ファクタリングと法律の関係について解説します。
「ファクタリングは法律違反なのではないか?」という意見を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか?
ファクタリングの手数料は貸付金利の上限を定めている利息制限法の上限金利よりも高いので「利息制限法違反なのではないか」という意見があります。
また、弁護士だけが債権回収を行うことができることを定めている弁護士法に違反しているという意見もあります。
しかし、ファクタリングは合法です。
ただし、手数料設定やファクタリングの具体的な内容によっては違法になってしまう可能性があるので注意する必要があります。
ファクタリングを取り巻く法律、ファクタリングが合法な根拠や違法になる事例などについて詳しく解説します。
ファクタリングが業務内容を詳細に取り決めた法律のルールがない取引です。
何が合法で何が違法なのかについてよく理解し、安全に取引をするようにしましょう。
ファクタリングは法律違反?
ファクタリングは違法なのではないか?という意見があるのは事実です。
ファクタリングが違法なのではないかと主張する人は以下の法律に違反しているのではないかと言っています。
- 利息制限法・貸金業法違反
- 弁護士法違反
ファクタリングが違法と呼ばれる法律的な原因について詳しく解説していきます。
利息制限法・貸金業法違反ではないかとの指摘
ファクタリングは利息制限法違反、貸金業法違反なのではないかと一部で指摘されています。
ファクタリングの手数料は多くの場合で以下の利息制限法で設定された上限金利を超過しています。
- 10万円未満:20.0%
- 10万円以上100万円未満:18.0%
- 100万円以上:15.0%
ファクタリングの手数料は1ヶ月で20%以上になることもあり、この場合の年利は20%×12ヶ月=240%にもなります。
この手数料が利息制限法違反なのではないかと言われています。
また、2社間ファクタリングにおいては、ファクターへ支払うのは納入企業になります。
この行為も、「実質的には貸付を同じ」と指摘されています。
貸付であるならば貸金業者登録を行い、利息制限法を遵守しなければならないので「貸金業法違反では?」という指摘もあります。
しかし、ファクタリングが売掛債権の回収リスクを負っており、手数料がリスクに見合ったものであれば違法ではありません。
この点については詳しく後述します。
弁護士法違反ではないかとの指摘
また、ファクタリングは弁護士法という法律に違反しているのではないか?という指摘もあります。
弁護士法では営利目的で債権回収を行うことができるのは弁護士だけと決められています。
ファクターは弁護士ではないので、ファクターの行為は弁護士法違反として指摘されているのです。
しかし「債権回収業務に関する特別措置法」という法律によって、債権回収は例外的に弁護士以外のものでも行うことができるとされています。
「債権回収業務に関する特別措置法」で回収が認められている債権は不良債権などだけですが、ファクタリングも企業の資金繰り円滑化のために一定の役割を果たすものであることから、弁護士法違反ではないというのが一般的な解釈です。
債権の譲渡は法律で認められた行為
ファクタリングの法律的な根拠は民法だけです。
債権の譲渡は民法第466条で認められています。
「債権は、譲り渡すことができる。」
民法によって債権の譲渡は認められており、「債権回収業務に関する特別措置法」によって弁護士以外のものが債権回収を生業としても弁護士法違反には当たらないと解釈できることが、ファクタリングの法律的な根拠です。
詳細を規定した法律はない
ファクタリングには業務の詳細な内容を規定した法律はありません。
銀行であれば銀行法、消費者金融であれば貸金業法によって業務内容が決められていますが、ファクタリングに関しては業務の詳細を取り決めた法律はなく、根拠となるのは民法だけになります。
行政に対して登録や許認可を行う必要が全くないので、どんな業者でもファクタリング業を営むことができます。
そのため、ファクタリング業者の中には、実質的な貸付と判断される行為を高い手数料で行う悪徳業者も混じっているのは事実です。
そのため、業者選びには十分に注意するようにしましょう。
どのような行為が実質的な貸付になるのかについては後ほど詳しく解説していきます。
2020年4月の民法改正からファクタリングできる債権の幅が広がる
これまでは譲渡禁止特約のついた債権はファクタリングすることができませんでした。
民法には以下のように明記されていたためです。
「債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。」
この一文によって、譲渡禁止特約がついた債権の譲渡は不可能となっていました。
しかし、2020年4月施行の改正民法では以下のような条文になる見込みです。
「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(譲渡制限の意思表示)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない」
これによって、2020年4月以降は譲渡禁止特約がついた債権でもファクタリングを行うことができるようになります。
ファクタリングの手数料が合法な根拠
ファクタリングの手数料は利息制限法を超える利率でも、一定の条件を満たしていれば合法です。
その条件は、「ファクタリングが債権の回収リスクを負っているかどうか」というものです。
ファクタリングの手数料が合法なものであると判断できる理由について詳しく解説していきます。
手数料は債権のデフォルトリスクに対するリスクプレミアム
ファクタリングの手数料は利息制限法上の上限金利を超える利率になることがほとんどです。
これは、ファクタリングの手数料が「売掛債権の回収リスクも一緒に売却していることに対するリスクプレミアム(リスクの対価)」だからです。
ファクタリングでは、売掛債権の売却時に売掛債権の回収リスクもファクターへ売却しています。
つまり、売掛債権が売掛先企業の倒産などによってデフォルトした場合には、その損失はファクターが背負うことになり、納入企業には一切リスクがありません。
ここがファクタリングと融資の最も大きな違いです。
ファクタリングの手数料は売掛債権の回収リスクに見合うものであれば、貸付とは異なるものと判断することができるので、手数料が利息制限法を超える利率であったとしても法律上は問題はないと解することができます。
債権の保全を図ったら貸付と判断される
一方、ファクタリングにおいて、ファクターが債権の保全を図った場合には実質的な貸付と判断されるので、利息制限法を遵守しなければなりません。
債権の保全を図っている状況とは、償還請求権ありの契約である場合や、不動産担保や連帯保証によって債権の回収を担保したようなケースです。
ファクタリングは、もしも売掛債権がデフォルトした時にファクターが責任を負うからこそ、高い手数料を設定することができるのであって、債権の保全を図っているのにも関わらず利息制限法を超える手数料を設定することはできません。
法律違反になる可能性が高い4つのケース
ファクタリングが法律違反になる可能性が高いケースとしては以下の4つのケースが考えられます。
- 償還請求権ありのファクタリング
- 買取代金の一部だけしか入金しないケース
- 債権の一部しか買い取らないケース
- 手数料の他に費用を請求されるケース
上記のいずれかに該当してしまうと、「債権の保全を行なっている」と判断されて、ファクタリングではなく貸付と見なされる可能性が高くなります。
法律違反に該当する可能性のあるファクタリングのケースについて詳しく見ていきます。
償還請求権ありのファクタリング
償還請求権ありのファクタリングは、実質的に貸付と同じだと判断されてしまいます。
償還請求権ありとは、売掛債権がデフォルトした場合、その責任をファクターに対して負わなければならないというファクタリングです。
償還請求権ありのファクタリングではファクターには何もリスクがありません。
明らかにファクターが回収リスクを負っていない実質的な貸付と判断されるので、利息制限法を守った手数料でファクタリングする必要があります。
契約の時には償還請求権ありなのか、なしなのかの確認は絶対に怠らないようにしましょう。
買取代金の一部だけしか入金しないケース
買取代金の一部しか契約時に入金しないケースも実質的な貸付であると判断される可能性の高い取引です。
このような契約では、買取時には売掛債権金額の一部だけを手付金として支払い、残金は売掛債権回収後に支払うというものです。
売掛債権が回収できない場合には、代金は支払われないのですから、やはりこのような取引ではファクターが債権の保全を図っていると言わざるを得ません。
売掛債権売却時に一部の手付金しか支払わないようなファクタリング取引しないようにしましょう。
債権の一部しか買い取らないケース
債権の一部しか買い取らないケースも実質的な貸付と判断される可能性が高くなります。
本来、売掛債権は分割することができません。
そのため、債権の一部だけを買い取るという名目でも、実質的には債権全額を安い値段で買い取っていることと同じと解することができます。
例えば、納入企業は「100万円の売掛債権を全額買い取って欲しい」と言っているのにも関わらず、ファクターが「30万円なら買い取る」と言っているケースでは、実質的な貸付と判断される可能性があります。
このケースでは100万円の売掛債権を30万円で買い取ることで債権の保全を図っていると判断されるためです。
申込時に債権の一部しか買い取らないケースであるにも関わらず、利息制限法を超える規模の手数料を要求する場合には違法行為の可能性が高いので、このような業者と取引を行なってはなりません。
実際にこのケースで、「実質的な貸付である」と判断されて過払金の支払いを命じられた判例もあります。
手数料の他に費用を請求されるケース
ファクタリングの際に手数料以外の費用を設定する業者も実質的な貸付であると判断される可能性があります。
ファクタリングの手数料が「債権のデフォルトリスクに対するリスクプレミアムである」という前提条件であるならば、ファクタリングの手数料の中には遅延損害金や、事務手数料全てが含まれるべきだというのが法的な解釈だからです。
法律違反の可能性が高い業者は具体的に以下のような費用を手数料の他に設定することがあります。
- 遅延損害金
- 登記費用
- 事務手数料
- 収入印紙代
これらの費用は、全てファクタリング手数料の中に含まれるべき費用であって、別途請求することは基本的に不可能です。
ファクタリング手数料の他の上記の費用を請求する業者とも取引をしない方がよいでしょう。
法律違反業者の3つの特徴
法律違反を犯すような悪徳業者には大きく分けて以下の3つの特徴があります。
- 手数料が異常に高い
- 契約書がない
- ファクタリングではなく融資を勧めてくる
上記いずれかに該当する業者は法律違反の可能性のある手続きを行う悪徳業者である可能性があるので取引はしない方がよいでしょう。
法律違反をする可能性の高い業者の3つの特徴について詳しく見ていきましょう。
手数料が異常に高い
ファクタリングの手数料は売掛債権のリスクに対するリスクプレミアムであるべきです。
そのため、手数料設定には以下のような法則が成り立つはずです。
- 売掛債権のリスクが高い=手数料が高くなる
- 売掛債権のリスクが低い=手数料が低くなる
つまり、売掛債権のリスクが低いにも関わらず手数料が高い場合には、リスクに見合わない手数料を設定している悪徳業者である可能性が高いのです。
例えば、倒産の可能性がない公共団体が売掛先であるにも関わらず、20%以上もの高い手数料を設定しているファクターは悪徳業者であると考えて間違いないでしょう。
手数料が売掛債権のリスクに見合ったものになっているか不安な場合には、他のファクターからも相見積をとってみることをおすすめします。
契約書がない
契約書がないファクターも悪徳業者の可能性が高いと考えられます。
悪徳業者は違法行為を行うので、契約者によって取引の履歴を残しておくことを嫌がります。
一方、一般的に優良業者と言われるファクターの中には「契約だけは面談で行う」という業者も多く、優良業者ほど契約書を重視しています。
契約書を締結しないファクターは違法業者の可能性が高いので、取引をしない方が無難です。
ファクタリングではなく融資を勧めてくる
ファクタリングではなく融資を勧めてくる業者は高い確率で闇金だと考えて絶対に取引をしてはいけません。
闇金は銀行からお金を借りることができないお金に困った人をターゲットにしています。
そして、ファクタリングは「貸付ではないから」という理由で高い手数料を設定することができるので、その手数料設定のまま融資にスライドさせることがあるのです。
優良業者はファクタリングに申し込んだ顧客に融資を勧めるようなことは絶対にありません。
融資を勧めてきた時点で闇金だと判断し、絶対に取引をしないようにしましょう。
ファクタリングと法律についてよくある質問
- どのくらいの手数料なら合法の可能性が高いですか?
- ファクタリングの手数料は売掛債権のリスクに応じて決定するので、一概にどの程度であれば高いということはできません。
しかし、一般的には2社間ファクタリングで20%超、3社間ファクタリングで10%超の手数料であれば、手数料は高いと言えます。
見積もりでこのような手数料が提示された場合には、他のファクターからも見積もりをとった方がよいかもしれません。
- 対応が悪い業者と取引をしない方がよいでしょうか?
- 優良業者は顧客対応に関してもしっかりと社内教育を行なっていますので、対応が悪いということはありません。
対応が悪い業者が必ずしも悪徳業者とまでは言えませんが、ファクタリングでは担当者との相性や担当者との信頼関係の醸成も大切です。
「対応が悪いな」と感じたら、他のファクターを探した方がよいでしょう。
- 償還請求権ありなのに手数料が高い場合は違法ですか?
- 償還請求権ありのファクタリングは実質的な貸付です。
そのため、手数料も利息制限法を守ったものにする必要があります。
償還請求権ありなのに、利息制限法を超えている場合には違法ですので、そのような業者とは取引をしてはなりません。
- ファクターは登録貸金業者の登録をする必要がありますか?
- 必ずしもする必要はありませんし、多くのファクターが貸金業者登録をしていません。
ただし銀行系のファクターは「ファクタリングは貸金業法違反なのではないか?」という声に対するリスクヘッジのための貸金業登録をしています。
貸金業登録をしていない業者でも、手数料がリスク見合ったものであれば取引をしても安全です。
- 遅延損害金を別途請求する業者は違法業者ですか?
- 違法の可能性が高いです。
ファクタリングの手数料は売掛債権のデフォルトリスクに対しるリスクプレミアムです。
リスクプレミアムの中には、当然、売掛債権の支払いが遅れた場合のリスクも含まれているはずですので、手数料の他に遅延損害金を設定しているということは実質的な貸付であるという判断になります。
このケースで手数料が利息制限法を超えていた場合には違法の可能性が高いと考えられます。
まとめ
ファクタリングは以下の2つの条件を満たしていれば法律には違反しません。
- ファクターが売掛債権のデフォルトリスクを負っている
- 手数料が売掛債権のリスクプレミアムに見合ったものである
しかし、ファクターの中には「債権の保全を図っている場合」や「リスクに見合わない手数料を設定している」などの行為を行なっている悪徳業者も多数います。
ご自身が取引をしようとしているファクターが、法律にかなった取引をする業者かどうかをよく確認し、くれぐれも悪徳業者とは取引をしないように注意しましょう。