ファクタリングは合法?違法?
ファクタリングは民法で認められた債権譲渡契約であり、合法な資金調達方法のため安心かつ安全に利用できます。
ファクタリングが合法とされるのは、民法466条1項に規定された売掛債権を売買できる「債権譲渡契約」が根拠です。債権譲渡契約は金銭の賃借ではなく債権の売買であるため、ファクタリング業者は貸金業法の規制を受けません。
現在はかなり少なくなっていますが、一部でファクタリングを装った違法な貸付を行う悪質な業者も存在するため注意が必要です。金融庁も偽装ファクタリングの注意喚起をしており、貸金業登録を受けていない業者が実質的な貸付を行うのは違法となります。
合法性を判断する重要なポイントは、ファクタリングサービスが売掛債権の回収リスクを負っているかどうかです。売掛先が倒産しても利用者に買い戻し義務のない償還請求権なしの契約であれば、合法的なファクタリングだと判断できます。
ファクタリングは中小企業の資金調達手段として経済産業省も推奨しており、適切に利用すれば違法性はありません。
参考:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」,e-Gov法令検索「民法」,中小企業庁「企業取引研究会(第5回)配布資料」
ファクタリングが合法だとする法律的な根拠
ファクタリングでの売掛債権の売買が合法である法律的な根拠は、民法第466条「債権の譲渡性」に基づいています。
民法第466条では売掛債権を含む債権の譲渡は、以下のように明記されています。
債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
引用:e-Gov法令検索「民法」
また、ファクタリングでは、民法第466条にくわえて民法第555条「売買」の以下の条文が適用されます。
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
引用:e-Gov法令検索「民法」
3社間ファクタリングでは、債権譲渡の通知や承諾を定めた民法第467条「債権譲渡の対抗要件」も関係します。
ファクタリングは金銭消費貸借契約ではなく、債権の売買契約であるため、貸金業法や利息制限法の規制対象外となります。
ファクタリングが違法とされた判例
ファクタリングが違法と判断された代表的な判例として、大阪地裁による平成29年3月3日判決があります。「業者が債務者の不払いリスクを負っていない」「債権額と無関係にお金がやり取りされていた」などから、金銭消費貸借契約と判断されました。
120万円の売掛債権を100万円で買取し、うち60万円を先払い、残り40万円は債権回収後に支払う契約でした。大阪地裁は業者が実質的にリスクを負っておらず、貸金業法と利息制限法が適用されると判断して過払い金の返還を命じたのです。
東京高裁令和3年7月1日判決では売掛先が弁済しなかった場合、利用者が債権額以上の金額を業者に支払う契約でした。そのため、業者が売掛債権の不払いリスクを負担していないとして、貸金業法上の貸付にあたると判断されたのです。
また、名古屋地裁の令和3年7月16日判決では、利用者は売掛先の財務状況を担保しないと規定はされていました。しかし、支払いサイトの短さなどから売掛先の不履行の可能性が極めて低いため、貸金業法上の貸付にあたると判断されました。
給与ファクタリングについては、令和5年2月20日の最高裁判決で貸金業に該当するとの判決がくだされています。労働基準法で給与は労働者へ直接支払う必要があり、3社間ファクタリングが成立せず、実質的に貸付だと認定されたのです。
ほかに、平成29年1月には大阪府警が偽装ファクタリング業者を摘発し、経営者が貸金業法違反と出資法違反で逮捕されています。業者は高利貸しを行っており、ファクタリングを装ったヤミ金だったのが逮捕の理由です。
参照:大阪地方裁判所「平成26(ワ)11,716債務不存在確認等請求事件(本訴),受取物引渡請求事件(反訴)平成29年3月3日判決」,愛知県弁護士会「消費者問題速報」,金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」,日本司法書士会連合会「給与ファクタリングを貸金業法等の違反とした最高裁判決を受けての会長声明」,弁護士法人M&A総合法律事務所ファクタリング対策サイト「債権買い取り装い高利貸し!大阪府警、東京の2業者8人を逮捕」
そもそもファクタリングとは?
ファクタリングとは、事業者が保有する売掛債権をファクタリングサービスに売却して現金化する資金調達方法です。
事業者間では商品やサービスの販売後に代金を支払う掛け取引が一般的で、売掛債権の回収に30日~60日ほどかかります。売掛債権の売却によって、支払い期日前に現金を受け取れるのがファクタリングの大きな特徴です。
ファクタリングを利用すれば、手元資金が心もとない状況や急な支払いにも対応し、資金繰りの改善が可能です。また、ファクタリングは売掛債権の売却であり、銀行融資やビジネスローンなどの借入とは異なり負債が増えません。
2社間ファクタリング・3社間ファクタリング
ファクタリングには、契約に関与する当事者の数によって2社間ファクタリング・3社間ファクタリングの2種類があります。2社間ファクタリング・3社間ファクタリングの違いについては、以下の表にまとめました。
ファクタリング形態 |
特徴 |
メリット |
デメリット |
2社間ファクタリング |
- 利用者・ファクタリング会社で契約を締結
- 売掛金を利用者が回収し、ファクタリング会社に入金
|
- 最短即日で資金調達できる
- 売掛先に利用を知られない
|
|
3社間ファクタリング |
- 利用者・ファクタリング会社・売掛先で契約を締結
- 売掛先が直接ファクタリング会社に入金
|
|
|
「売掛先に利用を知られたくない」「スピーディーに資金調達をしたい」等の場合は、2社間ファクタリングの利用がおすすめです。一方、手数料がリーズナブルで資金繰りの改善効果が高いのは3社間ファクタリングとなります。
合法なファクタリングの手数料相場
健全なファクタリングの手数料相場について、以下の表にまとめました。
ファクタリングの種類 |
手数料の相場 |
2社間ファクタリング(面談) |
10%~20% |
2社間ファクタリング(オンライン) |
2%~12% |
3社間ファクタリング |
1%~9% |
2社間ファクタリングの手数料が高めに設定されているのは、売掛金の回収が利用者を経由するため、着服リスクがあるからです。しかし、近年注目されているオンラインファクタリングなら、3社間ファクタリングと同水準の手数料で利用できます。
オンラインファクタリングの手数料が安めに設定されているのは、AI審査やオンライン手続きでコストを削減しているためです。一方、3社間ファクタリングは売掛先から直接入金が行われるため、リスクが限定的で手数料がリーズナブルです。
なお、診療報酬ファクタリングのように公的機関が売掛先の場合は、回収が確実に見込めるため手数料が安くなります。売掛先の信用度が低い場合や売掛金の金額が少額の場合には、相場よりも高い手数料が設定される可能性があるため注意しましょう。
ファクタリングの手数料を金利換算した資金調達コスト
ファクタリングの手数料を金利に換算すると、ほかの資金調達手段とコストを明確に比較できます。ファクタリングの手数料を金利換算するための計算式は、以下のとおりです。
12か月÷支払いサイト×手数料率=年利換算相当
たとえば、手数料が10%で支払いサイトが2か月の場合、年利換算では以下のようになります。
12か月÷2か月(支払いサイト)×10%(手数料率)=60%(年利換算)
ファクタリングは利息制限法の適用を受けないため、手数料に法的上限がなく資金調達コストが高くなりがちです。ただし、ファクタリングは「即日資金調達」「赤字でも利用可」「担保・保証人不要」といった独自のメリットもあります。
緊急性の高い場合にはファクタリングを利用しつつ、ほかの資金調達方法も併用して計画的な財務戦略を立てましょう。
ファクタリングが「違法」「やばい」と誤解される主な理由
ファクタリングが「違法」「やばい」と誤解される主な理由は、以下のとおりです。
- 悪質な業者やヤミ金が存在する
- 免許・登録制度・明確な法規制がない
- 経営圧迫のリスクがある
- 貸金業との混同による誤解が生じやすい
- 利用者による不正行為が存在する
- 給与ファクタリングと混同される
ファクタリングに対する誤解はさまざまな要因から生じているため、正しい情報を知り、安全に利用しましょう。
悪質な業者やヤミ金が存在する
一部には悪質な業者が存在するため、ファクタリング業界全体に対する悪いイメージが形成されているのが課題です。
ファクタリングを装った高金利の貸付を行うヤミ金の存在が確認されており、金融庁も注意喚起を行っています。悪質業者は「偽装ファクタリング」と呼ばれる手法で、ファクタリングと称して実際には違法な貸付を行っています。
たとえば、2016年~2020年にハートフルライフ協会が、ファクタリングを装って中小企業に1億5,000円の貸付をしました。法定金利の8倍~34倍という高金利で契約しており、事件が発覚して逮捕に至りました。ハートフルライフ協会のような悪質業者の摘発によって、ファクタリング自体が「やばい」という誤解が生じています。
参考:朝日新聞「中小企業狙い「ヤミ金」容疑 ファクタリング業者を逮捕」
免許・登録制度・明確な法規制がない
ファクタリングは免許や登録が不要で、明確な法規制がないのが不安を抱かせる要因となっています。
貸金業を開業するためには、財務局や都道府県への登録申請が貸金業法によって義務付けられています。しかし、売掛債権の売買を行うファクタリングは、貸金業法は適用されないため免許や登録は必要ありません。
誰でも簡単に参入できるため、手数料や契約条件は業者によって大きく異なるのが、利用者に不安を抱かせる要因となっています。くわえて、融資は利息制限法により利息の上限が設定されていますが、ファクタリングには手数料などを規制する法律が存在しません。
法規制がなく業者側で自由に条件を設定できる反面、法外な手数料をとる悪質な業者がいるのも事実です。ファクタリング事業者登録の義務付けも将来的に検討されていますが、現段階では規制が不十分な状況です。
経営圧迫のリスクがある
ファクタリングには手数料がかかるため、過度に利用すれば売上が目減りし、経営を圧迫するリスクがあります。そのため、緊急時にのみスポットで計画的に利用し、ほかの資金調達方法との併用も検討が必要です。
たとえば、100万円の売掛債権で手数料率が10%の場合、10万円が差し引かれて90万円しか調達できません。
ファクタリングを繰り返し利用すれば、手数料の分だけ得られる利益は減少し、経営を圧迫する要因となります。可能な限り手数料のリーズナブルなファクタリングサービスを選択し、経営状況を圧迫しないように注意しましょう。
貸金業との混同による誤解が生じやすい
ファクタリングはしばしば貸金業と混同され、誤解が生じて悪いイメージを持たれるケースも見られます。
ファクタリングは売掛債権の売買契約であり、貸付・借入を行う融資とは異なり貸金業法が適用されません。しかし、悪質な業者は融資に該当するサービスを提供しており、「ファクタリング会社=貸金業」との誤解が生じています。
金融庁はファクタリングと謳っていても、貸付と同様の機能を有している契約は貸金業法に抵触すると注意喚起しています。とくに、売掛債権の未回収時に利用者へ弁済を求める償還請求権が入っている場合は貸金業法違反です。
契約のときには償還請求権が入っていないかどうかを慎重に確認し、悪質な業者を利用しないように注意しましょう。
利用者による不正行為が存在する
ファクタリング業界では利用者による不正行為が発覚し、印象を悪くするケースも見られます。
「二重譲渡」「架空債権の譲渡」といった主な不正行為について、以下の表にまとめました。
不正行為の種類 |
詳細 |
二重譲渡 |
すでにファクタリングに利用して売却した売掛債権を、別のファクタリング会社に再度持ち込む行為。詐欺罪や横領罪に該当する犯罪 |
架空債権の譲渡 |
実体のない請求書や決算書を用いて存在しない債権をでっち上げ、資金調達を図る行為。私文書偽造罪や詐欺罪に該当し、2022年3月に1億円を詐取した事件で逮捕例あり |
上記のような不正行為は2社間ファクタリングで発生しやすく、ファクタリング会社が被害を受けるケースも見られます。
参考:朝日新聞「架空の債権売却持ちかけ、ファクタリング業者から1億円詐取した疑い」
給与ファクタリングと混同される
給与ファクタリングと事業者向けファクタリングは異なるサービスですが、混同されて大きな誤解が生じています。
給与ファクタリングとは、労働者がまだ受け取っていない給与を給与債権として売却し、支給日より前に現金化するサービスです。しかし、金融庁は給与ファクタリングが貸金業に該当するとの見解を示しており、貸金業登録していないと違法行為となります。
過去に給与ファクタリングは、「年利換算で数百~千数百%になる手数料を請求」「悪質な取り立て」などで社会問題化しました。2020年7月には給与ファクタリングでの全国初の摘発事例があり、その後も複数の業者が逮捕されています。
給与ファクタリングの違法性や社会問題が報道されると、事業者向けファクタリングも「やばい」という印象を持たれました。
参考:日本経済新聞「給料ファクタリング初摘発 貸金業法違反疑いで業者4人逮捕 大阪府警」
合法のファクタリングサービスと違法業者を見分けるポイント
合法のファクタリングサービスと違法業者を見分けるポイントは、以下のとおりです。
- ウィズリコース契約・ノンリコース契約
- 担保・保証人
- 手数料
- 会社情報の透明性
- 審査なしは危険
契約内容や事業者の実態を慎重に確認し、悪質な業者を避け、安全なファクタリング業者を選びましょう。
ウィズリコース契約・ノンリコース契約
合法なファクタリングを見分けるには、ノンリコース契約であるかどうかを確認するのがポイントです。
ノンリコース契約では償還請求権がなく、売掛先が倒産してもファクタリング利用者は弁済義務を負いません。ファクタリング会社が回収不能リスクをすべて負担するのが、ノンリコース契約の特徴となります。
一方、ウィズリコース契約は償還請求権があり、売掛先の不払いが発生した場合に利用者が弁済義務を負います。ウィズリコース契約は実質的に貸金業にあたり、貸金業登録のない業者の実態はヤミ金と変わらないため注意が必要です。
違法業者は償還請求権ありの契約を提示してくるケースが多いため、契約前に必ず償還請求権の有無を確認しましょう。
担保・保証人
合法なファクタリングサービスでは融資とは異なり、売掛債権の売買契約であるため担保・保証人は一切求められません。また、売掛債権自体が担保の役割を果たし、回収リスクはファクタリング会社が負担します。
そのため、担保や保証人を要求してくる業者は違法である可能性が極めて高く、契約は避けるべきです。たとえば、「小切手・手形を担保とする」「連帯保証人を求めてくる」などは実質的な貸金業であり、ヤミ金だと判断できます。
手数料
ファクタリングの手数料相場は、2社間ファクタリングで10%~20%、3社間ファクタリングで1%~9%程度です。
相場を大幅に超える手数料を提示する業者は、悪質である可能性が高くなるため契約は慎重に行いましょう。また、法外な手数料を求められた場合、経営を圧迫するリスクも大きくなるため慎重に判断する必要があります。
合法なファクタリング業者は、「透明性の高い料金体系」「見積もり段階では明確な手数料」を提示します。そのため、手数料の内訳を詳しく説明しない業者や、保証金・手付金などの追加費用を要求する業者は避けましょう。
会社情報の透明性
健全なファクタリング会社は、所在地・代表者名・連絡先・設立年数などの基本情報を公式サイトに記載しています。「電話番号が携帯のみ」「実在しない所在地が記載されている」などは、信頼性にかけるため利用を避けましょう。
また、「Webサイトが存在しない」「会社情報が不明確」といったケースも違法業者の可能性が高いです。契約前に必ず会社情報を確認し、不審な点があれば実際に所在地を調べたり固定電話に連絡したりして実在性を確認してください。
審査なしは危険
健全なファクタリングサービスでは、売掛債権のリスクを検討するため、必ず審査が実施されています。売掛先の信用力・売掛債権の真正性・二重譲渡リスクの確認など、回収不能リスクを評価するために審査は不可欠です。
審査なしの業者は、「法外な手数料を請求」「融資契約を結ばされる」「ウィズリコース契約を強要」などのリスクがあります。偽装ファクタリングの被害を防ぐためにも、審査なしの甘い言葉に惑わされず健全なファクタリングサービスを選びましょう。
優良なファクタリングサービスの選び方
優良なファクタリングサービスの選び方は、以下のとおりです。
- 手数料の安さ
- 入金スピードの速さ
- 必要書類の少なさ
- 買取可能額の下限・上限
- 口コミ・評判
- 個人事業主への対応
自社の資金調達ニーズや状況を詳細に照らし合わせ、最適なファクタリングサービスを慎重に見極めましょう。
手数料の安さ
ファクタリングサービスを選ぶとき、手数料の安さはもっとも重要な判断基準のひとつです。手数料が低いほど、ファクタリングを利用して得られる資金が多くなり、経営を圧迫せずにすみます。
一般的には3社間ファクタリングのほうが手数料が安いですが、どうしても急ぎならオンラインファクタリングを利用しましょう。オンラインファクタリングなら、2%~12%ほどの手数料で即日資金調達も可能です。
くわえて、手数料を比較するときは下限ではなく上限を確認するようにしてください。「経営状態が悪い」「急ぎの資金調達が必要」といった場合でも、手数料の上限が低ければ安心です。
さらに、手数料を抑えるためには、複数のファクタリングサービスから相見積もりをとるのが大切です。ファクタリングサービスによって手数料体系が異なるため、実際に見積もりを比較すると最適な条件を見つけられます。
入金スピードの速さ
ファクタリングを利用する多くの事業者はすぐに資金調達が必要なため、入金スピードは重要な選択基準です。最短即日入金を実現しているファクタリングサービスも多く、一部では最短数十分~数時間を謳っています。
2社間ファクタリングは売掛先の承諾が不要なため、3社間ファクタリングよりも入金が早い傾向にあります。なお、3社間ファクタリングは1週間~2週間ほどかかるケースが多いため、緊急時の資金調達には向いていません。
即日入金を希望するなら午前中の早い時間に申し込みを行い、14時までに契約を完了させる必要があります。
必要書類の少なさ
事前に準備が必要な書類の少なさは、申し込みから契約までの手間と時間を大きく左右する要素です。一般的に5点前後の書類が必要とされますが、ファクタリングサービスによっては2点~3点ですみます。
ファクタリングで最低限必要とされる書類は、売掛債権を証明する請求書・通帳のコピー・本人確認書類の3点です。書類が少ないファクタリングサービスでは、基本書類のみで審査を受けられるため、準備にかかる時間と労力を大幅に削減できます。
必要書類はファクタリングサービスの公式サイトに記載されている場合も多いため、あらかじめ確認してそろえておきましょう。
買取可能額の下限・上限
買取可能額の下限・上限の額は、自社の取引規模と資金調達ニーズに合致するかを判断する重要な要素です。
個人事業主で少額の資金調達を希望する場合は、下限額が1万円など低く設定されているファクタリングサービスを選びましょう。一方、取引額が大きく高額な資金調達が必要な場合は、上限額が高く設定されている大手ファクタリング会社が適しています。
買取額で上限なしを謳うファクタリング会社もありますが、実際には審査によって買取可能額が決まります。そのため、高額な売掛債権をファクタリングするなら、あらかじめ見積もりをとって確認するのが大切です。
口コミ・評判
口コミ・評判の確認は、ファクタリングサービスの信頼性と実際のサービス品質を判断する有効な手段です。
利用者の口コミでは、手数料の透明性・担当者の対応・入金スピードの実績などが重要な評価ポイントとなります。あまりにネガティブな口コミ・評判が多いファクタリングサービスは、利用候補から外すのが無難です。
なお、口コミ・評判の多い・少ないが、そのままファクタリングサービスの信頼性に直結するわけではありません。気になるファクタリングサービスがあれば、問い合わせたり見積もりを依頼したりして、自身の目で判断しましょう。
個人事業主への対応
法人のみを対象とするファクタリングサービスもあるため、個人事業主は事前に利用対象者を確認しましょう。なお、多くは対象を絞っておらず事業者なら利用できますが、一部には個人事業主向けのファクタリングサービスもあります。
個人事業主向けのファクタリングサービスでは、必要書類が簡素化されており、買取可能額の下限が低いのが特徴です。また、開業直後や取引実績が少ない場合でも柔軟に対応してくれるファクタリングサービスも存在します。
なお、事業形態にかかわらず、ファクタリングに持ち込む売掛債権の売掛先は法人でなければなりません。一般的に個人事業主が売掛先の売掛債権は、大半のファクタリングサービスでは取り扱っていないからです。
ファクタリングを利用するメリット
ファクタリングを利用するメリットは、以下のとおりです。
- 負債が増えない
- 最短即日で資金調達できる
- 自社の信用状況にかかわらず利用できる
- 担保や保証人が必要ない
- 売掛先に知られない
資金調達の有効な選択肢として、ファクタリングの多様な利点を深く理解し、自社の状況にあわせた活用を検討しましょう。
負債が増えない
ファクタリングは売掛債権の売買契約であるため、銀行融資やビジネスローンと異なり負債が増加しません。金融機関からの借入は貸借対照表の負債の部に計上されますが、ファクタリングは売掛債権という資産を売却する契約です。
負債が増えないため企業の財務指標に影響を与えず、今後の銀行融資審査においても有利に働く可能性があります。ただし、ほかの方法より資金調達コストが高くなる傾向にあるため、計画的な利用はかかせません。
最短即日で資金調達できる
ファクタリングは、申し込みから入金までが最短数十分~即日で資金調達ができるサービスです。銀行融資では資金調達まで早くて数週間、遅ければ2か月以上かかるため、ファクタリングのスピードは大きな魅力です。
ファクタリングは必要書類が銀行融資に比べて大幅に少なく、オンライン完結型のサービスなら面談すら求められません。急な支払いや突発的な資金需要が発生したときは、迅速な対応が可能なファクタリングの利用を検討しましょう。
自社の信用状況にかかわらず利用できる
ファクタリングは、自社が赤字決算・債務超過・税金滞納といった状況にあっても資金調達が可能です。ファクタリングの審査の重点は売掛先企業の信用力に置かれており、自社の財務状況は副次的な要素にすぎないからです。
銀行融資では利用者の返済能力が重視されるため、赤字や債務超過があると審査に通りにくくなります。しかし、ファクタリングは売掛債権が期日通りに支払われるかが重視され、売掛先が優良企業であれば審査に通りやすいです。
くわえて、3社間ファクタリングを利用すれば、売掛先からファクタリング会社に直接入金されます。そのため、利用者による売掛金の着服リスクがなく、純粋に売掛先の信用力のみで審査が行われます。
2社間ファクタリングの審査にどうしても通らない場合は、3社間ファクタリングの利用を検討しましょう。
担保や保証人が必要ない
ファクタリングは売掛債権の譲渡による資金調達方法のため、不動産などの担保や連帯保証人の設定が不要です。
担保や保証人が不要という特徴は、「創業間もない」「すでにほかの融資で担保を差し入れている」などのケースで有効です。売掛債権自体が取引の根拠となるため、追加的な保証や担保を用意する負担がなく、スムーズな資金調達が実現できます。
売掛先に知られない
2社間ファクタリングを利用すれば、売掛先にファクタリングを利用した事実を知られず資金調達が実現できます。利用者とファクタリング会社の2者間のみで契約が完結するため、売掛先への通知や承諾取得が不要だからです。
経営状況の悪化などの疑念を持たれるリスクを回避でき、今後の継続取引や信頼関係に悪影響を与えません。売掛先との良好な関係を維持しながら、必要な資金を確保できるのは2社間ファクタリングの大きなメリットです。
ファクタリングを利用するデメリット
ファクタリングを利用するデメリットは、以下のとおりです。
- 手数料が発生する
- 売掛先の信用力に依存する
- 資金調達額が売掛金の範囲内に限定される
- 債権譲渡登記を求められる場合がある
- 長期的な資金繰り改善には向いていない
ファクタリングの潜在的な注意点を十分に把握し、手数料や条件を考慮したうえで、計画的な資金運用を心がけましょう。
手数料が発生する
ファクタリングサービスで資金調達をすると、ほかの資金調達方法より割高な手数料が必ず発生します。手数料は銀行融資の利息と比較して高い水準にあり、繰り返し利用すると売上が目減りして長期的な経営を圧迫するかもしれません。
たとえば、支払いサイトが2か月で手数料が5%としても、年利に換算すると30%という高い水準になります。手数料を抑えたい場合は、3社間ファクタリングやオンラインファクタリングを利用するのがおすすめです。
くわえて、複数のファクタリングサービスに相見積もりをとり、もっとも手数料の安いところを選択しましょう。また、「支払いサイトが短い」「売掛先の信用力が高い」といった売掛債権は、手数料が低く設定される傾向にあります。
売掛先の信用力に依存する
ファクタリングの審査では、利用者の信用力よりも売掛先の支払い能力や経営状態が重視されます。「経営が不安定」「信用力が低い」といった売掛先の場合、ファクタリング会社が売掛債権を回収できないリスクが高いからです。
もし利用者の財務状況が良好であっても、売掛先の信用力が低ければファクタリングを利用できません。また、審査に通ったとしても信用力の低い売掛債権は、高い手数料を設定される可能性があるため注意しましょう。
資金調達額が売掛金の範囲内に限定される
ファクタリングは売掛債権を売却する仕組みのため、調達できる金額は保有している売掛金の額面以下に限定されます。くわえて、ファクタリングサービスを利用した手数料が差し引かれるため、実際の資金調達額は売掛金の額面を下回ります。
売掛債権以上の資金を必要としているなら、融資や金融公庫などファクタリング以外の資金調達方法を検討しましょう。ファクタリングは、大規模な設備投資や事業拡大のための資金調達には不向きだと理解しておくのが大切です。
債権譲渡登記を求められる場合がある
2者間ファクタリングを利用する場合、ファクタリング会社から債権譲渡登記を求められる場合があります。債権譲渡登記とは、ファクタリング会社が二重譲渡のリスクを回避し、法的根拠を確保するために必要な手続きです。
債権譲渡登記には、「7,500円~1万5,000円の登録費用」「数万円~10万円の司法書士の費用」などがかかります。さらに、登記情報は誰でも閲覧可能なため、売掛先にファクタリングの利用が知られるリスクも無視できません。
なお、法人のみ利用が可能となっているため、債権譲渡登記が必要なファクタリングサービスで個人事業主は対象外です。
長期的な資金繰り改善には向いていない
ファクタリングは一時的な資金調達には有効ですが、長期的な資金繰り改善には向いていません。手数料によって売上が目減りするため、頻繁に利用すると経営を圧迫する可能性があります。
資金繰りの根本的な改善には、「売掛金の回収期間の短縮」「支払いサイトの見直し」「コスト削減」などが必要です。ファクタリングは緊急手段として位置づけ、長期的な経営改善策と組み合わせて利用するのが大切です。
合法かつ優良なファクタリングサービス5選
合法かつ優良なファクタリングサービス5選は、以下のとおりです。
- トップ・マネジメント | 業界のパイオニア!実績と信頼の老舗ファクタリング
- ファストファクタリング | 最短2時間入金!圧倒的スピードと低手数料を実現
- 日税ファクタリングサービス | 税務のプロが連携!安心と信頼のファクタリング
- ZIST | 経営改善もサポート!専門家による総合資金調達
- インボイスPay | 最短10分見積!スピードと低手数料を両立する革新的サービス
各社の手数料・入金速度・買取可能額・必要書類などを多角的に比較し、自社に最適なファクタリングサービスを見極めましょう。
トップ・マネジメント | 業界のパイオニア!実績と信頼の老舗ファクタリング

種類 |
・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング
・注文書ファクタリング |
買取可能額 |
・売掛先1社に対しての上限は1億円まで
・買取上限総額は3億円まで |
手数料 |
2社間ファクタリング:3.5%~12.5%
3社間ファクタリング:0.5%~3.5% |
入金スピード |
最短即日 |
手続き方法 |
オンライン・ファックス・LINE |
公式サイト |
https://top-management.co.jp/ |
トップ・マネジメントは2009年創業の老舗で、5万5,000件以上の取引実績を誇る信頼性の高いファクタリング会社です。トップ・マネジメントは2社間ファクタリングの仕組みを考案した企業として知られており、業界のパイオニア的存在です。
手数料は3社間ファクタリングは0.5%~3.5%、2社間ファクタリングは3.5%~12.5%と業界最安水準となっています。累計買取高は100億円を超えており、審査通過率は95%以上というたいへん大きな実績を持っています。さらに、独自の「ゼロファク」を利用すれば、ファクタリング手数料が最大10%割引される特典を受けられるのも魅力です。
また、見積もり書・受注書・発注書だけで資金調達ができる注文書ファクタリングにも対応しています。請求書発行前の段階でも資金調達ができ、よりスピーディーにキャッシュフローの改善が可能です。
参考:株式会社トップ・マネジメント「商品案内 | ファクタリングの株式会社トップ・マネジメント」
ファストファクタリング | 最短2時間入金!圧倒的スピードと低手数料を実現

ファストファクタリングは大阪府に拠点を構え、年間3,000件以上の相談実績と95%以上の高い審査通過率を誇ります。ファストファクタリングの最大の特徴は、最短2時間での入金を実現する圧倒的なスピード対応です。
手数料は業界最安水準の2%からと良心的な設定で、資金繰りに悩んでいる利用者の負担を最小限に抑えています。2社間・3社間ファクタリングに対応し、債権譲渡登記も不要で、取引先に知られずに内密な資金調達が可能です。さらに、2回目以降の取引についてはオンラインで完結できるシステムを導入しており、全国どこからでも利用できます。
くわえて、将来債権ファクタリングでは、定期的な売上が見込める案件については未発生の債権も買取対象です。個人事業主から法人まで幅広く対応し、柔軟な審査基準により他社で断られた案件にも積極的に取り組んでいます。
日税ファクタリングサービス | 税務のプロが連携!安心と信頼のファクタリング

種類 |
・2社間ファクタリング
・注文書ファクタリング
・診療報酬ファクタリング |
買取可能額 |
100万円~1億円 |
手数料 |
0.1%~5% |
入金スピード |
新規利用時:1週間?2週間
継続利用時:最短即日 |
手続き方法 |
オンライン・電話・メール |
公式サイト |
https://www.nbs-nk.com/service/factoring/index.html |
日税ファクタリングサービスは、税理士事務所との連携により提供する安心・安全なファクタリングサービスです。税務のプロフェッショナルが運営にかかわっているため、高い信頼性と透明性を持つサービス体系が特徴です。
日税ファクタリングサービスでは債権譲渡登記は原則として行わず、取引に影響が出るのを避ける配慮がなされています。診療報酬ファクタリングでは手数料が0.1%からと非常に低く、上限も5%のため資金調達コストの軽減が可能です。
資金繰りと経営のどちらにも悩んでいる事業者にとって、日税ファクタリングサービスはおすすめの選択肢のひとつです。
ZIST | 経営改善もサポート!専門家による総合資金調達

種類 |
・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング |
買取可能額 |
30万円~5,000万円以上 |
手数料 |
2社間ファクタリング:5%~15%
3社間ファクタリング:3%~7% |
入金スピード |
最短即日 |
手続き方法 |
電話・ファックス・オンライン |
公式サイト |
https://zist.co.jp/ |
ZISTは企業経営アドバイザーの認定資格者が運営する事業資金調達専門会社で、新規審査通過率は93%以上です。ZISTはファクタリングだけでなく、経営改善サポートに特化した総合的なコンサルティングサービスを提供しています。
手数料は2社間ファクタリングで5%~15%に設定されており、業界平均よりも低く資金調達コストが抑えられます。建設・製造・工業・運送・卸売業などの業種特化型ファクタリングを得意としており、特性を理解した柔軟な対応が可能です。また、新規出張費は無料となっており、他社乗り換えのときには最大5%の手数料割引も受けられます。
ファクタリングにくわえて、公的融資・補助金・助成金申請のサポートも完全成功報酬型で提供しているのも魅力です。経営全般にわたる専門的なアドバイスと、資金調達を組み合わせて利用したい事業者にZISTは最適なサービスです。
インボイスPay | 最短10分見積!スピードと低手数料を両立する革新的サービス

種類 |
・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング |
買取可能額 |
売掛先により変動 |
手数料 |
2.5%~6% |
入金スピード |
最短即日 |
手続き方法 |
オンライン・電話・ファックス・LINE |
公式サイト |
https://smart-hedge.co.jp/ |
インボイスPayは、スマートヘッジ株式会社が運営する「見積もり先行型」の革新的なファクタリングサービスです。従来のファクタリングとは異なり、請求書のみで最短10分という業界最速レベルでの概算見積もりを実現しています。
手数料は実勢で2.5%~6%という業界最安水準を維持しており、2社間・3社間の区別なく同一手数料で利用できます。累計買取金額は100億円を突破し、月額買取額は2億円を超える規模まで成長している人気のファクタリングサービスです。
弁護士ドットコムのクラウドサインを活用した電子契約システムにより、セキュリティ面でも万全の体制を整備しています。債権譲渡登記は設定せず、ノンリコース契約により売掛先の倒産リスクも利用者が負担する必要がありません。
スピードと手数料のリーズナブルさを両立したい事業者にとって、インボイスPayは理想的な資金調達手段のひとつです。
ファクタリングが合法かどうかについてよくある質問
ファクタリングが合法かどうかについてのよくある質問は、以下のとおりです。
- 誰でも通るファクタリングサービスはある?
- ファクタリングで入金が遅れると取り立てされる?
- 違法業者を利用してしまった場合は?弁護士への相談がよい?
- 給料ファクタリングは合法?
- ファクタリングの支払いが困難になった場合、和解できる?
ファクタリングに関する疑問点をひとつずつ解消し、仕組みやリスクについて正しい理解を深め、安全な資金調達を行いましょう。
誰でも通るファクタリングサービスはある?
リスク管理に審査は必要不可欠なため、「誰でも通る」と断言できる合法なファクタリングサービスは存在しません。売掛債権の回収が確実に行われるかを判断するため、利用者や売掛先の信用調査をかかせないのが理由です。
「誰でも通る」「審査不要」などと謳っているのは違法業者の可能性が高く、手数料が法外なケースも報告されています。安全な利用のためには、公式サイトの情報や実際の口コミを確認し、透明性の高いファクタリングサービスを選びましょう。
ファクタリングで入金が遅れると取り立てされる?
ファクタリングで入金が遅れてもいきなり取り立てがはじまるわけではなく、まずは電話やメールによる督促が行われます。
支払い遅延に対して速やかに事情を説明すれば、状況によっては一時的な猶予が得られる可能性もあります。ただし、遅延が続けば遅延損害金が加算され、最終的には訴訟などの法的手続きに発展する可能性が高いです。
また、法的手段のひとつとして債権譲渡通知が送られると、ファクタリングの利用が売掛先に知られて信頼関係に影響します。事業継続に影響をおよぼすリスクを避けるためにも、期日管理と資金繰りには十分な注意が求められます。
違法業者を利用してしまった場合は?弁護士への相談がよい?
違法なファクタリング業者を利用してしまった場合には、迷わず弁護士に相談するのがもっとも効果的な対応です。弁護士は契約を検証し、「必要に応じて内容が無効だと主張」「支払い義務の軽減や差止請求」などを行えるからです。
また、弁護士が介入すると違法業者は強硬な取り立てを控える傾向があり、精神的な負担も軽減されます。違法性のある契約に巻き込まれたと気づいた段階で、証拠となるやり取りや契約書を保管し、速やかに弁護士に相談しましょう。
給料ファクタリングは合法?
給料ファクタリングは現在の日本の法制度では違法とされるケースが多く、利用すべきではありません。
過去の判例で給料ファクタリングは実質的に貸付とみなされ、貸金業法違反に該当すると判断されました。給料ファクタリング業者の多くは貸金業登録を行っておらず、過剰な手数料や違法な取り立てなどのトラブルが相次いでいます。
ファクタリングの支払いが困難になった場合、和解できる?
ファクタリングの支払いが困難になった場合でも、状況によっては弁護士を通じて和解交渉を行えます。
原則として、ファクタリング契約は売掛金の回収に基づいて即時の支払いが義務付けられています。しかし、事情を説明したうえで弁護士が介入すれば、支払いスケジュールの見直しや分割払いになる可能性も高いです。
ファクタリングは合法!違法な悪質業者を避けて賢く資金調達しよう!
ファクタリングは売掛債権の売買であり融資ではないため、貸金業法に規制されない民法に基づく合法的な資金調達手段です。しかし、一部にファクタリングを装い高金利で貸付を行う悪質な業者が存在し、金融庁も注意喚起しています。
売掛先の倒産リスクをファクタリング会社が負う償還請求権なしの契約かどうかが、合法か違法かを見分けるポイントです。なぜなら、過去の判例においてファクタリング会社がリスクを負わない契約は実質的な貸付と判断されたからです。
ファクタリングの仕組みを正しく理解し、複数社から相見積もりをとって信頼できる優良なパートナーを選定しましょう。