中小企業や個人事業主の資金調達方法の多様化、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大による資金需要により、「ファクタリング」というサービスに注目が集まっています。

ファクタリングは銀行融資やビジネスローンのように借金をするのではなく、入金前の売掛債権を売却して、その代金を受け取る「債権売買」による資金調達方法です。

売掛債権を早期に資金化(=早払い)するため、将来の返済負担を心配する必要がありません。ファクタリングで調達した資金は、売上入金までのつなぎとして、事業拡大や設備投資の資金として、感染予防の備品購入費として、さまざまな用途に活用できます。

しかし、日本においては、銀行融資やビジネスローンほど事業者の資金調達方法として確立されていません。資金が必要なときに切れる資金調達のカードは多いほど、事態を悪化させることなく早急な対応が可能です。

今回はファクタリングを知らない方や、ファクタリングが気になる方を対象として、ファクタリングという資金調達方法を基礎から掘り下げて解説していきます。

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ファクタリングとは

欧米では一般的な商習慣として普及しているファクタリングですが、日本では言葉すら聞いたことがないという経営者の方も少なくありません。まずはファクタリングの歴史や意味について理解を深めていきましょう。

ファクタリングの歴史

ファクタリングの歴史を紐解いていくと、紀元前のメソポタミア文明では、すでに債権を利用した資金調達の手段が確立されていたようです。

時代が下って1300年代のイギリスでは、「債権を売却して資金調達をする」というスキームが衣料品商人や交易商人たちの間で普及したと言われています。当時のファクタリングは「ファクター」と呼ばれる債権買取の営業組織が、商人たちに現金の前貸しサービスを提供していたようです。

現代型の「売掛債権の早期資金化サービス」のファクタリングが本格的に運用されたのは、19世紀のイギリスとアメリカと言われています。当時のイギリスはアメリカに対して大量の毛織物製品を輸出しており、その請求書を活用して早期資金化のサービスを提供していたようです。

ファクタリングは産業革命によって欧米圏に瞬く間に広まり、高い信用力を有する企業が活用する金融サービスとして普及していきました。

日本には1970年代にもたらされましたが、企業間の取引は手形が主流であったために、長らく認知度が広がらない時代が続きます。2000年代に入ってインターネットや電子決済が普及すると、こんにちまで営業を続けている主だったファクタリング会社が登場しています。

ファクタリングの意味

ファクタリング(Factoring)という単語を構成する動詞の”factor”には、基本的な意味として「因数分解する」のほかに、「〈債権を〉売却する」という意味があります。

つまり、”Factoring”は「〈債権を〉売却する」という意味の”factor”に、動名詞を表す接尾辞”-ing”が付いて「債権を売却すること」という意味で使われます。

現代型のファクタリングでは、債権買取機関を「ファクター」と読んでいます。

ファクタリングと売掛債権担保融資(ABL)の違い

ファクタリングは、利用者とファクタリング会社が売掛債権という流動資産を売買します。金融機関からお金を借りて返済の義務を負う(負債が増える)、金銭消費貸借契約とは異なる資金調達方法です。

売掛債権をもとにした金融サービスには、ファクタリングの他に「売掛債権担保融資(ABL)」があります。

ファクタリングが売掛債権をファクタリング会社が買い取って早期資金化するサービスであるのに対し、ABLは売掛債権を担保に、銀行やノンバンクからお金を借りるサービスです。売掛債権が継続的に発生することを前提として、金融機関または専門機関が売掛債権の担保価値を評価します。ABLで融資を受けるためには、債権譲渡登記という手続きが必要ですが、事前に売掛先から承諾を得る必要はありません。

ただし、ABLは融資実行までに2~3週間の時間がかかるというデメリットがあります。

 

ファクタリングの種類

ファクタリング」と呼ばれるサービスは、売掛債権の売買だけではありません。ファクター(サービスの提供元)やサービス内容の違いによって、以下の7種類に分類されます。

当サイトでは便宜上、ファクタリングを専門とするファクターを「独立系ファクター」、銀行を経営母体とするファクターを「銀行系ファクター」、ノンバンクを経営母体とするファクターを「ノンバンク系ファクター」と呼び分けます。

買取ファクタリング

ファクター 独立系、銀行系、ノンバンク系
サービスの種類 債権売買
利用者の目的 売掛債権の早期資金化
売掛先の同意 3社間は必要、2社間は不要

ファクターが企業や個人事業主が保有する売掛債権を買い取り、所定の手数料を差し引いた買取代金を支払期日よりも前に振り込むサービスです。一般的に「ファクタリング」と言うときは、買取ファクタリングのことを指します。

BtoBビジネスでは、納入企業が商品やサービスの納入、その1~2ヶ月後に支払企業が代金を支払う掛取引が一般的です。納入企業は代金の支払期日までの期間(支払いサイト)が長くなるほど、資金的に余裕がなくなってきます。そこで、買取ファクタリングによって代金の支払いサイトを短縮、早期に事業資金を調達します。

独立系、銀行系、ノンバンク系と幅広いファクターが取り扱っており、後述するように契約に参加するプレイヤー数の違いによって「3社間ファクタリング」と「2社間ファクタリング」に分けられます。

医療報酬債権ファクタリング

ファクター 独立系(調剤は取り扱いなし)、銀行系、ノンバンク系
サービスの種類 債権売買
利用者の目的 レセプトの早期資金化
売掛先の同意 3社間は必要、2社間は不要

病院やクリニック、介護事業者、調剤薬局が、国保連・社保連に対する医療報酬債権(レセプト、医療報酬の7割)をファクターが買い取り、最大2ヶ月の支払いサイトを短縮して早期に資金化するサービスです。

レセプトの違いによって、以下のように分類されます。

  • 診療報酬債権ファクタリング・・・病院(クリニック)、歯科医院等が対象
  • 介護報酬債権ファクタリング・・・介護保険業者等
  • 調剤報酬債権ファクタリング・・・調剤薬局等

医療報酬債権ファクタリングにも「3社間ファクタリング」と「2社間ファクタリング」があります。

国際ファクタリング

ファクター 銀行系
サービスの種類 債権の保証
利用者の目的 未払いリスクの回避
売掛先の同意 輸入業者の同意が必要

国内の輸出企業が、商品を輸入する外国の輸入企業から支払われる代金を確実に回収するため、海外のファクターと契約して輸出代金債権の支払いを保証してもらうサービスです。

従来の輸出入取引は主として信用状が使用されてきましたが、信用状取引は手間とコストがかかることから、最近は信用状を用いない送金ベースの取引が多くなってきています。しかし、輸出先や海外の輸入企業によっては、輸出代金を確実に支払ってくれるかどうか不透明な部分もあります。

国際ファクタリングを利用すれば、海外のファクターが輸入業者の信用調査を行い、その信用リスクが保証されるため、送金ベースによる代金回収を安全・確実に行うことができます。

保証ファクタリング(取引信用保険)

ファクター 銀行系、ノンバンク系
サービスの種類 債権の保証
利用者の目的 未払いリスクの回避
売掛先の同意 必要

企業が保有している売掛債権について、その売掛先(支払企業)の倒産等で未払いとなるリスクをファクターが保証するサービスです。

万が一、支払企業の倒産や経営破綻などが原因で債権が回収不能となった場合、ファクターが売掛債権の金額の全額または一定額を納入企業へ支払います。納入企業には保証を受ける対価として、保証料の支払いが発生します。

さらに、保証ファクタリングの新規取引では、支払企業の信用力、返済能力を調査する与信審査、および契約期間中の与信管理が行われます。与信審査および与信管理はファクタリング会社が代行するため、納入企業は代金の未払いリスクを回避できるという主目的の他に、与信管理を外注化して業務コストの削減ができるというメリットもあります。

一括ファクタリング

ファクター 銀行系、ノンバンク系
サービスの種類 債権売買、決済事務代行
利用者の目的 売掛債権の早期資金化
決済事務の合理化
売掛先の同意 必要

一括ファクタリングは、従来の手形による支払いに代わり、納入企業が保有する売掛債権に対して、ファクターが売掛債権の早期資金化および決済事務を代行するサービスです。

納入企業は保有する売掛債権をファクターに買い取ってもらって早期の資金化ができます。一方、決済事務はファクターが一括して代行するため、納入企業・支払企業ともに手形発行(手形受取)のコスト削減や事務の合理化を図ることができます。

一括ファクタリングシステムとは、支払企業が従来の手形による支払を廃止し、その替わりに納入企業が有する売掛債権に対して、当行がファクタリングを利用したシステムにより、決済事務の合理化を図るものです。

その他のファクタリング

ファクタリングには他にも、利用できるタイミング、資金化できる債権の違いによって以下のような派生サービスがあります。

注文書ファクタリング(発注書ファクタリング

通常ファクタリングは請求書をエビデンスとして、仕事を完了した後の売掛債権を早期に資金化するサービスです。

注文書ファクタリングは注文書をエビデンスとして、仕事受注後の売掛債権を早期に資金化します。通常のファクタリングよりもさらに早い段階での資金調達が可能で、仕事の着手に必要な原材料の仕入れ費用、スタッフを雇う人件費などをまかなうことができます。

2021年3月現在、注文書ファクタリングを取り扱うファクターは少数ですが、今後は事業者のニーズの高まりとともに取り扱うファクターの数も増えることが予想されます。

商品在庫ファクタリング

商品在庫ファクタリングは、事業者が保有する在庫をファクターが買い取り、早期に資金化するサービスです。買取対象となる在庫は、アパレル商品、貴金属、食品、宝石、電化製品、日用雑貨など多岐にわたります。

家賃収入ファクタリング

不動産オーナーが保有する家賃債権(入居者から家賃を受け取る権利)をファクターが買い取り、家賃の入金日前に資金化するサービスです。審査では物件の立地や住居人の家賃支払状況が重視されます。

3社間ファクタリングと2社間ファクタリング

ファクタリングには、利用者(貴社)・売掛先・ファクターの3社で契約を結ぶ「3社間ファクタリング」と、利用者・ファクターの2社のみで契約を結ぶ「2社間ファクタリング」の2種類の契約方法があります。

両者は売掛先の同意の有無、振込までにかかる時間、ファクタリング手数料、売掛金の回収プロセスが異なるため、貴社の資金ニーズに合ったものを選ぶ必要があります。

ここでは、3社間ファクタリングと2社間ファクタリングを比較します。

3社間ファクタリングの仕組み

売掛先の同意 必要
ファクタリング手数料の相場 (債権額面に対して)2%~9%
資金化にかかる期間 15日~30日
売掛金の回収 ファクターが回収する

3社間ファクタリングでは債権譲渡契約を結ぶにあたり、売掛先への通知および同意が必要となります。資金調達までに1~2週間ほどの時間を要しまが、支払期日になると売掛先が直接ファクタリング会社に売掛金を支払うため、貴社は債権回収の事務手続きを省略することができます。

2社間ファクタリングの仕組み

売掛先の同意 不要
ファクタリング手数料の相場 (債権額面に対して)10%~20%
資金化にかかる期間 即日~3日
売掛金の回収 貴社がファクターに代わって回収する

元来のファクタリングは債権譲渡契約を結ぶにあたり、売掛先の同意が必要な3社間契約を原則としていました。

しかし、「債権を他社に売却する」という行為は、ファクタリングを知らない売掛先から見ると「(貴社の)経営状態が悪く、資金繰りがひっ迫している」というネガティブなイメージを持たれてしまいがちです。貴社の経営状況を不安視した売掛先が、発注数を減らしたり、取引条件を見直したりするおそれもあります。

そこで登場したのが、売掛先の同意が不要な2社間ファクタリングです。売掛先に知られることなく債権譲渡契約を結べるため、中小企業や個人事業主の資金調達に特化したサービスと言えます。

2社間ファクタリングでは、ファクターの審査に通過したその日のうちに資金調達が可能です。ただし、ファクターに代わって貴社が売掛先から売掛金を回収し、ただちにファクターへ支払わなければなりません(集金代行業務委託契約)。

さらに、2社間ファクタリングは売掛先の同意を得ない代わりに、債権の譲渡を公的に証明する債権譲渡登記が必要です。ファクタリング会社によっては、債権譲渡登記が省略可能な場合もあります。

 

 

ファクタリングのメリット

ファクタリングを利用するにあたっては、メリットとデメリットの両方を知ったうえで、貴社の資金ニーズや資金繰り改善に役立つかどうかの判断が必要です。まずはファクタリングのメリットについてご紹介します。

2社間契約なら即日で売掛債権を資金化できる

ファクタリングの最大のメリットは、売掛債権を早期に資金化できることです。

会計上では、請求書を発行した時点で売上が発生(発生主義)しますが、現金はまだ手元にあるわけではありません。一般的なBtoBビジネスでは、売上の入金は請求書の発行時点から1~2ヶ月先です。

ファクタリングを利用すれば、その支払いサイトをショートカットして、ただちに現金を手にすることができます。とりわけ「2社間ファクタリング」は、売掛先に同意を得るプロセスを省略するため、申し込みをしたその日のうちに資金調達も可能です。

 

赤字決算・リスケ中・税金滞納中でも利用可

ファクタリングの審査は貴社の信用情報よりも、「売掛先の信用力」や「売掛金の支払サイト」、「貴社と売掛先の取引状況」を重視する傾向にあります。

貴社が赤字決算や銀行リスケ中、税金滞納などの理由で銀行から借入が難しい状況にあっても、貴社と長期にわたって良好な取引を継続してきた売掛先の売掛債権があれば、ファクタリングで資金調達が可能です。

担保や保証人が不要

ファクタリングは売掛債権を買い取るサービスですので、融資と違って担保や保証人は不要です。

銀行融資や公的金融機関の融資制度は、申込者の信用のみでは融資が難しい場合に、担保や保証人が求められます。とくに中小企業や個人事業主は銀行から融資を受けるときは、担保や保証人をつけるか、保証料を支払って信用保証協会の保証を受けるかの二択になることがほとんどです。

ファクタリングは前述のとおり、売掛先(売掛債権)が買い取り可否や手数料を左右する要因となるため、担保や保証人が準備できない方でも利用できます。

売掛金が回収できなくても貴社に支払義務が生じない

ファクタリングは償還請求権がない「ノンリコース契約」です。

償還請求権とは、売掛先の倒産等で債権を回収できなかった場合に、ファクターが貴社に支払いを求めることができる権利を指します。ファクタリング契約後、売掛先の倒産等が原因で売掛金が支払不能となっても、貴社に一切の責任は問われません。

償還請求権がないファクタリングの特性を応用すれば、倒産が危ぶまれる売掛先の債権をファクタリングで早期に資金化、売掛金の全損リスクに備えるという保証ファクタリング的な使い方もできます。

ただし、ファクターが償還請求権ありの「ウィズリコース契約」を提案してきた場合は、違法な契約を結ばされるおそれがあるので注意しましょう。

2社間契約なら売掛先に知られずに売掛債権を売却できる

ファクタリングを利用するにあたって懸念される問題の一つが、売掛先に債権売却の事実を知られてしまうことです。

前述の通り、日本ではファクタリングという言葉すら知らない経営者の方が少なくありません。

他社に債権を売却するという行為は、ファクタリングを知らない売掛先に「あの会社は銀行から借入できないほど、経営が悪化している」というネガティブなイメージを与えます。貴社の経営状況を懸念した売掛先が、発注数を減らしたり、取引を停止したりといったデメリットにつながる可能性もあります。

債権売却の事実を売掛先に知られたくない場合は、貴社とファクターの2社間で契約できる「2社間ファクタリング」をおすすめします。2社間ファクタリングを利用すれば、売掛先に完全秘密で売掛債権の資金化が可能です。

さらに、ファクタリング会社によっては、2社間ファクタリングでは原則必須となる「債権譲渡登記」という手続きも省略可能な場合があります。

信用情報に影響がない

ファクタリングは売掛債権という資産を売却して資金化するサービスですので、融資と違って貸借対照表の負債の部が増えることはなく、また信用情報機関にも記録が残りません。

一方で、銀行融資やビジネスローンでお金を借りると信用情報に借入履歴が記録され、さらに返済が滞れば金融事故として登録され、銀行融資の再開は絶望的です。

資金が必要になったときに信用情報に借入履歴を残さない、事故歴を回避するのであれば、ファクタリングの利用が推奨されます。

オフバランス化により企業価値が向上

オフバランスとは、貸借対照表(バランスシート)の資産や負債の項目を消す(オフする)ことを指します。

ファクタリングは売掛債権という資産を資金化するサービスですので、貸借対照表の資産の部を減らす(=オフバランス化)ことができます。

さらに、その調達した資金を使って借入依存から脱却する=負債を減らす(=オフバランス化)と、決算書の内容が改善されて貴社の企業価値が高まります。

これにより、業績悪化を理由に銀行から融資を一時中断されていた場合は、融資の再開を目指すことができます。

資金繰りの改善が図れる

売上代金の支払サイトが長いと、資金繰りが悪化しやすくなります。ファクタリングを利用して通常1~2ヶ月かかる売上入金のタイムラグを解消すれば、資金繰りを一気に改善することができます。

BtoBビジネスでは、商品やサービスを納入してから1~2ヶ月後に売上代金が支払われるのが一般的です。業種によっては売上代金の回収が季節やイベント等の影響を受け、半年以上先になる場合もあります。

さらに、仕事を受注してから商品やサービスを納入するまでには、仕入れ費や人件費といった先出しの経費がかかります。売上代金が入金されるまでの期間が長いと、その間の運転資金が不足してしまい、借入に頼らざるを得ません。

資金繰りが悪化すれば、銀行からの融資も難しくなり、倒産や廃業に追い込まれるリスクが高くなります。

ファクタリングによって売掛債権の支払いサイトをショートカットして資金繰りが改善されれば、金融機関からの評価もアップして、融資を受けやすくなります。

ファクタリングのデメリット

ファクタリングには多くのメリットがある一方、注意すべきデメリットもあります。ここではファクタリングのデメリットとその対処法をご紹介します。

融資と比べてコストが高い

3社間ファクタリング・2社間ファクタリングの手数料の相場をまとめると、以下の表のようになります。

3社間の手数料の相場 2%~9%
2社間の手数料の相場 5%~20%
(非対面の場合は2%~9%)

ファクタリング手数料10%で売掛債権を資金化して、その1ヶ月後に支払いが完了したケースで考えてみましょう。この場合のファクタリング手数料10%を金利に換算すると、単純計算で年率120%になってしまいます。一般的な消費者金融会社のビジネスローンが実質年率15%であることを考えると、かなりコストの高いサービスと言えます。

この調達コストの高さを考えると、ファクタリングはなるべく単発での利用に抑えるべきで、売掛債権が発生するたびに資金化し続けると、貴社の資金繰りに致命的なダメージを与えるリスクがあります。

3社間契約は売掛先の同意が必須

3社間ファクタリングで契約する場合、売掛先の同意が必須です。

前述の通り、債権を他社に売却するという行為に対して、売掛先が好意的に捉えてくれるとは限りません。「銀行から借入ができないほど経営が危ういのではないか?」と勘ぐられて、信用不安を招くおそれがあります。

売掛先の信用不安を招きたくない場合は、貴社とファクターの2社間だけで契約を結ぶ2社間ファクタリングを利用しましょう。実際に2社間ファクタリングは、売掛先に対して立場の弱い小規模事業者に選ばれています。

2社間契約は原則として債権譲渡登記が必須

2社間ファクタリングは売掛先の同意が不要な代わりに、原則として債権譲渡登記という公的な手続きが必須となります。

債権譲渡登記とは、債権がだれからだれに対し、いつ譲渡されたものかを公的に証明する手続きです。ファクターは、すでに他社に売却されている売掛債権を買い取ってしまう「二重譲渡リスク」や、買い取った売掛金が別の用途に使い込まれるリスクに備える「対抗要件の具備」のために、債権譲渡登記を行います。

貴社にとって債権譲渡登記は、手続き完了までに時間がかかることや、法務局に申請すればだれでも閲覧可能というデメリットをもたらします。

このデメリットの解消法として、貴社から要望があれば債権譲渡登記が省略可能とするファクタリング会社もあります。ファクタリングの利用を完全に秘密にしたい場合は、債権譲渡登記の省略が可能なファクタリング会社を選びましょう。

売掛債権の額面以上の資金調達ができない

ファクタリングで調達できる資金は、売却する売掛債権の額面より少ない額です。

たとえば、100万円の売掛債権を手数料10%でファクター買い取ってもらう場合、貴社が手にすることができる現金は、100万円-10万円(100万円×10%)=【90万円】となります。

ファクタリングで売掛債権を早期資金化できる代わりに手数料分が差し引かれ、売掛債権の支払期日に振り込まれる満額を受け取ることができなくなるのです。

厳密にはデメリットと言えませんが、前述の通りファクタリングの手数料は決して安くはないため、しっかりとした資金繰り計画を立ててから利用する必要があります。

悪質なファクタリング業者も存在する

ファクタリング会社を開業するにあたっては、銀行や消費者金融会社のような貸金業登録が不要で、業界の規制自体もまだまだ緩いと言わざるを得ません。

その間隙をついて、規制の厳しい貸金業界からファクタリングにシフトした闇金業者や悪質業者も存在しています。実際に、ファクタリング業者を装った悪質業者が摘発された事例もあります。

悪質業者は、資金繰りに困っている事業者をターゲットに、「信用ブラックOK」や「低手数料」といった条件をちらつかせてきます。

しかし、そのような業者と実際に取引してみると、ファクタリングを装った高利貸しであったというケースや、償還請求権ありのファクタリングを契約させられたといったケースが報告されています。

ファクタリング会社が優良か悪質かは、ホームページの会社情報や実績、利用者の口コミ・評判で確認するようにしましょう。電話やメールで問い合わせをして、担当スタッフの対応を見ることも大切です。

ファクタリングの手数料が決まるポイント

ファクタリングの手数料は、売掛先の状況、売掛債権の状況、ファクタリング契約の種類、さらには貴社の経営状況など、さまざまな要因で変動します。手数料が変動する要因は以下のとおりです。

手数料が<上がる>要因 手数料が<下がる>要因
2社間ファクタリングで契約する 3社間ファクタリングで契約する
面談必須の対面式ファクタリングを利用する 面談不要の非対面式ファクタリングを利用する
売掛先の信用力が低い 売掛先の信用力が高い
売掛先との取引履歴が浅い 売掛先と長期の取引履歴がある
入金サイトが45日超 入金サイトが短い
赤字決算・債務超過・税金滞納がある 不利な条件がなく、業績も好調である
債権譲渡登記を留保する(2社間の場合) 債権譲渡登記を行う(2社間の場合)
初回契約である 継続利用(2回以上)である

ファクタリングの手数料はファクターのリスクと密接に関係しています。ファクターのリスクが大きければ手数料は上がり、ファクターのリスクが小さければ手数料は下がります。

このことを念頭に置いて、ファクタリングの手数料が決まるポイントについて詳しく見ていきましょう。

契約は3社間か2社間か

売掛先の同意が不要で契約できる2社間ファクタリングは、ファクターにとって以下のようなリスクが考えられます。

  • すでに他社に売却されている売掛債権を買い取ってしまう「二重譲渡リスク」
  • 売掛先から回収した売掛金を貴社が自身の資金繰りに流用する「使い込みリスク」

とくに後者の「使い込みリスク」は、売掛先から支払われる売掛金を貴社がいったん預かるという2社間契約の仕組み上、ファクターにとって避けたいリスクです。

一方、3社間ファクタリングは売掛先の同意を得たうえで契約を結び、売掛金はファクターが直接売掛先から回収します。2社間契約のような「二重譲渡リスク」と「使い込みリスク」の懸念がないため、手数料は下がります。

これらのリスクに限らず、ファクターが2社間ファクタリングではあまりにもリスクが高いと判断した場合、買取を断るか、3社間ファクタリングでの買取を提案する場合があります。

手続きは対面式か非対面式か

ファクタリングの契約プロセスには、以下の2種類があります。

  • 貴社の代表者とファクターの担当者が面談したうえで契約を結ぶ「対面式ファクタリング」
  • 申し込みから代金の振込までがオンラインで完結する「非対面式ファクタリング」

非対面式のファクタリングは、AIによる審査やアップロード方式の書類提出による手続きの効率化、担当者が貴社に出張する交通費等がカットされるといった要素から、対面式に比べて手数料が下がる傾向にあります。

オンライン完結型の非対面式ファクタリングサービスは、手数料の相場が2%~9%と非常に低コストです。

売掛先の信用力は高いか

銀行やノンバンクが融資をするとき、経営状況や信用状況から返済能力がないと判断した事業者にはお金を貸しません。返済能力を超えるお金を借りて返済ができなくなる「貸し倒れリスク」が高いと判断するからです。

一方で、ファクターは売掛先が期日どおりに売掛金を支払えなければ、貴社に先払いした代金を回収できません。したがって、ファクタリングの審査では「(買い取る売掛債権の)売掛先の信用力」がもっとも重視されます。

売掛先が以下の条件に当てはまる場合、ファクターが代金を回収できる確実性が高まるため、手数料が下がる傾向にあります。

  • 売掛先が、倒産のリスクが極めて低い上場企業や官公庁など
  • 貴社と売掛先の取引履歴が長く、なおかつ売掛金の支払い遅れがない

なお、2社間ファクタリングでは使い込みリスクを判断するため、貴社の信用情報や経営者の人柄も審査の対象となる場合があります。

売掛債権の支払いサイトの長さ

売掛債権の支払いサイトが長くなると、ファクターは未回収リスクが高くなると判断します。入金日が訪れる前に売掛先が倒産したり、貴社の資金繰りがさらに悪化したりする懸念があるからです。

支払いサイトは45日がファクタリング手数料の目安とされています。

貴社が赤字決算・銀行リスケ中・税金滞納中か

「ファクタリングのメリット」の項で、貴社に赤字決算や銀行リスケ中、税金滞納中など不利な条件があっても、良質な売掛債権があればファクタリングが利用できると説明しました。

ただし、貴社が赤字決算・銀行リスケ中・税金滞納中などで資金不足の状況にあり、さらに2社間ファクタリングを希望している場合は、ファクターは貴社の使い込みリスク対策として、手数料を上げる傾向にあります。

債権譲渡登記を行うか

債権譲渡登記は、ファクターが「二重譲渡リスク」や「対抗要件の具備」のために行うと説明しました。

ファクターによっては債権譲渡登記の省略も可能ですが、登記をしない代わりにリスクヘッジとして、手数料引き上げが条件となるケースもあります。

貴社が初めてファクタリング契約をするファクターか

銀行融資やビジネスローンで借入、遅れずに返済を繰り返すと、良好なクレジットヒストリーが積み上がり、融資限度額や金利の優遇を受けられます。

ファクタリングも同様に、繰り返し利用、売掛金を遅れずに支払っていけば、ファクターとの良好な取引実績が積み上がっていきます。貴社は信頼できる顧客として、買取額や手数料の優遇を受けられるでしょう。

逆に言えば、初めて契約するファクターは貴社との取引実績がゼロであるため、リスクを懸念して手数料を上げる傾向にあります。

ファクタリング手数料以外に発生する費用

ファクタリングの利用時には、買取手数料のほかに諸費用がかかることがあります。

これらの費用はファクタリングの手数料に含まれるケースと、手数料とは別に請求されるケースがあります。

ファクタリング手数料以外にかかる費用は、以下の表のとおりです。

費用の項目 金額の相場
着手金 売掛先1件あたり最大30,000円
事務手数料 最大5,000円
契約書貼付収入印紙 債権譲渡契約書の印紙税200円
債権譲渡登記の登録免許税7,500円
債権譲渡登記費用 3万円~5万円
出張交通費 数百円~
振込手数料 110円~880円

なお、印紙代と登記費用以外の費用は、複数のファクターから見積もりを取り寄せたり、交渉をしたりすれば抑えられる可能性があります。

着手金

ファクターによっては、売掛債権の売掛先1社ごとに着手金を請求するところもあります。たとえば、別々の売掛先3社の売掛債権を売却する場合は、3社分の着手金がかかります。

基本的には着手金を請求しないファクターがほとんどですが、請求する場合は売掛先1件あたり最大で30,000円程度が請求されます。

事務手数料

審査や書類作成など、ファクタリングの手続きで発生する事務経費を貴社が負担する場合は、事務手数料が請求されます。基本的には買取手数料に内包されているため、「事務手数料無料」として、別途請求されるケースはほとんどありません。

契約書貼付収入印紙

ファクタリングの契約では、契約書を交わす場合に印紙代(印紙税)として200円がかかります。非対面式のファクタリングでは、紙の契約書ではなく電子契約書を交わすため、印紙代がかかりません。

また債権譲渡登記を行う場合は、登録免許税として7,500円がかかります。貴社が債権譲渡登記の省略を希望した場合は、登録免許税が不要です。

債権譲渡登記費用(3万円~5万円)

債権譲渡登記は司法書士に委任することになるため、概ね3万円~5万円の司法書士費用がかかります。なお、ファクタリング業者によっては、手数料を引き上げる代わりに、債権譲渡登記を省略可能とするところもあります。

出張交通費

ファクタリングの契約を対面で行う場合、ファクターの担当者が貴社の事務所やオフィスに出張するための交通費がかかります。貴社の代表者がファクターの店舗に訪問する場合も同様です。

たとえば静岡在住の事業者の方が東京のファクタリング会社を利用する場合、ファクタリング会社の担当者が静岡までの出張に新幹線を利用すると、交通費として6,000円~7,000円が利用者に請求される場合があります。

振込手数料(110円~880円)

ファクターが売掛債権の買取代金を利用者の銀行口座に振り込む際に、振込手数料が差し引かれる場合があります。振込手数料は振り込まれる金額によって変動し、利用者かファクターのいずれかが負担します。

ファクタリングの掛目

ファクターによっては売掛債権の額面の100%を買い取るのではなく、「掛目」によって減額された金額が買取対象となります。ファクタリグにおける掛目は「買取率」のことで、売掛債権の額面に対して75%~90%が一般的です。

たとえば100万円の売掛債権に80%の掛目が設定された場合、80万円が買取対象となり、そこからさらに買取手数料等が差し引かれます。掛目によって減額された分の20万円は、ファクターが売掛金を無事に回収できた時点で利用者に返還されます。

ファクタリング会社にとって未入金リスクが高いと判断された場合は、掛目が高くなって買取対象となる金額が小さくなります。一方で、未入金リスクが低いと判断された場合は、掛目が低くなって買取対象となる金額が大きくなります。

したがって、3社間より2社間の方が掛目は低くなる傾向があり、ある程度の利用実績を積めば掛目が改善される可能性もあります。

売掛債権の買取対象が掛目によって減額され、さらに手数料まで差し引かれると、手元で受取れる現金が想像以上に少なくなります。掛目はファクターによって設定が異なるため、なるべく多くの現金を手元に残すためにも、複数のファクターから見積もりをとって比較検討しましょう。

ファクタリングの法的根拠・違法性

ファクタリングの需要は年々高まりつつありますが、一方で違法行為やファクタリングを装った貸付を行う悪質な業者も増えています。ここでは、ファクタリングの法的根拠や違法性について解説します。

ファクタリングの法的根拠

3社間ファクタリング、2社間ファクタリングともに民法を法的根拠として売掛債権の売買が行われます。

3社間ファクタリングの法的根拠

3社間ファクタリングは、売掛先の同意を得たうえで債権の譲渡が行われます。民法第466条および第467条を法的根拠としています。

(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

引用:民法|e-Gov法令検索

売掛債権(売掛金)は、譲渡人(利用者)と譲受人(ファクター)の合意があれば、譲渡人の売掛先の承諾なしに自由に売買できる性質があります。また、利用者と売掛先が譲渡しないという特約をした債権(債権譲渡禁止特約)は原則として譲渡できませんが、第三者がこの特約を知らないで譲り受けたときは、その譲渡は有効となります。

ただし、第2項を悪用すれば、利用者が複数のファクターに同一の売掛金を譲渡して金銭を得ることもできてしまいます。譲受人が第三者に対して、自身が債権者であることを主張するには、民法第467条で規定された「対抗要件」という手続きが必要になります。

(債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

引用:民法|e-Gov法令検索

対抗要件は「譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾」して、なおかつ「確定日付のある証書」を交わすことが具備の条件となります。この手続により、3社間ファクタリングでは債務者が誰に対して支払いをするのかが明確になります。

2社間ファクタリングの法的根拠

2社間ファクタリングは、売掛先の同意を必要としない性質から、貴社とファクターのみで売掛債権を売買します。法的には民法第555条を根拠としています。

(売買)
第五百五十五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

引用:民法|e-Gov法令検索

民法第466条の1項にあったように、売掛債権は「譲渡人の売掛先の承諾が必要なく、自由に売買できる性質」を持っています。これを法的根拠としているため、売掛先の同意を必要としない2社間ファクタリングに違法性はありません。

違法性のあるファクタリングの事例

続いて、違法性が疑われるファクタリングの事例について解説します。優良業者、悪質な業者を見分ける際の参考になさってください。

ファクタリングを装った高利貸し

偽装ファクタリングは、売掛先の同意が不要な2社間契約を隠れ蓑にした悪質業者のよくある手口です。表向きはファクタリング業者を名乗りながら、実際は売掛債権を担保に、法定金利を超える高い利息で貸付けを行います。

前述の通り、売掛債権を担保とした貸付は売掛債権担保融資(ABL)にあたります。貸金業を営む業者は貸金業登録が必須であり、利息制限法に定められた法定金利を遵守しなければなりません。

法定金利は債務者の金利負担の軽減を図るための法律で、以下のように元本の金額に応じた上限金利が定められています。

  • 元本の金額が10万円未満・・・上限金利 年20%
  • 元本の金額が10万円以上から100万円未満・・・上限金利 年18%
  • 元本の金額が100万円以上・・・上限金利 年15%

さらに、偽装ファクタリングの悪質業者は、貸金業法違反(無登録営業)、および出資法違反(高金利)に該当すると考えられます。

「償還請求権あり」のファクタリング

ファクタリングは償還請求権がない「ノンリコース契約」です。売掛先の倒産等が原因で売掛金が支払われなかった場合、利用者に買い戻しの義務はありません。ファクターはリスクを全て引き受ける代わりに、法定金利を超える手数料を設定してリスクヘッジとすることができます。

一方で、「償還請求権あり」のファクタリングを取引を持ちかける業者が存在しています。

償還請求権ありのファクタリングは法律上、手形割引や売掛債権担保融資(ABL)と同じ貸金と見なされるため、業として取り扱うには貸金業登録が必要となります。

貸金業登録をしていないファクターが償還請求権ありのファクタリングを取り扱い、利用会社に高額な手数料を請求して裁判になった判例では、ファクター側が「ファクタリング(債権譲渡)ではなく、債権譲渡担保付の貸金である」として有罪判決を受けています(大阪地裁平成29年3月3日判決)。

参考:https://www.aiben.jp/page/155soku.html

分割返済ができる

2社間ファクタリング利用後、売掛先から回収した売掛金は、指定の入金日までに一括弁済しなければなりません。

分割返済できるとなれば、当該のファクタリングは「融資行為」に該当し、貸金業法に抵触してしまいます。

たとえば、利用者が「一括返済が難しいので、分割で返済できないか?」と相談して、ファクターがそれに応じるようであれば、むしろ悪質な業者であることが疑われます。

利用者自身にとって分割返済が有利な条件と考えられても、一括弁済でないファクタリングは違法です。

担保や保証人が要求される

ファクタリングは金銭消費貸借契約ではないため、担保や保証人が不要です。しかし、通常のファクタリングでは買い取りが難しいことを理由に、担保を要求されたという事例が報告されています。

ファクタリングで担保や保証人を要求する行為は、売掛債権が回収できなかった場合の債権の保全とみなされ、貸金業法に抵触します。いかなる理由があれ、ファクタリングで担保や保証人を要求する取引は違法です。

個人の給料を買い取る給与ファクタリング

「給料ファクタリング」とは、個人の給与を債権とみなし、その給与債権をファクターが買い取って早期資金化するサービのことを言います。利用者は給料日よりも前に、手数料を差し引かれた分の代金を手に入れることができます。

しかし、貸金業登録をしていない業者が給与ファクタリングを行うことは違法です。過去には原告の給与ファクタリング業者が、被告の債務者に対し、7万円の給料債権を4万円で買取り、4日後に支払う契約で買い戻し日の設定がなされたが、債務者がその支払いを履行できなかったことにより、業者が債務者に対して支払いを求める訴訟を提起した判例があります。

当該判例では、給料ファクタリングを行うものは貸金業を営む者に該当し、貸金業法第42条1項に定める年109.5%を大幅に超過する給料ファクタリングは、出資法5条3項に違反し、刑事罰の対象となるとしています。

これにより、給料ファクタリングは貸金と認定され、認可を受けていない給料ファクタリング業者はいかなる理由があっても、貸金業法・出資法違反で刑事罰の対象となります。

ファクタリング会社の選び方・比較ポイント

ファクタリング会社を選ぶときは、複数の会社から見積もりを取り、手数料や入金スピード、信頼性を比較検討しましょう。ここでは、比較時にチェックしておきたいポイントを紹介します。

買取限度額

ファクタリング会社ごとに、買取限度額が設定されています。一般的には下限が30万円、上限が数千円~数億円です。買取限度額はファクタリング会社のホームページの記載を確認するか、直接ファクタリング会社に問い合わせましょう。

貴社の希望調達額がファクタリング会社の買取下限よりも低い、もしくは上限額よりも高い場合は、断られてしまうケースがあります。

ファクタリング会社の中には、買取の下限および上限を設定していないところもありますが、高額になるほど買取代金の振込までに時間がかかります。

審査の柔軟性

ファクタリングは融資に比べて審査基準が緩く設定されています。

しかし、利用者に赤字決算・銀行リスケ中・税金滞納中といった条件があり、ファクタリング会社が買い取りのリスクが高いと判断すれば、審査に落ちる可能性があります。

ファクタリング会社を選ぶときは、柔軟に審査してくれるところを選びましょう。

ファクタリング手数料

ファクタリングの手数料は、ファクタリング会社が負うリスクの程度によって決まります。たとえば、売掛先の信用力が高く、支払いサイトが比較的短い売掛債権は、未払いリスクが低いと判断され手数料は安くなります。

ただし、相場よりもはるかに安い手数料を設定しているファクタリング会社は、担保・保証人を要求する、償還請求権があるなど、貸金業に抵触するような違法な取引を行っている可能性があります。

見積もりを依頼するときは、手数料の根拠についてしっかり確認しましょう。

債権譲渡登記の留保ができるか(2社間の場合)

2社間ファクタリングは売掛先から同意を得ない代わりに、原則として債権譲渡登記が必要となります。

ただし、債権譲渡登記を行うと法務局に債権譲渡の事実が登録されること、2社間取引であっても最短即日の資金調達が難しくなることが懸念されます。

ファクタリング利用の事実を完全秘密にしたい方、急ぎで資金が必要な方は、債権譲渡登記の留保が可能なファクタリング会社を選びましょう。

ただし、債権譲渡登記を留保するとファクタリング会社側のリスクが高くなるため、リスクヘッジとして手数料が引き上げられる傾向にあります。

ファクタリング会社の信頼性

ここまで解説してきたように、ファクタリング会社の中には違法なサービスを取り扱う悪質な業者も存在します。大切な売掛債権を売却するファクタリング会社の信頼性は必ずチェックしましょう。

ファクタリング会社のホームページでは、以下の項目を確認してください。

  • 本店所在地が番地以下まで記載されているか
  • 連絡先が携帯電話ではないか
  • 取引実績は豊富か

また、ファクタリング会社に直接問い合わせ、スタッフが質問にしっかり答えてくれるか、説明が不十分なまま取引を進められないかなど、信頼できる対応をしているかどうかもしっかりチェックしましょう。

非対面契約が選択できるか(とくに急ぐ場合)

ファクタリング会社の中には、非対面契約が可能なことを自社の強みとしてアピールしているところもあります。

非対面契約は売掛先の同意が不要な2社間ファクタリングの形態をとり、初回の面談が不要、債権譲渡登記が不要ですべての手続きがオンラインで完結します。

対面式の2社間ファクタリングよりも好条件となるため、審査は厳しめになる傾向になりますが、最短即日の確実性が高まり、資金調達のコストカットも図ることができます。

継続利用のメリット

同じファクタリング会社を継続利用すると、2回め以降の利用時は審査が簡略化(面談不要)されたり、手数料が引き下げられたりすることがあります。ファクタリングを継続的な資金調達方法として利用するなら、繰り返し利用することのメリットについても確認しましょう。

ファクタリングの必要書類

ファクタリングを利用するにあたり、提出が求められる書類は以下のとおりです。

  • 商業登記簿謄本・身分証明書
  • 印鑑証明書
  • 決算書・確定申告書
  • 売掛先との基本契約書
  • 発注書・納品書・請求書
  • 事業用の通帳の写し

それぞれの書類について、詳しく解説していきます。

商業登記簿謄本・身分証明書

法人は商業登記簿謄本を、個人事業主は身分証明書を提出します。

商業登記簿謄本は、法人の身分証明書とも言われる書類です。履歴事項全部証明書と呼ばれるように、「1.会社法人番号」「2.商号」「3.本店」「4.設立の日」「5.目的」「6.資本金」「7.役員」などが記載されています。

登記簿謄本は3ヶ月以内のものを提出するようファクターら求められるケースもあるため、法務局で最新のものを取得しましょう。

個人事業主の場合には運転免許証やパスポートなど、本人確認ができる書類を提出します。顔写真付きの身分証明書のほうがファクターからの印象は良くなります。

印鑑証明書

ファクタリングで契約書を交わすときは、貴社の実印を証明するための印鑑証明書の提出が求められます。法人の印鑑証明書は法務局、個人の印鑑証明書は住民票のある市区町村役場で取得します。

決算書・確定申告書

ファクタリングでは貴社の決算状況や経営状況が審査される場合もあります。

とくに売掛先の同意が不要な2社間ファクタリングでは、決算書の提出が求められます。なぜなら、2社間取引は売掛先から振り込まれた売掛金を、貴社がいったん預かってからファクタリング会社に弁済するからです。貴社が売掛金の支払期日前に倒産してしまうと、ファクタリング会社は先払いした代金を権回収できません。このリスクを回避するため、貴社が支払期日までに存続できるかどうかを決算書で判断します。

法人の場合は貸借対照表、損益計算書、勘定科目明細決算書、個人事業主の場合には確定申告書の提出が必要です。何期分が必要になるかは、ファクタリング会社によって異なります。

なお、税金の滞納がある場合には、納税証明書の提出が求められる場合もあります。

売掛先との基本契約書

初めて利用するファクタリング会社に、売掛先企業と取引があることのエビデンスとして基本契約書の提出を求められる場合があります。ただし、売掛先との基本契約を締結していない場合は提出不要です。

発注書・納品書・請求書

売却する売掛債権が確かに存在することを証明するエビデンスとして、発注書、納品書、請求書などの提出が必須です。エビデンスには以下の項目が記載されている必要があります。

  • 金額
  • 取引商品・サービス名
  • 取引日
  • 入金日

ファクターは一回だけ取引のあった売掛先の債権よりも、継続的に取引のある売掛先の債権を高く評価します。そのため、補足資料として契約書などがあれば審査に有利ですが、契約書がない場合は過去の請求書も提出すると良いでしょう。

事業用の通帳の写し

売掛先の企業と継続的に取引があることを示すために、売掛金の入金記録が記帳された通帳の写し(WEB通帳もOK)の提出が求められます。ファクタリング会社によって直近3ヶ月~7ヶ月分の明細が必要です。

長期にわたって継続的な取引があることはもちろん、売掛金が期日通りに入金されていることが記録されていれば、ファクタリング会社は「売掛先の信用力が高い」と判断します。

ファクタリングに関するQ&A

ファクタリングに関して、よくある質問とその回答をQ&A形式でまとめました。

Q.売掛金の回収が期日より遅れた場合、遅延損害金は発生しますか?
A.発生する場合があります。ファクタリングは融資ではないため金利は発生しませんが、期日通りに支払われなかった場合、ファクターは遅延損害金を請求できます。支払いが遅れた場合に遅延損害金が請求されるかどうかは、事前にファクタリング会社に問い合わせるか、契約書の内容をしっかり確認しましょう。
Q.「償還請求権あり」のファクタリング取引はあるのでしょうか?
A.ファクタリングは償還請求権がない「ノンリコース契約」であることが原則です。ファクタリングに償還請求権がある場合は、違法なファクタリングであることが考えられます。償還請求権があるサービスは融資としてみなされるため、提供するファクターは貸金業登録をしている必要があるからです。
>>「償還請求権」について詳しく見る
Q.支払期日を過ぎた売掛債権をファクタリングで回収することはできますか?
A.できません。ファクタリングは入金前の確定債権のみ買い取ります。支払期日を過ぎてしまった「不良債権」や、将来的に支払われる可能性があるが金額も支払期日も決まっていない「将来債権」は買取対象となりません。
Q.ファクタリングを利用するにあたって、自社の信用情報は審査されますか?
A.2社間ファクタリングは売掛先の信用力に加え、利用者の信用情報や経営状況も審査基準となります。事故情報があるからと言ってファクタリングが利用できないということはありませんが、ファクターにとっては信用情報に問題のある事業者との取引はリスクが高いと判断するため、手数料が高めに設定される傾向にあります。
Q.中小企業あての売掛債権よりも、上場企業あての売掛債権のほうが手数料は低くなりますか?
A.ファクターは売掛先の事業規模よりも、売掛先と貴社に継続して取引があることを重視します。したがって、1回しか取引のない上場企業の売掛債権よりも、長年にわたって繰り返し取引のある中小企業の売掛債権のほうが審査で有利になります。
>>「売掛先の信用力とファクタリング手数料の関係」について詳しく見る

緊急性の高い資金ニーズにはファクタリングを推奨

企業や個人事業主にとって、キャッシュは経営を続けるための命綱です。

どれだけ赤字であっても手元にキャッシュがあれば経営を続けることはできますが、どれだけ売上があっても手元にキャッシュがなければ、黒字倒産に陥るリスクがあります。

銀行融資やビジネスローンは事業者の資金調達に役立つサービスですが、将来に負債(返済負担)を残してしまいます。

ファクタリングは今すぐ資金が必要なとき、売上の支払いサイトが遅いために資金が足りないときにこそ利用したい資金調達方法です。貴社が赤字決算であったり、信用情報に問題があったりしても、良質な売掛債権があればすぐに資金調達ができます。

さらに、より良い条件で売掛債権を資金化するなら、貴社の資金ニーズに合ったファクタリング会社選びが重要です。

本記事を参考に、早期の資金調達や資金繰り改善の良きパートナーとなるファクタリング会社を選びましょう。