ファクタリングを初めて利用する方の中には、「万が一、取引先が倒産などして売掛金が支払われなかった場合、自社が代わりに債権を買い戻す必要があるのか?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

数年前まで商取引の中心であった手形では、所持人が支払いまたは引受けを拒絶された場合、振出人や裏書人などに対して、買い戻しを請求することができます。

一方のファクタリングは、手形割引とは違って、売掛先が支払不能に陥っても、ファクタリング利用者は債権を買い戻す必要がありません。

これをノンリコース(償還請求権がない)と言います。

今回は償還請求権の有無、ノンリコース・ウィズリコースに関するメリット・デメリットや、ファクタリングがノンリコースである理由について解説します。

ノンリコース・ウィズリコースとは

ノンリコースとウィズリコースどちらを選ぶべき?

償還請求権とは、さかのぼって請求できる権利のことで、金融や不動産の分野でよく使われています。

償還請求権のない契約のことをノンリコース、償還請求権つきの契約のことをウィズリコースと言います。

手形割引の「遡求権」

手形の支払人(約束手形の振出人・為替手形の引受人)は、満期日に手形額面の金額を支払う義務があり、万が一、満期日に手形金を用意できなかった場合は、手形が「不渡り」になります。

手形が不渡りになった場合に、受取人は手形の振出人や裏書人に対して手形金の請求ができ、これを遡求権と言います。

遡求権は償還請求権とも呼ばれるため、手形割引は実質的にウィズリコース契約となります。

不動産分野の「ノンリコースローン」

ノンリコースローンとは、返済の責任範囲を限定する融資方式のことです。

不動産分野では、ノンリコースローンが多く採用されており、非遡及型融資とも呼ばれています。

たとえば、5,000万円の資金を調達するために、不動産評価額が5,000万円の物件を担保に設定したとします。

万が一、債務者が返済不能になってしまった場合、リコースローンとノンリコースローンでは、債務者の返済の責任範囲が異なります。

リコースローンであれば、物件の売却価格やキャッシュフローが5,000万円に満たなかった場合、債務者は5,000万円に満たなかった分の返済義務を負います。

しかし、ノンリコースローンの場合は、担保に設定した物件の売却価格やキャッシュフローの範囲を超えた分について、債務者が支払いを請求されることはありません。

ファクタリングの「ノンリコース」

ファクタリングは企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい、期日前に資金化するサービスです。

日本国内のファクタリングはノンリコースが主流です。

ファクタリング会社に譲渡した売掛債権が、売掛先の倒産等で期日までに支払われず貸し倒れとなった場合、そのリスクは利用者ではなく、ファクタリング会社が負うことになります。

利用者にとっては信用不安のある売掛先の売掛債権をファクタリング会社に売却することで、手数料分を差し引いた分を資金化でき、なおかつ全損リスクも回避できるため、ファクタリングは債権回収のリスクヘッジとしても利用されています。

ノンリコースのメリット

ノンリコースのメリットとは?

ノンリコースの最大のメリットは、リスク負担が限定的であるとか、返済義務を追わずに済むといった、利用者のリスクが低くなることです。

ファクタリングにおいては、取引先の倒産等によって売掛金が支払われなくなる「貸し倒れリスク」を、債権を買い取ったファクタリング会社が負うため、債権回収のリスクヘッジとしても機能しています。

また、償還請求権のあるウィズリコースのファクタリングは、基本的に3社間で契約を結びます。

3社間ファクタリングは取引先の承諾が必須となるため、資金化までに1~2週間ほどの期間を要しますが、ノンリコースの2社間ファクタリングは最短即日で資金化が可能です。

ノンリコースのデメリット

ノンリコースのデメリットとは?

ノンリコースのデメリットは、利用者の支払う手数料が高くなることです。

ファクタリングにおいては、債権の貸し倒れリスクを利用者に代わってファクタリング会社が負うことになるため、相応の手数料を支払わなければなりません。

したがって、ファクタリングの審査では、売掛先の信用力や支払期日までの期間が重視されるのです。

売掛先の信用状況が思わしくなく、債権の貸し倒れリスクが高いと判断されれば、それに応じて手数料も高めに設定されます。

なぜファクタリングはノンリコース契約なのか

ファクタリングと償還請求権の関係について、金融庁のホームページでは、「悪質な業者の例」として、以下のように注意喚起しています。

ファクタリング契約や売掛債権売買契約において、譲受人に償還請求権や買戻請求権が付いている場合、売掛先への通知や承諾の必要がない場合や、債権の売り主が譲受人から売掛債権を回収する業務の委託を受け譲受人に支払う仕組みとなっている場合は、ファクタリングを装ったヤミ金融の可能性がある。

引用:違法な金融業者にご注意!

※太字は筆者追記

ファクタリングは債権を売買する債権売買契約であり、お金を貸し借りする金銭消費貸借契約ではないため、貸金業法には該当せず、貸金業登録も必要ありません。

ファクタリング会社は相応のリスクを負うことを条件として、貸金業者が守るべき利息制限法で定められている「年利20%」以上に相当する手数料でファクタリングを提供することができます。

仮にファクタリングに償還請求権があると、売掛先の支払不能で債権が回収できなかった場合に、利用会社が弁済をしなければなりません。

この場合、ファクタリング会社は貸し倒れリスクを負っていない=手数料相応のリスクを負っていないことになるため、当該契約は債権売買ではなく、売掛債権を担保にした融資と見なされてしまう可能性があります。

当然ながら、貸金業登録を行っていないファクタリング会社は貸付ができないため、貸金業法違反となります。

過去には、ファクタリングを装い、利用者に対して高利の貸付けや債権を買い戻させていた悪質な業者が摘発された事例もあります。

以上のような理由から、ファクタリングはノンリコース契約となっているのです。

なお、銀行やノンバンクは貸金業登録をしているため、リコースファクタリングを提供することができます。

ノンリコース・ファクタリングに関するQ&A

ノンリコース・ファクタリングに関して、よくある質問とその回答をQ&A形式でまとめました。

Q.ノンリコースファクタリングの会計処理について教えて下さい。
A.信用取引で売掛債権が発生すると、借方には「売掛金」、貸方には「売上」を計上します。その後、売掛先から入金があったら、借方には「現金(または普通預金)」、貸方には「売掛金」を計上します。売掛先からの入金前にノンリコースファクタリングを契約した場合、借方には「未収入金」、貸方には「売掛金」を計上します。さらに、ファクタリング会社から入金があった際には、借方を「現金(または普通預金)」「売上債権売却損」、貸方を「未収入金」とします。債権譲渡と入金が同日だった場合は、貸方を「売掛金」で計上します。売上債権売却損とは、ファクタリング手数料のことです。
Q.手形割引とファクタリング、リスクの低い資金調達ならどちらを選ぶべきでしょうか?
A.償還請求権のないファクタリングのほうが、利用者の負うリスクは低くなります。手形割引は審査に時間がかかり、なおかつ遡求権があるため、利用者のリスクは高めです。ただし、手形を利用して資金調達をしたいと考えるのであれば、満期日を待つよりも、手形割引を活用したほうが良いでしょう。
Q.ファクタリング会社のリスクが低いウィズリコース・ファクタリングでも、審査に落ちることはありますか?
A.売掛先の信用力が低いと判断されれば、ウィズリコースでも審査に落ちる可能性はあります。そもそも、ウィズリコースファクタリングを提供しているファクタリング会社は銀行系列の会社が多く、審査もプロパー融資並みに厳しくなっています。

ノンリコースのファクタリングで貸し倒れリスクを抑える

日本国内で主流のファクタリングはノンリコースで、利用者の貸し倒れリスクが抑えられるという最大のメリットがあります。

一方で、手数料は高めに設定されており、ノンリコースの2社間ファクタリングは、譲渡する売掛債権の額面に対して10~20%の手数料がかかります。

ファクタリングの利用にあたっては、資金繰り改善に効果があるかを見極めた上で、手数料を低めに抑えられるファクタリング会社を選びましょう。