入金前の売掛債権を現金化するファクタリングは、借入に代わる新たな資金調達方法として、経産省も活用を推進しています。

もちろん、ファクタリング自体は法律上、違法でもなんでもありません。

しかし、ファクタリングの業者の中には、違法な営業を行う悪質な業者も存在します。

今回はファクタリングの法的根拠や手数料の決まり方、悪質な業者の事例を見ながら、法令を遵守したファクタリングについて考えてみましょう。

 

ファクタリングが違法ではない法的根拠

ファクタリングは貸金業のように特別な許認可を得ずに開業できることから、悪質な業者も存在しています。過去には、ヤミ金融業者がファクタリングを装い、法外な利息の貸付を行っていたとして、逮捕された事例もありました。

ここでは、ファクタリングがどのような法律によって、その事業を提供しているのかを確認します。

3社間ファクタリング

3社間ファクタリング

3社間ファクタリングは、民法第466条の「債権の譲渡性」民法第467条の「指名債権の譲渡の対抗要件」が適用されます。

民法第466条「債権の譲渡性」では、性質上許されない場合を除いて、債権は自由に譲渡できると規定しています。譲受人(ファクタリング会社)は、譲渡人(もともとの債権者、ファクタリング利用会社)に代わって、債権の取立てができます。

民法第467条「指名債権の譲渡の対抗要件」では、債権を譲渡したときに、その債権の譲受人が債務者(売掛先)に対して自分が債権者であることを主張(対抗)するためには、「債権譲渡の事実の通知」か「債務者の承諾」のいずれかが必要であることを規定しています。

3社間ファクタリングを利用する際には、債権譲渡通知と債務者の同意を得ることが、法律上の重要な手続きとなります。

2社間ファクタリング

2社間ファクタリング

2社間ファクタリングは、債権の譲渡が行われるものの、債務者への通知と承諾が行われないことから、主に民法第555条の「売買契約」が適用されます。

売買契約とは、「財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」契約です。2社間ファクタリングは債権(売掛金)を譲渡し、その対価として金銭を得るため、売買契約に該当します。

したがって、2社間ファクタリングは債務者への通知や同意は不要で、債権の譲渡人と譲受人の意思の合致で契約成立となります。

手数料はファクタリング会社のリスクに応じて決められる

手数料の違い

ファクタリングの手数料は、3社間ファクタリングと2社間ファクタリングで以下のような相場となっています。

  • 3社間ファクタリング:1~5%
  • 2社間ファクタリング:10~20%

しばしば、ファクタリングを「貸金業法や利息制限法の上限金利に当てはめると、法外な手数料がかかる」と批判する声があります。

ファクタリングは債権譲渡であって貸金ではないため、違法に高い手数料を請求しない限り、貸金業法等の法律は適用されません。

ファクタリングの手数料は、ファクタリング会社が引き受けるリスクに応じて決められています。

3社間、2社間に共通して、ファクタリング会社が引き受けるリスクとは、 債務者(取引先)の経営悪化や倒産によって債権の回収ができない「貸し倒れリスク」です。

ファクタリングで売掛債権を譲渡すれば、貸し倒れリスクは譲渡人(ファクタリング利用会社)から譲受人(ファクタリング会社)へと移行します。

万が一、取引先が期日通りに売掛金の満額、あるいは1円も支払えない場合でも、貸し倒れリスクはファクタリング会社が請け負います。

そのリスクプレミアムとして、ファクタリングの手数料は設定されているのです。

さらに、2社間ファクタリングは取引先への通知および同意が不要な代わりに、売掛債権を譲渡した後も、ファクタリング利用会社が取引先から債権を回収して(回収代行業務委託契約)、ファクタリング会社に支払います。

あってはならないことですが、期日通りに取引先から入金された売掛金をファクタリング利用会社が持ち逃げしたり、口座に入金された直後に自動引落しされたりして、ファクタリング会社が売掛金を受け取れないリスクも考慮しなければなりません。

したがって、2社間ファクタリングは3社間ファクタリングに比べ、高めの手数料が設定されているのです。

違法の可能性があるファクタリング

違法・悪徳業者の手口

前述の通り、法律を遵守して営業しているファクタリング業者は違法ではありません。

しかし、以下のようなケースでは、形式上はファクタリングでも実質的には貸金と見なされ、違法となる可能性があります。

ファクタリングを装った高利貸し

参考:債権買い取り装い高利貸し 大阪府警、東京の2業者8人を逮捕

2017年1月25日、ファクタリング業を装い、高利貸しを営んでいた業者が逮捕されました。

業者は資金繰りが悪化した中小企業約250社に対し、ファクタリングを装って実際は債権を買い取らずに担保にして、総額3億円以上を貸し付け、1億円以上の利益を得ていたようです。

裁判ではこの業者が行ったファクタリングに利息制限法を適用貸金業登録をせずに貸付を行った、手数料が利息制限法違反であると判断して逮捕に至りました。

この他にも、ファクタリング業者が貸金業法や利息制限法に違反したとして逮捕・有罪とされたケースが複数あり、悪徳なファクタリング業者に対しては、実質貸金という見方があります。

給料を買い取る給料ファクタリング

参考:「給料ファクタリングは貸金」 金融庁に続き司法も判断

給料日前に支払いが確定している給料を「給料債権」とみなし、ファクタリング業者が買い取って代金を支払う「給料ファクタリング」というサービスがあります。

2020年3月24日、給与ファクタリング業者(原告)が、債務者(被告)に対し、7万円の給料債権を4万円で買取り、4日後に支払う契約で買戻し日の設定がなされ、債務者がその支払いを怠ったことにより、業者が債務者に対して支払いを求める訴訟を提起した事例があります。

判決のポイントは以下のとおりです。

  • 本件におけるファクタリングは貸付に該当する
  • 貸付に該当する給料ファクタリングを行うものは、貸金業法にいう貸金業を営む者に該当する
  • 本件の取引における利息の契約は、貸金業法第42条1項の定める年109.5%を大幅に超過するため、出資法5条3項に違反し、刑事罰の対象となる

さらに、本件に絡んで、金融庁における法令解釈に係る照会(ノンアクションレター)に対し、金融庁は「給与ファクタリングのスキームを業として行うものは、貸金業に該当」と回答しています。

これにより、給料ファクタリングは貸金と認定され、認可を受けていない給料ファクタリング業者は、貸金業法・出資法違反で刑事罰の対象となります。

ファクタリングの違法性に関するQ&A

ファクタリングの違法性に関して、よくある質問をQ&A形式でまとめました。

Q.売掛金の回収が期日より遅れた場合、違約金や遅延損害金は発生しますか?
A.ファクタリング会社によりさまざまですが、契約違反を根拠として、本来引き渡すべき売掛金に遅延損害金を上乗せした「損害賠償金」を請求するケースが一般的です。ただし、期日通りの支払いが困難な利用者を狙って、損害賠償金を「分割」して支払わせ、実質高利貸しのような契約を持ちかける悪質業者も存在しています。違約金や遅延損害金については、事前にファクタリング会社に問い合わせるか、契約書にしっかり目を通すかしましょう。
Q.ファクタリング会社が直接ファクタリング利用会社から売掛金を回収する2社間ファクタリングは、違法ではありませんか?
A.2社間ファクタリングは、民法第555条の「売買契約」を法的根拠として成り立っています。重要なポイントは、ファクタリング会社が売掛金を一括で回収していることで、これが複数回に分割して、なおかつ分割手数料を付けて回収する場合は、金銭消費貸借契約の貸付けと見なされ、貸金業の登録が必要となります。
Q.万が一、高利のファクタリングを利用した場合は、どこに相談すれば良いですか?
A.日本ファクタリング業協会が相談対応・苦情対応・紛争解決の窓口となっています。相場を遥かに超える手数料でファクタリングを利用してしまった場合は、専門の弁護士に相談しましょう。

優良業者・違法業者の見分け方

ファクタリングの法的根拠や違法なファクタリング業者の手口について解説しました。

貸金業法や出資法が改正されて以降、ヤミ金融業者は貸金業から、自由な債権譲渡ができるファクタリング業へシフトしたと言われています。

悪質なファクタリング業者は、資金繰りに困っている事業者に対し、言葉巧みに取引を持ちかけてきます。

以下のポイントを参考に、優良業者か違法業者かを見分けましょう。

  • 2社間ファクタリングの手数料相場20%を遥かに超えた手数料を請求されないか
  • ファクタリングを装い、実際は売掛債権を担保に入れた貸付ではないか
  • 万が一、取引先から売掛金が支払われなかった場合の対応

優良なファクタリング会社は取引実績が豊富で、なおかつ口コミでも高く評価されています。

それらも参考にして、資金繰り改善に責任を持ち、良好な関係を築いていけるファクタリング業者を見極めましょう。