資金繰りに関する専門的な資格として「資金繰り診断士」という資格があります。

資金繰り診断士はまだまだ資格として馴染みの薄い資格ですので「聞いたことがないし、よく分からない」という人も多いのではないでしょうか?

資金繰り診断士は資金繰りを分析するだけでなく、資金調達や経営改善など幅広い分野のサポートを行うことができる資格です。

また、企業経営者が自社の資金繰りのために資格を取得するのもよいでしょう。

資金繰りの専門家である資金繰り診断士について詳しく解説していきます。

 

資金繰り診断士とは?

資金繰り診断士とは、国に商標登録を受けた資格制度です。バランスシートを深く理解し、資金の調達と運用を正しく行うことで、企業の発展に寄与します。 経営者の方、税理士の方、経理担当者の方などが資金繰り改善の方向性を考え、財務上の課題の摘出と、改善策が検討できることを目指します。

資金繰り診断士という資格についてあまり耳にしたことがないという人がほとんどではないでしょうか?

資金繰り診断士とはそもそもどのような資格なのでしょうか?

  • 国に商標登録を受けた資格
  • 資金繰り診断士の役割

まずは資金繰り診断士という資格の概要と、資金繰り診断士の資格を取得するまでの流れについて詳しく解説していきます。

国に商標登録を受けた資格

資金繰り診断士とは「一般社団法人 資金繰り診断士協会」が認定する資格です。

「資金繰り診断士」という資格は国に商標登録を行っているので、この協会しか認定することができない資格です。

ただし、国が行っているのはあくまでも商標登録だけで、国家資格ではないという点には注意しましょう。

一般社団法人 資金繰り診断士教協会の試験をクリアすることで、資金繰り診断士としての資格を取得することが可能です。

資金繰り診断士の役割

一般社団法人 資金繰り診断士協会によると資金繰り診断士の主な役割は以下の3つだとされています。

1.年間を通じて資金繰りに支障が出ないよう、資金調達の金額と時期を決定します。

 

2.資金調達にあたっては、企業のB/Sを考慮し安易な借入にならないよう留意します。多く借りれば資金繰りに問題は起きませんが、それにより企業の体質を甘くしてしまう危険性があります。企業の体質を筋肉質なものにするよう、常にB/Sの改善を意識するようにします。

 

3.企業の資金繰り上の課題を把握し、それを「業務プロセス」の改善まで落とし込み、時には組織や人事面の改善にも取り組みます。決して妥協することなく、企業に「資金」を残すことを第一目的とします。

 

参考:一般社団法人 資金繰り診断士協会|講座概要

簡単に言えば資金繰り診断士の主な役目は以下のようになります。

  1. 1年間を通じて事業者の資金繰りに支障が出ないための「資金調達
  2. 資金調達するとともに、財務状況が悪化しないような「財務体質の改善
  3. 少しでも企業に資金を残すための組織や人事面の「業務プロセスの改善

というのが、資金繰り診断士の主な仕事です。

資金調達や資金繰りに関するアドバイスだけでなく、資金繰りに寄与することができるような財務体質や業務プロセスも改善するというのが、資金繰り診断士の大きな役割の1つになります。

「手元にお金が残るような会社を作りたい」と考える経営者の方は、資金繰り診断士へ相談するとよいでしょう。

資金繰り診断士の取得の流れ

資金繰り診断士になるためには、一般社団法人 資金繰り診断士協会の試験に合格しなければなりません。

主な試験の流れや概要は以下の通りです。

  1. 受験料120,000円を納める
  2. 2日間の講義を受けて、その後に認定試験を行います。
    【1日目】10:00~17:00(講義)
    【2日目】10:00~14:00(講義) 14:10~15:00(試験)
  3. 2週間程度で、郵送にて合否の連絡。合格者にはライセンスカード(認定証)郵送

なお、講義の内容は以下のように多岐にわたります。

  • 資金繰り概論
  • 資金繰り実績の作成・分析
  • 資金繰り診断士として知っておくべき企業の実態
  • 資金繰り予想とB/S予想
  • ワーク(資金繰り予想の穴埋めワーク・資金繰り予想作成)

試験時間は50分、100点満点中70点以上で試験合格となります。

受講料が12万円と比較的高額ですが、資金繰り管理に強くなりたい経営者の方にはおすすめの資格と言えるかもしれません。

資金繰り診断士の主な業務

資金繰り診断士の主な業務としては以下の3つをあげることができます。

  • 資金調達の金額と時期を決定
  • バランスシートに無理がない資金調達
  • 企業に資金を残すための経営改善

資金繰り診断士の主な業務について、詳しく解説していきます。

資金調達の金額と時期を決定

資金繰り診断士は銀行借入などの資金調達の際に、企業にとって最適な資金調達の金額と時期を決定します。

たくさんの金額を資金調達すればするほど、企業の資金繰りは円滑になることは間違いありません。

しかし、それらは借入ですので多く借りることは必ずしも企業にとってよいこととは限らないのも実情です。

資金繰り診断士であれば、その企業にとって必要最低限の資金はいくらなのか客観的に分析し、最適な資金調達額を知ることができます。

また、資金は必要なタイミングに借りるのがベストです。

借入期間が長ければ利息負担は大きくなりますし、かと言って借入のタイミングをギリギリまで後回しにすると必要なタイミングで資金が間に合わない可能性もあります。

資金繰り診断士は、企業にとって最適な資金調達のタイミングについてのアドバイス行ってくれます。

バランスシートに無理がない資金調達

資金調達の際にはバランスシートにとって無理があるかどうかという目線で借入をすることも重要です。

多額の借入を行えば、手元資金が潤沢になり、資金繰りは確かに楽になりますが、借金を多く抱えられば抱えるほど、バランスシートの負債が増えていくので自己資本比率は悪化してしまいます。

また、あまりにも借入金が多い場合には債務超過になってしまう可能性もあります。

借入金は多ければいいというわけではなく、バランスシートも勘案して最適な金額の資金調達を行う必要があるのです。

資金繰り診断士に相談することによって、バランスシート的にも無理のない資金調達をすることができます。

企業に資金を残すための経営改善

また、資金繰り診断士は資金繰りや資金調達に直接的に関わることではなく、企業の体質も資金繰りに強い体制へと作り替えるアドバイスも行っています。

具体的には会社にできる限り資金が残るような経営改善を行うことです。

例えば、営業担当者の評価基準を売上ベースではなく、回収した資金ベースとすることで、少しでも資金ギャップを短くできるような経営改善を行ったり、経費の支払いを法人クレジットカードに一本化することによって現金の流出を抑える方法などというように、資金繰り診断士は会社の構造そのものを資金繰りに強い体質へ作り替えることも業務内容として行っています。

「なぜか手元に資金が残らない」と悩んでいる方は相談してみると解決することができるかもしれません。

資金繰り診断士に相談したいなら

資金繰り診断士に相談したい時にはどこに行けばよいのでしょうか?

「資金繰り診断士に相談したい」と考えたとしても、「資金繰り診断士」として営業活動を行っている人はほとんど存在しません。

そのため、資金繰り診断士の資格を持っている以下のような人に相談する必要があるでしょう。

  • 資金繰り診断士の資格を持つ税理士・会計士
  • 資金繰り診断士の資格を持つ中小企業診断士
  • 資金繰り診断士の資格を持つ金融機関職員

資金繰り診断士に相談したい場合の相談先について詳しく解説していきます。

資金繰り診断士の資格を持つ税理士・会計士

資金繰り診断士に相談したいのであれば、資金繰り診断士の資格を持つ税理士や会計士へ相談するとよいでしょう。

そもそも、税理士と会計士は税務や財務や会計のプロフェッショナルです。

資金繰り診断士の資格を持つ税理士や会計士へ相談することによって税務や財務に加えて資金繰りについても、専門的なアドバイスを受けることができます。

資金繰り診断士の資格を持つ中小企業診断士

資金繰り診断士の資格を持つ中小企業診断士へ相談することでも、資金繰りに関する専門的なアドバイスを受けることができるでしょう。

中小企業診断士とは中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う唯一のコンサルタントとしての国家資格です。

仕入れや販売や労務面などの中小企業全般の経営課題の解決に加えて、資金繰りの問題も解決したい場合には、資金繰り診断士の資格を持つ中小企業診断士へ相談するのがよいでしょう。

資金繰り診断士の資格を持つ金融機関職員

資金繰り診断士の資格を持つ金融機関職員などにも相談することができます。

金融機関は職員のスキルアップのために、職員に対して資金繰り診断士の資格取得を励行しているケースがあります。

取引している金融機関の職員の中に、資金繰り診断士の資格を持っている人がいたら相談してみるとよいでしょう。

金融機関の職員へ相談することによって無料で資金繰りに関するプロのアドバイスを受けることができるのは大きなメリットです。

資金繰り診断士についてよくある質問

資金繰り診断士に年齢制限はありますか?
資金繰り診断士に年齢制限はありません。
上限年齢も下限年齢もありませんので、未成年の方や高齢者の方も講義を受講して試験をクリアすれば誰でも資格を取得することができます。
資金繰り診断士に相談するメリットを教えてください。
資金繰り診断士に相談するメリットは、資金繰りという観点から様々なアドバイスを受けることができるといういう点です。
例えば、税金的や収益的な目線で企業の財務を見たときに、「利益が出ている時に節税のために自動車を購入するのはよい」とされています。
自動車の償却によって経費を増やすことができ、その分税金の節税につながるためです。
しかし、資金繰り的には、自動車代金という高額な資金が流出するこの行為はNGです。
このように、税制面や収益面で正しい行為と、資金繰り的に正しい行為は別になるので、資金繰り目線で専門的なアドバイスを受けることができるのは資金繰り診断士だけの大きなメリットだと言えるでしょう。
資金繰り診断士に相談すれば必ず資金繰りは改善できますか?
資金繰りはあくまでも企業によって規模も、抱えている悩みも異なるので相談すれば必ず解決することができるわけではありません。
しかし、唯一の資金繰りの専門家である資金繰り診断士は、一般的な経営者では持っていない専門的な知識を持っています。
必ず悩みを解決することができるとは限らないものの、企業の資金繰りの状態を大なり小なりは改善することができるでしょう。
資金繰りに悩んでいるのであれば、資金繰り診断士へ気軽に相談してみることをおすすめします。
企業経営者ですが、資金繰り診断士の資格を取得するメリットはあるのでしょうか?
資金繰り診断士としての知識を得ることによって、企業の資金繰りについての全体的な流れ、資金繰りに良い行為、悪い行為、資金繰りのための経営改善など、資金繰りについてお専門的な知識と、収益管理とは異なる視点を手に入れることができるようになります。
企業経営者は「いくら利益が出る」という収益管理ばかりに目を奪われがちになるものですが、企業は赤字で倒産するのではなく資金ショートによって倒産します。
会社を安全に経営していくためにも、経営者が資金繰り診断士へ相談することは大いに意味があるでしょう。
資金繰り診断士の受験料は経費で落とせますか?
会社の社長や従業員が資金繰り診断士の資格を取得する際の受験料は経費になります。
試験や資格にかかる費用は、当該資格が業務の遂行に直接必要または知識の取得や研修を受けるために必要な費用であれば、所得税の計算で必要経費に参入することができます。
一般的に企業経営において資金繰り診断士の資格は必要になると考えられるので、受験料は経費とすることができます。
勘定科目について特に定めはないので、「研修費」や「雑費」などで処理することができます。

資金繰り診断士による専門的提案

資金繰り診断士とは、資金繰りに関する専門的な知識をもった唯一の資金繰り専門の資格です。

資金繰り診断士へ相談することによって以下のような具体的なアドバイスを受けることができます。

  • 資金調達の金額と時期を決定
  • バランスシートに無理がない資金調達
  • 企業に資金を残すための経営改善

資金繰り診断士の資格を持った税理士や会計士や中小企業診断士などの専門家へ相談して、資金繰りに関する専門的なアドバイスを受けるのがよいでしょう。

また、経営者の方も資金繰り診断士の資格を取得することは企業経営に必ずプラスになるので、資格の取得を目指してみるのもよいでしょう。