売掛債権を早期に資金化ができるファクタリングは、中小企業者にとって便利な資金調達方法です。

一方で、免許や登録などが必要ないことや、高い手数料が請求されることから、「違法な取引なのではないか?」と疑問視する声も挙がっています。

結論から言うと、ファクタリングは違法ではなく、ファクタリング会社が手数料相応のリスクを負っているのであれば、貸金業登録などがなくても営業できます。

今回は、ファクタリングの契約形態のひとつである「2社間ファクタリング」に焦点を当て、その法的根拠や、悪質業者が行う違法な取引のパターンなどを解説します。

 

2社間ファクタリングの違法性が疑われる要因

上図は、2社間ファクタリングの取引の仕組みを表しています。

2社間ファクタリングは適正な手数料で、法律を遵守して進められれば、違法性が疑われることはありません。

しかし、以下に挙げる性質により、2社間ファクタリングは違法な取引ではないかと疑われる要因となっています。

2社間は手数料が高いから

従来のファクタリングの形である3社間ファクタリングは、債権額面に対して1~5%が手数料の相場です。

2社間ファクタリングは、手数料の相場が10~20%と高めに設定されていることから、違法な手数料ではないかとする声があります。

現状では、ファクタリングの手数料を制限する法律はなく、ファクタリング業者は自由に手数料を設定できます。

ただし、ファクタリングの手数料は、ファクタリング業者が負うリスクに応じて設定されるのが原則です。

2社間ファクタリングは、売掛先が支払不能に陥った場合のデフォルトリスクに加え、その仕組み上、利用者が預かった売掛金を使い込んでしまったことによる未回収リスクも、ファクタリング会社が負うことになります。

つまり、3社間ファクタリングよりもファクタリング会社が負うリスクが大きいため、手数料が高めに設定されているのです。

ただし、2社間ファクタリングの手数料が債権額面の30%を超えている場合や、ファクタリグ業者が手数料相応のリスクを負っていない場合は、違法な2社間ファクタリングの可能性があります。

2社間は売掛先の同意を得ないから

2社間ファクタリングは売掛先の同意がなくとも、利用者とファクタリング会社の合意があれば債権譲渡が可能です。

売掛先の同意がなくとも債権譲渡ができる仕組みは、1998年成立の「債権譲渡登記制度」に依拠しています。

債権譲渡登記とは、債権が譲渡された旨を公示することにより、法律関係・権利関係を第三者に主張できる「第三者対抗要件」を備えることができます。

つまり、ファクタリング会社は売掛先を含む第三者に対し、譲受した債権の権利が自分にあることを知らせる効果があるのです。

債権譲渡登記を行えば、売掛先の同意が不要な2社間ファクタリングが可能になります。

ただし、債権譲渡登記は法人のみに限定されており、個人事業主は登記ができません。

ファクタリング会社の中には、相応の手数料の代わりに、債権譲渡登記を行わない2社間ファクタリング提供しているところもあります。

2社間ファクタリングの法的根拠

弁護士以外に債権回収ができる業者

銀行や信用金庫には銀行法、商工ローン・消費者金融業者には貸金業法といった規制法がありますが、ファクタリングにはそのような法律がありません。

ファクタリングの法的根拠となっているのは民法のみです。

ここでは、2社間ファクタリングの法的根拠について詳しく解説していきます。

民法第466条「債権の譲渡性」

(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

民法 - e-Gov法令検索 - 電子政府の総合窓口(e-Gov)

ファクタリングの法的根拠は、債権は譲り渡すことができるということを定めた、民法第466条の「債権の譲渡性」です。

民法が債権の譲渡性を認めているため、ファクタリングで債権を譲渡して資金化する行為は合法と言うことができます。

民法第555条「売買」

(売買)
第五百五十五条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

民法 - e-Gov法令検索 - 電子政府の総合窓口(e-Gov)

ファクタリングは、債権を売却して、その対価として金銭を受け取ることを約束する債権売買契約です。

債権売買の際に債務者(ファクタリングの場合は売掛先)の同意は不要となっているため、ファクタリング利用者とファクタリング会社の間で合意ができれば、契約が成立します。

違法性が疑われる2社間ファクタリング

2社間ファクタリングが違法になるケース

2社間ファクタリングは売掛先の同意が必要ないため、取引先やクライアントの信用不安を招きたくない中小企業者が利用しています。

しかし、2社間ファクタリングの利便性を悪用して、違法な契約を持ちかける悪質な業者もあります。

ここでは、違法性が疑われる2社間ファクタリングを解説します。

優良業者、悪質な業者を見分ける際の参考になさってください。

ファクタリング業者に償還請求権がある

ファクタリングにおける償還請求権とは、売掛先が支払不能(デフォルト)に陥り、売掛金が支払われなかった場合に、ファクタリング会社が利用者に買い戻しを請求できる権利のことです。

一般的に、ファクタリングは2社間であれ、3社間であれ、ファクタリング業者に償還請求権がありません(ノンリコース契約)。

ファクタリング業者は、万が一のデフォルトリスクを引き受ける代わりに、利息制限法を超える手数料を設定することができるのです。

しかし、通常の2社間ファクタリングの手数料を設定しておきながら、ファクタリング業者に償還請求権がある取引を持ちかける業者が存在しています。

前述の通り、ファクタリングの手数料の妥当性は、ファクタリング業者が相応のリスクを引き受けることにあります。

ファクタリング業者が償還請求権を保持してデフォルトリスクを負わないにもかかわらず、通常の2社間ファクタリングの手数料を設定しているのであれば、手数料の妥当性に欠けると言わざるを得ません。

ファクタリングの償還請求権を巡っては、ファクタリング利用者に債権の買戻義務(ファクタリング業者に償還請求権がある)があり、ファクタリング業者は実質的な貸付を行っていたと判断された判例もあります。

契約時に買取代金を一括で支払わない

ファクタリングでは、ファクタリング業者が買い取った債権の買取代金は、一括で支払われなければなりません。

買取代金の一部をファクタリング業者がいったん預かる形にして、利用者から売掛金が支払われた後、預かっている残りの買取代金を渡すという取引を行った場合、債権保全を目的とした貸付とみなされる可能性があるからです。

ファクタリング業者が貸金業登録を行っていない場合は、出資法や貸金業法に違反します。

債権の一部のみ買取対象としている

通常、売掛債権は登記を行わない限り、分割できるものではありません。

ファクタリング業者が債権の全額を買い取りではなく、一部のみを対象として、残りを売掛金を回収するまで預かる形にした場合は、これも債権保全を目的とした、事実上の貸金と見なされる可能性があります。

担保や保証人を要求する

ファクタリングは金銭消費貸借契約ではないため、担保や保証人が不要です。

しかし、悪質な業者から担保や保証人を要求されたという事例があります。

当然ながら、担保や保証人を要求するということは、売掛債権が回収できなかった場合の債権の保全となるため、実質的な貸付となります。

2社間ファクタリングの合法性・違法性に関するQ&A

2社間ファクタリングの合法性・違法性に関して、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。

Q.貸金業登録をしてファクタリングを提供している会社はあるのですか?
A.銀行の系列・グループの「銀行系ファクタリング会社」は、社会的信用やコンプライアンスを重視して、貸金業登録を行っています。ただし、ファクタリング会社が手数料相応のリスクを負うのであれば、貸金業者登録を行なっていなくても、法的には問題ありません。
Q.利用者がファクタリング会社へ支払う売掛金を使い込んでしまった場合、遅延損害金は発生しますか?
A.ファクタリング会社との契約によります。一般的には、契約違反として本来支払うべき売掛金に遅延損害金が上乗せしたり、口座を差し押さえたりします。遅延損害金の年率は、民法(債権法)で定められた6%が適用されるか、あるいは契約時に利率の取り決めがされていた場合はそれに従います。
Q.売掛金が期日通りに取引先から入金されず、督促状を送っても反応がなかった場合はどうしたらいいですか?
A.内容証明郵便にて、「催告状」を送付しましょう。催告状を内容証明郵便で送ることで、確かに催告をしたという証明になるとともに、売掛金の時効を6ヶ月間中断させる効果があります。催告書でも支払いが実施されない場合は、法的手段として支払督促と少額訴訟で応じましょう。
Q.ファクタリングと手形割引はどのように違うのですか?
A.ファクタリングは債権売買契約であり、債権そのものを譲渡して資金化する取引であり、手形割引は手形を担保とした融資です。また、手形割引には、手形の所持人が振出人以外の裏書人や保証人などに手形金の償還を求める償還請求権(遡求権)がありますが、ファクタリングには償還請求権がありません。手形割引のサービスを提供する業者は、貸金業登録が必要です。

2社間ファクタリングは合法だが悪質業者に注意

2社間ファクタリングは民法を法的根拠として、手数料の妥当性が担保されていれば、利息制限法を超える手数料で、売掛先の同意がなくても債権譲渡が可能です。

一方で、そもそもの手数料が高いことや、売掛先の同意が不要な性質ゆえに、悪質な業者に悪用されやすいというデメリットもあります。

ファクタリング業者を選ぶ際は、手数料や資金調達スピードだけで判断するのではなく、過去の取引実績や口コミ評価なども参考に、信頼できる優良ファクタリング会社を選びましょう。