「ファクタリング会社は名前を聞いたことがない会社ばかりで怖いから、メガバンクが親会社の銀行系ファクタリングを利用したい」と考える人も多いのではないでしょうか?

実際にファクタリング会社の中にはグレーの会社も相当数混じっているので、慎重に選ばないと違法な業者に引っかかってしまうこともある一方、銀行系ファクタリング会社は安心であることは間違いありません。

しかし、銀行系ファクタリング会社は一般的なファクタリング会社と比べてデメリットが非常に多く、特に中小企業にとっては使いにくいのが実情です。

この記事では、銀行系ファクタリング会社のメリットとデメリットについて徹底解説をしていきます。

 

銀行系ファクタリングってなに?

銀行系ファクタリングってなに?

銀行系ファクタリングとは、銀行が100%出資しているファクタリング会社のことです。

銀行系ファクタリングはメガバンクから地方銀行まで数多くあります。以下は大手銀行が抱えるファクタリング会社と、それぞれの名称やサービス内容です。

銀行系ファクタリング会社 親会社 サービス内容
三菱UFJファクター 三菱UFJグループ 買取ファクタリング
保証ファクタリング
国際ファクタリング
みずほファクター みずほグループ 買取ファクタリング
保証ファクタリング
国際ファクタリング
みずほ電子債権決済サービス
SMBCファイナンスサービス 三井住友グループ 保証ファクタリング
手形買取業務
りそな決済サービス りそなグループ 保証ファクタリング

これらのファクタリング会社は100%銀行の資本でできている会社なので、一見すると「銀行系ファクタリングを利用した方が安全」と考えるでしょう。

安全性が高いのは間違いありませんが、中小企業や個人事業主にとってはデメリットが多く、あまり活用できないのが実情です。

ファクタリングサービスを提供する地方銀行

ファクタリングサービスを取り扱う地方銀行もあるため、その一部を紹介します。

銀行名 本店位置情報
北都銀行 秋田県秋田市
足利銀行 栃木県宇都宮市
浜銀ファイナンス(横浜銀行) 神奈川県横浜市
スルガ銀行 静岡県沼津市
山口銀行 山口県下関市
百十四銀行 香川県高松市

銀行系ファクタリングのメリットとは

銀行系ファクタリングのメリットとは

銀行系ファクタリング会社のメリットとして以下の点をあげることができます。

  • 安心安全に利用できる
  • 特別なファクタリングを扱っている
  • 手数料が安い

この3点に関しては、中小のファクタリング会社と比較して間違いなくメリットがあると言えます。

まずは、銀行系ファクタリング会社のメリットについて詳しく見ていきましょう。

メリット①安心安全に利用できる

やはり100%銀行系の資本で成り立っている会社なので、銀行系ファクタリング会社を安心して利用できることは間違いありません。

貸金業者の登録を行なっている

各銀行系ファクタリング会社は、国の厳しい基準をクリアして貸金業者としての登録を行なっています。

通常、ファクタリングとは売掛債権の売買であるため、貸金業者としての行政の許可や登録は必要ありません。

登録が不要であるということは様々な企業が参入できるため、ファクタリング会社の中には違法な業者が混じってしまうのです。

しかし、銀行系ファクタリング会社は国の厳しい貸金業者としての基準を満たしているので安心して利用できるでしょう。

資本金が大きい

銀行系ファクタリングは銀行という巨大資本を持つ企業から出資を受けているため、会社の資金力を証明する資本金が非常に大きいのが特徴です。

銀行系ファクタリング会社 資本金
三菱UFJファクター 20億8000万円
みずほファクター 10億円
SMBCファイナンスサービス 828億4300万円
りそな決済サービス 10億円

このように、銀行系ファクタリング会社は全て10億円を超えるような巨大な資本金を持っています。

ファクタリング会社の中には資本金数千万円程度の小さな会社も数多く存在しますが、銀行系ファクタリング会社は資本金も巨大なので、この点からも安心だと言えるでしょう。

メリット②特別なファクタリングを扱っている

ファクタリングというと「売掛金をファクタリング会社に期日前に買い取ってもらい、資金化すること」と思っている人が大半です。

しかし、このファクタリングは「買取ファクタリング」というファクタリングの種類のひとつです。

前述したように、銀行系ファクタリング会社は買取ファクタリングの他にも様々なファクタリングを扱っています。

中小のファクタリング会社が買取ファクタリングしか行なっていないのに対して、銀行系ファクタリング会社は買取ファクタリング以外のファクタリングも行なっているという点はメリットでしょう。

買取ファクタリング以外の種類である、国際ファクタリングと保証ファクタリングについて詳しく説明していきます。

国際ファクタリング

国際ファクタリングとは、輸出会社(日本企業)が輸入会社(海外企業)から安全に売掛資金を回収するために、与信調査や支払保証を行なうサービスです。

海外の取引先との取引は、言葉の壁や国ごとに異なる契約など様々な問題から資金の回収に不安が生じるケースもあるでしょう。

国際ファクタリングを利用すると、輸入会社が期日通りに支払いをしてくれるか不透明な場合でも、ファクタリング会社から支払保証を受けられるので、安全な取引が可能となります。

国際ファクタリングは、世界各国の銀行や銀行子会社のファクタリング会社で構成されている「Factors Chain International(FCI)」というネットワークを活用して、海外のファクタリング会社と連携して行なわれます。

そのため国際ファクタリングは、FCIに入ることができない中小のファクタリング会社では取り扱うことができないサービスです。

保証ファクタリング

保証ファクタリングとは、売掛先が倒産などによって代金を回収できなくなった時に、ファクタリング会社が売掛金の代金を保証してくれるサービスです。

保証ファクタリングを利用することで、「万が一の場合、売掛先から売掛金を回収できなくなるのでは」という不安を解消できるのです。

また、保証ファクタリングの中には「下請債権保全支援事業」という制度があります。

この制度は、下請け建設業者や材料業者などが元請けの倒産によって、連鎖倒産しないように支払いを保証する制度です。

下請債権保全支援事業を行うためには国土交通省の認可が必要で、認可を受けているのは、銀行系ファクタリング会社などの規模が大きく経営の安全性が認められた大企業だけです。

このように、銀行系ファクタリング会社だからこそできる特別なファクタリングを取り扱っているという点は、間違いなく銀行系ファクタリング会社のメリットです。

業種によっては「銀行系ファクタリング会社でないと必要なサービスを受けられない」という会社も存在するでしょう。

手数料が安い

一般的にファクタリングの手数料は10%〜20%程度が適用されることが一般的です。

しかし、銀行系ファクタリング会社の手数料は5%を切るようなことも珍しくありません。

お金を借りる時には銀行が最も金利が低いのと同様に、ファクタリングにおいても銀行系ファクタリング会社が最も手数料が低くなるのです。

銀行系ファクタリングのデメリットとは

銀行系ファクタリングのデメリットとは

銀行系ファクタリング会社には銀行系でしか扱っていないサービスがあり、手数料が安く、安全というメリットがあります。

「安全で手数料が安いなら銀行系ファクタリング会社を利用すればいいのでは?」と考える人も多いでしょう。

しかし、銀行系ファクタリング会社は中小企業が求める「スピード」「秘密性」「審査の甘さ」などの点では全て劣っており、現実的には中小企業が利用する場面は少ないでしょう。

銀行系ファクタリングには具体的に以下のようなデメリットがあります。

  • 2社間を扱うことができない
  • 銀行系を利用すると会社の評価が下がる可能性がある
  • 資金化までに時間がかかる
  • 中小企業は相手にされないことが多い
  • 審査が厳しい

銀行系ファクタリング会社には、このようなデメリットがあるので、実際に中小企業が活用できる場面は非常に少ないというのが実情です。

銀行系ファクタリング会社が抱えるこれらのデメリットについてもう少し詳しく解説していきたいと思います。

2社間を扱うことができない

銀行ファクタリング会社で取り扱う買取ファクタリングは、売掛先にファクタリングの通知や同意を得る3社間ファクタリングのみとなっています。

2社間ファクタリングは、売掛先にバレずにファクタリングすることができる一方、売掛金が自社を経由するためファクタリング会社にとってはリスクの高いファクタリングです。

そのためファクタリング会社はリスクヘッジのために、2社間ファクタリングでは20%を超える手数料を設定するようなことも珍しくありません。

しかし、銀行はこのような高額な手数料を設定することができません

なぜなら「ファクタリングは貸金業に該当するのでは?」という意見があるためです。

貸金業法に該当するのではあれば、以下の利息制限法の上限金利を遵守しなければなりません。

利息制限法の上限金利
  • 10万円未満:20.0%
  • 10万円以上100万円未満:18.0%
  • 100万円以上:15.0%

銀行はコンプライアンス遵守ですので、「貸金業に該当する可能性がある」という意見があれば、その意見を重視します。

そのため、ファクタリングの手数料率も上記の利息制限法の上限金利を超えないように設定しています。

リスクの高い2社間ファクタリングでは、利息制限法の範囲内で売掛債権を買取ることは不可能なので、銀行系ファクタリング会社では2社間の取り扱いがありません。

多くの中小企業は2社間ファクタリングを利用して「取引先に秘密でファクタリングをしたい」と考えています。

このため、銀行系ファクタリング会社は中小企業にとって使う機会が少ないのです。

銀行系を利用すると会社の評価が下がる可能性がある

銀行系ファクタリングを利用すると、ファクタリングを利用していることが親会社の銀行に知られ、企業に対する評価が下がることがあります。

銀行とすれば「ファクタリングを利用するということは、売掛金の期日を待つことができないほど資金繰りに苦しんでいる」などとネガティブに評価することが多いのです。

銀行からの評価が下がってしまうと今後融資を受けられなくなる可能性もあるため、企業としてはファクタリングを利用していることを銀行に知られたくないものです。

ところが、銀行系ファクタリング会社を利用すると、その親会社の銀行にファクタリングをしている事実が知られてしまいます

たとえば三菱UFJ銀行を利用している企業が三菱UFJファクターを利用すると、三菱UFJ銀行に情報が筒抜けとなってしまい、評価が下がってしまうことがあるのです。

融資とファクタリングを組み合わせて資金調達しているような中小企業にとっては、銀行系ファクタリング会社を利用することによって融資取引にも悪影響を及ぼす可能性があるのです。

資金化までに時間がかかる

銀行系ファクタリング会社を利用すると、資金化までに2~3週間もの時間がかかってしまいます。

通常、ファクタリング会社の中には「即日資金化」などスピーディーに売掛金を買い取ってくれる所も数多く存在します。

しかし、銀行系ファクタリング会社のファクタリングはとにかく慎重に与信調査を行なうため、資金化までに2〜3週間時間がかかってしまうのです。

「急にお金が必要になった」「予定していた銀行融資が出なくなった」など、中小企業がファクタリングをするときは急いでお金が必要な場面であることが一般的です。

しかし銀行系ファクタリング会社を利用すると、必要な時に必要な資金を用意できないケースが発生してしまいます。

中小企業は相手にされないことが多い

銀行系ファクタリングの場合、そもそも中小企業が扱うような少額のファクタリングには対応していないことが多いです。

基本的に銀行系ファクタリング会社は、数億円程度のファクタリングに対応しています。

その一方で、数百万円、数十万円程度の少額のファクタリングには対応していないことが一般的です。

中小企業が少額の売掛債券でファクタリングの相談をしても相手にされないことが多いので、中小企業は銀行系ファクタリング会社を利用できないケースが多くなってしまいます。

審査が厳しい

銀行系ファクタリング会社は審査が厳しいのもデメリットです。

前述したように、ある程度の規模感の企業でないと取引することそのものが難しいので、中小企業が審査に通過することは困難ですし、個人事業主であればほぼ確実に審査に通過することはできません。

ファクタリングを利用する中小事業者の中には「銀行から融資を断られた」などの事情を抱えていますが、銀行の事業資金審査に通過することができなかった中小事業者が、銀行系ファクタリング会社の審査に通過することは難しいでしょう。

あいにく大企業か、大企業の売掛債権を持っている中堅企業などしか銀行系ファクタリングの審査に通過することは困難です。

銀行系ファクタリング会社に関するよくある質問

近くに銀行系ファクターの店舗がないのですが非対面で利用できますか?
銀行系ファクターは基本的に面談が必須です。しかし面談を必須とするかどうかの対応はファクターによって異なるので、どうしても訪問が難しい場合にはまずは電話で相談してみましょう。
銀行系ファクターの資金化までの時間を早める方法はありますか?
自社でできることは売掛先の同意を素早く取得するくらいです。銀行系ファクターは中小ファクターと比較して審査のプロセスが複雑になっているので基本的には資金化までに時間がかかるものと考えておきましょう。
国際ファクタリングと信用状での国際決済の違いを教えてください。
信用状での決済は、銀行経由で輸入企業から輸出企業へ信用状を郵送し、信用状を受け取った輸出企業が商品を船積しBLを銀行経由で輸入企業へ郵送し、BLを受け取った輸入企業が商品を引き取ることができます。
書類が銀行経由で送付されるので「信用状がこないので商品を発送できない」「BLがこないので商品を受け取ることができない」などの問題があります。国際ファクタリングでは信用状の郵送がないので信用状での決済よりも貿易がスムーズになります。ただし手数料は国際ファクタリングの方が高くなります。

 

まとめ

安心・安全・低コストの銀行系ファクタリング会社ですが、以下のような事情を抱えた中小企業には不向きです。

  • 急いで資金が欲しい
  • 取引先に秘密でファクタリングをしたい
  • 銀行融資を断られた
  • 数十万円程度のファクタリングをしたい

本来であれば、手数料の低い銀行系ファクタリング会社で資金化するのが望ましいでしょう。

しかし、経営規模が小さく、銀行融資を断られるような企業は、残念ながら銀行系のファクタリング会社を利用するのは難しいのです。

どうしても資金繰りに困った時には、少額の買取もスピーディーに行なってくれる非銀行系のファクタリング会社の利用を検討しましょう。