は、架空の法人名を名乗り2社間ファクタリングを利用した容疑者2人を逮捕しました。ファクタリング業者が買取した売掛債権の売掛先は架空であり、偽装された債権売買取引だったのが理由です。

平成29年の栃木県警による逮捕事例以外に、架空債権による詐欺でいくつものファクタリング会社が被害に遭っています。なお、ファクタリング会社は架空債権と判明すれば厳正に対処する可能性が高いです。

経済的に困窮しても、詐欺罪に問われる可能性が高いため、架空債権のファクタリングには決して手を出さないでください。

ファクタリングに大きく関連する和解事例2選

ファクタリングに大きく関連する和解事例について解説します。利用者にとって有利・不利な和解が成立したケースを理解し、状況に応じて弁護士への依頼が有効か検討しましょう。

参照:国際ビジネス研究センター「ファクタリングを偽装したヤミ金融の被害に関する事例調査(P7)」

東京 平成30年「高額な手数料が払えなくなり弁護士に依頼」

平成30年(2018年)に内装業者である利用者は、弁護士に相談してファクタリング会社と有利な条件で和解しました。

平成20年(2008年)に利用者は経営危機に陥り、2年後には融資審査に落ちてソフトヤミ金を利用しはじめます。ソフトヤミ金とは、「接客が丁寧」「暴力的な取り立てをしない」と謳っているヤミ金の一種です。

しかし、平成27年(2015年)に弁護士へ依頼してソフトヤミ金との関係を清算しました。その後、またも運転資金が逼迫してファクタリングの利用を開始します。

利用者は、5つのファクタリング会社から合計450万円の手数料を要求されました。手数料を年利に換算すると216%~240%に相当しており、利用者は再び弁護士に相談します。なお、年利換算で240%の手数料は支払いサイト1ヶ月なら20%、2ヶ月なら40%に相当します。

当時は2社間ファクタリングを問題視する報道や警察の摘発により、利用者に有利な状況でした。そのため、ファクタリング会社からの請求が止まり有利な条件で最終的に和解しました。ただし、現在では正当なファクタリング取引の場合、有利な条件での和解に至らない可能性は無視できません。

ファクタリングの手数料をあらかじめ十分に確認し、計画的な資金調達を行いましょう。また、手数料は20%以下を目安とし、できる限り安いファクタリングサービスを探すのが賢明です。

東京地裁 平成29年10月「利用者が提訴し最終的に和解」

平成29年(2017年)10月に東京地方裁判所で、利用者がファクタリング会社に元金相当額を支払う和解が成立しました。

利用者は2社間ファクタリングを利用しましたが、売掛金の回収に失敗して別の売掛債権を譲渡する新規契約を締結しました。しかし、再び予定どおりに資金を回収できず利用者は弁済猶予を申し出ます。

一方、ファクタリング会社は契約不履行とみなして売掛先に債権譲渡通知を送付しました。利用者はファクタリング契約が実質的な貸付だとして訴訟を起こしますが、裁判は長期化します。

財務状況がさらに悪化した利用者は、裁判所の和解案に応じてファクタリング会社に元金と弁護士費用を支払いました。ファクタリング会社に有利な和解案が成立した理由は、契約内容や対応が正当だと認められたからです。

ファクタリング契約やファクタリング会社の対応に瑕疵がない場合、弁護士への相談は費用だけがかかる結果となります。そのため、まずはファクタリング事業推進協会などへ無料相談するのがおすすめです。

ファクタリングの裁判の判例・事件を調べる方法

ファクタリング裁判の判例や事件を調べる方法を解説します。

  • 判例検索サービス
  • 裁判所の裁判例検索
  • 弁護士事務所の公式サイト
  • 新聞・メディアのニュース
  • 一般のWebサイトのコンテンツ

調べ方によっては情報の信頼性が低いケースもあるため、状況に応じて的確に判断しましょう。

判例検索サービス

判例を調べるなら、弁護士や裁判官も利用しておりもっとも信頼性の高い判例検索サービスがおすすめです。ただし、判例検索サービスは有料ですので、使用頻度が低いならほかの調査方法を検討しましょう。

代表的な判例検索ソフトを、以下の表にまとめました

サービス名 料金 特徴
TKCローライブラリー 9,900円/月~
  • 会計事務所・税理士事務所・地方公共団体に情報サービスを提供する株式会社TKCが運営
  • 幅広い判例が収録されている
D1-LAW 324,000円/年~
  • 法務・行政・福祉を中心に出版する第一法規出版社が提供
  • 22万件以上の判例が収録されている
判例秘書 5,000円/月~
  • 法律雑誌・文献を出版する株式会社LICが提供
  • 価格がリーズナブル
  • 50,000名以上のユーザーがおり法曹界でも人気
Westlaw 11,600/月~
  • 世界68カ国に対応
  • オプションが豊富で柔軟な料金体系

判例検索サービスを選ぶポイントは、月額費用・判例の掲載数・解説の有無の3つです。法曹界でも人気がある判例秘書は、月額利用料も安くおすすめの判例検索サービスです。

裁判所の裁判例検索

無料で判例を検索したいなら、裁判所の裁判例検索を利用しましょう。裁判所が提供している判例検索サービスであり、無料で利用できるのが大きなメリットです。

一方、判例情報は原文であり解説との紐付けがされておらず読み解くのはたいへんです。判例を読む知識がある専門家でなければ、調査が難航する可能性があります。自分で読み解きたいなら、PDFの判例ページをダウンロードしてChatGPT(GPT-4)で概要をまとめるのも一案です。

裁判例検索は代表的な判例しか掲載されておらず、すべての記録を検索できるわけではありません。そのため、知りたい判例が掲載されていないケースも十分に考えられます。

弁護士事務所の公式サイト

弁護士事務所の公式サイトで、判例検索サービスを提供している場合があります。たとえば、以下のページでは裁判所の判例の検索が可能です。

ほかにも、Googleで「ファクタリング 判例 弁護士事務所」と検索すれば、弁護士の解説つき記事が多くヒットします。法律の専門家である弁護士の解説であり、信頼性が高くわかりやすいのがメリットです。

新聞・メディアのニュース

ファクタリングの判例や事件を見つけるなら、新聞のニュースも有効な方法です。朝日・産経・読売・日経など各新聞社は、自社サイトでさまざまなトピックを毎日提供しています。

紙面とは異なり、オンライン配信のニュースは年数が経っても残っているケースが多いです。そのため、あとからでも検索で調査しやすいのが大きなメリットです。また、新聞は判例をわかりやすく解説しており、一般読者でも内容を理解できます

ファクタリングの判例を調査するなら、ニュースサイトのサイト内検索がおすすめです。サイト内検索をするには、「site:〇〇.com △△(キーワード)」と入力してGoogle検索を実行してください。ほかに、Chrome拡張機能「Search the current site」を導入すると手軽にサイト内検索が行えます。

一般のWebサイトのコンテンツ

一般のWebサイトのコンテンツは、判例の概要だけなら手軽に調査できます。また、なかには「判例検索β - 無料の裁判例検索サービス」のように、正確な判例情報を掲載しているWebサイトもあります。

一般のWebサイトでファクタリングの判例を調べる場合、多くの記事は信頼性が確かではないため注意しましょう。著者の立場や考え方によって、判例の解釈に大きな差が出る可能性は否定できません

内容が信頼できるのか慎重に判断し、できる限り一次情報を参照するようにしてください。

ファクタリングの判例・事件を調べるときの注意点

ファクタリングの判例・事件を調べるときには以下の点に注意しましょう。

  • できるだけ一次情報・公的な情報を参照
  • 引用元や参照元がはっきりしている
  • 判例の原文はわかりづらいので解釈に注意
  • 裁判所名・裁判年月日が記載されている

正確に判例を理解するために、正しい情報を的確に取得してください。

できるだけ一次情報・公的な情報を参照

裁判の判例を調べるなら、できる限り一次情報や公的な情報を参照しましょう。

二次情報以降は記事を書いたライターの知識不足で、間違った解説をしている可能性も大いにあります。また、SNSなどのデマに影響された事実無根な内容の記事も珍しくありません。

一次情報を参照できない場合は、新聞社のニュース記事や法律の専門家である弁護士事務所の記事を参考にしてください。ほかに、ファクタリング関連の判例ではファクタリング会社のオウンドメディアも信頼性が高めです。

引用元や参照元がはっきりしている

ファクタリング関連の判例を調べるなら、引用元・参照元がはっきりと明示されている解説記事を選びましょう。一方、引用元・参照元が明示されていない記事は、慎重に信頼性を判断する必要があります。

また、引用元・参照元がほかの解説記事である場合は信頼性が落ちます。公的機関・専門家の論文・法律事務所の公式サイト・学術ジャーナルなど、信頼できる参照元でなければなりません。

さらに、記事自体の論理的な整合性や結論についても注意を払いましょう。矛盾・偏見がなく、客観的な視点で分析されている記事を探してください。

判例の原文はわかりづらいので解釈に注意

ファクタリングに限らず、判例の原文は非常に難解で一般読者にとって理解しづらいです

正確に判例を読み解くのは困難ですので、専門家の解説記事を参考にするのがおすすめです。判例の解釈の仕方は専門家でも異なる場合があるため、できるだけ複数の記事にあたりましょう。

もし専門家による解説記事がない場合は、ChatGPT(GPT-4)の有料プランの利用を検討しましょう。判例のPDFをダウンロードし、ChatGPTにアップロードすれば概要・ポイント・詳細な解説を得られます。

ただし、ChatGPTは非常に便利ですが解釈を間違えるケースも多々あります。論理的な整合性がとれているかどうか、自分で適切に判断してください。

裁判所名・裁判年月日が記載されている

一般のWebサイトで判例を調べる場合、裁判所名や裁判年月日が記載されているかどうかに注目しましょう。

裁判所名・裁判年月日が記載されていれば、記事を書いた著者が一次情報にあたっている可能性が高いです。また、裁判所名・裁判年月日がわかれば自分で判例の原文を検索する際にも役立ちます。

一方、裁判所名・裁判年月日が記載されていない記事は、二次情報を参考にしている可能性があります。二次情報を参考にした記事は伝聞のため、信頼性が低くあまり参考になりません。

ファクタリングが違法ではないという法律的な根拠

ファクタリングは民法555条によって合法性を担保されており、違法ではありません。民法555条でファクタリングの合法性を担保している箇所は、以下のとおりです。

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

 

引用元: e-Gov法令検索より

さらに、民法466条では債権の譲渡が可能であると規定されています。規定している部分を以下に引用します。

債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

 

引用元: e-Gov法令検索より

なお、ファクタリングの違法・合法の議論で弁護士法がしばしば取り上げられます。弁護士法73条では、弁護士以外が営利目的で債権の回収・譲渡を行ってはならないと規定されているからです。しかし、弁護士法72条ではほかの法律で認められているなら、営利目的での債権譲渡業務が可能とも定められています。

営利目的の債権回収・譲渡を認めているのは、1998年に制定された債権管理回収業に関する特別措置法です。したがって、債権譲渡を業務とするファクタリングが違法ではないと解釈できます。

なお、ファクタリングは貸付ではないため利息制限法に規制されず、手数料が年利換算で20%以上でも違法ではありません。ただし、相場の範囲を超えた法外な手数料を請求された場合は契約しないのが賢明です。

ファクタリングの手数料相場は、以下のとおりです。

ファクタリングの種類 手数料の相場
2社間ファクタリング(面談) 10%~20%
2社間ファクタリング(オンライン) 2%~12%
3社間ファクタリング 1%~9%

参照:e-Gov法令検索「民法」「弁護士法」「債権管理回収業に関する特別措置法

トラブルに巻き込まれないファクタリング会社の選び方

違法な契約でトラブルに巻き込まれないための、ファクタリング会社の選び方を解説します。

  • 手数料の上限
  • 手数料を年利換算して検討
  • 信頼性の高さ
  • 償還請求権・買戻特約の有無

ポイントをしっかりと理解して、安全かつスムーズにファクタリグで資金調達しましょう。

手数料の上限

手数料の上限が明示されていれば、安心してファクタリングサービスを利用できます

手数料の上限を明示していないファクタリングサービスは、審査後にしか具体的な数値がわかりません。そのため、想定外に高い手数料を提示される恐れがあります。

しかし、手数料の上限が決まっていれば資金調達コストを予測でき、財務計画を立てやすくなります。また、手数料上限が低いファクタリングサービスほど、結果的に資金調達コストが低くなる傾向が強いです。

手数料を年利換算して検討

手数料を年利に換算して契約前に検討すれば、ほかの資金調達方法と資金調達コストを比較できます。ファクタリングの手数料を年利換算するには、以下の計算式を用いてください。

12ヶ月÷支払いサイト×手数料率=年利換算相当

たとえば、支払いサイトが2ヶ月で手数料が5%とすると年利換算で30%になります。

12ヶ月÷2ヶ月(支払いサイト)×5%(手数料率)=30%(年利換算)

資金調達コストが高いとかえって財務負担が増え、資金繰り悪化の可能性があります。資金調達コストを明確に把握し、計画的にファクタリングを利用すればトラブルが予防できます。

信頼性の高さ

信頼性の高いファクタリングサービスを利用すれば、ほとんどのトラブルが回避できます。信頼性の高いファクタリングサービスを見極めるポイントは、以下のとおりです。

  • 上場企業・大企業・知名度の高い企業やそのグループ会社
  • 実績を公式サイトで公開している
  • 会社概要で住所・電話番号・代表者名が明示されている
  • 口コミ・評判でネガティブな評価が少ない

評価の確認には、200社以上のファクタリング会社の口コミ・評判が閲覧できる「ファクタリング会社の口コミ」がおすすめです。

もし疑問点・不安な点があるなら、契約前にファクタリング会社へ問い合わせましょう。優良なファクタリング会社なら、利用者の質問へ丁寧に回答してくれます。

償還請求権・買戻特約の有無

償還請求権・買戻特約が入った契約は、違法業者の可能性が高いです。

償還請求権とは売掛債権が未回収になった場合、ファクタリング会社が利用者に弁済を求める権利です。償還請求権の入った契約は貸付とみなされるため、貸金業登録していなければ違法となります。

買戻特約も償還請求権と似ており、売掛債権の未回収時に利用者が売掛債権を買い戻さなければならない契約です。買戻特約も同じく貸付とみなされるため、貸金業登録が必要です。

償還請求権・買戻特約が入っている場合は、トラブルを避けるため契約しないでください。

ファクタリング利用でトラブルになったときの相談先

ファクタリングの利用でトラブルになったときの相談先を紹介します。弁護士以外にも、無料で相談できる窓口は数多くあります。

ファクタリングでトラブルが発生したら、速やかに相談して対応を検討しましょう。

弁護士

悪質なファクタリングの被害に遭った場合、もっとも心強い相談先が弁護士です。悪質なファクタリング業者は訴訟リスクを恐れるため、弁護士が代理になれば態度を軟化させる可能性が高いです。

くわえて、貸金業登録なしで貸付をしていると判断されれば、ヤミ金に該当するため利用者の返済義務がなくなります。民法708条はヤミ金に該当する業者の貸付は不法原因給付であり、返済を請求できないと定めています。

不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

 

引用元:e-Gov法令検索「民法

そのため、手数料だけでなく売掛債権額すべてを入金する必要がなくなるケースもあります。ただし、違法性のないファクタリング会社の場合、弁護士料の方が高くつく可能性に注意しましょう。

そのほかの相談先

ファクタリング被害に遭った場合に頼れる、弁護士以外の相談先を以下の表にまとめました

名称 営業時間 相談窓口・電話番号など
ファクタリング事業推進協会 平日9時~18時 電話:0120-123-022
金融庁金融サービス利用者相談室 平日10時~17時 電話:0570-016811
IP電話の場合:03-5251-6811
ファックス:03-3506-6699
Webサイト受付窓口
金融庁多重債務相談窓口 24時間365日 相談窓口
日本貸金業協会 平日9時~17時 電話:0570-051051
IP電話の場合:03-5739-3861
ファックス:03-5739-3024
Webサイト受付窓口
警察 24時間365日 電話:#9110(各都道府県警察相談ダイヤル)
消費者庁消費者ホットライン 平日9時~17時 土日祝10時~16時 電話:188
国民生活センター平日バックアップ相談 平日10時~12時 13時~16時 電話:03-3446-1623

どの窓口も無料ですので、被害に遭ったら速やかに相談して今後の対応を検討しましょう。

ファクタリングの判例を調べて利用時のトラブルを回避!

日本でファクタリングが浸透してきたのは2010年代以降であり、判例もまだまだ少ないのが現状です。しかし、いくつかの代表的な判例や事件によって合法・違法なファクタリングの境界が明らかになりつつあります。

ファクタリングは、行政・司法にも認められている合法的な資金調達方法です。「償還請求権・買戻特約のない契約」「手数料が相場の範囲内」を確認し、信頼性の高いファクタリング会社を選択してください。

今回の記事では、いくつかの判例・基礎知識・調べ方などについて解説しました。判例で違法な業者の特徴をしっかりと捉え、トラブルを回避して安全な資金調達を実現しましょう。