ファクタリングとは
ファクタリングとは、企業が保有する売掛金をファクタリング会社に売却し、支払期日前に現金化する資金調達手法です。上記の仕組みにより、取引先からの入金を待たずに売上分の資金を確保できるため、資金繰りの改善に役立ちます。
ファクタリングの契約方式は、取引先の同意が不要な「2社間ファクタリング」と必要な「3社間ファクタリング」にわかれます。また、売掛債権を売却する「買取型」と取引先の支払いを保証する「保証型」の2種類があり、サービス内容が異なる点に注意が必要です。
ファクタリングは借入とは異なり負債として計上されないため、信用情報に悪影響を与えない点が魅力です。特に、中小企業・スタートアップにとってファクタリングは迅速な資金調達手段として注目されています。
ファクタリングにおける売掛債権とは
ファクタリングにおける売掛債権とは、企業が商品・サービスを提供した後に取引先からの代金を回収する権利を指します。なお、ファクタリングの対象となる債権は原則として「確定債権」のみであり、売掛金の金額や支払期日が明確に定まっている必要があります。
取引において未納品・検品未了の状態では債権が確定していないと見なされ、ファクタリングの対象外となる点に注意が必要です。ただし、2020年の民法改正で将来債権の譲渡も可能となり、一部のファクタリング会社では将来的に発生が見込まれる債権の取り扱いも開始しています。
ファクタリングで売掛債権が現金化されるまでの仕組み
ファクタリングで売掛債権が現金化されるまでの仕組みは、サービスの種類と契約方式によって異なります。ファクタリングには主に「買取型」と「保証型」の2種類があり、目的や仕組みが異なるため、注意が必要です。
また、契約形態には「2社間ファクタリング」「3社間ファクタリング」が存在し、取引先の関与の有無・手数料・資金化までのスピードなどに違いがあります。以下では「買取型」と「保証型」および「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の違いを詳しく解説します。
ファクタリングには買取型・保証型の2種類がある
ファクタリングには「買取型」と「保証型」の2つの主要な形態があり、概要は以下の表の通りです。
種類 |
買取型ファクタリング |
保証型ファクタリング |
目的 |
売掛金の早期資金化 |
売掛金の未回収リスクに備える |
仕組み |
売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた金額を受け取る |
売掛先の倒産などで売掛金が回収不能となった場合に、保証金が支払われる |
資金化のタイミング |
契約後、最短即日で資金化が可能 |
売掛先の倒産等が確認された後に保証金が支払われる |
手数料・保証料の相場 |
手数料:2%〜18%程度 |
保証料:1%〜8%程度 |
契約形態 |
2者間(利用者・ファクタリング会社)または3者間(利用者・売掛先・ファクタリング会社) |
通常は2者間(利用者・ファクタリング会社) |
主な利用者 |
資金繰りを改善したい企業や個人事業主 |
売掛先の信用リスクに備えたい企業 |
メリット |
迅速な資金調達が可能で信用情報に影響を与えにくい |
売掛先の倒産リスクから自社を守れる |
デメリット |
手数料が発生し、売掛金の全額を受け取れない場合がある |
売掛先が倒産しなければ保証料が無駄になる可能性がある |
買取型ファクタリングでは企業が保有する売掛債権をファクタリング会社が買取を行い、手数料を差し引いた金額を企業に支払います。資金繰りの改善を目的に利用されるケースが多く、一般的にファクタリングといえば買取型ファクタリングを指すケースがほとんどです。
一方、保証型ファクタリングは取引先が倒産や支払い不能に陥った場合に、ファクタリング会社が売掛金の一定割合を保証する仕組みです。保証型ファクタリングでは、企業は保証料を支払って売掛金の回収リスクを軽減する目的で用いられます。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違い
ファクタリングの契約形態には「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があり、概要は以下の通りです。
契約方式 |
2社間ファクタリング |
3社間ファクタリング |
契約当事者 |
利用者・ファクタリング会社 |
利用者・ファクタリング会社・売掛先 |
売掛先への通知 |
不要 |
必要 |
資金化までのスピード |
速い(最短即日) |
やや時間がかかる(1週間~2週間程度) |
手数料の相場 |
2%〜20%程度 |
1%〜9%程度 |
売掛金の回収方法 |
利用者が売掛金を回収し、ファクタリング会社へ支払う |
売掛先がファクタリング会社へ直接支払う |
債権譲渡登記の必要性 |
求められる場合がある |
通常は不要 |
2社間ファクタリングでは企業とファクタリング会社の間で契約が締結され、取引先には通知されません。そのため、2社間ファクタリングを利用すると取引先との関係性を維持しつつ、迅速な資金調達が可能となります。ただし、ファクタリング会社にとっては回収リスクが高まるため、3社間ファクタリングよりも手数料が高めに設定される傾向があります。
一方、3社間ファクタリングでは企業・ファクタリング会社・取引先の3者間で締結される契約方式です。売掛債権を利用者がファクタリング会社に売却した後は、債権分の金額を取引先がファクタリング会社に直接支払いを行います。3社間ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社が直接回収できるため、リスクが低減されて手数料が低く設定されるケースが多いです。
ファクタリングで売掛債権を売却する4つのメリット
ファクタリングで売掛債権を売却するメリットとして、以下の4つがあげられます。
- 最短即日で資金を調達できる
- 取引先が倒産しても売掛金を弁済する必要がない
- 借入ではないため貸借対照表・信用情報に影響を及ぼさない
- 赤字・税金滞納など信用力が低くても利用できる
上記のメリットに魅力を感じる場合は、積極的にファクタリングを利用しましょう。
最短即日で資金を調達できる
ファクタリングで売掛債権を売却する最大の魅力は、最短で即日に資金を調達できる点です。資金調達でよく利用される銀行融資では、審査や手続きに数週間から数ヶ月を要するケースが一般的です。
しかし、ファクタリングは売掛債権の買取サービスであるため、担保・保証人が不要で審査に時間がかかりません。信用度の高い売掛債権をもっていれば即日で資金調達できる可能性が高まり、急な資金ニーズに対応する際にも有効です。
取引先が倒産しても売掛金を弁済する必要がない
取引先が倒産しても売掛金を弁済する必要がない点は、ファクタリングで売掛債権を売却する大きなメリットです。ファクタリング契約の多くは、「償還請求権なし(ノンリコース)」の形態を採用しています。
償還請求権が設定されていないため、売掛先が倒産した場合でもファクタリング会社が回収リスクを負担し、利用企業は売掛金の返還義務を負いません。そのため、売掛債権を売却した後に「取引先から確実に入金されるか」という心配をする必要がなく、安心して資金調達を行えます。
借入ではないため貸借対照表・信用情報に影響を及ぼさない
ファクタリングは売掛債権の売却による資金調達で借入ではないため、貸借対照表上の負債が増加せず財務状況を健全に保てる点がメリットです。ファクタリングによって得た資金を借入金の返済に充てれば、自己資本比率の向上や総資産利益率の改善も期待できます。
さらに、ファクタリングは借入ではなく信用情報機関に記録されないため、企業の信用情報に影響を与える心配もありません。新規融資を検討している場合でも将来の与信枠に影響を与えず、多額の資金調達の予定があっても安心です。
赤字・税金滞納など信用力が低くても利用できる
ファクタリングの審査では主に売掛先の信用力が重視されるため、赤字決算・税金滞納があっても利用できます。銀行融資では返済能力を厳しくチェックされるため、赤字決算・税金滞納があると審査に通らないケースが一般的です。
また、事業実績も審査項目として厳しく見られることから、開業したばかりの法人・個人事業主も審査に通りづらいです。そのため、ファクタリングは経営状況が悪い、もしくは起業直後の事業者でも利用しやすい資金調達手段として人気を集めています。
ファクタリングで売掛債権を売却する4つのデメリット
ファクタリングで売掛債権を売却するデメリットとして、以下の4つがあげられます。
- 一定の手数料がかかる
- 3社間ファクタリングでは取引先への通知が必要
- 債権譲渡登記が求められるケースがある
- 売掛債権の金額内でしか資金を調達できない
上記のデメリットに関しては、事前に対策を講じておきましょう。
一定の手数料がかかる
ファクタリングを利用する際には、売掛金の金額に応じた手数料が発生する点に注意が必要です。ファクタリングを利用する際の手数料は契約方式などによって異なり、相場は以下の通りです。
ファクタリングの種類 |
手数料の相場 |
2社間ファクタリング(面談) |
10%〜20% |
2社間ファクタリング(オンライン) |
2%〜12% |
3社間ファクタリング |
1%〜9% |
なお、手数料の割合は売掛先の信用力や取引実績、売掛金の回収期間などによって変動します。また、手数料のほかに、契約手数料・登記費用などの諸経費が別途発生する場合もあります。そのため、ファクタリングを利用する際は諸経費も含めた総コストを事前に把握し、必要な資金を確保できるか確認しておきましょう。
3社間ファクタリングでは取引先への通知が必要
3社間ファクタリングは取引先に対して債権譲渡の通知が必要となり、利用を知られる点に注意が必要です。取引先によってはファクタリングの利用を資金繰りの悪化と捉え、企業の信用力に疑念を抱く可能性があります。
経営状況を懸念して取引条件の見直しや取引の縮小を迫られるケースもあり、最悪の場合は取引停止に至るリスクも考えられます。また、3社間ファクタリングでは通知・同意取得のプロセスに時間と手間がかかり、資金調達までに1週間〜2週間程度要するケースも多いです。
債権譲渡登記が求められるケースがある
ファクタリングを利用する際、特に2社間ファクタリングでは債権譲渡登記が求められるケースがあります。債権譲渡登記とは売掛債権の譲渡を法務局に登記し、第三者に対して権利を主張できるようにする手続きです。
債権譲渡登記を行えば、同じ債権が重複して譲渡されるリスクを防げますが、登記には手数料や司法書士への報酬などの費用が発生します。また、登記情報は公開されるため、取引先にファクタリングの利用が知られる可能性がある点もデメリットです。
売掛債権の金額内でしか資金を調達できない
ファクタリングは売掛債権を売却して資金を得る手法であるため、調達できる資金は売掛債権の金額内に限定されます。例えば、100万円の売掛債権を売却する場合、手数料が20万円だと差し引いた金額の80万円しか手元に残りません。
そのため、売掛債権の金額を超える資金調達は不可能であり、大規模な資金需要には対応できない可能性があります。また、売掛債権の金額が少ない場合は手数料の割合が高くなるケースが多く、実際に得られる資金がさらに減少します。
ファクタリングを申し込んでから入金されるまでにかかる時間
ファクタリングの入金までの時間は契約形態や審査状況、提出書類の準備状況などによって異なります。2社間ファクタリングでは利用企業とファクタリング会社の間で契約が行われ、売掛先には通知されません。2社間ファクタリングは審査・契約手続きが比較的簡素であるため、最短で即日、平均して2日〜4日程度で入金されるケースが一般的です。
一方、3社間ファクタリングは利用企業・ファクタリング会社・売掛先の3者間で契約が締結されるため、手続きに時間がかかります。3社間ファクタリングは一般的に、入金まで1週間~2週間ほど時間を要する傾向にあります。
ファクタリングの入金までの時間を短縮するため、必要書類を事前に準備して手続きをスムーズに進めましょう。さらに、即日入金に対応しているファクタリング会社を選べば、より早く資金を調達できます。
ファクタリングを利用する際の流れ・ステップ
ファクタリングを利用する際の流れ・ステップは、一般的に以下の通りです。
- 申し込み手続き
- 必要書類の準備・提出
- 審査
- 契約および入金
上記の手順を参考に、ファクタリングの手続きをスムーズに進めましょう。
①申し込み手続き
ファクタリングの利用を検討する際は、希望のファクタリング会社を選定して申し込み手続きを行ってください。ファクタリングの申し込み方法は、Webフォーム・メール・電話・対面・郵送などファクタリング会社によって異なります。
オンラインでの申し込みは手続きも簡単でスムーズに審査も進むため、急ぎの資金調達を希望する場合に適しています。ファクタリングの申し込み時には、売掛債権の内容や希望する資金調達額、入金希望日などの情報を記載・記入するのが一般的です。なお、申し込み後のキャンセルができない場合もあるため、事前に利用規約・契約条件をよく確認しておきましょう。
②必要書類の準備・提出
申し込み手続きが完了した後、ファクタリング会社から指定された必要書類を準備して提出します。一般的にファクタリングの申し込み手続きで求められる書類には、以下のようなものがあります。
- 売掛債権を証明する請求書・契約書・発注書など
- 売掛先からの入金実績を確認できる通帳のコピー
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
- 商業登記簿謄本・決算書・印鑑証明書(法人の場合)
- 開業届・確定申告書の控え(個人事業主の場合)
上記の書類は、ファクタリング会社が売掛債権の実在性や取引先の信用力を確認するために必要です。必要書類の提出方法は、メール・FAX・郵送・オンラインアップロードなどファクタリング会社によって異なります。
③審査
申し込みと必要書類の提出が完了すると、ファクタリング会社による審査が行われます。具体的には売掛債権の金額・支払期日・取引の履歴などが審査の対象で、審査期間は契約方式によって以下のように異なります。
- 2社間ファクタリング:最短即日
- 3社間ファクタリング:数日から1週間程度
審査結果は電話やメールで通知され、承認された場合は契約手続きへと進みます。
④契約および入金
審査に通過した後は、譲渡する売掛債権の詳細・手数料率・入金日などが記載された契約をファクタリング会社と締結します。法人の場合は、代表者の署名・押印、個人事業主の場合は本人確認書類の提示が求められるケースが一般的です。
契約が完了すると、ファクタリング会社から指定の口座へ、売掛金から手数料を差し引いた金額が入金されます。入金までの期間はファクタリングの契約方式によって以下のように異なります。
- 2社間ファクタリング:即日から数日以内
- 3社間ファクタリング:1週間~2週間程度
入金後は契約に基づき、2社間ファクタリングの場合は利用企業が売掛先から回収してファクタリング会社へ支払います。3社間ファクタリングの場合は、売掛先からの支払いがファクタリング会社へ直接行われる形です。
ファクタリング会社を選ぶ際に確認すべきポイント
ファクタリング会社を選ぶ際に確認すべきポイントとして、以下の7つがあげられます。
- 自社の希望条件に合っているか
- 手数料を含めて必要な資金が調達できるか
- ホームページで会社情報が明記されているか
- 担当者とスムーズにコミュニケーションをとれるか
- 償還請求権なしの契約となっているか
- 説明された内容と契約書の記載内容が一致しているか
- 契約内容に不審な点がないか
ファクタリング会社を選ぶ際は、上記のポイントを確認して条件にあった会社を選びましょう。
自社の希望条件に合っているか
ファクタリング会社を選ぶ際は、まず自社の希望条件を明確にして合致するサービスを提供しているかを確認しましょう。例えば、資金調達のスピードを重視する場合は即日対応可能な会社を選ぶと良いでしょう。
また、取引先にファクタリングの利用を知られたくない場合は2社間ファクタリングを提供している会社を選択するのがおすすめです。ほかにも、手数料の低さ・必要書類の少なさ・オンライン対応など、自社のニーズに合った会社を選ぶとスムーズな資金調達につながります。
手数料を含めて必要な資金が調達できるか
ファクタリングを利用する際には、手数料を差し引いた後の実際の入金額が自社の必要資金に達しているかを確認しましょう。手数料は2社間ファクタリングで2%〜20%、3社間ファクタリングで1%〜9%が相場とされています。
また、ファクタリング会社によって買取可能な売掛債権の金額に下限・上限を設定している場合があります。そのため、希望する資金調達額が利用可能額の範囲内に収まるかを事前に確認し、複数の会社から見積もりを取得して比較検討しましょう。
ホームページで会社情報が明記されているか
ファクタリング会社の信頼性を判断するためには、公式ホームページに会社情報が明確に記載されているかを確認しましょう。具体的には、会社名・所在地・代表者名・設立年数・連絡先などの基本情報が掲載されているかをチェックします。
また、ファクタリング会社のホームページに取引実績や顧客の声、サービス内容の詳細が記載されているかも確認しておきたいポイントです。上記の情報が不十分な場合や連絡先が携帯電話のみである場合などは、会社としてサービスをきちんと運営しているか疑問が生じます。安心してファクタリングのサービス利用を進めるためにも、情報開示がしっかりと行われている会社を選びましょう。
担当者とスムーズにコミュニケーションをとれるか
ファクタリングの手続きでは、担当者との円滑なコミュニケーションが成功の鍵を握ります。ファクタリングの手続きを進める中で申し込みから契約、入金までの各ステップで担当者が丁寧に対応してくれるかを確認しましょう。例えば、契約内容や手数料について数値ベースで明確に説明し、質問に対して誠実に答えてくれる担当者は信頼できます。
また、初めてファクタリングを利用する場合は不明点が多く、担当者が親身になって相談に乗ってくれるかどうかも重要な判断基準です。「担当者の対応が不誠実」「説明が不十分」といった場合はトラブルが生じやすいため、ほかのファクタリング会社を検討しましょう。
償還請求権なしの契約となっているか
ファクタリング契約において、償還請求権なしの契約となっているか確認しましょう。償還請求権がない場合、売掛先からの支払いが滞ったとしても利用者が弁済義務を負う必要はありません。一方、償還請求権があると売掛先が支払い不能となった場合、利用者が売掛金を買い戻す義務が生じます。
また、償還請求権のあるファクタリング契約は実質的に融資と同等と見なされ、サービスを提供する側は貸金業の登録が必要です。そのため、ファクタリング会社が貸金業登録を行わずに償還請求権のあるファクタリングを提供している場合、法律違反となります。ファクタリングの契約前には、必ず償還請求権が記載されていないかを確認した上で契約を結びましょう。
説明された内容と契約書の記載内容が一致しているか
ファクタリング契約では、事前に担当者から受けた説明と契約書の内容が一致しているかを確認しましょう。口頭での説明と契約書の記載に相違がある場合、後々のトラブルの原因となる可能性があるためです。
例えば、手数料の割合や入金スケジュール、償還請求権の有無など利用条件に関する項目は特に注意が必要です。契約書は法的な効力をもつため、説明と異なる内容が記載されていても署名・押印すると記載内容が優先されます。そのため、契約書の全項目を丁寧に読み、不明点や疑問があれば担当者に確認して納得した上で署名しましょう。
契約内容に不審な点がないか
契約書の内容に不審な点がないかも、ファクタリング会社を選ぶ上で確認しておきたいポイントです。特に、以下の内容が契約に含まれている場合はファクタリング会社との間でトラブルが発生する可能性があります。
契約書で確認すべきポイント |
概要 |
手数料が相場よりも著しく高い |
2社間で2%〜20%、3社間で1%〜9%が相場で、大きく上回る場合は注意が必要 |
償還請求権がある |
償還請求権があると売掛先が支払い不能となった際に利用者が弁済義務を負う |
担保や保証人を要求される |
ファクタリングは売掛債権の売買契約で通常は担保・保証人が不要 |
契約書の控えを渡さない |
契約書の控えを利用者に渡すのは当然で「控えを渡さない」「渡すことを渋る」場合は信頼性に疑問が生じる |
上記に該当する場合は契約を見直すか、ほかのファクタリング会社を検討し、不安がある場合は弁護士に相談するのがおすすめです。
ファクタリングを利用した企業の事例
ファクタリングを利用した企業の事例として、以下5つのパターンを紹介します。
上記の事例を参考に、ファクタリングを最大限有効活用して資金繰りを改善しましょう。
医療機関
神奈川県の歯科クリニック院長は、インプラント治療の精度向上を目的に最新の3Dナビゲーションシステムの導入を検討していました。しかし、高額な機器の一括購入には資金が不足しており、銀行融資も難航していた状況です。
そこで、診療報酬債権を活用したファクタリングを利用して約400万円の資金を調達しました。手数料は1%台と低く掛け目も90%と有利な条件で1週間以内に資金化が実現し、最新機器の導入によって治療の質と効率が向上しました。
広告代理店
東京都の広告代理業者はSNSを中心としたマーケティング業務を展開しており、大手クライアントからの案件を多数抱えていました。しかし、広告出稿に伴う費用の前払いが必要で売上の入金前に資金が枯渇する状況が続いていたのです。
そこで、ファクタリングで約4,500万円の売掛債権を手数料約2.45%で早期資金化し、資金繰りを改善しました。結果として、支出に充てられる資金を十分に確保でき、新規案件の受注が可能となって事業の拡大が実現しました。
建設業
太陽光パネルの設置を手掛ける建設業の会社は大規模案件を受注したものの、外注費・資材費などの初期費用が不足していました。しかし、銀行融資では対応が難しかったため、2社間ファクタリングを活用して約1,000万円の資金調達に成功しました。
手数料は12%と多くかかりましたが、迅速な資金調達で外注先への支払いや新規従業員の雇用が可能となったのです。結果として、1年以上にわたる大規模工事を無事に進行させて安定した収益を確保できています。
製造業
ある製造業者は新商品の開発に伴い設備投資が急遽必要となり、既存の銀行融資では追加資金の調達が難しくほかの資金調達手段を模索していました。そこで、売掛債権を活用したファクタリングを検討し、手数料の低さが決め手となってファクタリング会社と契約を締結しました。結果として、500万円の資金を2日と短期間で調達し、迅速に設備投資を実施できたのです。
IT業
兵庫県でIT業を営む会社は大手企業との新規取引に対応するため、5名〜6名のエンジニアを新たに採用する必要がありました。しかし、売上が入金される前に人件費の支払いが発生するため、資金繰りに課題を抱えていました。そこで、2社間ファクタリングを活用して300万円の資金を調達し、必要な人材を確保してスムーズに新規プロジェクトを開始できたのです。
ファクタリングでは「譲渡禁止特約」「将来債権」の取り扱いが変わりつつある
ファクタリングにおける「譲渡禁止特約」「将来債権」の取り扱いは、2020年4月の民法改正により大きく変わりました。以下では、「譲渡禁止特約」「将来債権」の取り扱いについて詳しく解説します。
民法改正で譲渡禁止特約付きの債権の譲渡が可能に
従来、契約に「譲渡禁止特約」がある債権は原則として第三者への譲渡が無効とされていました。しかし、2020年の民法改正で譲渡禁止特約が付された債権であっても譲渡自体は有効とされるようになりました(民法466条2項)。
第464条 2 当事者が債権の譲渡を禁止し、または制限する旨の意思表示をした時であっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
引用:民法|e-Gov 法令検索
本改正で債権譲渡の自由度が増し、特に中小企業が売掛債権を活用して資金調達を行う際の障壁が低くなりました。ただし、「譲受人が譲渡制限特約の存在を知っていた」または「重大な過失により知らなかった」場合には、債務者は債務の履行を拒めます(民法466条3項)。
第464条 3 譲渡制限の意思表示がされたことを知り、または重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
引用:民法|e-Gov 法令検索
民法改正で将来債権の譲渡も認められた
今まで将来発生する予定の債権譲渡については明確な法的規定がなく、判例により認められていました。2020年の民法改正では将来債権の譲渡が明文化され、有効性が法律上明確にされました(民法466条の6第1項)。
第466条の6 債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。
引用:民法|e-Gov 法令検索
将来債権の譲渡においても、確定債権と同様に対抗要件を備えると第三者に対して効力を主張できます。将来債権の譲渡における対抗要件の具備方法としては債務者への通知・承諾、または債権譲渡登記が必要です(民法467条)。
第467条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知または承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
引用:民法|e-Gov 法令検索
本改正により、企業は将来発生する売掛債権を活用して事前に資金調達を行えるようになりました。具体的には、請求書を発行する前の受注段階で提供される発注書を用いてファクタリングを利用できる会社があります。
ファクタリングはやばい?違法性はなく安心して利用できる
ファクタリングは企業が売掛債権を譲渡して資金を調達する合法的な手法であり、適切に利用すれば違法性はありません。しかし、近年では「給与ファクタリング」と称する違法な貸付行為が問題視されているため、注意すべきポイントと相談窓口を詳しく解説します。
賃金を現金化する給与ファクタリングに注意が必要
給与ファクタリングとは個人が勤務先から受け取る予定の給与を債権として業者に譲渡し、現金を受け取る仕組みです。一見すると債権譲渡の形をとっていますが、実態は高金利の貸付で貸金業法に違反する可能性があると金融庁が注意喚起を行っています。
給与ファクタリングは、貸金業法で規定される上限金利を超える利率で提供されるなど悪質なケースが多いです。また、返済が滞ると勤務先や家族に対して強引な取り立てが行われる事例も報告されています。
2023年の最高裁判決では給与ファクタリングが実質的に貸付に該当し、無登録で行うことは違法であると明確にされました。給与ファクタリングを提供する悪質業者はヤミ金融と同様の手口を用いるため、利用しないよう強く注意が呼びかけられています。
参考:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁
ファクタリングに関する国の相談窓口
ファクタリングの利用に際して不安や疑問がある場合、または違法業者とのトラブルに巻き込まれた場合は以下の公的機関に相談しましょう。
機関名 |
金融庁 金融サービス利用者相談室 |
受付時間 |
平日10:00~17:00 |
電話 |
0570-016811(IP電話からは03-5251-6811) |
URL |
https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html |
機関名 |
日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター |
受付時間 |
平日9:00~17:00(土日祝・年末年始を除く) |
電話 |
0570-051-051 |
URL |
https://www.j-fsa.or.jp/personal/contact/consultation_desk.php |
機関名 |
警察相談専用電話 |
電話 |
#9110 |
URL |
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/jiken_jiko/110/110_9110.html |
機関名 |
消費生活相談窓口(消費者ホットライン) |
電話 |
188
※最寄りの消費生活センターにつながる |
URL |
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/ |
上記の窓口ではファクタリングに関するトラブル対応のアドバイスを受けられるため、不安を感じた場合は早めに相談しましょう。
ファクタリングと売掛債権に関するよくある質問
ファクタリングと売掛債権に関するよくある質問として、以下の7つを紹介します。
- 債権譲渡とファクタリングの違いは?
- 売掛債権担保融資とファクタリングの違いは?
- 売掛債権一括信託とファクタリングの違いは?
- ファクタリングでは取り立てが行われる?
- ファクタリングの仕訳方法は?
- ファクタリング会社とは?
- ファクタリングは売掛先が個人でも利用できる?
ファクタリングと売掛債権に関して疑問点がある場合は、上記質問への回答を参考にしてください。
債権譲渡とファクタリングの違いは?
債権譲渡とファクタリングはどちらも債権を第三者に譲渡する手法ですが、目的や仕組みに違いがあります。債権譲渡とは、債務の弁済やリスク回避を目的に売掛債権・貸付債権を第三者に譲渡する行為を指します。一方、ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に売却して手数料を差し引いた金額を受け取る資金調達方法です。
債権譲渡では売掛債権だけでなく貸付債権も対象となり、譲渡先が債務者から直接回収を行います。また、ファクタリングは2者間・3者間契約が選べるのに対し、債権譲渡は通常、譲渡人・譲受人・債務者の3者間で行われます。
売掛債権担保融資とファクタリングの違いは?
売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングは、いずれも売掛債権を活用した資金調達方法ですが仕組みやリスクの負担に違いがあります。売掛債権担保融資は売掛債権を担保に金融機関から融資を受ける方法で、借入金として返済義務が生じます。
一方、ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に売却して手数料を差し引いた金額を受け取るため、返済義務はありません。また、売掛債権担保融資では利用者の信用力が重視されるのに対し、ファクタリングでは売掛先の信用力が審査の対象となります。
売掛債権一括信託とファクタリングの違いは?
売掛債権一括信託とファクタリングは、いずれも売掛債権を活用した資金調達方法ですが、契約形態・関与する当事者・リスクの負担に違いがあります。
売掛債権一括信託は債権者・債務者・信託銀行の3者間で契約を結び、売掛債権を信託後に受益権を譲渡して資金を調達します。売掛債権一括信託では債務者の信用力が重視され、一般的に審査が厳しくなる傾向が強く償還請求権ありの契約が一般的です。
一方、ファクタリングは債権者とファクタリング会社で契約する2社間ファクタリングがあり、売掛債権を売却して資金を調達できます。ファクタリングでは売掛先の信用力が審査の対象で、最短即日と迅速に資金化が可能です。また、ファクタリングは原則として償還請求権がないため、売掛先が倒産しても利用者が弁済義務を負う必要はありません。
ファクタリングでは取り立てが行われる?
正規のファクタリング会社との契約においては、違法な取り立てが行われるケースはありません。しかし、過去にはファクタリングを装った違法な貸付行為が問題となった事例もあります。例えば、給与ファクタリングと称して高金利の貸付を行い、強引な取り立てを行った業者が摘発されたケースが報告されています。
上記のような違法業者は貸金業の登録を受けずに営業しており、法的に問題を抱えているため利用するリスクが高いです。契約前にホームページで業者の信頼性を確認し、不審な点がある場合は金融庁などの相談窓口に問い合わせましょう。
ファクタリングの仕訳方法は?
ファクタリングの会計処理は取引の種類・契約形態によって異なりますが、以下では一般的な買取型ファクタリングの仕訳方法を示します。まず、商品・サービスを提供して売掛金が発生した際の仕訳は以下の通りです。
次に、売掛金をファクタリング会社に譲渡する契約を締結した際は、売掛金を未収入金に振り替えます。
最後に、ファクタリング会社から手数料を差し引いた金額が入金された際の仕訳は以下の通りです。
借方 |
貸方 |
普通預金 |
XXX円 |
未収入金 |
XXX円 |
売上債権売却損 |
XXX円 |
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|
ファクタリング会社に支払う手数料は、基本的に売上債権売却損として計上します。会計ソフトによっては売上債権売却損の科目が存在しない場合もありますが、支払手数料・雑損失などの科目で代用が可能です。
ファクタリング会社とは?
ファクタリング会社とは企業が保有する売掛債権の買取を行い、早期に現金化するファクタリングサービスを提供する専門業者です。主に中小企業や個人事業主が利用し、資金繰りの改善や急な資金需要に対応する手段として活用されています。
ファクタリング会社の中には「相場を大きく上回る手数料を請求する」「適切な手続きを踏まない」といった業者も存在します。そのため、ファクタリングを利用する際はホームページで会社情報が記載されているなど信頼性の高い会社を選ぶようにしましょう。
ファクタリングは売掛先が個人でも利用できる?
一般的に、ファクタリングで扱う売掛債権は売掛先が法人のものを対象としており、個人の場合は利用が難しいです。売掛先が個人の売掛債権をファクタリングで利用できない主な理由は、以下の通りです。
- 個人の信用情報は法人に比べて取得が難しく、ファクタリング会社がリスク評価を行いにくい
- 個人の場合は事業の実態や継続性を確認するのが難しく、債権の回収リスクが高まる
そのため、売掛先が個人の売掛債権を受け付けていないファクタリング会社がほとんどです。ファクタリングを利用する際は、法人の売掛債権で申し込み手続きを行いましょう。
ファクタリングで売掛債権を売却して継続的な資金繰り改善を図ろう
ファクタリングは、売掛債権を現金化して早期に資金を確保できる有効な手段です。「信用情報に影響しない」「赤字企業でも利用可能」「将来債権・譲渡禁止特約付き債権も対象」など、多くの利点があります。
ただし、給与ファクタリングのような違法業者には注意が必要で、契約内容をしっかり確認して信頼できる会社を選びましょう。ファクタリングで売掛債権を売却し、継続的に事業を運営するために資金繰り改善を図ってください。