給料ファクタリングとは、給料を期日前に売却して現金化する方法です。

一時期、「カードローンにかわる新たな資金調達方法」として有名になりましたが、今は給料ファクタリングは違法行為として定着しており、どんなにお金に困っても絶対に手を出すべきではありません。

給料ファクタリングとは何か、給料ファクタリングはなぜ違法行為なのかを解説するとともに、給料ファクタリングと通常のファクタリングの違いについて詳しく解説していきます。

 

給料ファクタリングとは

給料ファクタリングとは、簡単に言えば、給料ファクタリング業者へ給料を売却して、給料日前に現金化する方法です。

給料の前払いをファクタリング会社を通じて行う方法で、「ブラックでも資金調達できる」「最短即日で資金調達できる」というのがメリットですが、手数料が非常に高額であるなどのデメリットもあります。

まずは給料ファクタリングの概要について詳しく解説していきます。

個人の給料債権を給料日前に売却

給料ファクタリングとは、個人の給料債権を給料日前に給料ファクタリング業者へ売却することによって給料日前に給料を手にすることができるというものです。

給料債権とは「給料日に給料を受け取ることができる権利」のことです。

給料というものは後払いですので、すでに働いて未払い分の給料に関しては「給料債権」という言い方ができます。

ファクタリングとは企業や個人事業主が保有している売掛債権をファクタリング会社へ売却して早期に資金化するものですが、給料ファクタリングにおいては給与所得者が勤務先に対して保有している給料債権を給料ファクタリング業者へ売却することによって早期に資金化します。

例えば、月末が給料の人が1日に給料ファクタリングを利用すれば、約1ヶ月早く給料を受け取ることができます。

手数料を控除した金額が入金になる

給料ファクタリングでは、給料から手数料を控除した金額が入金になります。

給料ファクタリング最大の問題点は、手数料が超高額になるという点です。

給料ファタリングの手数料は20%〜40%程度です。

例えば手数料が40%の場合、20万円の給料をファクタリングすると、手数料で8万円、手元には12万円しか入金になりません。

たったの数週間から数日、給料の前借りをするだけで、これだけの手数料が発生するのは確実にデメリットだと言えいますし、ここが給料ファクタリングが違法行為だと言われる原因の1つです。

給料日に業者へ返済する

勤務先は給料ファクタリングを利用したことを知らないので、給料日になるといつも通りに給料ファクタリング利用者のもとへ振込を行います。

この給料を原則として給料日当日中に給料ファクタリング業者へ返済しなければなりません。

つまり、実質的には給料ファクタリング業者からお金を借りて、このお金を返済していることと同じです。

また、給料ファクタリング業者への返済が1日でも遅れると矢のような督促があり、いわゆる闇金業者のような悪質な督促が行われます。

ここも「給料ファクタリングは利用してはいけない」という理由です。

ブラックでも利用できるが

給料ファクタリングは借入ではなく給料債権の売却というのが名目ですので、審査されるのは利用者個人ではなく、利用者の勤務先です。

そのため「給料日の給料を払うことができる企業」と判断できれば、ブラックの人でも審査に通過することができます。

また、申込日当日に給料債権を資金化することも可能です。

お金に困っている人にとっては、魅力的に思えますが、手数料が非常に高く、返済に遅れた場合には容赦のない督促が行われるので、どんなにお金に困っていても給料ファクタリングは利用すべきではありません。

給料ファクタリングは違法!給料ファクタリングの問題点

給料ファクタリングは違法行為です。

なぜ、給料ファクタリングが違法行為になるのか、また、実際に給料ファクタリングを巡っては逮捕者が出たり、訴訟が起きたりしています。

給料ファクタリングの問題点についても詳しく解説していきます。

実質的な貸付と同じ

給料ファクタリングは実質的な貸付と同じです。

そもそも給料債権は売却することができない債権です。

労働基準法では給料について直接払の原則というものを定めています。

直接払の原則は賃金を本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものです。 したがって、労働者の親権者その他法定代理人、委任を受けた任意代理人に賃金を支払うことは労働基準法違反となり、その支払いは無効となります。

参考:兵庫労働局 | 賃金

いくら「給料ファクタリングによって給料債権を売却した」と言っても、そもそも給料は本人にしか支払うことができないものですので、給料債権は売却することはできません

また、給料日になると、利用者本人に対して返済を迫っているため、実質的には給料ファクタリングは貸付と同じです。

実際に金融庁も給料ファクタリングについて以下のような解釈を発表しています。

金銭消費貸借契約そのものではないものの、実態として給料ファクタリング会社から労働者への金銭の交付、労働者から給料ファクタリング会社への金銭の返還(返済)が常に予定されており、他に回収の方法がない。つまり、経済的に貸付と同様の機能を有していることから給料ファクタリングは貸金業に該当すると考えられる(要約)

参考:金融庁|金融庁における法令解釈に係る照会

要するに、給料ファクタリング業者が労働者にお金を渡し、労働者が給料ファクタリング会社に対して返済をすることが前提になっている。他に回収の方法がない。だから貸付という解釈になります。

給料ファクタリングが貸付であるのであれば、貸付と同じルールで運用しなければ違法ということになります。

そして、給料ファクタリングは貸付と同じルールで運用されていないので違法です。

利息制限法をオーバーする手数料

給料ファクタリングの手数料は20%〜40%です。

給料ファクタリングの貸付期間は給料日と給料日の期間だけですので、いくら長くても1ヶ月間だけです。

たった1ヶ月の間で20%〜40%の手数料を取るのですから、年利に換算すると240%〜480%の手数料を設定していることになります。

これは明らかに利息制限法をオーバーしています。

貸付ならば以下の利息制限法の上限金利を守らなければなりません。

  • 10万円未満:20%
  • 10万円以上100万円未満:18%
  • 100万円以上:15%

上記の金利を超えるものは全て違法です。

給料ファクタリングは優に利息制限法を超えていることから違法であると言えます。

違法業者が運営していることが多い

また、貸金業を営むためには、厳しい国の基準をクリアした上で貸金業者登録を行わなければなりません。

給料ファクタリング業者は貸金業者登録も行なっていないので、無登録営業の違法業者ということになります。

この点でも、給料ファクタリングは違法だと言えます。

給料ファクタリングは、違法金利で貸付を行う、いわゆる闇金が運営していることが非常に多いと言われています。

つまり、給料ファクタリングを利用するということは、いわゆる反社会的勢力からお金を借りることと同じですので、絶対に給料ファクタリングに手を出してはなりません。

給料ファクタリングをめぐる事件

日本ファクタリング業協会には給料ファクタリングに関する様々な事件が記載されています。

以下、主な事件を引用します。

大阪府の利用者の男性8人が3日、東京都内の業者など7社に計約690万円の返還や損害賠償を求めて大阪簡裁などに提訴した。

令和2年5月22日,日本弁護士連合会の荒中(あらただし)会長は,給与ファクタリングと称するヤミ金融業者が横行している問題で,金融庁や警察庁など関係機関に対し,取り締まりの徹底を求める声明を発表した。

令和2年3月23日,森田悟志弁護士(東京都中央区)は,被告七福神(ZERUTA)に対し,9名合計544万2000円で,
初の集団訴訟を東京地裁に提起した。

2020年10月14日「給与ファクタリング」と呼ばれる新手の「闇金」を営んだとして業者の男らが逮捕された事件で、警察は新たに、実質経営者とみられる男を逮捕した。準暴力団のメンバーとみられる。  貸金業法違反の疑いで逮捕されたのは、中国系ギャングで準暴力団の「怒羅権(ドラゴン)」のメンバーとみられる藤岡剛容疑者。

このように、最も知名度のある給料ファクタリング会社の七福神も訴訟を起こしており、暴力団が給料ファクタリングを営んで逮捕されるような事件まで起きています。

給料ファクタリングを利用するなら給料前払いサービスを利用する

給料ファクタリングは違法行為でいわゆる闇金のような業者からお金を借りることと同じですので、絶対に手を出してはいけません。

給料ファクタリングを利用するのであれば、給料前払いサービスを利用することをおすすめします。

このサービスは、給料ファクタリングと似たような言葉ですが合法のサービスです。

給料前払いサービスの概要や特徴を解説していきます。

給与前払いサービスとは

給料前払いサービスとは、勤務先の企業と決済代行会社などが連携して、従業員が合法的に給料の前払いを受けることができるシステムです。

会社の勤怠実績が前払いサービスのシステムへ反映され、「すでに働いた分の給料はいくらなのか」「いくら前借りできるのか」が従業員にアプリなどで一目で分かるようになっています。

従業員はアプリやパソコンから、前払いを受けたい分の金額を入力すると、最短即日から翌日には従業員の口座へ入金される仕組みになっています。

従業員も会社も、前払いした情報を共有することができ、さらに上司にお伺いを立てることなく給料の前払いを受けることができるのが、給料前払いサービスの大きなメリットです。

会社が給料前払いサービスを導入していれば、従業員はいつでも給料の前払いを受けることが可能です。

手数料は安価で違法性はない

給料前払いサービスの手数料は、基本的には振込手数料のみとなっており、従業員の負担はほとんどありません。

このサービスは、企業が従業員確保のインセンティブとするために導入されるものです。

そのため、導入コストや月額利用料は会社負担で運用している企業がほとんどで、給料ファクタリングのように給料の前払いを受けることによって従業員が高額のコストを負担することはありません。

完全に合法的に、かつ低コストで給料前払いサービスは利用することができます。

多額の手数料が必要になる給料ファクタリングと給料前払いサービスには非常に大きな違いがあります。

導入している企業の従業員でないと利用できない

給料の前払いを受けたいのであれば、違法行為である給料ファクタリングを利用するよりも、給料前払いサービスを利用した方がよいことは間違いありません。

しかし、給料前払いサービスは誰もが利用することができないのが大きなデメリットです。

給料前払いサービスを利用することができるのは、このサービスを導入している企業に限られてしまいます

人手不足の中、従業員を確保したいと考える企業が多いことから、このサービスを導入している企業は最近急速に増えていますが、基本的にはアルバイト従業員が多い、飲食業、サービス業がメインになっており、まだまだ利用できない業種の方が多いのが実情です。

勤務先が給料前払いサービスに対応していない場合でも、給料ファクタリングには絶対に手を出してはけません。

カードローンなどの合法的な手段での資金調達を検討しましょう。

給料ファクタリングとファクタリングの違い

給料ファクタリングが「違法行為」と言われると、ファクタリングそのものが違法な行為であるかのように思ってしまう人も多いのではないでしょうか?

しかしファクタリングは違法ではなく合法です。

最後に給料ファクタリングとファクタリングの違いについて詳しく解説していきます。

ファクタリングに違法性はない

通常のファクタリングに違法性はありません。

ファクタリングの手数料も利息制限法の上限金利を超えていることも多いですが、これは、売掛債権がデフォルトした場合のリスクプレミアムだと解されています。

ファクタリングは、売掛先が売掛債権を支払わなかった場合でもそのリスクはファクタリング会社が背負うノンリコースで行われます。

ファクタリングがノンリコースで行われる限り、手数料設定はリスクプレミアムとして合法なものと解されており、違法性のある給料ファクタリングとは根本的に異なります

債権譲渡できるかどうか

給料債権は譲渡することができません。

給料は本人以外に支払うことができないため、ファクタリング会社がいくら「給料債権の譲渡を受けた」と主張しても、勤務先はファクタリング会社へ給料を支払うことができません。

そのため、給料はそもそも譲渡することができない債権です。

ファクタリングが債権譲渡を前提としているのであれば、「給料ファクタリング」という言葉がもはや矛盾していることが分かります。

一方、ファクタリングは企業が保有している売掛債権の譲渡であり、この譲渡は民法によって認められている行為ですので、法的には全く問題ありません。

債権譲渡ができるかどうかという点が、ファクタリングと給料ファクタリングの非常に大きな違いです。

給料ファクタリングについてよくある質問

ネットでも有名な大手企業ですが給料ファクタリングは利用しない方がよいでしょうか?
給料ファクタリングはどんな会社が営んでも、違法行為である可能性が高いでしょう。
七福神などの有名業者に対しても、訴訟が起きていることから、いくら著名な会社だからといっても手を出さない方が無難です。
合法的に給料ファクタリングを営んでいる業者は皆無ですので、給料ファクタリングを利用するのは避けた方がよいでしょう。
給料ファクタリングを利用した場合のリスクを具体的に教えてください
給料ファクタリングを利用すると、まず法外な手数料を支払わなければなりません。
さらに、返済に1日でも遅れると、1日に何度も携帯電話へ連絡が入り、「職場に言う」などと脅されることもあります。
また、実際に職場へ電話がかかってきたり、自宅へ訪問されるということもあるようです。
まさに、いわゆる闇金からお金を借りた時と同じようなリスクを背負うことになるので、給料ファクタリングには絶対に手を出してはいけません。
どうしても今日中にお金が必要になった時の対処法を教えてください
どうしても当日中にお金が必要な時は、大手消費者金融のカードローンを利用しましょう。
アコムやプロミスやアイフルなどのカードローンは申込日当日にお金を借りることができますし、金利も給料ファクタリングと比較すれば法律の範囲内です。
即日でお金が必要な時は、合法の業者へ申込を行い、違法業者には絶対に手を出さないようにしましょう。

まとめ

給料ファクタリングは、給料債権をファクタリング会社へ売却することで、給料日前に給料を受け取ることができるものです。

しかし、給料債権は基本的に譲渡することができないので、給料ファクタリングは実質的な貸付と同じです。

実質的な貸付でありながら、給料ファクタリングでは法外な金利を設定しており、これは明確に違法行為であると言えます。

違法行為である給料ファクタリングは利用すべきではありません。

合法手段であるファクタリングとは全く異なるものですので、給料ファクタリングは利用しないようにしましょう。

給料ファクタリングを利用するのであれば、給料前払いサービスを導入している企業へ就職するか、カードローンなど合法的な手段で資金調達するようにしてください。