コロナ禍の影響もあり、多くの企業が近年、黒字倒産に見舞われています。「どのような業種が黒字倒産しやすいのか」「自社は大丈夫だろうか」と気になる方も多いでしょう。

黒字倒産しやすい企業は、建設業のように商品・サービスを提供してから入金されるまでに時間がかかる業種に多いです。黒字倒産を防ぐためにはキャッシュフローを管理し、売掛・買掛のサイクルを見直すなどの対策が必要です。

今回は黒字倒産しやすい業種について、理由・割合・企業の具体例などもわかりやすく解説します。本記事を読めば、黒字倒産しやすい業種に共通する要因を把握して適切な対策を講じられます。黒字倒産を未然に防げるよう、資金繰りの改善・財務体制の強化を図りましょう。

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黒字倒産しやすい業種は建設業に多い

黒字倒産は、特に建設業で多く見られる傾向があります。黒字倒産とは、会社が利益をあげているにもかかわらず資金繰りの悪化で倒産してしまう状況です。

建設業では、大規模な工事になると建物完成後に一括して代金を受け取るケースが多いです。代金を受け取るまでに人件費・外注費など工事に必要な費用を先に支払わなければならず、資金難に陥りやすくなります。さらに、資材費の高騰・人手不足による人件費の上昇などで想定外のコスト増加が起こりうるのも懸念点です。

他にも、在庫が多い業種も黒字倒産しやすいです。例えばアパレル業は商品ごとにサイズ・色が複数展開されており、大量の在庫を抱えやすい特徴があります。在庫を大量に抱えれば管理スペースにかかる費用も増大し、支出が先行して資金難に陥りやすいです。

上記のような業種特性から、一時的に利益が出ていても資金繰りが悪化し、倒産に追い込まれるケースが後を絶ちません。健全な経営には、適切な資金管理が重要です。

黒字倒産した有名企業・会社の具体例

黒字倒産した有名企業・会社の具体例として、以下の2社を紹介します。

  • 日本綜合地所
  • 江守グループホールディングス株式会社

上記の事例を参考に、黒字倒産を未然に防ぐ対策を講じましょう。

日本綜合地所

日本綜合地所は、1993年に設立された東京・神奈川を中心に不動産開発を手がける大手デベロッパーです。2003年には東証1部へ上場し、2008年3月期には過去最高の売上高973億円を計上するなど業績は好調でした。

しかし、不動産市況の悪化に見舞われたにもかかわらず好調時と同様の仕入れを続けていました。結果として仕入れに利用した借入金の返済などで資金繰りが逼迫し、支払いが滞って倒産に至っています。需給予測を見誤り、大量の在庫を抱えた結果、資金が逼迫して黒字倒産した事例です。

江守グループホールディングス株式会社

江守グループホールディングス株式会社は、福井市に拠点を置く化学品・合成樹脂などを扱う商社でした。2005年から中国へ進出し、順調に取引規模を拡大して業績は右肩あがりでした。

しかし、売上シェアを大きく占めていた中国企業からの売掛金が回収不能となり資金繰りが悪化します。資金調達のため出資先を探していましたが、最終的には再建を断念し2015年に民事再生法を適用して事実上の倒産に至ります。売掛金の回収が遅れ資金不足となり、支払いが滞って黒字倒産に至った事例です。

黒字倒産が起きる業界に見られる特徴・ビジネスモデル

黒字倒産が多い業界には、いくつかの共通した特徴があります。まず、サービス・製品の提供と代金回収のタイミングにズレがある業種です。

建設業は典型例で工事を先に行い、後から代金を受け取るビジネスモデルとなっています。工事が行われる間の運転資金確保が課題となり、回収が滞れば資金繰りが悪化しがちです。

また、設備投資が必要な業種でも黒字倒産のリスクが高まります。製造業・不動産開発業界などでは、新工場の建設・土地取得など多額の先行投資を伴います。事業が軌道に乗るまでの間、資金繰りが厳しくなりがちです。

在庫リスクの高い小売・卸売業界でも、売れ残った在庫をさばききれず収益が悪化し黒字倒産に陥る危険性があります。基本的に大口の営業・運転資金を必要とするビジネスモデルほど、黒字倒産のリスクは高まるのが特徴です。

黒字倒産した企業の割合は全体の4割近くにのぼる

倒産した企業の中には、実は利益をあげていた企業が意外に多いことがわかっています。東京商工リサーチの調査によると、2022年に倒産した企業のうち直近の決算で赤字を計上していた企業は62.9%でした。逆に言えば、残りの37.1%は黒字を出していたにもかかわらず倒産した形です。

上記の倒産背景には、様々な要因が同調査で指摘されています。特に倒産企業で顕著に見られた傾向が、支払い利息の増加です。同調査では、2022年倒産企業で営業利益支払い利息率(支払い利息割引料÷営業利益)が下記のように推移していると報告されています。

  • 前々期73.3%→前期137.1%→最新期165.5%

コロナ禍での営業利益縮小に加え、借入金が膨らみ支払い利息が大幅に増加したと考えられています。利益が十分でも、借入金・支払い利息の増加によって資金が逼迫し黒字倒産するケースもあり注意が必要です。

そもそも黒字倒産とは?わかりやすい内容で解説

黒字倒産とは、会社が利益をあげているにもかかわらず資金繰りの悪化から倒産に至る現象です。黒字倒産について、以下の2点から具体的にわかりやすく解説します。

  • 黒字倒産のメカニズム・仕組み
  • 赤字であれば倒産となる訳ではない

黒字倒産を理解し、適切な対策を講じましょう。

黒字倒産のメカニズム・仕組み

黒字倒産が起きる背景には、会計上の利益と実際のキャッシュフローのズレがあります。売上計上のタイミングと入金タイミングがズレれば現状の資金だけで支出をまかなわなければならず、資金不足となりやすいためです。

例えば、建設業では工事を受注した段階で売上を計上しますが、実際の入金は建物が完成した後が一般的です。つまり、売上・利益計上と現金回収にタイミングのズレが生じます。

また、設備投資への先行投資がかさむ業種も黒字倒産のリスクが高まります。製造業・不動産業などでは工場建設・土地取得などに多額の資金が先行するためです。事業が軌道に乗るまでは運転資金が継続的に必要となり、資金ショートに陥りやすくなります。

赤字であれば倒産となる訳ではない

一方、赤字であれば必ず倒産に至る訳ではありません。たとえ損失が出ていても、キャッシュフローが安定していれば倒産は回避できます。

例えば、営業利益が赤字だとしても、銀行からの借入で運転資金を確保できれば手元資金が枯渇せず倒産を防げます。また、グループ内での資金融通・保有資産の売却による手元資金の確保も可能です。収支がマイナスでも、適切な資金調達ができれば経営は持続できます。

逆に、利益があっても、資金繰りが苦しければ黒字倒産の恐れがあり注意が必要です。利益の有無だけでなく、実際のキャッシュフローの動向が企業経営の命運を左右します。

理解しておきたい黒字倒産に関連する知識

黒字倒産に関連する知識として、以下の2点があげられます。

  • 利益とキャッシュフローの違い
  • 経済環境の変化が黒字倒産に大きな影響を与える

黒字倒産をより詳しく理解するためにも、上記のポイントを押さえましょう。

利益とキャッシュフローの違い

経営状態を正しく把握するためには、会計上の「利益」とキャッシュの動きを表す「キャッシュフロー」の違いを理解する必要があります。利益とは、一定期間の収益から費用を差し引いた会計上の概念です。

しかし、実際の現金の出入りとはタイミングがズレがちです。例えば、売上を計上しても入金は後払いとなる売掛取引を行う企業は多数存在します。また、減価償却費の計上は会計上のコストですが実際に現金の支出は伴いません。

一方、キャッシュフローは、企業が事業活動を通じて実際に稼いだ現金の動きを表します。売上から実際に入金があった分を収入、支払った現金を支出と計算するのが基本です。収入から支出を引いた数値がマイナスになると、企業は資金不足に陥ります。

会計上の利益があっても、キャッシュフローがマイナスであれば黒字倒産のリスクが高まります。企業経営では、両者のバランスが重要です。

経済環境の変化が黒字倒産に大きな影響を与える

黒字倒産発生の大きな要因となるのが、経済環境の変化です。好況時に事業を拡大して設備投資を行っても、景気後退で売上が伸び悩めばキャッシュフローは一気に悪化します。

特に、建設業・不動産業といった景気に左右されやすい業種では景気後退期に黒字倒産のリスクが高まりがちです。建設現場の手控え・地価下落で資金回収が滞る一方、前の好況期に投じた設備投資の負担が重くのしかかるためです。

また、原油高騰・円安などのコストアップ要因も黒字倒産の引き金となります。売上高は維持できても原価上昇分を価格に転嫁できずに利益が圧迫され、キャッシュフローが悪化するためです。外的な経済環境の変化がキャッシュフローを一気に悪化させ、黒字倒産に追い込む危険性があると認識しておきましょう。

黒字倒産はなぜ起きる?中小企業によくある4つの理由・原因

黒字倒産が中小企業で起こりやすい理由・原因として、以下の4つが考えられます。

  • 売掛金の回収が滞っている
  • 過剰在庫になっている
  • キャッシュフローを管理できていない
  • 設備投資の回収が上手くいっていない

上記の原因に対して、事前に対策を講じておきましょう。

売掛金の回収が滞っている

中小企業では売掛金の回収が滞り、運転資金が継続的に不足する状況で黒字倒産に陥ります。建設業など、仕事が先行して後から代金を受け取るケースが多くあるためです。

また、取引先企業の経営状況が悪化すれば支払いが遅れて売掛金が膨らんでしまいます。中小企業には返済を強く求める力がないケースも多いため、長期化すれば運転資金不足に陥りやすいです。

取引先が倒産してしまえば債権が回収不能となり、損失で一気に債務超過へ陥る恐れもあります。健全な営業キャッシュフローを維持するためには、細かい債権管理が欠かせません。

過剰在庫になっている

中小の製造業・卸売業で起こりがちなのが過剰在庫です。売れ残った在庫は管理費用がかかるため、運転資金を圧迫してしまいます。

過剰在庫の期間が長くなればなるほど、売上があがらず資金繰りを圧迫するのも難点です。過剰在庫は避けたいものの、一定数在庫を持たないと販売機会を逃すジレンマもあります。需要予測を誤ると、過剰在庫を抱えてキャッシュフローが悪化する可能性が高いです。

ヒット商品も季節が変われば、次第に過剰在庫となるリスクが高まります。中小企業では在庫管理に割けるリソースに限界があり、黒字倒産につながる可能性は決して低くありません。

キャッシュフローを管理できていない

キャッシュフローの管理ができていないために、黒字倒産へと陥るケースも少なくありません。中小企業ほど経理体制が手薄になりやすく、経営者自身が財務内容を正しく把握できていない可能性があるためです。

売上は伸びているが実際の現預金残高は減っている状況に気づかず、過剰な設備投資・借入を重ねてしまう危険性があります。利益計上のタイミング・キャッシュの入金タイミングがずれると認識できていないケースもあります。キャッシュフローの重要性を理解し、資金状況を数字で正確に把握できる経理体制の構築が黒字倒産を回避する上で欠かせません。

設備投資の回収が上手くいっていない

設備投資の回収が上手くいっていないケースも、黒字倒産の主因です。新工場の建設・新規出店など、事業拡大のための設備投資には多額の資金を要します。投資額に見合う事業収益が将来的にあげられなければ、資金が枯渇して黒字倒産に陥りやすいです。

事業計画の精度・需要予測に甘さがあると、設備の過剰投資に走りやすい面があります。設備の本格稼働までに時間がかかり、運転資金の確保も大きな課題です。

事業が軌道に乗る前に金融危機などで経済環境が悪化すれば、投資回収が難しくなる可能性も高まります。設備投資は拡大戦略の起爆剤ですが、回収計画を綿密に立てないと黒字倒産に直結する危険性があります。

人手不足が原因で黒字倒産するケースもある

人手不足は中小企業の大きな経営課題であり、場合によっては黒字倒産の原因ともなり得ます。例えば、人材確保が困難な状況下で、販売機会を逃さないために無理な受注をしてしまうケースです。

人員が足りずに納期を間に合わせようと、外注費がかさみ売上原価が増大します。結果として利益が出ず、キャッシュフローが悪化する可能性が高いです。

また、人手不足で人件費高騰に見舞われるとコスト高が収益を圧迫します。特に技術者・専門人材の確保が難しい業種ほど、上記の傾向は顕著です。価格転嫁が難しければ利益率は低下し、運転資金の逼迫に直結しかねません。

有能な人材が去れば技術力・経営ノウハウの低下も避けられません。製品の品質低下で受注が減るなどの悪循環に陥れば、黒字倒産のリスクは高まります。

人手不足は、様々な側面から中小企業の経営を直撃します。人材確保・育成に注力して生産性の向上に取り組まなければ、黒字倒産につながりかねない深刻な経営課題です。

資金繰りが厳しくなりがちな経営者の特徴

資金繰りが厳しくなるのは財務体制だけでなく、経営者の行動も要因となります。資金繰りが厳しくなりがちな経営者の特徴は、以下の4つです。

  • 接待交際費を使い過ぎている
  • 経費で不必要な高額物品を購入している
  • キャッシュフローに対する意識が低い
  • 事業拡大を積極的に行っている

上記の特徴にあてはまる経営者の方は、行動・意識を見直しましょう。

接待交際費を使い過ぎている

接待交際費の過剰な支出は、資金繰りを圧迫する一因です。営業の場では欠かせませんが、度を越せば無駄な出費となってしまいます。

中には「接待を厚くすれば受注がとれる」と考え、高級な飲食店・遊興施設を利用する経営者もいます。しかし、高額な接待が受注に結びつくかは定かではありません。顧客の本音を読み間違えて、反発を招く恐れもあります。

また、接待を「社交の場」として業界関係者との交流機会を過剰に広げる経営者も少なくありません。社交的な目的であれば、節度を持った接待でよいはずです。

適切な交際費の水準は業界・地域によっても異なりますが、最低限の費用対効果を意識した支出が求められます。過剰な接待は資金の無駄遣いに他なりません。

経費で不必要な高額物品を購入している

会社の経費で高級な備品・設備を購入する経営者がいます。自社の技術・製品を売り込む目的ならわかりますが、しばしば単なる経営者の自己満足から生まれる出費もあります。

例えば、オフィスに最新のデザイナーズ家具を配置したり、役員用の高級自動車をそろえたりと豪華な設備投資をする経営者です。上記はブランドイメージの向上にも役立たず、無駄な出費となり得ます。

ステータスの象徴として極端に高額な作業用機器を導入し、活用度の低い設備を抱えてしまうケースもあります。設備投資は本来、生産性の向上など合理的な必要性に基づくべきです。

経費での不必要な高額物品購入は、資金の無駄遣いです。事業目的から外れた経営者自身の自己満足な出費は、資金繰りを圧迫させかねません。

キャッシュフローに対する意識が低い

キャッシュフローへの意識が低い経営者は、資金繰りが厳しくなりがちです。会計上の売上・利益にとらわれ、現金の動きを無視してしまう傾向があるためです。

利益は発生主義に基づく会計上の概念で、実際の入金とはタイミングがずれます。にもかかわらず「利益があれば大丈夫」と考え、現金の出入りを注視しない経営者が多くいます。

また、財務数値の重要性を理解できていないケースも少なくありません。財務数値に理解がないとキャッシュフローを数値ベースで管理できず、手元資金の状況を正確に把握できません。

キャッシュフローの重要性を認識し、財務データを的確に読み解く能力が経営者に求められます。利益よりもキャッシュフローを重視する視点が不可欠です。

事業拡大を積極的に行っている

事業拡大のための設備投資は多額の資金を要し、資金繰りを圧迫させるリスクがあります。中小企業の経営者は成長への過剰な意欲から、無理な投資を重ねがちです。

新工場の建設・新規出店など、事業拡大を目指す場合は巨額の設備投資を必要とします。しかし採算ラインに乗るまでには時間を要し、運転資金が確保できずに資金ショートするケースも多いです。

また、債券の発行・金融機関からの借入金に頼れば利子負担が重くのしかかります。想定以上のコスト増から、投資回収が困難になるリスクも高まります。

経営者の過大な期待から需要予測を甘く見積もってしまい、投資が過剰になりがちです。いったん設備投資に踏み切ると固定費用がかさみ、資金繰りに重くのしかかります。事業拡大への意欲は重要ですが、慎重な資金計画・投資回収の精査が不可欠です。

黒字倒産に陥るリスクの事前把握に役立つ指標

黒字倒産に陥るリスクの事前把握に役立つ指標として、以下の3つがあげられます。

  • 自己資本比率
  • 当座比率
  • 自由資金比率

黒字倒産を防ぐために、上記の指標は常にチェックしましょう。

自己資本比率

自己資本比率は財務健全性を表す指標の1つで、企業が保有する総資本における自己資本の割合です。自己資本比率の計算式は、以下のとおりとなります。

  • 自己資本比率(%)=自己資本÷総資産(=負債+純資産)×100

自己資本とは、株主から出資された資本金・利益剰余金など企業の純資産です。自己資本比率が低ければ借入金依存度が高い状態を示しており、債務超過に陥るリスクが高まります。一般的に15~20%以上が理想とされ、10%を下回ると債務超過になる可能性が高いです。

自己資本の確保は安定的な経営を維持する鍵です。内部留保の積み増し・増資などで自己資本を厚くし、自己資本比率を高水準に維持すれば黒字倒産を回避しやすくなります。

当座比率

当座比率は企業の短期的な支払い能力を示す指標で、流動負債に対して当座資金がどの程度あるかを数値化した指標です。流動負債・当座資金の意味は、以下のとおりとなります。

用語 意味
流動負債 貸借対照表日の翌日から1年以内で支払い期限が到来する債務。
当座資産 流動資産のうち、現金もしくは短期間で換金できる資産。

当座比率の計算式は、以下のとおりです。

  • 当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100

一般的に100%以上が理想とされています。100%よりも低ければ、短期的な支払い能力が不足している状態を示します。

例えば、短期の借入金が大きければ当座比率は下がりやすいです。当座比率が低い状態が続けば、支払いに充てられる現金資産が少なくなり資金繰りが苦しくなります。

企業の短期的な資金繰り状況を事前に把握するには、当座比率を注視しましょう。低下が続けば、早期に資金調達を図る必要があります。

自由資金比率

自由資金比率とは、自己資本が増加した金額のうちフリーキャッシュフローがどれだけあるかを示した指標です。会社が自由に使える現金が潤沢であるかを把握でき、経営安定度を測る指標として利用できます。自由資金比率の計算式は、以下のとおりです。

  • 自由資金比率(%)=フリーキャッシュフロー÷自己資本増加額×100

自由資金比率が高ければ、利益のうち自由に使えるお金が多い状態を示しています。借入金など返済義務のある負債に頼らず、安定した資金繰りを実現できていると判断可能です。一般的には40%以上の数値が理想とされています。

黒字倒産を防ぐには?6つの対処法を紹介

黒字倒産を防ぐ対処法として、以下の6つを紹介します。

  • キャッシュフローを明確にして管理する
  • 収益・支出のバランスを見直す
  • 買掛金の支払い・売掛金の回収にかかる期間を見直す
  • 適切な在庫・資産管理
  • 資金調達をすぐに実施できる体制を整える
  • ファクタリングを活用する

上記の対策を講じて、黒字倒産を未然に防ぎましょう。

キャッシュフローを明確にして管理する

黒字倒産を防ぐためには、何よりもキャッシュフローを明確にして管理を徹底するのが重要です。会計上の利益とは別に、現金の動きを的確に把握し管理する必要があります。

具体的には、現金の入金タイミング・支出を月ごとに項目別に示したキャッシュフロー計算書を活用しましょう。下記表のように、現金収支を3つの活動区分で管理します。

キャッシュフローの種類 概要
営業キャッシュフロー 商品の売上代金・仕入れ費用など本業にかかわる現金の増減
投資キャッシュフロー 有価証券の取得・売却など投資活動における現金の増減
財務キャッシュフロー 金融機関からの借入・返済など財務活動における現金の増減

各キャッシュフローの動向を分析し、問題点を早期に発見できます。また、キャッシュフロー予算の策定も有効です。毎月・四半期ごとに入金・支払いの予定を事前に立てれば、資金不足が見込まれる時期を特定できます。

必要に応じて借入や社債発行など、資金調達の対応を事前に検討できる点がメリットです。常に手元資金の残高を意識し、キャッシュフローを意識した経営が黒字倒産の予防に不可欠です。

収益・支出のバランスを見直す

黒字倒産を回避するには、収益・支出のバランスを常に点検する必要があります。利益が出ていても支出超過が続けばキャッシュフローは悪化し、ついには資金繰りに行き詰まってしまいます。

まずは、売上高・売上原価のバランスを確認しましょう。売上が伸びても原価率が悪化すれば利益が出ません。コスト構造を精査し、適正な価格設定・原価管理を行う必要があります。

また、経費の支出超過にも注意が必要です。人件費の高騰・設備投資の減価償却費増加などで、利益を圧迫しないか確認しましょう。無駄な支出を排除し、収支のバランスを保つ経営努力が求められます。

さらに、運転資金の確保にも目を向けましょう。売上の増加に伴い売掛金・在庫が増えれば、支出が先行して手元資金が枯渇するリスクが高くなります。適正な運転資金を維持するための対策が欠かせません。

買掛金の支払い・売掛金の回収にかかる期間を見直す

買掛金の支払い・売掛金の回収にかかる期間を見直すのも、黒字倒産の対策として有効です。多くの企業は仕入れ時に買掛取引を選択し、販売後に売掛金を回収するサイクルを持っています。買掛金の支払いサイクルが短いもしくは売掛金の入金に時間がかかると、手元資金が枯渇し資金繰りが悪化する可能性があります。

手元資金を多く確保するためには買掛金の支払い期間は長く、 売掛金の回収期間は短くするのが理想です。仕入れ代金の支払いよりも先に売上が入金されれば、手元資金が継続的に確保できるためです。

上記のサイクルが崩れると売上の入金前に仕入れ代金の支払いが必要となり、資金ショートに陥りやすくなります。買掛金・売掛金の支払いと回収サイクルのバランスを維持すれば、黒字倒産のリスクを回避できます。

適切な在庫・資産管理

適切な在庫・資産管理も、黒字倒産を防ぐ上で重要です。過剰在庫・遊休資産は管理費用が増大し、キャッシュフローを悪化させます。黒字倒産のリスクを低減するためには、在庫・資産の適正管理が不可欠です。

まず、在庫管理では、需要予測の精度向上・最適な在庫水準の設定が重要となります。細かい販売予測・発注調整で、過剰在庫を未然に防ぎましょう。

一方、保有資産については事業に不要な遊休資産をなるべく処分します。利用されていない土地・建物・設備機器などを早期に売却し、手元資金を確保しましょう。在庫・資産を常に最適な水準に保てば、余計なコストがかからず資金の流出を防げます。

資金調達をすぐに実施できる体制を整える

資金調達をすぐに実施できる体制も整えましょう。経営環境の変化などで、突然資金が必要になるケースもあります。

まずは、取引金融機関との良好な関係を構築しましょう。融資の実績があり、財務データも常に開示していればスムーズな借入が可能となります。経営者・銀行員との対話を密に行い、経営状況・資金ニーズを普段から伝えておくのも大切です。

あわせて、社債の発行・増資ができる準備も整えておきます。資金調達手段を複数確保すれば、融資を断られても他の手段を利用するなど迅速な資金確保が可能です。事前の備えが十分であれば資金需要が生じた際にスムーズな資金調達が可能となり、黒字倒産のリスクを大幅に低減できます。

ファクタリングを活用する

資金調達手段として、ファクタリングの利用もおすすめです。ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却して早期に現金化できるサービスです。

売掛債権を通常のサイクルで回収すると、売上計上から実際の入金まで数ヶ月かかるケースも珍しくありません。入金までの期間が長ければ長いほど、支出が先行してキャッシュフローが悪化します。ファクタリングを活用すれば売上債権を売却した時点ですぐに現金化できるため、手元資金を確保しやすいのがメリットです。

売掛取引を多く行っており、入金までの時間が長く資金繰りが厳しい場合はファクタリングを利用しましょう。ちなみに、ファクタリング会社探しには「ファクタリング会社の口コミ」がおすすめです。

各ファクタリング会社の口コミを掲載した日本最大級の比較サイトで、宣伝広告をあまり行っていない企業も掲載されています。幅広い選択肢から、自社の資金調達条件に合ったファクタリング会社を選べる点がメリットです。

また、簡単な利用条件を入力すれば運営が最適なファクタリング会社をピックアップし、無料一括見積を行ってくれます。手間をかけずに見積をとれるため、資金調達にかかる時間を削減できる点も魅力です。ファクタリング会社選びに悩む場合は「ファクタリング会社の口コミ」を利用しましょう。

おすすめのファクタリング会社5選

ファクタリング会社のおすすめを、以下5選紹介します。

  • ビートレーディング
  • 日本中小企業金融サポート機構
  • QuQuMo(ククモ)
  • ベストファクター
  • アクセルファクター

上記から、希望条件にあったファクタリング会社を選びましょう。

ビートレーディング

種類 ・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング
・診療報酬買取ファクタリング
・注文書買取ファクタリング
買取可能額 下限・上限なし
手数料 2社間ファクタリング:4%~12%
3社間ファクタリング:2%~9%
入金スピード 最短2時間
手続き方法 オンライン・LINE
公式サイト https://betrading.jp/

ビートレーディングは、入金スピードに魅力があるファクタリング会社です。必要書類を過不足なくそろえれば、申し込みから最短2時間で見積金額が入金されます。資金ショートの可能性があり、今すぐ現金を確保したい企業におすすめです。

審査に必要な書類は、売掛債権に関する資料(契約書・請求書など)・通帳コピーの2点のみである点も特徴です。手続きに時間がかからず、本業が忙しい経営者でもスキマ時間で資金調達できます。

契約はオンライン・対面・訪問の3種類に対応している点も魅力です。不明点が多く質問しながら契約したい方は対面など、ニーズに応じて使い分けられます。詳しいサービス内容を知りたい方は「ビートレーディングの口コミ」をチェックしましょう。

日本中小企業金融サポート機構

種類 ・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング
手数料 1.5%~10%
入金スピード 最短即日
買取可能額 上限・下限なし
手続き方法 オンライン・電話・郵送
公式サイト https://chushokigyo-support.or.jp/

日本中小企業金融サポート機構は、一般社団法人として運営されるファクタリング会社です。税務・金融・企業財務の専門的知識・実務経験がある組織に認定される経営革新等支援機関である点が特徴です。ファクタリング以外にも、M&A・助成金申請のサポートなど企業財務を幅広くサポートするサービスを提供しています。

同機構は非営利団体であるため過度な営利追求を行っておらず、手数料が1.5%~と低水準で利用できる点も魅力です。なるべく多くの資金を調達したい方にもおすすめできます。

経営・資金繰りに関する相談を無料で行っているため、ファクタリングを利用しようか悩んでいる方は気軽に問い合わせましょう。実際にサービスを利用したユーザーの口コミが知りたい場合は「日本中小企業金融サポート機構の口コミ」を確認してください。

種類 2社間ファクタリング
手数料 1%~14.8%
入金スピード 最短2時間
買取可能額 下限・上限なし
手続き方法 オンライン
公式サイト https://ququmo.net/

QuQuMo(ククモ)はオンラインでのサービス提供に特化したファクタリング会社です。インターネットで申し込みから契約・入金まですべての手続きを完了できます。スマホ・PCがあれば時間・場所に縛られず、自分の都合に合わせて資金調達が可能です。

売掛債権の買取上限・下限額が設定されていない点も特徴です。高額な設備投資から日々の少額な事業支出まで、幅広い用途での資金調達ができます。

手数料も1%~と低い水準で利用できる点も魅力的です。余計なコストをかけずに資金調達したい方にもおすすめできます。詳しい申し込み手順を知りたい方は「QuQuMo(ククモ)の口コミ」をチェックしましょう。

ベストファクター

種類 ・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング
・注文書ファクタリング
手数料 2%~20%
入金スピード 最短即日
買取可能額 30万円~1億円
手続き方法 オンライン・電話・メール
公式サイト https://bestfactor.jp/

ベストファクターは、注文書ファクタリングに対応したファクタリング会社です。注文書ファクタリングとは、受注段階で発行される注文書を売却して資金化できるサービスです。請求書発行までに時間がかかるが、今すぐ資金を調達したい方におすすめできます。

ホームページには「資金調達シミュレーター」機能が備わっており、簡単な質問に答えるだけでファクタリングの手数料を提示してくれます。自社の売掛債権売却に手数料がいくらかかるか知りたい場合に、活用可能です。

審査通過率は92.25%をほこり、多くの事業者へファクタリングサービスを提供した実績があります。顧客ニーズに合わせた柔軟な審査体制をとっているため、審査に通過するか不安な方も安心して利用可能です。独自の調査情報を知りたい方は「ベストファクターの口コミ」をチェックしましょう。

アクセルファクター

種類 ・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング
手数料 ・2社間:3%~10%
・3社間:1%~8%
入金スピード 最短即日
買取可能額 30万円~1億円
手続き方法 対面・オンライン・郵送
公式サイト https://accelfacter.co.jp/

アクセルファクターは、サポート体制に強みがあるファクタリング会社です。年間相談件数は15,000件にのぼり、多種多様な業界・業種のニーズに応えてきた実績があります。専属担当が問い合わせから契約までマンツーマンで対応するため、ファクタリング利用が初めての方でも安心して利用可能です。

アクセルファクターでは見積と同時に審査結果が出るのが特徴で、すぐに契約・入金手続きができる魅力もあります。申し込み者の5割以上が即日入金できている実績があり、なるべく早急に資金調達したい方におすすめです。他社との比較情報を把握したい方は「アクセルファクターの口コミ」をチェックしてください。

資金繰りを改善させて黒字倒産を未然に防ごう

黒字倒産とは、利益は出ているものの資金繰りの悪化から倒産に至ってしまう現象です。建設業など売上計上と入金タイミングにズレのある業種に多く見られます。黒字倒産を防ぐにはキャッシュフローの管理を徹底し、会計上の利益とは別に現金の動きを注視するのが不可欠です。

収益・支出のバランスを定期的に点検し、過剰在庫・遊休資産は処分して資金を確保しましょう。緊急時の資金調達先も事前に確保しておくと安心です。

一時的な資金需要には、ファクタリングの活用も有効な手段となります。資金繰りを早期に改善させて、黒字倒産を未然に防ぎましょう。