ファクタリングは、企業が保有する売掛債権を専門業者に売却し、その買取代金を受け取る資金調達方法です。
借金にならない資金調達方法ですが、銀行融資と比べるとまだまだ認知度が低いと言わざるを得ません。
ファクタリングを利用した経験がない事業者の方にとっては、法律に違反している違法業者と取引してしまわないか不安に思われることもあるでしょう。
ファクタリングを取り巻くさまざまな法律のひとつ「弁護士法」について、一部では「ファクタリングは債権回収会社(サービサー)ではないため、弁護士法に違反するのではないか?」と疑問視する声も聞かれます。
今回は、ファクタリングを弁護士法やサービサー法と照らし合わせ、サービサーとの違いやその正当性について解説します。
ファクタリングとサービサー(債権回収業)の違い
まず、債権回収とは、商品やサービスの代金、貸したお金などの債権を債務者から回収することを指します。
本来であれば、債権回収はお金を請求する権利を持つ債権者が行いますが、弁護士または専門会社に委託することも可能です。
債権回収を業とする専門会社を、サービサー(債権回収会社)と言います。
ファクタリングは債権回収の一種とされていますが、ファクタリングを業とするファクタリング会社と債権回収会社は、似て非なる事業形態の会社です。
ファクタリングとサービサー(債権回収会社)の主な違いを以下にまとめているので、参考にしてみてください。
ファクタリング | サービサー(債権回収会社) | |
利用目的 | 資金調達 | 支払い期日を過ぎた不良債権の処理および現金化 |
利用者 | 中小企業や個人事業主 | 主に金融会社 |
対象の債権 | ファクタリング債権(回収前の売掛債権) | 支払い期日を過ぎた特定金銭債権 |
手数料 | 2社間:10〜20%
3社間:2〜9% |
97〜98%
(買取率は債権額面の2〜3%が目安) |
次章からは、債権回収という業務について、ファクタリング会社と債権回収会社での違いを解説します。
ファクタリング会社の債権回収方法
ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社が買い取り、売掛金の入金日前に早期現金化する資金調達サービスです。
ファクタリング会社は、買い取った売掛債権の金額から手数料を差し引いた金額を、売掛債権を売却した会社に支払います。
売掛金の回収方法は「3社間ファクタリング」と「2社間ファクタリング」でそれぞれ異なります。
3社間ファクタリングでの債権回収
3社間ファクタリングは、納入企業・ファクタリング会社・売掛先の3社間で契約が結ばれる仕組みです。
売掛先への債権譲渡の通知および承諾が必要で、なおかつ売掛金はファクタリング会社が直接売掛先から回収します。
ファクタリング会社が直接売掛先から回収するため、手数料は2~9%と低めに設定されています。
2社間ファクタリングでの債権回収
2社間ファクタリングは、納入企業とファクタリング会社の2社間で契約を結ぶ仕組みです。
3社間ファクタリングと異なり、売掛先はファクタリング取引に一切関与しません。したがって、売掛金の回収は通常通り納入企業が行い、1営業日以内に回収した売掛金をファクタリング会社に入金します。
ファクタリング会社にとっては、売掛金を回収した納入企業がファクタリング会社に支払わず、そのまま使い込んでしまうリスクに備える必要があります。
そのため、2社間ファクタリングの手数料は、3社間ファクタリングよりも高めの10~20%に設定されるのが一般的です。
一方で、2社間ファクタリングであれば、売掛先への通知や承諾が不要となります。売掛先に債権譲渡の事実を知られたくない企業は、手数料が高くても2社間ファクタリングを利用するケースが少なくありません。
サービサーの債権回収方法
サービサー(債権回収会社)とは、債権管理回収を専門に行う業者のことを言います。
サービサーが誕生した経緯と取り扱える債権の種類もあわせてチェックしてみましょう。
サービサーが誕生した経緯
サービサーは、法務大臣の認可を得て債権回収を行っています。以前は、弁護士以外が債権管理回収業務を行うことは弁護士法により禁じられていました。
しかし、1998年10月16日に「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」が制定されたことにより、サービサーも債権管理回収業務を行えるようになりました。
サービサー法は不良債権を処理することで、経済をより活性化させる目的で設置された法律です。法務大臣より認可を受けてサービサーとなるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 資本金5億円以上の株式会社であること
- 暴力団員等の関与がないこと
- 取締役に1名以上の弁護士を置いていること
現在、サービサーの多くは、ノンバンクや銀行といった金融関係を母体に設立されています。
サービサーが取り扱える債権の種類
サービサーは「債権を買い取る」という形で、債権者の債権回収を代行します。サービサーを利用する債権者にとっては「未回収分の債権を確実に資金化できる」という点がメリットです。
サービサー法では、サービサーは「特定金銭債権の管理及び回収を行うことができる」と規定しています。
主な特定金銭債権は、以下の通りです。
- 金融機関等(金融機関の連合会、政府系機関、保険会社、貸金業者、政令で定めるものを含む。)の有する貸付債権
- 金融機関等の有していた貸付債権
- リース・クレジット契約に基づいて生じる金銭債権
- いわゆるファクタリング業者が有する金銭債権(その業務として買い取ったものに限る。)
- 法的倒産手続(破産開始の決定など)中の者が有する金銭債権
このように、サービサーが取り扱う債権は限定されているため、利用できる債権者は金融機関などの一部に限られます。
ファクタリングが弁護士法違反と指摘される理由
ファクタリング会社は法務大臣の認可を受けなくとも、ファクタリングを業として取り扱うことができます。
そんな中で、法務大臣の認可を受けていないファクタリング会社が債権回収業務を行うことは、弁護士法に違反するのではないかと疑問視する声もあります。
弁護士法第72条では、報酬目的で債権回収などの法律事務を行ったり、非弁護士と提携したりすることを禁じているからです。
さらに、弁護士法第73条では、一般的な債権譲渡は認めているものの、商業目的での債権の買取・訴訟・交渉を業務として行うことを禁じています。
弁護士法の72条と73条に照らし合わせると、債権回収業務を業としているサービサーやファクタリング会社は成立しないことになります。
サービサー法によりファクタリングは違法ではない
弁護士法のみを債権回収の法的根拠とすると、サービサーもファクタリング会社も法律違反となってしまいます。
しかし「債権回収業務に関する特別措置法(サービサー法)」では、法務大臣の認定を受けた会社(サービサー等)は、支払い期日を過ぎた特定金銭債権の管理および回収を行うことができると規定されています。
この規定により、サービサーは特定金銭債権を回収できるようになっているのです。
一方のファクタリング会社は、サービサー法に規定されている特定金銭債権は買い取れません。
ただし、債権が回収できないリスクを負担するという条件のもとであれば、ファクタリング債権(売掛債権)に限り、回収および管理業務を行うことが可能です。
ファクタリングを「売掛債権が不良債権化する前に、事業者から買い取ることで資金供給する」という業と捉えれば、特別措置法の理念でもある経済発展を促すための機能を果たしていることになります。
したがって、ファクタリング会社が買い取る債権がファクタリング債権(売掛債権)に限られるのであれば、弁護士法違反とはならないのです。
ファクタリングとサービサーに関するQ&A
ファクタリングとサービサー、または弁護士法やサービサー法について、よくある質問への回答をQ&A形式でまとめました。
- Q.支払期日を過ぎた売掛債権を資金化するなら、ファクタリングとサービサーのどちらを利用すれば良いでしょうか?
- A.ファクタリングは支払期日を過ぎた不良債権を買い取ることができないため、サービサーを利用しましょう。
- Q.売掛債権を不良債権化させないためには、どのような対処法がありますか?
- A.売掛先からの期日通りの支払いが不可能とわかっているのであれば、督促や法的措置を取るよりも、ファクタリングで早期に資金化することをおすすめします。サービサーは不良債権を買い取るため、本来の金額より割安で債権を買い取ります。
- Q.サービサーは個人の債権も回収してくれますか?
- A.サービサーは、個人の貸し借りで発生した債権を回収できません。サービサーが管理・回収できる債権は、サービサー法で定められた特定金銭債権のみです。ただし、例外として、破産申立を行った場合に限り、破産管財人等を通じて取り扱いが可能となります。
>>「特定金銭債権」について詳しく見る
- Q.ファクタリングの取り立てがやばいというのは本当ですか?
- A.消費者金融・ローン会社・銀行などからの借入は「金銭消費貸借契約」と言われ、貸金業法が適用されます。しかしながら、ファクタリングは「債権譲渡契約」なので、貸金業法が適用されません。貸金業法が適用されないファクタリングは、取り立ての規制が厳しくないことから「やばい」と囁かれているのも事実です。とはいえ、基本的には支払い状況を調べたうえで、最悪の場合は督促・訴訟・仮差押に踏み切るなど、順を追って対処されるため安心しましょう。ただ、金融庁からは、一部のファクタリング会社には取り立てがやばい違法業者が潜んでいる可能性があるとの注意喚起も出されています。当サイトで紹介している優良ファクタリング会社を検討し、違法業者の利用は避けるようにしてください。
ファクタリングを利用するときは違法業者に注意
ファクタリングは、サービサー法に照らし合わせて適切に債権回収を行うのであれば、違法行為ではありません。むしろ、経済産業省は借入に代わる新たな資金調達方法として活用を推奨しています。
緊急時の資金調達や資金繰り改善は、サービサーよりもファクタリング会社の得意分野です。
目先の資金繰りは問題なかったとしても、万が一のときにファクタリングで資金調達できるよう、普段から理解を深めておきましょう。
一方で、有利な条件を提示しておきながら債権回収を装って高利で貸し付けたり、手数料相応のリスクを負わなかったりする違法業者の存在も看過できません。
このような弁護士法に違反している業者を利用すると、利用者自身も違法行為に問われてしまう可能性があります。
違法業者を避け、優良業者と取引できるように、ファクタリング会社の手数料相場や取引実績を確認するようにしましょう。
当サイトでは、サービスの質や顧客対応などの部門で優良なファクタリング会社を紹介しています。初めてのファクタリング利用でどの会社を選べば良いかお悩みなら、ぜひ当サイトをご活用ください。