ファクタリングは売掛債権を早期に資金化できるのと同時に、売掛債権のデフォルトリスクを排除できるという大きなメリットがあります。

この「売掛債権のデフォルトリスクを排除できる」という部分のみに特化したものが売掛保証です。

売掛保証を利用すれば、例え取引先の倒産などによって売掛債権がデフォルトしたとしても損失を背負う心配がないので安心です。

コロナ禍のような社会的な不景気時には「取引先の倒産が心配」という経営者の方も多いのではないでしょうか?

信用不安の状況下においては売掛保証とファクタリングが活用できます。

売掛保証の概要を説明するとともに、ファクタリングとの違いについて詳しく解説していきます。

売掛保証とは|回収不能の売掛債権が補償対象

売掛保証とは、売掛債権が回収不能に陥った時に、保証を受けられる契約です。

売掛保証を利用すると、取引先の倒産等で代金が未回収になった際に、保証会社が代わりに損失金額を補填してくれます。

例えば、掛け取引で取引先へ100万円の商品を販売した場合、自社には取引先から100万円の代金を受領する権利があります。

しかし、売掛債権の支払期日に本当に代金が支払われるかどうかは不透明です。

期日が到来するまでに取引先が倒産してしまったり、代金を支払われないリスクがあります。

売掛債権に売掛保証を付けておくことにで、「売掛債権が期日までに支払われなかった場合のリスク」を回避することが可能です。

同じような言葉として「保証ファクタリング」と「取引信用保険」などがありますが、売掛保証の特徴を解説するとともに、取引信用保険との違いについても詳しく解説していきます。

売掛保証の補償内容

売掛保証では以下の債権以外は基本的に全て補償を受けることができます。

  • 金銭消費貸借契約に基づく債権
  • 業法違反契約、実体を伴わない架空債権、反社会的勢力との契約に基づく債権
  • 支払期日の延長を認めた債権または認める可能性のある債権

通常の取引先へ期日延長などをしていないのであれば、基本的に取引先への売掛債権はすべて補償の対象となります。

売掛補償の2つのメリット

売掛保証のメリットは2つです。

  • 貸倒損失を回避できる
  • 連鎖倒産を予防できる

貸倒損失を回避できる

売掛保証を付けておくことによって、万が一売掛債権が回収不能になったとしても、その損失を回避することが可能です。

例えば、100万円の売掛債権に売掛保証を付けておけば、売掛債権が貸し倒れた時に、売掛保証のサービス提供会社が自社に対して最大100万円を保証するので自社には貸し倒れ損失のリスクがなくなります。

連鎖倒産を予防できる

売掛保証を売掛債権に付けることによって、連鎖倒産を予防することができます。

本来、売掛債権が回収不能に陥った時、その損失は納入企業が引き受けることになります。

100万円の売掛債権が支払企業の倒産によって、回収不能になった場合は、納入企業が100万円の特別損失を計上しなければなりません。

納入企業とすれば、予定していた入金が無くなってしまったので、支払いをすることができずに資金ショートに陥り、倒産してしまう可能性があります。いわゆる連鎖倒産です。

売掛債権に売掛保証を付けておくことによって、納入企業は支払企業の倒産や資金繰りの悪化の影響を受けないので、売掛保証には連鎖倒産を予防する効果もあります。

保証ファクタリングと売掛保証の違い

「売掛債権を保証する」という言葉を聞くと保証ファクタリングを連想する人も多いのではないでしょうか?

保証ファクタリングとは、納入企業が保有する売掛債権をファクタリング会社が保証するファクタリングです。

万が一、納入企業が保有する売掛債権が貸し倒れたとしても、ファクタリング会社が代金を立て替えてくれます。

このため、保証ファクタリングも売掛保証と同様に、売掛債権の保証を行うことです。

しかし、厳密に言えば以下の2点で売掛保証と保証ファクタリングは異なります。

  • 保証の範囲
  • サービス提供会社

売掛保証と保証ファクタリングの2つの違いについて詳しく解説していきます。

保証の範囲は個別か包括か

保証ファクタリングと売掛保証では、保証の範囲が異なります。

保証ファクタリングは、取引が終了し売掛債権が発生した後に、個別の債権に対して保証ファクタリングを利用するものです。

売掛保証は取引先ごと保証枠を設定することができる

一方、売掛保証では、取引先企業ごとに保証枠を設定することができます。

例えば、「毎月平均200万円の売上があるA社の経営状態が心配だから売掛保証を利用したい」という場合には、A社に対して200万円の保証枠を設定できるので、個別の債権ごとに保証に申し込む必要はありません。

売掛保証では「取引先ごと」に売掛債権を「枠の範囲内で包括的に保証」します。

ただし、「売掛保証」と謳っている業者の中には、保証ファクタリングと同じように、個別の債権に対してのみ保証を行っている業者も存在するので、必ずしも「売掛保証=取引先ごとに包括的に保証する」というわけではないという点には注意しましょう。

サービス提供会社の違い

保証ファクタリングを取り扱っているのは、主にファクタリング会社です。

そして、ファクタリング会社の中でも、メガバンク傘下の大手ファクタリング会社が保証ファクタリングを得意としています。

一方、売掛保証を提供しているのは主に決済代行会社です。

決済代行会社が、企業間取引の決済代行を行うにあたり、当該決済に売掛保証を付けることによって、取引先が代金を支払わなかった場合の損失を決済代行会社が補填する内容となっています。

ただし、売掛保証を取り扱う業者の中には、決済代行とは無関係に売掛保証のみを行う業者も存在します。

保証ファクタリングよりも売掛保証が向いている2つのケース

保証ファクタリングと売掛保証は非常に類似していますが、保証の範囲など、細かい点で異なるケースが多いのも事実です。

保証ファクタリングよりも売掛保証が向いているケースとはどのような場合でしょうか?

考えられるケースとしては以下の2つです。

  • 支払いが心配な取引先と継続的に取引を行っている場合
  • 開業間もない事業者と取引を開始する場合

保証ファクタリングよりも売掛保証が活用できる2つの場面について詳しく解説していきます。

支払いが心配な取引先と継続的に取引を行っている場合

地域などで「あの会社が危ないらしい」などと噂されている企業を取引先として抱えている事業者の方も多いのではないでしょうか?

そのような取引先を抱えていると、「貸し倒れが心配」という反面、「これまで長く取引してきたので取引を続けたい」とか「取引先を失うのは痛いから取引を続けたい」と、取引を続けるか取引をやめるかという選択肢を迫られることになります。

このような場合に、当該取引先に対して売掛保証を設定すれば安心です。

  • 平均月商:300万円
  • 保証枠:300万円

業況が心配な取引先に対して平均月商と同金額の保証枠を付けることで、貸倒れリスクを排除できます。

このケースでは、300万円までであれば、売掛債権が回収不能であっても売掛保証のサービス提供会社が損失を負ってくれるので安心です。

経営が危ぶまれる取引先と継続的に取引を行う場合には、取引先ごとの包括的な保証を受けることができる売掛保証が活用できます

開業間もない事業者と取引を開始する場合

開業間もない事業者と取引を開始する場合にも売掛保証を利用して、当該事業者に対する売掛債権全体へ保証を付けておいた方がよいでしょう。

開業間もなくの事業者は、1年〜3年程度は経営状態が非常に不安定です。

実際に飲食店の約半分は開業後1年半程度の間に店を閉じていると言われています。

開業間もなくというのは開業資金の借入残金などが手元にあるので、支払いには問題ない事業者が多いのですが、開業から半年程度経過すると資金が枯渇し始めて支払いが滞るようになります。

そのため、開業間もない企業への売掛債権には、ある程度長期のスパンで枠を設定することができる売掛保証を付けるとよいでしょう。

取引信用保険と売掛保証の違い

売掛債権の貸し倒れリスクを保証するものとして、取引信用保険という保険も存在します。

取引信用保険とは、企業が保有する売掛債権の貸し倒れ損失を補填するものです。

例えば、企業の平均的な売掛債権残高が1,000万円の場合、取引信用保険を付けることによって、1,000万円が貸し倒れたとしても1,000万円の一部を保険会社が補償してくれます。

この意味では売掛保証と同じように思えますが、以下のような違いがあります。

  • 企業が保有する売掛債権全てに保険をかける
  • 売掛債権の損失額の80%程度までしか補償されない

取引信用保険は企業が保有する全ての売掛債権に対して包括的な補償を行います。個別の取引先だけを指定することはできません。

取引信用保険は売掛債権全体へ包括的に保険をかける

取引信用保険は全ての売掛債権を対象として保険を掛け、個別の売掛債権だけを保険にかけることはできません。

そのため取引信用保険では「想定外の企業から未払いがあった」などの事態を避けることができますが、保険を掛ける必要のない優良企業の売掛債権に対しても保険料を支払うことになるので無駄が多いのも事実です。

損失額の100%は補償されない

また、取引信用保険は、損失額の100%を補償するものではなく、あらかじめ保険会社との契約によって定められた範囲までしか補償を受けることができません。

一般的には損失額の80%程度までの補償となっています。

取引信用保険はファクタリングや売掛保証と比較して効率的とは言えないため、それほど多くの事業者に利用されているわけではありません。

買取ファクタリングと売掛保証の違い

買取ファクタリングとは、納入企業が保有する売掛債権をファクタリング会社へ売却することによって早期資金化することです。

ファクタリングは広義にこの買取ファクタリングを指します。

買取ファクタリングはノンリコースで行われるので、万が一、ファクタリング後に売却した売掛債権が貸し倒れたとしても納入企業に損失が及ぶことはありません。

売掛保証と買取ファクタリングの違いは主に2つです。

  • 早期に資金化できるかどうか
  • 継続的に利用できるかどうか

売掛保証とファクタリングの違いについて、詳しく見ていきましょう。

売掛保証は早期資金化できない

売掛保証はあくまでも売掛債権に保証を行うものです。早期資金はできません。

売掛保証は売掛債権の支払不能や遅延によって売掛債権が貸し倒れるリスクに備えるものであって、資金調達の手段ではありません。

買取ファクタリングは資金調達としての用途も兼ね備えているため、「早期資金化できるかどうか」は大きな違いです。

「売掛債権を期日前に資金化したい」と考える場合には、売掛保証を利用すべきではありません。

買取ファクタリングは早期資金化可能

一方、買取ファクタリングは売掛債権を期日前に早期資金化するものです。

資金ギャップを埋めたい時、急いでお金が必要な時などには買取ファクタリングが活用できます。

買取ファクタリングには売掛保証の効果もある

買取ファクタリングの効果は早期資金化だけではありません。

買取ファクタリングには売掛保証の効果もあり、万が一、ファクタリング後にファクタリング会社へ売却した売掛債権が回収不能に陥った場合は、ファクタリング会社がその損失を負います。

買取ファクタリングの機能は2つです。

  • 売掛債権を早期に資金化する機能
  • 売掛補償を行う機能

継続的に利用できるかどうか

売掛保証は、個別の取引先に対して1年間などの期間を決めて継続的に補償を受けることができます。

  • 平均月商100万円のA社
  • A社に対して継続的に100万円の売掛保証

売掛保証ではこのような契約ができるので、契約期間内にいつA社が支払遅延を起こしても100万円まで補償を受けることができます。

買取ファクタリングは個別契約

一方、買取ファクタリングは売掛債権1つ1つを個別に売却するのが原則です。

特定のA社に対して買取枠を作成し、枠の範囲内でいつでも買取可能などという契約は行っていないので、都度審査を受ける必要があります。

売掛保証の利用が向いているケース

買取ファクタリングよりも売掛保証の方が向いているケースとしては、以下の2つの状況です。

  • 工期の長い売掛債権発生時
  • 新規取引先との最初の取引

「売掛債権がデフォルトするリスクが高まる取引」に関しては売掛保証が向いていると言えます。

なお、これは「買取ファクタリングよりも保証ファクタリングが向いているケース」と言い換えることも可能です。

2つのケースについて詳しく見ていきましょう。

工期の長い売掛債権発生時

売掛保証や保証ファクタリングは建設業で利用されることが多くなっています。

建設業は工期が長く、代金が支払われるのは工事が完了してからです。

そのため、半年〜1年程度先が支払期日となっている売掛債権も珍しくありません。

このような長い期間の間には、売掛先企業が倒産してしまう可能性もあります。

そこで、売掛債権に対して売掛保証や保証ファクタリングを利用することによって、長い工期の間に売掛先企業が倒産してしまうリスクに備えることが可能です。

建設業だけでなくても、期日までに長い時間を要する売掛債権については、売掛保証を付けておいた方が安心でしょう。

新規取引先との最初の取引

新規取引先企業と最初に取引する場合にも、売掛保証や保証ファクタリングが活用できます。

新規取引先については、何も信用がない状態ですので「期日通りに代金を支払うかどうか」ということが非常に不透明です。

そのため、売掛保証や保証ファクタリングを利用することによって、まだ信用がない新規取引先に対しても安心して商品やサービスを提供することができます。

「初めて取引する企業が期日通りに代金を支払ってくれるかどうか不安」という場合には、売掛保証や保証ファクタリングを利用するとよいでしょう。

 

売掛保証とファクタリングについてよくある質問

売掛保証とファクタリングはどちらの審査が厳しいでしょうか?
買取ファクタリングの方が売掛保証よりも審査は厳しいでしょう。
買取ファクタリングは売掛保証的な機能に加えて、売掛債権を早期に資金化するという役割も持っています。
実際に資金を納入企業へ提供する分だけ、買取ファクタリングの方が審査が厳しくなる傾向にあります。
また、買取ファクタリングは納入企業の二重譲渡や納入企業の資金流用のリスクもあるため、納入企業に対してもしっかりと審査を行います。
売掛保証は売掛先企業の信用だけが審査対象ですので、納入企業に信頼がなくても審査に通過できるでしょう。
売掛保証の方が総じて審査は甘い傾向にあります。
倒産の噂がある会社の売掛債権を売掛保証することはできないでしょうか?
申し込んでみなければ何とも言えます。
倒産の噂が出ていても、サービス提供会社が審査したところ、倒産のリスクは低いと判断されるケースもあるためです。
審査の結果、噂通りに「倒産が近い」などと判断された場合にはまず審査に通過することはできないでしょう。
また、サービス提供会社によって許容できるリスクも異なります。
いずれにせよ、申し込んでみなければ審査結果は分かりません。
倒産の噂があるような会社の売掛債権も売掛保証へ申し込みを検討してみましょう。
売掛保証できない債権を教えてください。
売掛保証を断られてしまう債権は「すでに期日を過ぎた債権」です。
すでに期日を過ぎた債権は、不良債権です。
売掛保証は正常な売掛債権の保証をするものですので、不良債権化した債権の保証は受けられません。
このほか、すでに不渡を出している企業や破産手続に入っている企業の売掛債権も売掛保証を利用することが不可能です。
ただし、正常な売掛債権が売掛保証を得た後に不良債権化した場合には問題なく保証を得られることができます。
早期に資金が不要な時はファクタリングより売掛保証の方がメリットがありますか?
早期に資金が必要ない場合には、高い手数料を支払って買取ファクタリングを利用するよりも売掛保証を利用した方がメリットがあるでしょう。
買取ファクタリングの手数料が5%〜10%程度であることに対して売掛保証の手数料は1%〜5%程度です。
低コストで売掛債権の貸し倒れリスクを排除することができるので、早期に資金が必要ない場合には売掛保証にメリットがあります。

売掛保証で貸し倒れリスクを軽減し経営安定化へ

売掛保証とは売掛債権を保証するもので、売掛債権が回収不能になった時に、売掛債権金額をサービス提供会社から支払ってもらうことができます。

そのため、売掛債権の貸し倒れリスクを排除することが可能です。

売掛保証と買取ファクタリングの違いは「早期資金化することができるかどうか」です。

売掛債権を早期に資金化したい場合には、売掛保証では用を成さないので買取ファクタリングを利用しましょう。

また、売掛保証と保証ファクタリングは広義では同じ意味ですが、保証の範囲やサービス提供会社が異なります。

それぞれの違いをよく理解して、自社にとって最適な方法で経営の安定化を図るようにしましょう。