ファクタリングで請求書を偽造するとどうなる?該当する犯罪や対処法も解説

「ファクタリングで請求書を偽造したらどうなるのか」と疑問を抱いている方も多いでしょう。

ファクタリングで請求書を偽造すると私文書偽造罪になり、偽造請求書を提出すると詐欺罪や横領罪に該当する恐れがあります。ファクタリング会社から損害賠償を請求される可能性もあるため、偽造はやめておきましょう。

本記事では、ファクタリングで偽造書類を提出した際に該当する犯罪行為や対処法を解説します。そのほか、ファクタリング利用時に起きる可能性がある犯罪行為についても紹介しています。

最後まで読み進めていただくと、ファクタリングで罪に問われる行為がわかり、意図しない犯罪を犯す確率を減らせます。

本記事で不正行為を理解し、意図せず犯罪行為を犯してしまわないように注意しましょう。

ファクタリングで請求書を偽造してしまったら?

ファクタリングで請求書を偽造すると、詐欺罪に問われてしまいます。

ファクタリングとは、売掛債権を売却して期日より先に資金を回収する方法です。3社間ファクタリングでは、売掛先とファクタリング会社が直接やり取りするため詐欺が起きる可能性は少なくなります。

しかし、2社間ファクタリングは利用者が書類を偽造すると簡単に詐欺ができます。利用には請求書・契約書・通帳のコピーなどの提出が必要ですが、2社間ファクタリングでは売掛先の確認がないため偽造が容易です。

詐欺罪に加えて文書偽造罪に問われる恐れもあるため、提出書類を偽造するべきではありません。

ファクタリングは請求書のみでは利用できない

大半のファクタリングサービスは、請求書以外に身分証明証・銀行通帳のコピーといった書類の提出も求められます。売掛債権などの請求書だけでは、売掛先や利用者を信用するための情報が不足するからです。

そのため、ファクタリングを利用する際には以下のような提出書類が求められます。

  • 身分証明書
  • 銀行通帳のコピー
  • 登記簿謄本
  • 決算報告書

ファクタリングは銀行融資などと比較すると提出書類が少なく、簡単に利用できるのがメリットです。しかし、「提出書類が必要ない」「審査不要」などを謳っているファクタリング会社は違法な可能性があるため注意しましょう。

ファクタリング利用時に注意するべき犯罪行為

ファクタリング利用時に注意するべき犯罪行為は、以下の7つです。

  • 請求書の偽造
  • 請文・契約書などの偽造
  • 身分証明証の偽造
  • 通帳の偽造
  • 二重譲渡
  • 決算書の粉飾
  • 売掛金の使い込み

ファクタリングは銀行融資などと比較して審査がやさしく利用しやすいですが、一歩間違えると犯罪行為になる恐れがあります。

7つの犯罪行為の処罰や、該当する行為の詳細を紹介します。

請求書の偽造

請求書の偽造には「架空の請求書利用」と「金額のかさ増し」の2パターンがあります。

架空の請求書利用とは実在しない請求書を作成し、ファクタリング会社に提出する行為です。架空の請求書は利用者だけで作成されるものもあれば、売掛先と協力して偽造するケースもあります。

架空の請求書とは異なり、実在する請求書の金額を変更して通常より多くのお金を受け取る行為が金額のかさ増しです。

架空の請求書利用や金額のかさ増しでは請求書を偽造していますが、偽造罪には該当せず詐欺罪に問われます。自社名義での偽造請求書の作成は、他人名義での偽造が成立要件である偽造罪にあたらないからです。

請求書の偽造はファクタリング会社をだます行為になるため、詐欺罪に該当し「10年以下の懲役」で罰金刑はありません。

請文・契約書などの偽造

請文や契約書を偽造した場合、私文書偽造罪・私文書変造罪・公文書偽造罪に問われる可能性があります。

請文(うけぶみ)とは、身分が上の相手からの指示を実行したことを報告したり、約束したりする場合に使われる文書です。請書(うけしょ)と呼ばれる場合もあります。

罪名 刑罰
私文書偽造罪 3ヶ月以上、5年以下の懲役
私文書変造罪 3ヶ月以上、5年以下の懲役
公文書偽造罪 1年以上、10年以下の懲役

私文書偽造罪は、民間人や法人が作成する架空の文書に対して適用されます。取引記録や契約書の偽造、架空の領収書の作成などをすると私文書偽造罪にあたり、処罰は「3ヶ月以上5年以下の懲役」です。

私文書変造罪とは実在する書類に相手が押印したあと、変更を加えると適用される罪です。私文書偽造罪と同様に、処罰は「3ヶ月以上5年以下の懲役」になります。

公文書偽造罪は、取引相手が公的機関の場合に適用されます。適用された場合の処罰は重く「1年以上10年以下の懲役」です。

身分証明証の偽造

運転免許証やパスポートなどの公的身分証明証を偽造すると、公的文書偽造罪が成立します。

運転免許証は住所地の都道府県公安委員会、パスポートは外務省、マイナンバーカードは市区町村長の管轄です。各身分証明証は公的機関の管轄であり公文書に該当するため、刑罰は「1年以上10年以下の懲役」と私文書偽造罪より重くなっています。

また、偽造した身分証明証をファクタリング会社へ提出すると、偽造公文書行使罪に問われます。偽造公文書行使罪も同様に、刑罰は「1年以上10年以下の懲役」です。

通帳の偽造

銀行預金通帳や取引履歴を偽造すると私文書偽造罪が成立し、内容を書き換えた場合は私文書変造罪が成立します。

偽造または変造した通帳をファクタリング会社へ提出すると偽造・変造私文書行使罪が成立します。偽造罪・変造罪・行使罪のいずれの場合においても、刑罰は同じで「3ヶ月以上5年以下の懲役」です。

二重譲渡

二重譲渡とは、すでに他社に売却した売掛債権をほかのファクタリング会社にも売る行為を指します。二重譲渡は2社だけとは限らず、3社や4社に渡って売却するケースもあります。

二重譲渡が発覚すると、ファクタリング利用者に対して詐欺罪が適用されます。刑事告訴されると詐欺罪に問われ、10年以下の懲役が科せられる事態に陥りかねません。

決算書の粉飾

ファクタリングの審査を通りやすくしたり、支払う手数料を抑えたりするために決算書の粉飾が行われるケースがあります。

基本的にファクタリングは、利用者の決算状況よりも売掛先の信用力が重視されます。しかし、2社間ファクタリングでは売掛金を使い込んでしまう可能性があるため、利用者の経営状況も重要です。利用者の経営状況があまり好ましくないと、返済されないリスクが増加するため手数料も高く設定される傾向にあります。

「手数料を安くしたい」「審査に通過したい」という理由で、粉飾決算をするのはやめてください。

粉飾した決算書でファクタリング会社をだます行為は、発覚すると詐欺罪となる可能性があるからです。

売掛金の使い込み

3社間ファクタリングでは売掛先から直接振り込みますが、2社間ファクタリングは利用者を仲介する必要があります。

売掛金が一度利用者の手元に届くため、ファクタリング会社に債権が移っていても、利用者が使い込んでしまうケースがあります。手元に資金があると使用したくなりますが、回収した売掛金を使い込んでしまう行為は横領罪に該当するので注意が必要です。

横領罪は「5年以下の懲役」が科せられますが、業務上横領罪になると「10年以下の懲役」が適用されます。ファクタリングにおける売掛金の使い込みは、業務上横領罪に該当する可能性が高いため決して行わないでください。

詐欺罪・私文書偽造などで逮捕されたあとの流れ

詐欺罪・私文書偽造などで逮捕されたあとの流れは、以下のとおりです。

  1. 警察署で最長48時間の取り調べが行われる
  2. 逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断されると、検察に引き渡される
  3. 検察では最長24時間の取り調べが行われる
  4. その後、必要があると認められれば刑事裁判が行われる

請求書偽造による詐欺罪・私文書偽造罪などで逮捕されると、警察署に連れて行かれて最長48時間の取り調べが行われます。最大48時間の取り調べが行われるため、留置所で2日間にわたり勾留される可能性があります。

取り調べの結果、裁判の必要があると認められれば、起訴され刑事裁判が行われます。刑事裁判が行われるまでの10日間は勾留され、さらに詳細まで取り調べが行われます。

裁判の種類は、簡易的な「略式請求」と正式な刑事裁判である「公判請求」の2つです。略式請求の適用条件は「100万円以下の罰金または科料の財産刑が科される犯罪であること」と定められています。詐欺罪・私文書偽造罪などは罰金刑がなく懲役のみであるためファクタリングで罪を犯すと、公判請求が適用されます。

複数の犯罪を犯してしまったらどうなる?

複数の犯罪を犯してしまった場合は、その中で最も罪が重いものが適用されます。

たとえば、ファクタリングの利用時に、偽造または変造した請求書を提出してしまうと以下の3つの罪にあたります。

  • 偽造または変造罪(3ヶ月以上5年以下の懲役)
  • 詐欺罪(10年以下の懲役)
  • 行使罪(3ヶ月以上5年未満の懲役)

複数の犯罪を同時に犯した場合は、牽連犯(けんれんはん)という考えが適用されます。牽連犯では3つの刑罰を足すのではなく、それぞれの中で最も刑罰が重いものが適用されます。上記3つの刑罰で牽連犯が適用された場合、最も罪が重い詐欺罪の刑罰が科されます。

偽造してもファクタリング会社にばれない?

仮に請求書の偽造・決算書の粉飾などで資金調達ができても、ファクタリング会社へ返済できなければ横領罪が成立します。さらに、横領罪の取り調べ中に偽造罪・変造罪などほかの犯罪が発覚する可能性も高くなります。

偽造がばれずにファクタリングを利用していても、回数を重ねるほどばれる可能性が上がり、罪も重くなるためやめておきましょう。

偽造・変造・粉飾などの不正行為が行われていることは以前から認知されていましたが、近年では取り締まりが強化されています。不正行為を見逃すとファクタリング会社が損害を被るため、詐欺被害を減らす必要があります。そこで近年では、詐欺の認知度を上げて再発を防止する目的も兼ねて、ファクタリング会社が刑事事件にするケースが増加傾向です。

請求書を偽造する行為は罪が重く、取り締まりを強める動きが高まっているため、絶対にやめておきましょう。

すでに偽造請求書を提出してしまった場合の対処法

すでに作成した偽造請求書を提出してしまった場合は「ファクタリング会社に支払いができるか」を確認しましょう。

偽造請求書を提出した場合の対処法は、以下の2パターンがあります。

  • 金額のかさ増し:かさ増しした額を返済できるように準備する
  • 架空請求:請求書に書いた金額すべてを準備する

手元に支払える金額が用意できない場合は、以下の手段で資金調達を検討しましょう。

  • 他の売掛先からの売掛金
  • 固定資産や在庫などを売却
  • ビジネスローン

上記の方法で支払期日までに資金を準備し、ファクタリング会社へ支払いができれば問題の発覚を避けられるかもしれません。

資金の準備ができない場合は、弁護士に相談して解決方法を探したり、ファクタリング会社に直接事情を説明したりする必要があります。

偽造請求書の作成で一時的に資金を得られても、最終的に自分の首を絞める結果になるため偽造はやめておきましょう。

偽造した請求書などによる損害賠償のリスク

二重譲渡・請求書や身分証明証の偽造などの不正でファクタリングを利用すると、罰金だけでなく損害賠償請求のリスクがあります。

不正により受け取った金額の返済に加えて、遅延損害金の支払いも求められるため、本来の支払い額より多くなります。

刑事罰を受けて前科が付き、損害金の支払いで返済不能に追い込まれて破産するリスクが高くなるので偽造はやめておきましょう。

請求書などの詐欺・偽造による自己破産への影響

請求書などの詐欺・偽造によって背負う借金の場合は、自己破産ができません。

自己破産とは、借金が返済できない状態の方が、一定の価値がある財産を処分しても払いきれなかった額を免除してもらう行為です。

自己破産が認められない要素として、免責不可事由が定められています。免責不可事由は、破産法第252条1項から11項で、以下のように決められています。

  1. 不当な破産財団価値減少行為
  2. 不当な債務負担行為
  3. 不当な偏頗(へんぱ)行為
  4. 浪費または賭博その他の射幸行為
  5. 詐術による信用取引
  6. 業務帳簿隠滅等の行為
  7. 虚偽の債権者名簿提出行為
  8. 調査協力義務違反行為
  9. 管財業務妨害行為
  10. 7年以内の免責取得など
  11. 破産法上の義務違反行為

ファクタリング利用時の不正行為で、該当する可能性のある免責不可事由は以下の2つです。

  • 詐術による信用取引
  • 業務帳簿隠滅等の行為

詐術による信用取引は、返済できないとわかっていながら虚偽の情報を提示して、資金調達を行った場合に該当します。決算書を偽造してファクタリングを利用した場合は「業務帳簿隠滅等の行為」に該当し、免責不可事由が適用されます。

請求書などの偽造はせず正しくファクタリングを利用しよう

請求書・身分証明証・決算書などを偽造・変造すると、刑事罰を科せられる恐れがあります。刑事罰で懲役を科せられると、事業が継続できないだけでなく社会的信用も失います。

さらに、損害賠償の支払いや遅延損害金により自分の首を絞める結果につながりかねません。くわえて、自己破産しようにも免責不可事由に該当するため、負った借金は生涯をかけて返済する必要があります。

ファクタリングは偽造などの犯罪行為をせずに、正しく利用すれば素晴らしい資金調達方法です。即日資金調達・審査が柔軟・決算書に影響を与えないといった、さまざまなメリットがファクタリングにはあります。

意図しない不正行為にも注意を払いながら、スピーディーに資金調達できるファクタリングを適切に利用しましょう。