「ファクタリングをした時の仕訳方法が分からない」「どの勘定科目を使ったらよいのか分からない」

ファクタリングは銀行から借入ができない時や、手元の資金に窮した時などの非常手段として有効です。

しかし、いざファクタリングをした時に会計処理の方法が分からないという人も少なくありません。

ファクタリングの仕分方法について詳しく解説していきます。

 

この記事を監修した専門家
岩瀬 広大

岩瀬 広大

公認会計士試験合格後、経営コンサルティング会社にてグローバル大企業のリストラクチャリングから中小企業の私的・法的整理まで幅広く会社再生業務に従事。その他、上場会社の経営企画業務やM&A業務、監査法人にてIPO業務を経験。ブロガー、アフィリエイターとしての顔も持つ。

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ファクタリングは手形割引に似た取引ではありますが、資産の譲渡としての性質が相対的に強く、債権が手離れするという点で会計処理も異なります。具体的には、(利息としての性質を持つ)「割引料」ではなく「譲渡損」勘定を使用すること、また、譲渡人がリコース義務を負わないため貸借対照表への注記が不要であることです。注記が不要であることから、会計上も信用リスクが顕在化しにくい手法であると言えます。

ファクタリングの仕訳

ファクタリングの仕分け

ファクタリングは売掛債権を売却する方法です。

会計処理を行う時には以下の3段階で仕訳を行なっていく必要があります。

  1. 売上が売掛金で発生した時
  2. ファクタリング契約を締結した時
  3. ファクタリング会社から入金になった時

それぞれの段階での仕分方法についてまずは解説していきます。

①売上を掛け販売した時の仕訳

取引先に1,000万円を掛けで販売した。

借方 金額 貸方 金額
売掛金 1,000万円 売上 1,000万円

会計は発生主義ですので、現金の入金がなくても売上が発生した時点で売上を計上します。

未入金の売上金は「売掛金」として処理します。

これは、通常の会計でも行われていることですので、ほとんどの経理担当者は理解されていることだと思います。

②ファクタリング契約を締結し債権を譲渡した時の仕訳

ファクタリング会社と売掛金1,000万円のファクタリングを行うことを契約し債権を譲渡した。

借方 金額 貸方 金額
未収金 1,000万円 売掛金 1,000万円

未収金とは、営業取引以外で発生した金銭債権のことです。

売掛金は通常の営業取引で発生した金銭債権であるため、売上があった時には「売掛金」という勘定科目が使われます。

しかしファクタリングは通常の営業取引ではないので、「未収金」もしくは「未収入金」という勘定科目を使用します。

ファクタリング契約を締結し債権を譲渡すると、売掛金が通常の営業取引以外で発生した金銭債権に変わるので、未収金という勘定科目に振り替えなければなりません。

③ファクタリング会社から入金になった時の仕訳

ファクタリング会社から手数料5%を差し引かれた代金が振り込まれた。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 950万円 未収金 1,000万円
売上債権譲渡損 50万円

ファクタリングには手数料が発生し、その手数料分を差し引いた金額が口座に振り込まれます。

1,000万円の未収金から手数料が差し引かれ、950万円が口座に入金になるので、普通預金に950万円、手数料分の費用が50万円と按分して仕訳をします。

なお、ファクタリングの手数料は売上債権譲渡損という勘定科目を使用します。

会計ソフトによっては売掛債権売却損や売掛債権譲渡損となることもあります。

ファクタリング手数料は営業外費用ですので、該当する勘定科目がない場合には雑損失として計上しても大きな問題はありません。

④売掛債権が入金になった時の仕訳(2社間のみ)

2社間ファクタリングの場合、売掛債権の期日になると、売掛先企業から通常通りに売掛債権の代金が入金になります。

売掛債権の代金が入金になった際の仕訳は次の通りです。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 1,000万円 預り金 1,000万円

実際には債券はすでにファクタリング会社へ売却しているため、ここではファクタリング会社のお金を預かっているという意味で「預り金」という勘定科目を使用します。

⑤預かっていた代金をファクタリング会社へ支払った(2社間のみ)

2社間ファクタリングを利用すると、売掛先企業から入金があったら、速やかにファクタリング会社へ送金しなければなりません。

ファクタリング会社へ送金する際の仕訳は次の通りです。

借方 金額 貸方 金額
預り金 1,000万円 普通預金 1,000万円

普通預金という資産勘定をマイナスにして、預り金という負債勘定を消去するという仕訳を行い、2社間ファクタリングの全ての会計処理は完了します。

なお、3社間ファクタリングの場合には、売掛債権期日になると、売掛先企業が直接ファクタリング会社へ代金を支払うので、ファクタリング会社から代金が入金になった後の仕訳は不要です。

会計処理は3社間ファクタリングの方が簡単だと言えます。

売上債権譲渡損という勘定科目を使うのはなぜ?

売上債権譲渡損という勘定科目を使うのはなぜ?

ファクタリングの手数料に関しては、売上債権譲渡損という勘定科目を使用することがわかりました。

なぜ、ファクタリングの手数料は払った時には売上債権譲渡損という勘定科目を使うのでしょうか?

資産は本来時価で形状しなければならず、資産の売却時には時価を基準として売買し、損益を計上しなければなりません。

日本公認会計士協会の「金融商品会計に関する実務指針」で金融資産について以下のように記載されています。

「金融資産の消滅時に残存部分又は新たに生じた資産(デリバティブ)について時価を合理的に測定できない場合、その時価はゼロとして譲渡損益を計算し」「金融資産の消滅時に、それに伴って損失の発生する可能性が高い場合には、当該損失を引き当てる必要がある」

売掛金は時価を計算することができない債権ですので、前述の通り時価の算出は不要です。

そして、売掛金の売却に伴って発生した損失つまりファクタリング手数料は「譲渡損」ということになるので、ファクタリングの際に発生する手数料は売上債権譲渡損という勘定科目で処理を行うのです。

なお、売上債権譲渡損は営業外費用になります。

割引料の勘定科目を使うのは間違い?

手形と期日前に銀行などで資金化することを手形割引と言います。

ファクタリングと手形割引には細かい違いはありますが、基本的には資金化する債権が売掛金なのか手形なのかという違いだけですので、ファクタリングと類似した取引と考えて問題ありません。

割引料5%で手形割引を行なった場合の仕訳は以下のようになります。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 950万円 受取手形 1,000万円
割引料 50万円

割引料は営業外費用です。

ファクタリングの際に割引料を使ったとしても、最終的な利益は同じで、勘定科目としては似たような科目ですので、ファクタリングの際に割引料という勘定科目を使用しても大きな問題はないと言われています。

手数料5%で1,000万円のファクタリングをした場合の仕訳は以下のように仕訳ることも可能です。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 950万円 未収金 1,000万円
割引料 50万円

どのような勘定科目を使用しても大きな問題はありませんが、重要なことはファクタリング手数料が営業外費用になる勘定科目で処理をするということです。

売上に消費税が発生した場合の仕訳はどうなる?

売上に消費税が発生した場合の仕訳はどうなる?

売上に消費税が発生した場合、ファクタリング取引の仕訳に影響はあるのでしょうか?

売上発生時の仕訳

商品1,000万円を販売し、消費税とともに1,100万円の請求書を発行した。

借方 金額 貸方 金額
売掛金 1,100万円 売上 1,000万円
仮受消費税 100万円

商品の売上には消費税が発生するので、この取引の請求書には消費税込みの金額が計上されることになります。

ファクタリングは非課税

消費税には税金がかからない非課税取引に該当する取引があり、以下のような取引は非課税取引となっています。

  • 土地の譲渡及び貸付け
  • 有価証券等の譲渡
  • 社会保険医療の給付等
  • 介護保険サービスの提供
  • 社会福祉事業等によるサービスの提供
  • 学校教育
  • 教科用図書の譲渡
  • 住宅の貸付け

ファクタリングは「有価証券の譲渡」に該当するので、ファクタリング取引には消費税はかかりません。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 950万円 未収金 1,000万円
売上債権譲渡損
(非課税)
50万円

なお、ファクタリングを行う時に、消費税込みの請求書をそのまま売却すると以下のようになります。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 1,045万円 未収金 1,100万円
売上債権譲渡損 55万円

取引先から預かっている消費税分の100万円も一緒に売却してしまうことになるので、消費税分だけ手数料が多く取られることになってしまいます。

しかし、預かっている消費税100万円はいずれ国は納める必要があるので、消費税分までファクタリングしてしまうことは得策ではありません。

このような場合には、消費税分の売掛金は分けてファクタリングした方が得策でしょう。

なお、ファクタリングには手数料はかかりませんが、悪徳業者の中には「消費税がかかるから」と言って、手数料を上乗せする業者も存在します。

ファクタリング手数料は非課税ですので、このような悪徳業者と取引をしてはいけません。

ファクタリングの仕訳の際の4つの注意点

ファクタリングの仕訳を行う際には次の4つのポイントに注意してください。

  • ファクタリングは消費税非課税
  • 売掛先企業との契約書の内容
  • 契約から入金日までに決算を挟む
  • 会計ソフトに「売掛債権売却損」がない

ファクタリングを利用する前に確認しておきたい4つのポイントについて詳しく解説していきます。

ファクタリングは消費税非課税

ファクタリングには消費税はかかりません。

そのため、ファクタリング会社は売却代金や手数料に消費税を上乗せして請求することはできません。

ファクタリング会社の中には、意図的に消費税を上乗せして請求を行う業者も存在しますので、そのような業者とは絶対に取引しないようにしてください。

またファクタリングの費用の中には、広告費や事務手数料などが全て含まれていますので、手数料とは別途広告費や事務手数料を請求する業者は違法業者の可能性が高いと判断して取引しないようにしましょう。

売掛先企業との契約書の内容

売掛先企業との契約書に「売掛債権の譲渡を禁止する」という文言が含まれていないかどうか確認しましょう。

譲渡禁止の特約がついている売掛債権でも、今は法的にファクタリングすることは可能です。

しかし、取引先との契約で「譲渡禁止」と決められているにも関わらず、売掛債権を譲渡することは取引先との信頼関係を損ねてしまうことにもなりかねません。

いくら法的に可能だとはいえ、取引先との契約に「売掛債権の譲渡禁止」と定められているのであれば、その売掛債権をファクタリングで資金化することは避けた方がよいでしょう。

売掛債権発生日から入金日までに決算を挟む

売掛債権が発生するということは売上も発生しています。

そのため、売上発生から入金日までの間に決算を挟む場合、売上金が入金になっていなくても、売上にかかる消費税や利益にかかる所得税などの税金は課税されるということです。

期末ギリギリで売上が発生した場合には、税金の支払いのことも考慮して、ファクタリングを利用して早期に資金化するなど、資金繰りも検討した方がよいでしょう。

会計ソフトに「売掛債権売却損」がない

企業が利用している会計ソフトの中には「売掛債権売却損」という勘定科目がない場合があります。

このようなソフトを使用している会社がファクタリングの手数料を会計処理したい場合には、「雑損失」や「支払い手数料」「割引料」などの勘定科目を使用しましょう。

これらの勘定科目を使用しても、会計上は問題ありませんので、売掛債権売却損の勘定科目がない場合は他の勘定科目を使用してください。

ファクタリングがオフバランス化に寄与するってどういうこと?

ファクタリングがオフバランス化に寄与するってどういうこと?

「ファクタリングはオフバランスに寄与する」とよく言われます。

今は、不要な資産も負債もできる限り持たず、貸借対照表はシンプルな方がよいと言われます。

銀行や株主からの評価も上がるなどと言われることもありますが、果たして本当にそうなのでしょうか?

ファクタリングがオフバランス化に寄与するメカニズムを仕訳から考えるとともに、「ファクタリングが企業の評価に寄与」するという意見への注意点について解説していきます。

ファクタリングの方が総資産利益率(ROA)が上がる可能性が高い!

貸借対照表が以下のようになっている企業がファクタリングをした場合と、ファクタリングせずに借入を実行した場合について考えてみましょう。

借方 貸方
現金:500万円 買掛金:800万円
商品:800万円 資本金:500万円

この商品800万円を1,000万円で掛けで売却すると、利益が200万円になり、以下のようになります。

借方 貸方
現金:500万円 買掛金:800万円
売掛金:1,000万円 資本金:500万円
利益剰余金:200万円

ここで、次の仕入れを行うために1,000万円を借りた場合と、売掛金1,000万円をファクタリングした場合の貸借対照表をそれぞれ見ていきましょう。

  • 1,000万円の借入をした場合の貸借対照表
借方 貸方
現金:1,500万円 借入金:1,000万円
売掛金:1,000万円 買掛金:800万円
資本金:500万円
利益剰余金:200万円

ではこの場合の総資産利益率(ROA)を計算してみましょう。

利益200万円/総資産2,500万円=8%

  • 売掛金1,000万円を手数料5%でファクタリングした場合

手数料分の50万円費用が増えるので、利益は150万円へ減少します。

借方 貸方
現金:1,450万円 買掛金:800万円
資本金:500万円
利益剰余金:150万円

総資産利益率(ROA)=利益150万円/総資産1,450万円=10.34%

となります。

このように、ファクタリングを行なった方が、売掛金という資産を圧縮することができるので、少ない資産の中で効率的に利益を出すことができると判断されることがあるのです。

このケースでは、実際にファクタリングによってオフバランス化ができていることが分かりました。

ただし利益は小さくなる点に注意!

ファクタリングによって、確かにオフバランス化が図られてROAの値は向上する可能性はあります。

しかし、前述したようにファクタリングには手数料がかかるので、手数料分だけ利益が少なくなってしまいます。

企業の本質は利益の最大化を図り、自己資本を充実させることにありますので、やはり資金繰りに困っていない状況で、高い手数料を支払ってファクタリングを行うことには合理性はないということができるでしょう。

売掛先企業の仕訳はどうなる?

ここまでは、ファクタリングをした企業の売掛金関係の仕訳を解説してきました。

では、売掛先企業の買掛金の仕訳はどのようになるのでしょうか?

結論的に言えば、2者間ファクタリングでも、3者間ファクタリングでも売掛先企業の買掛金の仕訳は変わりません。

2者間であれば商品購入先に代金を支払い、3者間であればファクタリング会社に支払いますが、売掛先が支払う費用は請求書の金額だけで、その他に費用は発生しません。

ファクタリングによって特別な仕訳が必要になるのは、自社だけだと理解しておきましょう。

保証ファクタリング利用時の仕訳

保証ファクタリングを利用して保証料を支払った場合の仕訳は次の通りです。

①ファクタリング会社と契約して保証料10万円を支払った

借方 金額 貸方 金額
支払手数料 10万円 普通預金 10万円

保証ファクタリングを利用している売掛債権が回収不能になった場合、ファクタリング会社からの入金は「雑収入」として会計処理を行います。

②売掛債権100万円が回収不能になり、ファクタリング会社から回収不能分の100万円が入金になった

借方 金額 貸方 金額
貸倒損失 100万円 売掛債権 100万円
普通預金 100万円 雑収入 100万円

貸し倒れた分は「貸倒損失」として損失分を計上し、ファクタリング会社から保証された代金は雑収入として収入として計上します。

貸し倒れた分は損失として、保証分は収入としてそれぞれ記帳する必要があると理解しておきましょう。

ファクタリングの会計処理に関するよくある質問

会計ソフトに売上債権譲渡損という勘定科目がありません。
割引料や雑損失として計上しても問題ありません。営業外費用として計上できるものであれば勘定科目はそれほど大きな影響はないでしょう。
ファクタリングの手数料は会社の営業損益に影響しますか?
営業損益には影響しません。営業損益は本業の儲けを示す損益ですので、資金調達コストであるファクタリング手数料は本業とは無関係です。ファクタリング手数料は営業外費用ですので経常損益に影響します。
ファクタリングでオフバランス化をすることは粉飾決算にはあたりませんか?
粉飾決算にはあたりません。粉飾決算とは架空の売上を計上するなどして利益を水増しするなどの行為ですが、ファクタリングは実際に売掛債権を売却して資金化を図る行為です。会計上のテクニックというだけで粉飾決算には全くあたりません。

まとめ

ファクタリングの仕訳のまとめです。

  • ファクタリング契約が成立して債権譲渡したら「売掛金」から「未収金」に振り替える
  • ファクタリング手数料は「売上債権譲渡損」という勘定科目を使用する
  • ファクタリング手数料は非課税

ファクタリングの仕訳は、債権譲渡のタイミング、入金になったタイミングそれぞれで処理をしなければなりません。

ファクタリングの手数料は売上債権譲渡損という勘定科目を使用することが一般的ですが、もしも会計ソフトに該当する項目がない場合には「雑費」など営業外利益に該当する勘定科目を使用すればOKです。

ファクタリングの仕訳に対して不明な点があるのであれば税理士などに相談した方が確実です。