新型コロナウイルスへの経済対策が次々に打ち出されていますが、数が多すぎてどのような支援を受けることができるのか分からないという人も多いのではないでしょうか?

数多くのコロナ関連補助の内容や違いを理解して、適切に使い分けることで経営危機を乗り越えることができる可能性もありますし、事業を新しい方向へ転換させていくことができる可能性があります。

現実的に資金繰りがピンチという事業者はしっかりと給付措置を利用する必要がありますし、ピンチでない事業者もこのタイミングで助成金を活用することで、これまで必要だけど手が出なかったツール等への投資を行うことができることもあります。

新型コロナウイルスに関連した助成金や補助について詳しく解説していきます。

コロナによってピンチになっている事業者の方はもちろん、そうでない方も経営にプラスになる補助を受けることができるので、把握しておきましょう。

 

短期的な危機を乗り越えるための給付金

短期的な危機を乗り越えるための給付金

新型コロナウイルス感染拡大によって、短期的な危機になってしまった事業者の方は、その危機を乗り越えるために必要な補助を国や自治体から受けることができます。

主には以下の3つの給付措置があります。

  • 持続化給付金
  • 休業協力金
  • 家賃補助

それぞれの給付措置について詳しく解説していきます。

持続化給付金

持続化給付金の概要は以下の通りです。

条件 新型コロナウイルスの影響によって、売上が前年同月比50%以上減少している中小事業者・フリーランス
金額 個人事業主:100万円
法人:200万円

受け取ることができる金額は、前年の総売上(事業収入)-(前年同月比▲50%月の売上×12か月)で計算されます。

そのため、例えば2019年4月の売上が100万円、2020年4月の売上が50万円だった場合には、前年同月比50%以上のマイナスの条件に該当するため支給対象になります。

「前年の総売上(事業収入)-(前年同月比▲50%月の売上×12か月)」の金額が200万円(個人事業主は100万円)を超えたとしても、支給限度額は200万円(個人事業主は100万円)までですので、200万円(個人事業主は100万円)までしか受け取ることはできません。

休業協力金

休業協力金とは、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、営業自粛に協力した事業者に対して支給される協力金です。

こちらは、国の制度ではなく地方自治体独自の制度ですので、地方自治体によって助成金の有無や助成内容が異なります。

例えば東京や大阪では以下のような支援を行なっています。

  • 東京都:50万円(2事業所以上で休業等に取り組む事業者は100万円)
  • 大阪府:中小企業100万円 個人事業主50万円

こちらは、都道府県によって支援内容が異なりますし、都道府県とは別に、市区町村の基礎自治体レベルで独自の補助を行なっている場合もあります。

詳しくは、お住いの都道府県と市区町村のホームページを確認するようにしましょう。

家賃補助

2020年5月末の第2次補正予算の中で、新型コロナウイルスの影響によって売上が減少した中小事業者に対して家賃の保証を行うということが決定しました。

補助内容や条件は以下の通りです。

条件 5~12月において売上が前年同月に比べ5割以上減ったか、
3カ月平均で3割以上減った事業者
金額 個人事業主25万円/月・法人50万円/月を上限に家賃の2/3を6か月分補助
(複数店舗を所有する場合、給付上限超過額の1/3を給付とし、
個人事業主50万円・法人100万円まで上限引き上げ)
6ヶ月合計で法人600万円、個人事業主300万円までが上限

5月〜12月の中で売上が前年同月比で5割以上減少したか、3ヶ月連続で3割以上減少した事業者が補助を受けることができる制度です。

店舗が1つであれば、個人事業主は25万円、法人は50万円が限度です。

店舗が複数であれば、倍の個人事業主50万円、法人100万円を限度に支援を受けることが可能で、6ヶ月合計で法人は600万円、個人事業主は300万円の支援を受けることができます。

まだ、募集は始まっておらず、6月末受付開始の予定ですが、助成の流れは、一旦、助成金相当額を日本政策金融公庫で借りておき、その金額を国が補助するという流れになりそうです。

手続きが他の助成金と比較して煩雑になるのでスピーディーに補助を受けることができるかどうかが課題になりそうです。

危機を乗り越えて成長していくための助成金

危機を乗り越えて成長していくための助成金

新型コロナウイルスによって国は「新しい生活様式」を提示し、事業者や個人に対して感染予防に配慮した新しい生活様式へと転換するように求めています。

これによって、事業者の営業形態も変化せざるを得ないと言えるでしょう。

国は、事業者がこのような変化をするために必要な資金の補助も行なっており、主なものとしては以下のようなものがあります。

  • ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
  • IT導入補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

企業が変化し、成長していくために必要な上記の助成金について詳しく解説していきます。

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)

ものづくり補助金は、従来から中小事業者が革新的なサービス開発・試作品開発生産プロセスの改善に必要な設備投資を行う際に助成を行う制度として用意されていたものです。

従来は補助率2/3が限度でしたが、新型コロナウイルス対策の特別枠が設けられ3/4の補助率となりました。

特別枠の補助を受けるためには補助対象経費の1/6以上を以下の使途に利用する必要があります。

  • サプライチェーンへの対応の毀損への対応:顧客への製品供給を継続するために必要な設備投資や製品開発
  • 非対面型ビジネスモデルへの転換:非対面・遠隔でのサービス提供が可能なビジネスモデルに転換するための設備・システム投資
  • テレワーク環境の整備:従業員がテレワークで業務を行う環境を整備

上記に該当すると、補助率3/4、1,000万円を上限として補助を受けることができます。

IT導入補助金

IT導入補助金も、中小事業者がITツールを導入する際に助成を受けることができる制度として以前から存在していた助成金です。

従来のIT導入補助金は補助率2/3が限度でしたが、新型コロナ対策として、こちらも特別枠が設けられ、特別枠に該当すると3/4の補助を受けることができます。

特別枠の適用条件は、ものづくり補助金と同じで以下のようになっています。

補助対象経費の1/6以上を以下の使途に利用

  • サプライチェーンへの対応の毀損への対応
  • 非対面型ビジネスモデルへの転換
  • テレワーク環境の整備

上記に該当すると、新型コロナ特別枠の適用となり、補助率3/4で30万円〜450万円の補助を受けることができます。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が新型コロナ対策の設備投資を行うことで補助を受けることができるものです。

補助を申請する経費の1/6以上を新型コロナ対策の設備投資や、販路の拡大などに利用することによって補助を受けることができます。

例えば、飲食店がインターネット通販を始めるためのシステム開発。
店舗にテイクアウトスペースを作るための設備投資。

上記のような投資活動を行った場合、コロナ特別対応型として100万円を上限に補助に3/4の補助金を受けることができます。

簡単に言えば、非対面型への転換やテレワークの推進などへの投資を行うと、その投資を行った金額の¾の補助をいずれかの制度によって受けることができます。

従業員の雇用を持続させるための支援制度

従業員の雇用を持続させるための支援制度

従業員の雇用を持続させるためにも、国は従業員の人件費補助などを行なっています・

雇用を持続させるための措置としては以下の2つの制度があります。

  • 雇用調整助成金
  • 働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)

雇用を継続させていくための2つの措置について詳しく解説していきます。

雇用調整助成金

雇用調整助成金とは、事業活動の停止や休業を余儀なくされた事業者が、従業員を、休業、職業訓練、出向などの方法によって雇用の継続を図った場合に、休業手当や賃金の補助を受けることができるという制度です。

コロナ関連の休業などによって雇用調整助成金を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。

  • 経営状況:「最近3ヶ月の売上高などが前年同期比10%以上減少」
    または「最近1ヶ月の売上高などが前年同期比5%以上減少」
  • 対象従業員:被保険者でなくても可(緊急雇用安定助成金)

これらの条件を満たすことで、中小企業:4/5大企業:2/3の補助率で従業員の賃金の補助を受けることができます。

また、職業訓練を伴う休業の場合には、中小企業:4/5 大企業企業:2/3(解雇等を行わない場合は中小企業:9/10または10/10 大企業:3/4)の補助率で補助を受けることができ、さらに中小k業:2,400円 大企業1,800円の加算額が支給されます。

なお、1日の助成金の上限額をこれまでは8,330円だったものを15,000円まで引き上げられました。

コロナ対策によって補助率が引き上げられ、これまでは休業の計画届が必要だったものが不要になるなどの手続きの簡素化が図られました。

これによって、国や自治体から休業の要請があった場合も従業員の雇用の維持を図りながら事業の継続をすることが可能です。

なお、受給することができる日数には限りがあり、1年の間に最大100日分、3年の間に最大150日分しか受給することができないことになっています。

働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)

従業員の働き方をテレワークへ変更するために要した費用を国が助成する制度も存在します。

この制度では、テレワーク導入に必要なツールの費用が補助されます。

この制度で補助されるのはソフトだけではなくパソコンやモニター等のハードも対象となるので「テレワーク導入のためにパソコンやタブレットを購入したい」という場合も補助の対象になります。

対象となる内容は以下のいずれかに該当した場合です。

  • テレワーク用通信機器の導入・運用
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング

上記に該当する取り組みを下記の「成果目標」を達成に向けて行動する場合に補助を受けることができます。

  1. 評価期間に1回以上、対象労働者全員に、在宅又はサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施させる。
  2. 評価期間において、対象労働者が在宅又はサテライトオフィスにおいてテレワークを実施した回数の週間平均を、1回以上とする。

補助金額は成果目標の達成状況によって異なります。

達成した場合

補助率:3/4
従業員1人あたり補助上限金額:40万円
1企業あたりの上限額:300万円

未達成の場合

補助率:1/2
従業員1人あたり補助上限金額:20万円
1企業あたりの上限額:200万円

IT導入補助金などとは別枠で受けることができる補助金ですので、「従業員をテレワークへ移行させたい」と考える中小事業者の方はぜひ活用を検討しましょう。

新型コロナウイルス関係の貸付金制度

ここまでは返済の必要がない助成金制度でしたが、助成金ではなく貸付金に関しても新型コロナ関連で国は優遇された融資商品を用意しています。

新型コロナウイルス感染症特別貸付

セーフティネット保証

新型コロナ関連の貸付金制度について詳しく解説していきます。

新型コロナウイルス感染症特別貸付

日本政策金融公庫が融資を実施している、低金利または実質無利子の融資制度で、最大5年間の元本返済が不要となるものです。

0.9%金利優遇の条件と、実質無利息の条件をそれぞれ解説していきます。

基準金利から0.9%の金利優遇

  • 最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している
  • 業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月の売上高が次のいずれかと比較して5%以上減少している
    (1)過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高
    (2)令和元年12月の売上高
    (3)令和元年10月から12月の平均売上高

上記の条件を満たしている場合には、基準金利よりも0.9%の金利優遇を受けることができます。

実質無利息

実質無利息の適用を受けるには、上記の条件に加えて、下記の条件を満たしている必要があります。

小規模事業者 中小企業者
個人 要件なし 売上高▲20%以上
法人 売上高▲15%以上 売上高▲20%以上

小規模で事業を営んでいる個人事業主であれば、確実に無利息の融資を受けることができます。

また、無利息融資は、一旦、日本政策金融公庫から融資を受け、その後国から利子補給を受けるという形で利息負担が実質的にゼロになるという流れになるという点に注意しましょう。

最初から無利子で借りることができるわけではありません。

セーフティネット保証

銀行や信用金庫などの民間の金融機関からお金を借りる場合も、以下のいずれかに該当した場合には、信用保証協会の保証を通常の融資とは別枠で受けることができます。

通常の保証とは別枠で保証を受けることができるので、これまで「信用保証協会の保証を得ることができない」と銀行や信用金庫の融資を諦めていた事業者も、条件に該当すれば信用保証協会の保証を受けることができるので、銀行や信用金庫から借入をすることが可能です。

  • 最近1か月の売上高等と最近1か月を含む最近3か月間の平均売上高等を比較
  • 最近1か月の売上高等と令和元年12月の売上高等を比較、かつ、その後2か月間(見込み)を含む3か月の売上高等と令和元年12月の売上高等の3倍を比較
  • 最近1か月の売上高等と令和元年10~12月の平均売上高等を比較、かつ、その後2か月間(見込み)を含む3か月の売上高等と令和元年10~12月の3か月を比較

セーフティネット保証4号なら売上高等減少が▲20%以上、セーフティネット保証5号は▲5%以上の減少が必要になります。

セーフティネット保証4号に該当すれば100%の保証を受けることができ、セーフティネット保証5号であれば80%保証です。

100%信用保証協会が保証する4号保証であれあれば、銀行は確実に融資金を回収することができるので、ほぼ確実に融資を受けることがきる上、低金利で借入することが可能です。

助成金についてよくある質問

助成金には税金はかかりますか?
助成金は雑所得とみなされます。
コロナ関係で売上が減った分を助成金で補うというのが制度の本旨ですので、助成金であろうと、それによって売上が回復し、結果的に利益が出れば税金はかかります。
確定申告や決算の際には申告を忘れないようにしましょう。
どんな助成金を受けることができるかは誰に確認すべきですか?
会計士、税理士などの専門家へ相談するのが確実でしょう。
相談先が分からない場合には取引銀行などに相談することによって、どんな助成金を利用することができるのかを教えてもらうことができる場合もあります。
まずは、近くにいる会計士・税理士・銀行員などの金融関係の専門家へ相談してみるとよいでしょう。
助成金を受けると銀行などからの評価は悪化しますか?
助成金は返済の義務がありません。そのため、助成を受けることによって、その分企業の財務的な体力は強化されることになります。銀行は企業の財務的な体力強化を評価するため、助成金を受けることによってむしろ銀行からの評価は向上するでしょう。
休業協力金や持続化給付金を受けても事業継続の見込みが立ちません。とのように対処すべきでしょうか?
融資制度を活用して資金調達すること、雇用調整助成金で従業員の賃金を確保すること、家賃補助制度を利用して固定費の圧縮を図ること、これらの助成金制度をフル活用することで、売上回復のための努力をするしかありません。
場合によっては持続化補助金などを活用して全く異なる販路を開拓する必要もあるでしょう。これまでとは全く異なる概念やチャネルで売上を確保していかなければならない時代へと変わっています。
コロナを機に事業の将来を本格的に見直してみるのもよいでしょう。
振り込み通知があった助成金をファクタリングすることはできますか?
ファクターによっては対応してくれる場合もあるかもしれませんが、おすすめはできません。
助成金をファクタリングがしたことがばれてしまうと、行政から返還請求される可能性もあるので、リスクの高い行為です。
助成金は通知があれば数日中には振り込まれます。ファクタリングなどは利用せずに待つようにしましょう。

まとめ

新型コロナウイルス関連の助成金は中小事業者に対してはかなり手厚いものとなっています。

売上減少には給付金、家賃補助、従業員への賃金の手当など、経営危機に対する助成措置が充実しています。

さらに、コロナを機に事業の転換を図ろうとする業者に対しては、IT導入補助やものづくり補助などによって、投資額の助成を受けることも可能です。

危機的な状況さえ乗り越えれば、助成金や融資など、様々な支援を受けることができるチャンスでもあります。

「自社はどんな支援を受けることができるのか」をしっかりと確認して、危機を乗り越え、新しい生活様式に対応した企業を構築していくようにしてください。