企業経営においてもっとも重要な要素の1つが資金繰り管理です。

企業は「売上がいくら」「収益がいくら」など、売上や収益の数字に囚われてしまいがちですが、実は売上や収益よりも最も重要になるのが資金繰りになります。

資金繰りをよく理解していないと、黒字になっているにもかかわらず倒産してしまうこともあり、経営者は収益管理だけでなく資金繰り管理も行うことが非常に大切です。

しかし「資金繰り管理を具体的にどのように行えばいいか分からない」という人も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では資金繰り管理の具体的な方法と、資金繰りを改善するポイントについて解説していきます。

企業にとって最も重要な指標の1つである資金繰りの管理方法について、しっかりと理解しておきましょう。

資金繰りの管理に重要なポイント

資金繰り管理に重要なポイントや資金繰り管理のおおよその流れは以下のようになります。

  1. 入出金のスケジュールを把握し残高を予測する
  2. 資金繰り表で現金の過不足額を調整する

資金繰り管理は、現金の流れを把握して、将来的に資金がどのようになるのかということを予測することです。

資金繰り管理方法について詳しく解説していきます。

入出金のスケジュールを把握し残高を予測する

まずは会社の入出金のスケジュールを把握しましょう。

「いつ」「いくら」「入金があるのか」「出金があるのか」を細かく把握し、月末や給料日など、支払いが集中する日に残高がいくらになるのを把握しましょう。

資金繰りとは、将来の資金の残高の予測のことですので、詳細な入出金予定を把握すればするほど的確な予測ができることは間違いありません。

1ヶ月の中でいつ、いくらの入出金があるのか、できる限り詳細に把握するようにしましょう。

資金繰り表で現金の過不足額を調整する

毎月の入出金の予定を詳細に把握したら資金繰り表を作成しましょう。

資金繰りの細かな作成方法については以下の記事をご参照ください。

資金繰り表は、できれば日次で作成し、可能な限り細かく資金の動きを管理した方がよいでしょう。

日次で「資金の残高はどうなるのか」ということを把握することによって、○月○日にはいくらお金が不足する」ということを詳細に把握することができるようになります。

ここで、例えば「月末の支払日に200万円現金が不足する」ということを把握できるようになります。

そこで、銀行借入によって200万円調達することで資金ショートを未然に防ぐことが可能です。

このように、資金繰り表はあらかじめ「将来的に現金が不足するのか、どの程度残るのか」ということを把握するものです。

できる限り前もって把握しておくことによって、借入などの対応を取ることができるので、資金ショートによる倒産を防ぐことができます。

資金繰り表の種類

資金繰り表は管理の方法によって以下の3つの種類に分かれます。

  • 月次資金繰り表
  • 日繰り表
  • キャッシュフロー計算書ベースの資金繰り表

それぞれの資金繰り表の作り方について解説していきます。

月次資金繰り表

月次資金繰り表とは、4月、5月、6月というように、1ヶ月ごとに列を設けて、毎月の資金の出入りを管理していく方法になります。

例)月次資金繰り表
4月 5月 6月 7月
前月繰越 200 205 215
経常収支 50 55
経常支出 40 40
経常外収支 10 10
経常外支出 15 15
収支過不足 +5 +10
次月繰越 205 215

月次の資金繰り表は非常にシンプルですので、自分で手書きで作成してもよいですし、エクセルなどで簡単に作成するのもよいでしょう。

2~3年など中期的に資金繰りを管理する際には月次の資金繰り表が有効です。

日繰り表(日次資金繰り表)

日繰り表(日次資金繰り表)とは、毎日資金の出入りを管理する方法です。

例)日次資金繰り表
日付 入金(+) 出金(-) 残高
4月残高 100
5/1 現金仕入 5 95
5/4 保険料支払 3 92
5/11 固定資産税支払 8 84
5/13 買掛金支払 20 64
5/20 給料支払い 40 24
5/25 売掛金入金 50 74
5/30 売掛金入金 30 104
5月合計 80 76 104

日繰り表においては、入出金がある都度、毎日資金繰り表に落とし込んでいきます。

資金繰りが苦しく、毎月の支払いがギリギリの企業は月次資金繰り表での管理では不十分です。

資金繰りが苦しい企業は「毎月の支払日に現金残高がどうなるか」ということが重要になるため、毎日の資金の出入りを細かく管理し、日毎の現金残高を予測する必要があります。

日次資金繰り表(資金繰り表)は、将来2~3カ月分を作ることが好ましいです。 入出金が確定しているもの、もしくは入出金が予想されるものを書いていきます。

資金に余裕がないのであれば、面倒でも日繰り表を作成しましょう。

キャッシュフロー計算書ベースの資金繰り表

資金繰り表は単に現金の出入りを記載するスタイルが一般的ですが、キャッシュフロー計算書をベースとした資金繰り表も存在します。

キャッシュフロー計算書ベースの資金繰り表とは、資金の出入りを営業活動、投資活動、財務活動に区分して表示するものです。

どのような理由で資金が増えたのか、減ったのかということが分かりやすいので、資金繰りにおける問題点や改善点が分かりやすくなるのかメリットです。

資金繰り表作成時の3つの注意点

資金繰り表を作成する際には、以下のよくある間違いやミスに注意しましょう。

  • 突発的な支出の計上に漏れがないか
  • 現金残高が他の決算書類と合致しているか
  • 予測に根拠があるか

これらのことを確認せずに金融機関へ資金繰り表を提出することによって、むしろ金融機関の評価がマイナスになることもあります。

資金繰り表作成時の3つの注意点について詳しく解説していきます。

突発的な支出の計上に漏れがないか

資金繰り表作成時においては、毎月発生する支出は漏れなく計上することは可能です。

しかし、突発的に発生する支出は漏れることが多くなります。

例えば、家賃や毎月の給与の支払いなどは漏れなく計上することはできます。

しかし、税金の支払いや賞与の支払いは突発的に発生します。

これらの支払いは金額も大きいので、計上漏れがあると資金繰りは大きくズレてしまうため注意しましょう。

現金残高が他の決算書類と合致しているか

資金繰り表の残高が、貸借対照表の現預金残高などと一致しているかどうかという点も重要です。

他の決算書類と資金繰り表の残高に齟齬があると、その時点でその資金繰り表の信頼度はガタ落ちになります。

金融機関などに資金繰り表を提出する前に、残高に齟齬がないかどうかの確認をするようにしましょう。

予測に根拠があるか

予測の資金繰り表を作成する際に、その予測に根拠があるかどうかは非常に重要です。

金融機関などの外部へ提出する際には、自社をよく見せるためにどうしても良い予測を出したくなるものです。

しかし、この数字に根拠がなければ何も意味はありません。

資金繰り表の予測の数字は、すでに契約済みの売上を記載したり、実績の伸び率を参考にして売上や利益の予測をするなど、根拠を金融機関などに説明ができるものとしてください。

どこに注目すべき?資金繰り表を確認する際の3つのポイント

資金繰り表を確認する際にはどこに注目すべきでしょうか?

資金繰りを見る上で重要になるポイントは以下の3点です。

  • 営業収支
  • 現金残高と月商の比較
  • 借入金の返済額と営業収支の比較

営業収支

営業収支とはモノやサービスを売ったことによる収支です。

ここで資金がマイナスということは、本業を続ければ続けるほど現金が流出し、いつか資金ショートしてしまうということです。

ボーナス時などの突発的に資金の流出が増えるタイミングであれば営業収支がマイナスであることはやむを得ませんが、普段は営業収支がプラスでないと、その会社は厳しい状態だと言えるでしょう。

現金残高と月商の比較

現金の残高は月商以上あることが完全性を測るための1つの目安です。

最低限、月商以上の預貯金が手元に確保できていれば、売掛債権の入金の遅れや突発的な支払いがあったとしても、資金繰りを気にすることなく営業を続けていくことができます。

月商未満しか預貯金がないのであれば、銀行借入などで外部からの資金調達を検討することも必要でしょう。

借入金の返済額と営業収支の比較

借入金の返済額が営業収支を上回っていないかどうかも重要なポイントです。

借入金の返済額が営業収支を上回ると、時間の経過とともに現金が流出するため資金ショートする可能性が高い危険な状態だと言えます。

特に設備資金を借りる際には、その設備投資が失敗すると営業収支よりも借入金の返済額の方が多くなりがちです。

設備投資の検討をする時は、当該投資がどの程度の営業収支のプラスをもたらすのかということをシビアに検討し、営業収支の方が借入金の返済を上回るということを明確に予測した上で借入をしましょう。

資金繰りを改善する5つの方法

資金繰りが悪いのであれば早急に改善しなければなりませんし、問題ない企業でも資金繰りを改善する余地があるのであれば改善するに越したことはありません。

企業の資金繰りを改善するためには以下の5つの方法が挙げられます。

  • 支払サイトを延ばす
  • 入金サイトを短くする
  • 長期運転資金を借りる
  • ファクタリングを利用する
  • 不要な資産を売却する

資金繰り改善に寄与する5つの方法について詳しく解説していきます。

支払サイトを延ばす

1つ目の方法が支払いサイトを延ばすという方法です。

支払サイトとは、仕入先に対する支払いまでの期間のことです。

例えば月末の締め翌月末払いであれば支払サイトは1ヶ月になります。

手元に現金をできる限り長い期間確保したいのであれば、支払サイトを少しでも長くしなければなりません。

例えば、月末締め翌月払いの仕入先の支払サイトを、月末締め翌々月末払いと変更することによって、手元には1ヶ月長く資金が残ることになります。

仕入先の中に支払サイトの延長に応じてくれる会社がないかどうか確認し、交渉できる会社があるのであれば支払サイトの延長を交渉してみるとよいでしょう。

また、日常の雑費などの買い物は現金で決済するのではなく、法人クレジットカードを使用することによって支払いを後に回すことができます。

会計処理も楽になるので、日常の経費の支払いにクレジットカードを利用する方法も検討するとよいでしょう。

入金サイトを短くする

資金繰り管理で重要になる2つ目のポイントが入金サイトの短縮です。

販売先に対して商品を販売してから入金になるまでの時間を入金サイトと言いますが、例えば月末締め翌々月入金の場合の入金サイトは2ヶ月です。

これを、月末締め翌月末払いへ変更することによって、入金サイトは1ヶ月となり、手元には1ヶ月早く資金を確保することができるようになります。

得意先の中に、入金サイトの短縮化を交渉できる会社がないかどうか確認し、交渉できそうな得意先があるのであれば積極的に交渉するようにしましょう。

また、入金サイトを決定するには初回契約時の取引先との交渉が非常に重要になります。

得意先と最初に取引する際に、こちら側の入金サイトの希望をしっかりと伝え、相手側の言うがままにならないように注意してください。

最初の契約時に可能な限り入金サイトが短くなるように交渉しましょう。

長期運転資金を借りる

長期運転資金を借りて手元の資金を厚くしておくことでも資金繰りは円滑になります。

長期運転資金は返済を毎月少しずつ分割で行っていくため、返済による資金繰りへのマイナスの影響はごくわずかです。

また、長期運転資金は数ヶ月分から1年分の運転資金をまとめて借りておくものですので、借入をすることによって、1ヶ月の必要運転資金の何倍ものキャッシュを手元に確保することができ、資金繰りは非常に大きく向上します。

ただし長期運転資金は借入金が枯渇した後は、返済金だけが手元に残るだけになるため、長期的には資金繰りにマイナスです。

毎月の返済金を考慮した上で、資金繰り的に無理がないかどうか確認してから長期運転資金を利用するようにしてください。

また、日本政策金融公庫には、最長15年間返済の必要がない「資本性ローン」という融資があります。

このローンは15年以内で任意の借入期間を決定し、その期日に元金を一括返済するというもので、期日になるまでは1円も元金返済を行う必要がありません。

期日まで返済の必要がないので、資金繰りは非常に安定します。

資金が乏しい創業直後や、債務超過になってしまった時などに利用することで資金繰りを安定化させることができるようになります。

ただし、期日には高額の借入元金の支払いが必要になることと、利息だけは毎月支払わなければならない点に注意してください。

ファクタリングを利用する

ファクタリングを利用することによっても資金繰りは円滑になります。

ファクタリングとは売掛債権の売却で、請求済みで入金前の売掛金を期日前にファクタリング会社へ売却することによって早期に資金化することが可能です。

ファクタリング会社の中には最短即日で資金化に応じてくれる会社も多数存在するので、緊急で資金が必要になった時には最適な資金調達方法だということができます。

さらに、売掛債権の回収リスクも売却することができるので、万が一得意先が倒産してしまった場合も自社には何も損失が及びません。

ファクタリングを利用することによっても資金繰りは改善します。

また、最近は得意先から注文書を受け取った段階で注文書を資金化することができるPOファイナンスという資金調達方法も登場しています。

POファイナンスは商品やサービスの提供前に売上金を受け取ることができるので資金ギャップはなくなり増加運転資金の調達すら必要ありません。

POファイナンスについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

資金繰りは大幅に改善させるので、ファクタリングとともに頭に入れておくとよいでしょう。

ただし、いずれの方法も銀行借入よりは手数料が高くなってしまうことには注意してください。

不要な資産を売却する

最後の資金繰り改善方法が不要な資産を売却することです。

会社が保有している土地や建物などの資産を売却することによって、売却代金が入金になるので会社の資金繰りには大きくプラスの効果を期待することができます。

さらに、資産というものは管理コストがかかるので、売却することによって固定資産税などの管理コストの流出を防ぐことができます。

会社に必ずしも事業継続に必要ない資産があるのであれば、当該資産を売却するようにしましょう。

また、「税金対策」という名目で、自動車などの資産を頻繁に買い替える会社も多数存在しますが、この行為も資金繰り的にはマイナスです。

確かに自動車購入によって減価償却費が発生するので、経費が膨らみ節税効果は高くなります。

しかし、その分、現金は多量に流出するので資金繰りは悪化です。

資産を売却し手許資金を厚くするとともに、資産の購入によって手元資金が流出しないようにしましょう。

資金繰り管理についてよくある質問

資金繰りが悪化する原因を教えてください
資金繰りが悪化する原因は資金ギャップが長いことや、売掛債権の貸し倒れなどです。
具体的な理由は様々ですが、ほとんどの原因が収益管理ばかりに目を奪われて、資金繰り管理を怠ってしまうことです。
日々資金繰り表を作成し、資金繰りが悪化していないか・支払いのタイミングで資金は足りるかということをチェックし、資金繰りが悪化しているのであれば早めに資金繰り改善の対応を考えるようにしてください。
十分な利益があるのに現金が足りません。理由を教えてください
資金繰りが悪化していることが原因だと思われます。
得意先に対して請求した売上が全て入金になっているか、請求漏れがないかということを確認しましょう。
また、資金繰り表をしっかりと確認し、不要な資金の流出や従業員による資金の横領などの事象が起きていないかどうかを確認してください。
やはり収益管理と資金繰り管理は同時に行うことをおすすめします。
経理担当者に資金繰り管理を丸投げするのは危険でしょうか?
危険です。
資金の管理を経理担当者に丸投げにしてしまうことによって、横領などの不祥事が起こりがちですし、経営者が資金繰りについて全く把握していないことによって「いざという時に資金が足りない」という事象に陥ってしまうリスクも高くなります。
資金繰り表はできれば経営者が毎日目を通すのがベストです。
毎日目を通す時間がない場合にも最低でも月に1回目を通すこと、また通帳残高と資金繰り表を付け合わを行うなど、資金繰り管理と、資金の管理は経営者が定期的に行うようにしてください。
収益管理と資金繰り管理は同じように大切になると、頭に入れておきましょう。

資金繰り管理の実践と方法を提案

発生主義に基づいて計上される日本の会計制度では、収益計上と現金の動きは別です。

そのため、「収益上は黒字なのに現金がない」ということは常に起こるもので、この状態を放置すると黒字なのに資金ショートして倒産する「黒字倒産」という事態になってしまうリスクもあります。

資金繰り管理は収益管理とは別に行い、収益管理と同じくらいに重いウェイトを置いて厳格に管理していかなければなりません。

資金繰り管理とは、会社における入出金の予定を詳細に把握して、残高の予測を行うものです。

残高が不足するのであれば早めに把握して外部からの資金調達などの手段を検討しましょう。

経営者たるもの資金繰りが改善するよう、常に努力していく必要がありますが、主な資金繰り改善方法として以下の方法をあげることができます。

  • 支払サイトを延ばす
  • 入金サイトを短くする
  • 長期運転資金を借りる
  • ファクタリングを利用する
  • 不要な資産を売却する

これらの方法を実践し、常に資金繰りが良好な状況になるように努めてください。