ファクタリングとは、期日前に売掛金を売却して資金化することです。最短即日に資金化が叶うサービスとして、近年注目を集めています。
企業の資金繰りに寄与するのは間違いないですが、無料で買い取ってくれるわけではありません。ファクタリングを利用する際には、割引手数料という費用が発生します。
この割引手数料について「割引手数料はいくらなの?」「割引手数料はどうやって決まるの?」と、疑問を持っている人も多いのではないでしょうか?
割引手数料には決まり方がありますし、値引きできるケースもあります。本記事では、そんなファクタリングの割引手数料を詳しく解説していきます。
ファクタリングの割引手数料は業者によって大きく異なるので、本記事を最後まで読み、できる限り少ないコストでファクタリングできるようにしましょう。
ファクタリングの割引手数料とはそもそも何?
ファクタリングの割引手数料とは、売掛債権を売却する際の手間賃やリスクに対する費用と言えます。
また、似たような言葉である「銀行の手形割引」とは異なるので注意が必要です。
まずは、ファクタリングの割引手数料の基礎を理解しておきましょう。
ファクタリング会社に支払う手数料のこと
ファクタリングの割引手数料は、ファクタリング会社に売掛債権を買い取ってもらう際に支払う手数料です。
ファクタリングを利用すると、売掛金の代金から割引手数料を控除した金額が自社へ振り込まれます。
例えば、100万円の売掛金を割引手数料10万円でファクタリングした場合には、差額の90万円が振り込まれます。
割引手数料は、期日前に売掛金を資金化する対価としての意味合いと、売掛金の回収リスクを担保するためのリスクヘッジの意味合いで発生する費用です。
というのも、売掛金は売掛先が倒産するなどの理由でデフォルトするリスクを抱えています。ファクタリングを利用して売掛債権を売却するのは、売掛金の回収リスクまで売却することと同じです。
したがって、ファクタリングの割引手数料はサービスの対価に加え、回収リスクに備えた代金として設定されています。
銀行の手形割引とは異なる
割引手数料と似たような言葉に「手形割引」がありますが、意味は全く異なります。
手形割引とは、期日前の受取手形を担保に銀行から手形額面金額を借りる行為、すなわち銀行融資です。もしも手形が不渡りになったときには、自社が銀行へ手形代金を保証しなければなりません。
ファクタリングと手形割引は「借入ではなく売却」「ファクタリングは回収リスクも売却する」という2点で大きく異なります。
手形割引は銀行側のリスクがファクタリングほど大きくなく、金利は3〜5%程度です。ちなみに、銀行内の格付けが高い会社では、1%台の低金利が適用されることもあります。
割引手数料は利息制限法の対象外
お金を貸し付ける際の上限金利は、利息制限法という法律によって以下のように決まっています。
借入元金 | 上限金利 |
---|---|
10万円未満 | 20.0% |
10万円以上100万円未満 | 18.0% |
100万円以上 | 15.0% |
消費者金融や銀行などの貸金業者がお金を貸し付ける際には、上記の金利を必ず守らなければなりません。
しかし、ファクタリングは融資と異なりますので、一般的に上記の金利よりも高い割引手数料が設定されます。これは、ファクタリングが貸付よりもリスクが高いためです。
ファクタリング業者は、売掛金の回収リスクを補填するための代金として、利息制限法の上限金利よりも高い手数料を設定しているのです。
ファクタリングの割引手数料の相場は?
ファクタリングを検討している人が最も気になるのは「割引手数料の相場」ではないでしょうか?
割引手数料は売掛債権のリスクによって異なりますが、2者間なのか3者間なのかという点でも異なります。
2者間と3者間の割引手数料の相場を紹介するので、しっかりと理解しておきましょう。
2社間ファクタリングの手数料相場は約10〜20%
ファクタリング会社にとって2社間ファクタリングはリスクが高いため、10〜20%程度と手数料は高めに設定されています。
2社間ファクタリングは、売掛金がデフォルトした場合の回収リスクまで売却する「償還請求権なし」で行われることが多いので、どうしても手数料は高くなってしまうのです。
もちろん、売掛先企業のリスクが低い場合などは手数料が10%を切るようなケースもあります。
3社間ファクタリングの手数料相場は約1〜5%
3社間ファクタリングの手数料は約1〜5%と、比較的安く設定されるのが一般的です。
3社間ファクタリングでは、売掛債権がデフォルトした際に自社が売掛金の代金を保証しなければならない「償還請求権あり」で行われることも多く、また、代金が自社を経由しません。
これらの理由から、3社間ファクタリングは2社間ファクタリングよりも手数料が安い傾向にあります。
そして、3社間ファクタリングは、利息制限法の上限金利を守って割引手数料も設定されるケースがほとんどです。
「償還請求権あり」のファクタリングでは、ファクタリング最大の特徴である売掛債権の回収リスクを売却することになりません。
ファクタリング会社は売掛金の回収リスクを負っているわけではないので「償還請求権ありのファクタリングは貸付と同じ」と判断される可能性があります。
貸付と判断された場合には、利息制限法を守らないと過払金が発生してしまうため、3社間ファクタリングでは利息制限法を守った手数料設定となっています。
ファクタリングの割引手数料の相場はどうやって決まる?
ファクタリングの割引手数料の相場が決まる3つのポイントは、以下の通りです。
- 売掛先の与信
- 自社の与信
- 売掛金の支払いサイト
割引手数料は、売掛債権の回収リスクを補填するための費用であると説明しました。その回収リスクは、売掛先・自社の与信や売掛金の支払いサイトによっても異なります。
3つのポイントから、割引手数料の決まり方について詳しく見ていきましょう。
売掛先の与信
ファクタリングの審査で最も重視されるのは、売掛先企業の与信です。
ファクタリングにおいて、ファクタリング会社に売掛金の代金を支払うのは、自社ではなく売掛先企業です。
このため、売掛先企業が大企業や公共団体など信用が高く、支払いに問題がないと思われる企業であれば、手数料は低くなります。
逆に、売掛先が中小企業などで規模が小さく回収リスクが高いのであれば、手数料は高く設定されます。
このように、売掛先の信用は、ファクタリングの審査および割引手数料の設定に大きく影響するのです。
自社に信用がなく銀行などから借入できない企業でも、売掛先の信用さえあればファクタリングによって資金調達できる可能性があります。
自社の与信
2社間ファクタリングにおいては、自社の信用も割引手数料の審査に影響します。
2社間ファクタリングは、売掛先が自社に売掛金を振り込み、自社がファクタリング会社に代金を支払う仕組みです。
自社に売掛債権の代金が経由する2社間ファクタリングでは、自社の経営状態が悪い場合に利用者が代金をファクタリング会社へ支払わず、逃げてしまう可能性があります。
このような回収リスクに備え、3社間ファクタリングよりも2社間ファクタリングの方が、割引手数料の相場を高く設定されています。
2社間ファクタリングにおいては、自社の経営状況も非常に重要になると把握しておきましょう。
売掛金の支払いサイト
売掛金の支払いサイトも割引手数料の審査に影響します。
売掛金回収までの期日が短ければ割引手数料は安くなり、期間が長ければ手数料は高くなる傾向にあります。これは、期間が長い売掛金ほどデフォルトするリスクが高くなるためです。
例えば、期間が1ヶ月先の場合「この経営状態であれば売掛金の支払いに問題ないだろう」と判断できますが、3ヶ月先の場合は支払いサイトが長いので「業況が悪化するかもしれない」などと懸念されます。
割引手数料をできる限り安くしたいなら、支払いサイトの短い売掛債権をファクタリングした方がよいでしょう。
ファクタリングの割引手数料を値切ることはできる?
そもそも、ファクタリングの割引手数料は法律やルールによって上限を定められているわけではありません。
そのため、交渉によって引き下げになる可能性もありますし、優良業者は取引を重ねていくと信用が上がって手数料が下がるケースもあります。
また、最初から割引手数料を下げる方法としては、複数の業者から相見積もりを取るのも効果的です。
ファクタリングの割引手数料を引き下げることができる方法について、詳しく見ていきましょう。
交渉によっては可能
ファクタリングの割引手数料は、交渉によって引き下げが可能な場合もあります。
「手数料をもう少し下げてくれたら契約する」と言えば、契約を取りたいファクタリング会社は手数料を引き下げてくれる可能性があるでしょう。
ファクタリングには手数料を設定する法律がないので、ファクタリング会社が「この手数料で問題ない」と考えれば手数料は下がります。
ただ、大きな会社で手数料の基準が明確に決められているところだと、手数料の値引きを交渉しても手数料は下がらないのが一般的です。
しかし、小規模のファクタリング会社であれば、交渉することで手数料を引き下げてもらえる可能性があります。
取引を重ねると手数料が下がることがある
銀行と同じように、ファクタリング会社も取引を重ねるごとに自社の信用が増していきます。
前述したように、割引手数料の設定時には自社の与信状況も審査基準になるので、同じファクタリング会社と取引を重ねて信用を蓄積していくことで、手数料が下がっていきます。
優良企業の場合、取引を重ねれば手数料が下がるケースが多く、裏を返せば、何回取引しても手数料が下がらないような業者は優良業者とは言えないでしょう。
「〇〇回目の取引ですが手数料は下がらないのですか?」と交渉し、下がらないようであれば他の業者に相談した方がよいかもしれません。
複数の業者から見積もりを取ろう
手数料の引き下げ交渉を有利に進めていくためには、複数の業者から相見積もりを取ることが非常に有効です。
「A社は〇〇%でしたが、御社は手数料が下がらないのですか?」と伝えることで、交渉が有利に運ぶ可能性があります。
ファクタリング会社としても顧客を他社に取られるわけにはいきませんので、手数料を下げてくれるかもしれません。
また、ファクタリング会社の中には違法業者も多数混じっており、違法業者は30%程度の手数料を設定することもあります。
このような場合も、複数の業者から見積もりを取っておけば、違法業者に高額な手数料を支払ってしまう失敗を防ぐことが可能です。
手数料を引き下げたいときも、違法業者に騙されないためにも、複数の業者から見積もりを取るのはファクタリングを利用する際に効果的な方法だと理解しておきましょう。
ファクタリングの割引手数料に消費税は発生する?
結論、割引手数料に消費税は発生しません。消費税がかからない取引を非課税取引と言いますが、非課税取引には以下のようなものがあります。
- 土地の譲渡・貸付
- 有価証券等の譲渡
- 利子・保証料・保険料
- 郵便切手類・印紙・証紙の譲渡
- 行政手数料
- 社会保険医療など
- 介護保険サービス・社会福祉事業など
- 助産にかかる資産の譲渡
- 埋葬料・火葬料
- 身体障がい者用物品の譲渡・貸付など
- 学校の授業料・入学金など
- 教科用図書の譲渡住宅の貸付
ファクタリングの割引手数料は「有価証券等の譲渡」に該当する非課税取引であり、消費税は発生しません。
しかし、中には「消費税が発生する」などと言い、不要に手数料を釣り上げてくる違法業者が存在します。消費税の税額はそれほど高額にならないので、気にせず取引をしてしまう人もいるかもしれません。
ファクタリングの割引手数料に消費税は発生しないため、消費税を請求してくる違法業者とは極力取引しないようにしましょう。
ファクタリングの割引手数料の仕訳は?
ファクタリングの割引手数料の仕訳は、以下の通りです。
【ファクタリングを契約したとき】
借方 | 貸方 |
---|---|
未収金 90万円 売上債権売却損 10万円 |
売掛金 100万円 |
【ファクタリング会社に入金があったとき】
借方 | 貸方 |
---|---|
現金 90万円 | 未収金 90万円 |
このように、ファクタリングは契約したときに「未収金」という勘定科目を使い、ファクタリング会社から代金が入金された場合には「現金」「普通預金」という勘定科目を使用します。
割引手数料の勘定科目は「割引手数料」でも「売上債権売却損」でも構いません。
ファクタリングの割引手数料の相場に関するよくある質問
- ファクタリングの手数料は経費に算入できますか?
- ファクタリングの手数料は全額経費にできます。利益の出ているタイミングであれば節税効果が期待できます。
- ファクタリングには利息はかかりますか?
- ファクタリングは借入ではないので、利息はかかりません。ただし、手数料は必ずかかるため「利息は一切かかりません」とだけ表記している業者には注意しましょう。
- 割引手数料以外にもファクタリングには費用がかかりますか?
- 割引手数料以外の費用は何もかかりません。遅延損害金などを設定している業者も存在しますが、手数料には「期日に遅れた場合」のリスクプレミアムも含まれるべきというのが基本的な考えですので、遅延損害金や事務手数料などが別途かかることはありません。
割引手数料を下げるポイントを押さえて賢くファクタリングしよう
ファクタリングには割引手数料が発生します。
2社間ファクタリングにおける割引手数料は、借入金の利息よりも高くなり、決して小さな負担ではありません。
割引手数料を下げるためには以下のポイントが重要です。
- 大きな企業や官公庁などの売掛債権をファクタリングする
- 期間の短い売掛金をファクタリングする
- 複数の業者から見積もりを取る
- 取引を重ねると手数料が下がる業者を選ぶ
上記4つの条件が揃っている優良企業であれば、割引手数料が安くなる可能性があります。
できる限り少ないコストでファクタリングするためにも、割引手数料の決まり方について理解しておき、ファクタリング会社との交渉を有利に進められるようになりましょう。