新型コロナウイルスの感染拡大防止の一環として、国や自治体がさまざまな経済支援策を打ち出しています。
「持続化給付金」などをはじめとして、事業者を対象とした助成金、補助金に注目が集まっていることはご存知でしょう。
いずれも金融機関からの借入とは違って、「申請すれば受給できる」「返済不要なお金」として認識されている事業者の方も多いですが、具体的な目的や趣旨の違いについてはあまり知られていません。
今回は、事業を進めていく上で、また有効な資金調達方法のひとつとして知っておきたい助成金と補助金について、ファクタリングの有効活用も交えて解説していきます。
助成金・補助金とは
助成金も補助金も、国や自治体が税金を財源として事業者を支援するために交付されるお金のことです。
いずれも融資と異なり、「返済不要なお金」ですが、交付される目的や趣旨については、以下のような違いがあります。
助成金の目的・趣旨
助成金は一定の要件を満たした事業者に対して、雇用保険料を財源として支給されるお金です。
雇用促進や労働環境の改善など、雇用関係の助成金(主に厚生労働省)と、研究開発型の助成金(主に経済産業省)に分かれます。
年間を通して募集していることが多く、補助金のように厳しい審査がないため、要件を満たした上で申請すれば、原則受給することができます。
労働者や労働環境に関するものが多いことから、一般的に社会保険労務士が支援を行っています。
代表的な助成金制度
- キャリアアップ助成金・・・非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善を実施した事業主に対して助成する制度
- 65歳超雇用推進助成金・・・65歳以上への定年引上げ等の取組みを実施した事業主に対して助成する制度
- 人材開発支援助成金・・・雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための職業訓練などを計画に沿って実施した事業主に対して助成する制度
補助金の目的・趣旨
補助金は主に経済産業省や地方自治体が中心となり、新規事業や創業促進など、国が推進する政策に合った事業を行う事業者をサポートする目的で、税金を財源として支給されるお金です。
助成金とは異なり、要件を満たしていればだれでも受給できるわけではありません。
まずは、補助金の公募期間内に応募書類を揃えたうえで申請します。所定の審査に通過して補助金が交付される事業者に決定したら、交付決定された内容で事業を行い、事後の検査で要件を満たしていれば、はじめて受給することができます。
助成金よりも対象となる事業が豊富で、支給額も比較的大きめ(数百万~数億円)です。
代表的な補助金制度
- 持続化補助金・・・小規模事業者等が取り組む販路開拓等の取り組みにかかる経費の一部を補助する制度
- IT導入補助金・・・中小企業や小規模事業者等が、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助する制度
- ものづくり補助金・・・中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発、試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資の経費の一部を補助する制度
給付金とは
給付金も国や自治体から支給されるお金で、助成金とほとんど同じです。
助成金の種類によって、制度名の最後に「○○給付金」や「○○奨励金」になっているものがあります。
たとえば、新型コロナウイルス対策として打ち出された「特別定額給付金」は、国民を給付対象とする助成金のひとつです。
助成金・補助金のメリット
助成金や補助金を事業に活用することで、以下のようなメリットが得られます。
返済の必要がない
助成金や補助金は国の施策を実現するために給付されるお金なので、返済の必要がありません。
金融機関からの借入や自己資金で事業を進めていくことが難しい場合、返済不要の助成金・補助金は企業経営の大きな助けとなるでしょう。
雑収入として仕訳できる
助成金・補助金ともに、本業以外の収入となるため、売上ではなく「雑収入」として仕訳します。
たとえば、200万円の助成金を受給して経常利益率が10%の場合、売上に換算すると200万円÷10%=2,000万円となり、受給額の10倍を計上したことと同じ効果が得られるのです。
さらに、助成金は使途が自由なので、設備投資に回したり、借入の返済に充てたりすることもできます。
企業価値が向上する
助成金を受給するためには、労務環境を整備する必要があります。
したがって、助成金の要件を満たし、受給されれた場合には、労務環境が整備されていると、認められていることになり、企業価値が向上します。
同じ用に、補助金は国や自治体から企業の取り組みが認められたということに他なりません。
自社の企業価値が向上すれば、金融機関や取引先からの信頼度が上がり、融資や商取引で有利になります。
助成金・補助金のデメリット
返済不要でまとまった資金を受給できる助成金や補助金ですが、メリットばかりではありません。
受給までに時間がかかる
助成金も補助金も、申請すればすぐに受給できるわけではありません。
助成金であれば雇用の推進や労務環境の改善、補助金であれば補助事業を実施することが受給の要件となります。
先出しのコストがかかる
助成金も補助金も、受給要件を満たすために、先出しのコストがかかります。
助成金の場合は、従業員の雇用や研修・教育、労務環境の整備などを行う必要があり、補助金の場合は、全額自社負担で補助事業を実施しなければなりません。
当然ながら、先出しのコストの財源は自己資金や借入金ですので、手元に資金を用意しておく必要があります。
受給要件が厳しい制度もある
要件を満たせば必ず受給できる助成金ですが、近年では不正受給を防止するため、受給要件が厳しくなっています。
また、補助金に関しては言うまでもなく、受給までにいくつもの大きなハードルがあります。
制度によっては面接やプレゼンの必要があり、入念に準備したからといって採択されるとは限りません。
めでたく採択されたとしても、すぐに受給できるわけではなく、一定期間内に受給要件となる事業を進めていくことが条件です。
助成金や補助金を受給するためのファクタリング活用法
前述の通り、助成金や補助金の受給要件を満たすためには、ある程度の先出しのコストが必要です。
自己資金や借入金では準備できない場合には、ファクタリングで資金調達ができます。
ファクタリングを助成金や補助金の受給に役立てる活用方法について解説します。
受給要件を満たすために必要な資金を確保できる
助成金であれば、従業員の雇用や研修・教育、労務環境の整備のためのコストがかかります。
また、補助金は採択されても、一定期間は補助事業を実施するためのコストが必要です。
これら受給要件を満たすために必要な資金を、自己資金や借入金でまかなう企業が多いですが、自己資金が不足している場合や、金融機関からの融資を受けられなかった場合は、ファクタリングで資金調達という方法があります。
ファクタリングを活用すれば、回収前の売掛債権(請求書)を現金化して、まとまった資金を確保することができます。
財務体質の改善ができる
補助金は、国の施策に合致した事業を行っていることだけでなく、企業の財務体質も重視されます。
なぜなら、採択した企業が補助事業の途中で経営が悪化して倒産してしまうと、税金が無駄になってしまうからです。
このため、補助金の審査では、営業利益が確保できているか、資金繰りは問題がないか、将来性や成長性はどうかなどが重視されます。
赤字経営を続けている企業は、決算の黒字化を目指し、財務体質を改善する必要があります。
そこで役立つのがファクタリングです。
ファクタリングは融資とは異なり、企業が保有する売掛債権という資産を現金化するため、負債を増やすことなく資金を調達できます。
資産を現金化して企業の自己資本比率を向上させることは、「資産を有効活用して利益に結びつける経営をしている」と判断され、企業の財務体質の改善および企業価値の向上につながります。
金融機関から借り入れをするよりも、ファクタリングで資金調達をすることで、補助金の審査で有利になるのです。
ファクタリング会社によっては、財務体質の改善を目的としたコンサルティングサービスを提供しているところもあります。
助成金・補助金・ファクタリングに関するQ&A
助成金・補助金・ファクタリングに関して、想定される問答集をQ&A形式でまとめました。
- Q.ファクタリングを利用したことが知られると、助成金や補助金の受給で不利になりませんか?
- A.助成金や補助金を申請するときに、何をもって資金調達したかを申告する必要はありません。ファクタリングで売掛債権を現金化して調達した資金は、あくまでも自己資金として判断されます。つまり、ファクタリングで資金調達をすれば、借入を利用するよりも財務体質の改善につながるため、補助金の審査で有利になります。
>>「補助金の審査で有利になる理由」について詳しく見る
- Q.助成金や補助金に申請して受けられなかった場合、また申請することはできますか?
- A.助成金の場合は、一般的に何回でも申請できますが、同一のテーマについての申請回数が制限される助成金もあります。同様に、補助金も何度も申請でき、一度採択された制度にふたたび申し込むことも可能です。審査に落選した場合は、窓口に問い合わせることで、落選理由を教えてくれるところもあります。
- Q.住民税等の滞納があると、助成金や補助金は受けられませんか?
- A.自治体の補助金の多くは、住民税や法人税、事業税などを滞納している場合、申請できません。そもそも、経営が厳しく、税金の滞納がある事業者は、補助事業を行う資金が不足していると判断されるからです。一方、厚生労働省の助成金は、雇用保険や労災保険など、労働保険の滞納があると申請できません。
助成金・補助金の受給に必要な資金調達はファクタリングで
助成金や補助金は返済する必要がないお金のため、受給できれば企業経営に大きなプラスとなります。
ただし、いずれも受給要件を満たすためには、先出しのコストが必要となります。さらに、社労士や中小企業診断士など、専門家にサポートを依頼した場合は、着手金や報酬の支払いも発生します。
すでに運転資金が不足している状態から受給を目指すには、まとまった資金が必要です。
ファクタリングを利用すれば、借入のように負債を増やすことなく、まとまった資金が調達でき、なおかつ企業の財務体質の改善にもつながります。
「助成金や補助金の申請をしたいが、自己資金が不足していて諦めるしかない……」というお悩みをお持ちの事業者の方も、ファクタリングを有効活用して、受給要件を満たすための資金調達を成功させましょう。