「資金繰りをなんとか改善する方法はないか」と資金繰りについて悩んでいる人も多いのではないでしょうか?

  • 毎月利益が出ているはずなのにお金が足りない
  • 借入金の返済に追われている
  • ふとした大きな支出によってお金が足りなくなってしまう
  • 毎月月末になると金策ばかりしている

資金繰りに対してこのような悩みを持った中小事業者の方は多数存在します。

資金繰りは少しの工夫で改善することができますし、改善する方法は多数存在します。

また、資金繰りを改善するために最も重要なのは資金繰り管理であり、資金繰りの管理は資金繰り表を作成し「いかに精緻に支払スケジュールと現預金残高を把握するか」という点に左右されます。

資金繰りを改善するために有効な方法と、資金繰り表の作成方法について詳しく解説していきます。

資金繰り改善について知りたい方はぜひご覧ください。

 

資金繰りを健全にする12の方法

資金繰りを健全にするためには様々は方法があります。

簡単にできる方法から時間のかかる方法まで様々ですが、ここでは比較的にすぐに実践することができる12の方法について解説します。

  • 税金対策を再検討する
  • 売掛金の回収管理を厳格化する
  • 仕入れ先に対して交渉する
  • ファクタリングや手形割引などで入金サイトを短縮化する
  • クレジットカードで経費を支払う
  • 借入金を1本化して返済額を軽減する
  • 不要な在庫を持たない
  • 不要な資産を処分する
  • 売上ベースの評価基準から利益ベースの評価基準へ
  • 回収サイトの早い取引先と取引する
  • リースを活用して投資を控える
  • 資金繰り表を作成して支払いスケジュールを管理する

資金繰りは売上、仕入、支払方法などで少しの心がけを行うことで改善することが可能です。

資金繰りを改善するための12の方法について詳しく解説していきます。

税金対策を再検討する

税金対策として「車検のたびに自動車を購入する」「豪華な社員旅行を企画する」など、お金をたくさん使って経費を計上している会社も多いのではないでしょうか?

資金繰りを改善するためにはこのようなお金の使い方は見直すべきでしょう。

確かに、経費をたくさん使えば、その分会社の利益を圧縮することができるので、税金を節約することが可能になります。

しかし、経費を使った金額は会社から現金が流出するので資金繰りにはマイナスです。

よほど会社に潤沢なキャッシュがある時以外は、税金対策をすることによって資金繰りは苦しくなるので、資金繰りのためには税金対策を控えた方がよいでしょう。

売掛金の回収管理を厳格化する

資金繰りを改善するためには、まずは「本来、入金になるべき現金を確実に回収する」ということが重要です。

売掛金の中に「未入金のものがないか」「請求漏れがないか」という売掛金管理を徹底しましょう。

基本的に取引先は請求しなければ代金の入金をすることはありません。

期日通りの入金を促すためには、きちんと請求を行い、支払に遅れたらしっかりと督促を行うという、この資金繰り管理のサイクルをしっかりと行うことが重要です。

売掛金の回収管理を厳格に行い、「請求→入金確認→督促」というサイクルを売掛先ごとに徹底しましょう。

また、販売先の中に入金サイトを短くすることができる会社がないか確認し、交渉できる企業があるのであれば「入金期日を早めてほしい」と交渉してください。

1日でも早く入金を受けることができれば、それだけ企業の資金繰りは改善します。

仕入れ先に対して交渉する

資金繰りは「支払いを1日でも先延ばしにする」ということでも改善します。

そのため、仕入れ先に対して支払サイトを長くできないか交渉してみるのも有力な方法だと言えます。

仕入先企業の中から支払サイトの延長を交渉できる会社があるのであれば、交渉を行い、1日でも自社に資金が留まるように交渉してみましょう。

ファクタリングや手形割引などで入金サイトを短縮化する

ファクタリングや手形割引など、売掛債権を期日前に資金化する方法を活用することでも資金繰りは改善します。

ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社へ売却して期日前に資金化する方法、手形割引は会社が保有する受取手形を銀行で割引く方法で、いずれの方法も期日前に売掛債権を早期資金化することができるので、企業の資金繰り改善が可能です。

手数料や利息が発生しますが、申込日当日から数日程度で資金化することができるので、資金繰りが苦しい時には活用しましょう。

クレジットカードで経費を支払う

クレジットカードで経費を支払うことでも資金繰りは改善します。

ご存知のように、クレジットカードは「月末締め翌月20日払い」などと決まっており、支払いの方が後になります。

経費を利用した時に現金で買い物をすれば、その場で現金は流出していきますが、クレジットカードで経費を支払うことによって現金は流出しません。

支払いを後に回すことができるので、資金繰りにはプラスです。

法人クレジットカードを作成し、経費の支払いは後に回すようにしましょう。

また、クレジットカードを使用した方が、明細による経費管理が非常に楽になるので経費の事務も効率化することが可能です。

借入金を1本化して返済額を軽減する

借入金の返済額を軽減させることでも、資金繰りの改善は可能です。

複数の借入金を抱えているのであれば、おまとめなどを行って借入金の1本化を検討しましょう。

大抵の場合、複数の借入金のおまとめをすることによって毎月返済額は軽減されます。

融資を受けている銀行などへ相談に行きましょう。

不要な在庫を持たない

会社に不要な在庫をできる限り持たないことでも資金繰りは改善します。

不要な在庫を持つことによって、倉庫の管理コストや仕入れコストによって現金が流出するので資金繰りにはマイナスです。

また、多くの在庫を抱えることによって、賞味期限切れや経年劣化などによる在庫ロスも多くなるので不要なコストも発生します。

不要な在庫をできる限り持たず、売上のトレンドに見合った効率的な仕入れを行うように仕入計画を工夫してください。

不要な資産を処分する

会社が保有している使っていない不動産などの資産の売却を検討しましょう。

不動産などの資産を売却することによって、売却代金が会社へ入金になるのですから資金繰りには間違いなくプラスです。

さらに、資産を管理するための様々なコストを圧縮することができるのもメリットです。

資産の管理には、固定資産税などの管理コストが発生しますが、売却することによってこのような固定費を圧縮することも可能です。

会社の資産台帳を確認し、売却することができる資産がないかどうかチェックし、売却できるのであれば売却し、現金化してしまいましょう。

売上ベースの評価基準から利益ベースの評価基準へ

会社の営業担当者の評価基準を変更するだけでも資金繰りや収益が改善することがあります。

従来、営業担当者の評価基準を売上ベースとしていたものを利益ベースへと変更することによって営業担当者が「回収できるかどうか分からない」という取引先に対して無理な販売をすることを避けることができます。

利益ベースとすることによって、貸し倒れた損失は営業担当者の評価からマイナスにすることができるので、営業担当者は「代金を支払うことができるかどうか」という点を主眼に置いて営業活動を行うようになります

売上は回収できなければ意味がありませんが、営業担当者が自分の評価を上げるために、無理な販売を行なっているケースも少なくないため、評価基準を売上ベースから収益ベースへ変えることによって企業の資金繰りが劇的に改善する会社もあるでしょう。

回収サイトの早い取引先と取引する

取引先の中でも、回収サイトの早い会社と積極的に取引することによって資金繰りは良化します。

取引先ごとに回収サイトを比較して、回収サイトが早い取引先に対して積極的に営業を行なっていくことで、会社の資金繰りは改善するでしょう。

また、一般的には回収サイトが短い会社は資金が潤沢な安全な会社です。

そのような会社との取引を厚くして行った方が企業の安全性や収益性は向上するため、サイトの短い会社とは積極的に取引を拡大していくとよいでしょう。

リースを活用して投資を控える

車両や機械設備の購入は控えてリースを活用することによって資金繰りは良化していきます。

リース料は確かに安くはなく、一括で設備を購入するよりは割高になる傾向にあります。

しかし、手元の現金で投資を行うと、多額の現金が一気に流出してしまうので、手元に潤沢な資金がない企業は短期的に資金繰りが苦しくなってしまいます。

リースであれば毎月少しずつしか現金が流出しないので資金繰りは悪化しません。

リースを活用して、多額の資金流出を避けましょう

資金繰り表を作成して支払いスケジュールを管理する

ここまで様々な資金繰り管理の方法を紹介してきましたが、基本的には資金繰り表を作成しなければ資金繰りが円滑になることはありません。

資金繰り表とは、入金と支払いのスケジュールを管理して現金の残高を予測することです。

資金繰り表を作成することによって、現金が足りるのか、不足するのか、いくら不足するのかなどをあらかじめ知ることができるので、資金調達計画などを立てることができます。

精度の高い資金繰り表を作成すれば、突然「お金がない」という事態を避けることができます。

資金繰りは様々な方法で改善することはできますが、資金繰り表を作成することは資金繰り管理の基本中の基本だと理解し、資金繰り表の作成だけは絶対に行うようにしてください。

資金繰り表の作り方

資金繰りを改善する方法は様々ですが、基本的には資金繰り表をしっかりと作り、支払いスケジュールや現金残高の予測をいかに高い精度で行うということが最も重要になります。

資金繰り管理を健全に行うために、資金繰り表の作成方法についてもしっかりと把握し、資金繰り管理は収益管理とは別に行ってください。

 

資金繰り表作成に必要な項目

資金繰り表は会計ソフトなどで作ることもできますが、エクセルなどで簡単に作成することもできます。

自分で資金繰り表を作る際に必ず入れるべき項目が以下の8つです。

  • 前月の繰越
  • 営業収入
  • 営業支出
  • 営業収支
  • 財務収入
  • 財務支出
  • 経常収支
  • 翌月繰越

それぞれの項目に該当する取引や、それぞれの収支が示すものについて詳しく紹介していきます。

前月の繰越

1番上には、前月から繰り越した現預金残高を必ず記載しましょう。

前月末時点で資金がいくら残っていたのかを知ることができなければ正しい資金の残高を把握できません。

必ず前月末残高を把握して、資金繰り表の最上部へ記載するようにしてください。

営業収入

営業収入とは営業活動で獲得した資金のことです。

  • 現金売上
  • 売掛金の入金
  • 手形の入金

など、営業活動で獲得した現金が入金になった場合や、営業活動によって獲得した売掛債権が資金化したタイミングで「営業収入」の欄に記載を行います。

営業支出

営業支出欄では、営業活動によって発生した費用の支払いのために流出した資金を記入します。

具体的には以下のような項目です。

  • 現金による仕入れ
  • 買掛金決済
  • 支払手形の決済

など仕入れに係る支出を計上するのが一般的です。

また、この他にも

  • 広告宣伝費
  • 交際費
  • 地代家賃
  • 交通費

などの費用も通常の営業活動に係る支出だと判断できるので、経費による現金支出もこの欄に記載しましょう。

営業収支

営業収支とは、営業収入と営業支出の合計です。

営業活動によって会社の現金がプラスになったのか、マイナスになったのかをこの欄で知ることが可能になります。

また、損益計算書と合わせて以下のようなことが分かります。

  • 資金繰り表の営業収支がプラスで損益計算書の営業利益がマイナス→資金繰りが上手くいっただけで利益は出ていないので、来月以降は資金繰りもマイナスになる可能性がある・早急に収支を改善する必要あり
  • 資金繰り表の営業収支がマイナスで損益計算書の営業利益がプラス→利益が出ているものの資金繰りが上手くいっていない。資金繰りを改善する必要性あり

このように、営業活動による資金繰りを「営業収支」の欄において抽出することによって、資金繰りを改善しなければならないのか、収益を改善しなければならないのかを知ることができます。

財務収入

財務収入とは、お金を借りた、資産を売却したなど、財務活動によって生じた現金の収入を記載する欄です。

ここでは営業活動とは直接関係のない資金の収入を記載すればよいでしょう。

財務支出

財務支出とは、借入金を返済した、資産を購入したなどの営業活動とは無関係な資金の流出を記載する欄になります。

なお、財務収入と財務支出を合計したものを財務収支と言い、財務収支の欄を資金繰り表に設けることも可能です。

財務収支の欄を設けることによって、「財務活動による資金繰りがプラスなのか、マイナスなのか」ということを知ることができます。

経常収支

経常収支とは営業収支と財務収入と財務支出の合計で、その月(日)の資金繰り全体がプラスだったのかマイナスだったのかを知ることができます。

経常収支がプラスであるにも関わらず、営業収支がマイナスの企業は借入金が増えただけ、もしくは資産を売却して現金が増えただけという可能性があります。

経常収支がマイナスでも営業収支がプラスであれば、「資産を購入したから現金が流出してしまった」とか「借入金の返済が多すぎる」ということが分かります。

このように、資金繰り表は「営業活動」「財務活動」「全体」の3つに分けることによって「資金繰りがプラス(マイナス)になった原因は何か」ということを知ることができるので非常に便利です。

翌月繰越

最後に次月に繰り越す現預金残高を記載しましょう。

この金額が、次月分の資金繰り表の「前月の繰越残高」に転記する金額と同じになります。

このように、資金繰り表は作成すべき項目を作り、現金の入りと出を適切な項目に入れ込んでいくだけで、簡単に作成することができます。

エクセルなどで簡単に作成することはできますが、以下の記事には詳細な作成方法が記載されているのでぜひご覧ください。

資金繰りは3ヶ月先まで予測する

資金繰り表を作成するに当たって、何ヶ月先まで資金繰りの予測をしなければならないのか、ということは多くの方が感じている疑問ではないでしょうか?

基本的には資金繰り表は3ヶ月先まで予測しましょう。

3ヶ月先まで予測することができれば、大抵の売掛債権と買掛債権の期日は到来するので、未入金(未払い)の債権(債務)まで含めた予測をしっかりと行うことができます。

資金繰りの予測の中で、資金が足りなくなるということを知ることができれば、借入金の申込などの手当をすることもできますが、3ヶ月先に必要になる資金であれば十分に時間的な余裕をもって資金調達することができます。

基本的に資金繰り表の作成は3ヶ月先まで行い、それ以上に長いサイトの売掛債権や買掛債務があるのであれば、さらに長い期間の予測を行った方がよいでしょう。

資金繰り改善を真剣に検討している方へ

資金繰りを改善する方法はすぐにできることから、時間をかけて企業の体質を改善していく方法まで様々です。

どの方法で資金繰りを改善しても問題ありませんが、最も重要なことは「資金繰り管理を自社でしっかりと行う」ということです。

資金繰り管理を行うことによって、資金繰りに対する意識が強くなるので様々な資金繰り改善策を検討することができます。

資金繰り管理は収益管理と同じくらいに大切であると考えて、資金繰り管理をしっかりと行うようにしてください。