「急な出費でお金が必要になった」

「消費者金融などでお金は借りたくない」

お金を貸してくれるのは、銀行や消費者金融会社といった金融機関だけではありません。

友人、家族などからお金を借りることもできますが、実はその選択肢の中に「勤務先」があることはご存知でしょうか?

すべての会社が貸付に応じてくれるわけではありませんが、勤務先ならば金融機関のような審査もなく、きわめて低い金利で借りることもできます。

今回は企業が従業員へお金を貸し付ける「給料前借りサービス」について解説します。

会社員の方など、突然お金が必要になった場合に備えて、サービスの概要や手続きの方法をご参考になさってください。

給料前借りサービスとは

給料前払いとは

給料前借りは「すでに働いた分の賃金以外」を資金源として、文字通り銀行でローンを組むように勤務先からお金を借りることです。

「社内貸付制度」で福利厚生サービスの一環として提供している企業もあれば、会社が従業員の申請に応じて個別に貸し付ける場合もあります。

給料前借りは「給料の前払い」や「給料ファクタリング」とは異なる

給料前払いサービスと給料ファクタリングの違い

まず、給料の前借りと似たような言葉に「給料の前払い」がありますが、こちらは「すでに働いた分の賃金」を資金源としており、お金の貸し借りではありません。

給与前払いは、給料日前にすでに働いた分の給与を先払いで受け取ることができるサービスです。最近では給料前払いサービスとして、勤務先が外部のサービス事業者と提携し、従業員への福利厚生の一環として提供されています。

また、給料ファクタリングは「すでに働いた分の賃金」を債権と見なし、ファクタリング会社が買い取るサービスです。

利用者(従業員)は買い取ってもらった給料額面の10~40%の手数料を支払うことになりますが、最短即日・秘密厳守で現金を受け取ることができます。

こちらは利用者とファクタリング会社の2者間の契約で、勤務先への通知や承諾が不要です。ファクタリング会社が勤務先に買取代金を請求することもありません。

給料前借りの資金源

給料前借りに関して労働基準法第17条では、給料の前借りそのものは禁止していませんが、次回以降の賃金と相殺することを禁止しています。

(前借金相殺の禁止)
第十七条 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

後の賃金を得るために労働すること(事前の前借り)は、すなわち労基法違反となってしまいます。

「次回の給料からの天引き」する場合は、企業と従業員の双方が同意したうえで「同意書」の作成すれば問題ありませんが、給料前借りの資金源は会社があらかじめ用意している前借り用の準備金社長のポケットマネーであることがほとんどです。

給料前借りは従業員と企業の2者間契約

給料前借りは、原則として従業員と勤務先の2者間で個別に金銭消費貸借契約を結ぶもので、外部の個人や法人がサービスとして提供するものでありません。
「給料前借りサービス」と称して融資を持ちかけてくる個人や法人は、ヤミ金などの違法業者の可能性があります。

勤務先から給料を前借りする方法

勤務先から給料前借りをする場合に必要となる一般的な手続きを解説します。

ただし、手続きの流れは企業ごとに異なるため、必ず担当者に確認することをおすすめします。

上司や担当部署に相談する|STEP1

まずは直属の上司か担当部署の窓口で給料を前借りしたい旨を相談しましょう。

勤務先に社内貸付制度など給料前借りの決まったルールがない場合は、担当者や役員などが協議する必要があるからです。

いきなり社長や役員に「給料前借りしたい」と相談することはマナー違反となります。

借用書を作成する|STEP2

給料の前借りをする場合は、借用書を作成するのが一般的です。

口頭だけでもお金の貸し借りは成立してますが、後のトラブルを避けるためにも、借用書を交わしておくと安全です。

会社に借用書の所定の書式がある場合は、そちらを利用します。無い場合は以下の項目を記載しましょう。

  • 借用書の作成日
  • 借入日
  • 借入金の金額
  • 返済方法
  • 支払期限
  • 借主の氏名・捺印
  • 会社名、代表者名
  • 返済方法について
  • 金利について
  • 遅延損害金について
  • 不払いの場合の処置

借用書はインターネットで調べると無料のテンプレートが配布されていますので、社内に所定の書式が無い場合は参考にすると良いでしょう。

会社側は従業員と金銭消費貸借契約書を交わし、所定の利息、支払期日を取り決めます。

給料を前借りする|STEP3

担当部署で借用書が受領され、処理が完了すると給料の前借りができます。

あくまでもイレギュラーな対応なので、勤務先の状況によっては手続きに数日かかる場合もあります。

ルールに従って返済する|STEP4

給料を前借りした後は、返済期日や金利など勤務先と取り決めたルールに従って返済します。

返済が遅れたり、滞納したりすると会社からの信頼を失うことになるため注意しましょう。

どうしても返済が遅れる場合は、早めに担当部署に相談して指示を仰ぐことが肝心です。

企業の給料前借りサービスとしての「社内貸付制度」

勤務先によっては「社内貸付制度(従業員貸付制度)」として、公に給料前借りの制度を設けているところもあります。

社内貸付制度とは、企業が自社の従業員に向けて、人材獲得・定着の目的や信用トラブル対策として設けている制度です。

すべての企業が導入しているわけではありませんが、ここ数年、従業員が安心して働けるように福利厚生の一環として話貸付金制度を取り入れる企業が増えています。

社内貸付制度の条件

社内貸付制度は「出産」「病気」「災害」「身内の不幸」など、労基法第25条に基づく緊急時に貸付が行れる場合がほとんどです。

(非常時払)
第二十五条 使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。

労基法第25条は「給料前払い」についての規定ですが、多くの社内貸付制度は前借りに関してもこの労基法に準拠しています。

また、社内貸付制度の審査は会社役員による社内審査で、借入条件に該当するかどうか、勤続年数などの社内での経験が審査条件として加味されます。

企業が自社の従業員に貸し付けるため、銀行や消費者金融などの融資よりも審査は緩くなりますが、「ギャンブルで生活費が払えなくなって困っている」といった理由で借りられる可能性はきわめて低いでしょう。

社内貸付制度の借入金額や金利

社内貸付制度の借入限度額や金利は法律で定められているわけではなく、あくまでも企業の裁量次第で決められています。

借入限度額は、たとえば勤続5年なら50万円まで、勤続10年だと100万円までというように、勤続年数で変動する仕組みを採用している企業が多いようです。

金利についても企業の裁量次第ですが、多くは銀行や消費者金融よりも低く設定され、返済負担が軽減されています。

ただし、金利は出資法や利息制限法に基づいて年利20.0%までとしなければ、出資法違反に問われる可能性があります。

給料前借りサービスに関するQ&A

Q.会社に勤めている従業員なら、誰でも給料の前借りはできますか?
A.会社の貸付制度のルールによります。たとえば、社内規定で制度の利用対象が「正社員」「社会保険への加入対象者」であれば、パートやアルバイトでは利用できない場合があります。
Q.給料を前借りする場合に連帯保証人は必要となりますか?
A.社内規定によります。たとえば1ヶ月分の給料を超えるような高額の借入の場合、会社の同僚や家族など連帯保証人を付けなければならない場合もあります。
Q.退職・退職する際に前借り分の返済が残っていたらどうなりますか?
A.完済していない状態で退職や転職をすると、借入残高の一括返済を求められるので注意しましょう。
Q.給料前借りで得たお金は自由に使えますか?
A.社内規定によりますが、多くの場合は労基法第25条の「非常時払」に該当する理由で必要になったお金を補填するよう決められています。あくまで従業員の緊急事態を救済する目的の融資であるため、自由に使えるわけではありません。
Q.信用ブラックでも給料前借りはできますか?
A.勤務先が金融機関でもない限り、社内審査で信用情報機関を照会するわけではないため、信用ブラックでも給料前借りはできます。同様に、借入額を年収の3分の1までとする総量規制についても、会社が従業員の借入総額や借入件数の事実を把握することはできないため、給料前借りは総量規制適用外となります。

「給料の前借りサービス」まとめ

給料前借りサービスについて重要なポイントをまとめると、以下のとおりです。

  • 給料前借りサービスは「給料前払い」「給料ファクタリング」とは異なり、借金である
  • すでに働いた分の賃金以外」のお金が資金源である
  • 従業員と勤務先の2者間で金銭消費貸借契約を結ぶもので、外部の個人や法人がサービスとして提供するものではない
  • 社内貸付制度」として従業員への福利厚生サービスを提供する企業もある
  • 金利や支払期限は社内規定による

給料前借りはあくまでも「企業による従業員の緊急時の対応」です。

どうしても近日中にお金が必要な状況になったら、消費者金融会社等に駆け込む前に、まずは勤務先が「給料前払いサービス」を提供していないかどうか確認しましょう。

給料前払いは「すでに働いた分の賃金」から必要な分だけを前払いしてもらうサービスなので、借金ではありません。福利厚生サービスの一環として取り入れる企業もあるため、利用のハードルはきわめて低いでしょう。

なおもお金が必要であれば社内貸付制度を利用するか、その旨を会社に相談して給料を前借りさせてもらうことをおすすめします。