事業計画書は、今後の事業運営や行動を決めていくためにも重要な書類です。作成しておくことで経営状況や具体的な経営イメージを想起できます。
しかし、「事業計画書はどのように書けばいいの?」「事業計画書作成に必要な項目って一体何?」などの疑問が出てくる人も多いでしょう。
そこで本記事では、事業計画書を書くメリットや必要な項目、重要なポイントについて解説します。さらに、事業計画書を簡単に作成するためのツールも紹介するので、気になる人はぜひチェックしてください。
事業計画書を書くメリット
事業計画書を書くメリットは、以下の3つです。
- 事業の具体的なイメージを持つことができる
- 事業を共有できる
- 改善するポイントを抽出できる
それぞれ順に解説します。
事業の具体的なイメージを持つことができる
事業計画書を書くことで、事業の具体的なイメージを想起できます。漠然と事業に対してイメージを抱いていても、どこから手をつければいいかわからなくなるでしょう。
しかし、事業計画書を書くことで、具体的な事業の方向性や内容を決められます。事業計画書を作成していく中で、自分の頭の中が整理され、イメージが可視化されます。
自分の思考を整理することで、新たなアイデアが生まれることもあるため、事業計画書を書くだけでもメリットを得られるでしょう。
事業を共有できる
事業計画書を書くことで、他の人材に事業内容を共有できます。自社で手がけている事業が複数ある場合、言葉だけでは外部の人に上手く事業を伝えられない可能性が高いです。
一方、事業計画書を書いておけば、わかりやすく事業の内容を共有できます。さらに、事業計画書は資金調達などにも用います。
例えば、金融機関や投資家から融資を受けたい場合、事業計画書を提出することで、事業の具体的なイメージや相手の知りたい情報、どのようにして利益を発生するのかを伝えられます。
改善するポイントを抽出できる
事業計画書は思考の整理と可視化ができるため、事業の改善点を抽出できます。事業内容を頭の中だけで考えていると、全てが上手くいくようなイメージをもってしまいがちです。
しかし、ビジネスは実行するまでに様々な問題が発生します。そこで事業計画書で具体的なイメージを書き出すことで、客観的に事業内容を確認できます。
事業内容を客観的に確認することで、事業の実現性や難易度を把握し、成功に向けた改善点は何か把握できるでしょう。
事業計画書に必要な項目
事業計画に必要な項目は、以下の通りです。
- メンバーのプロフィール紹介
- 経営理念やビジネスの目的
- 事業内容
- 自社サービス・商品のアピールポイント
- 市場規模・競合の情報
- サービス・商品の販売方法
- 生産方法・仕入先の安全性
- 取引先の情報
- 売上計画
- 利益計画
- 資金調達計画
事業計画書は具体的に事業を構想出来ていることを伝えた上で相手の疑問を極力減らし、最短で信頼してもらうことが重要です。
ここでは、事業計画に必要な項目を詳しく解説します。
メンバーのプロフィール紹介
事業計画書には、事業内容と関係のある人物のプロフィールを書きましょう。プロフィールには、事業に有利になる資格や、経歴を詳細に記載することで評価アップに繋げられます。
ただし、事業に関係のない情報を記載しすぎると過剰なアピールとして見られるため、記載内容はあらかじめ精査が必要です。
経営理念やビジネスの目的
事業計画書には経営理念やビジネスの目的を記載することで、事業の必要性を伝えられます。
ビジネスの経験が浅い場合でも、情熱のある経営理念を目的が記載していれば、経営メンバーの思いを理解してもらえます。資金調達では、ビジネスの実現性や返済能力以外の部分も評価されるため、非常に重要な部分と言えます。
事業内容
事業内容の項目では、この事業で何ができるのか、どんな利益をもたらすのか説明します。ターゲットとしている市場やニーズ、サービス内容など全体的な事業像の説明が目的です。
また、事業の特徴や魅力を紹介し、後述する自社サービス・商品のアピールポイントへ繋げましょう。
自社サービス・商品のアピールポイント
事業計画書では事業内容だけではなく、自社サービス・商品のアピールポイント記載も重要です。
他社にはないアピールポイントを紹介し、事業全体の成長見込みや強みを伝えましょう。競合他社と同様のサービス・商品を紹介するのではなく、独自性を伝えることで評価アップにつながります。
市場規模・競合の情報
事業計画書には、市場規模・競合の情報も欠かせません。事前に市場規模や競合を調査し、事業内容が具体的に目指せる売上の裏付けを行います。
また、市場や競合の調査結果をもとに、自社商品・サービスとの差別化できるている部分を紹介します。調査結果はグラフや表にまとめることで、よりわかりやすく情報を伝えられるでしょう。
サービス・商品の販売方法
事業計画書では、展開するサービスや商品の販売方法の項目も必須です。実際に顧客につなげるまでのマーケティングや販売について構想を説明することで、実現性や成功までの信用性を高められます。
また、マーケティング方法を説明する際は、販促方法以外の人員や予算の説明も重要です。販促方法の具体的な内容を紹介することで、事業の生産性も紹介できます。
生産方法・仕入先の安全性
サービスや商品の販売方法を紹介すると同時に、生産方法・仕入先の安全性も記載しましょう。特に食や化粧品など人体にかかわる商品を売る場合は、安全性の点でアピールが必要です。
また、事業計画書の作成段階で、仕入れ先の確保や安全性を確立していれば、事業に対する思いを強く伝えられるでしょう。
取引先の情報
事業計画書には、取引先の情報も記載が必要です。取引先や取引関係の情報を記載することで、対外的にどのような企業とやり取りしているか紹介できます。
また、取引先の情報を記載しておけば、事業計画書と別で作成する「資金繰り表」へ紐づけられます。資金繰り表とは、取引先と現金収支をまとめた表です。事業計画書と資金繰り表を紐づけることで「どこから現金が回収されるのか」などを記載できます。
売上計画
売上計画では、仕入れ商品の原価を提示し、見込まれる売上を詳細に書きます。商品・サービス別に売上を記載することで、どの事業に力を入れていくか表現できます。
また、原価や販売価格以外にも、見込み客や他社の経営指標を活用して、具体的な売上予測を立てましょう。
利益計画
売上計画だけでは、事業全体で利益が発生しているか表すことはできません。事業による具体的な利益は、利益計画によって説明が必要です。事業利益の計算方法は、以下の通りです。
「事業利益=売上高-固定費-販売管理費(変動費+粗利費)」
収支計画を算出する際は、以下3つのコストを算出します。
- 固定費:収益に関わらず発生する費用(人件費・家賃・光熱費・役員報酬など)
- 変動費:売上に比例して発生する費用(材料費・外注費など)
- 粗利費:100%から変動費を差し引いた費用(100%-変動費=粗利費)
上記コストを算出した上で、売上高から差し引くことで事業利益を求められます。利益計画は事業計画書の中でも重要視される部分となるため、細かく記載するようにしましょう。
資金調達計画
資金調達計画とは、事業を行うために必要な資金をどこから調達するのかを説明する部分です。
貸借対照表を用いて、事業を行うための必要総額を明記し、例えば次のようにその資金をどこから調達するのか説明します。
- 融資:40%
- 自己資金:30%
- 出資:30%
また、資金調達計画では、実際に資金を確保できたという証拠が必要になります。具体的には預金通帳の写しなども必要になるので、あらかじめ用意しておきましょう。
事業計画書を書くにあたって大切なポイント5つ
事業計画書を書く際は、以下5つのポイントが重要です。
- 6W2Hの意識で文章を書く
- テスト事業を行い、ロジックだけの計画書にならないようにする
- プレゼンは端的にできるようにする
- 根拠ある具体的な数値をもって書く
- 経験者に見てもらう
それぞれ順に解説します。
6W2Hの意識で文章を書く
事業計画書を書くときは、6W2Hを意識することでわかりやすく情報をまとめられます、6W2Hとは「What・Who・Why・When・Whom・Where・How to・How much」の頭文字を取った言葉です。
それぞれの記載する内容は、以下の通りです。
- What(なにを):事業で達成する目標・目標売上など
- Who(だれが):頭角ビジネスは誰がやるのか・どんな人材・外部企業と協力するのか
- Why(なぜ):なぜその事業を行うのか・事業で解決、達成できる課題は何か
- When(いつ):いつから事業を始めるのか
- Whom(だれに):事業の商品やサービスは誰に提供するのか・ターゲットユーザーは誰か
- Where(どこで):事業はどこで展開するのか
- How to(どうやって):商品やサービスはどのように生み出すのか
- How much(いくらで):事業にかかる費用はいくらか
頭の中で考えていることを書き出しているだけでは、記載内容の整合性が取れなくなる可能性があります。そこで6W2Hを意識して文章を作成することで、どのような疑問に対しても回答できる内容に仕上がります。
テスト事業を行い、ロジックだけの計画書にならないようにする
事業計画書に記載する内容はロジックだけではなく、テスト事業を行いましょう。自分の頭の中のイメージを事業計画書に記載しただけでは、机上の空論となる可能性が高く、実現性が低いケースは少なくありません。
そのため、事業計画書に記載した事業内容を元に、テスト事業を展開することで問題点を把握できます。実際に事業を行って気づいたことを、さらに事業計画書に反映させることでより精緻な事業計画書を作ることができます。
プレゼンは端的にできるようにする
事業計画書のプレゼン部分は、内容を端的にしましょう。商品・サービスのアピールポイント部分が長く、複雑に記載されていると、本当に重要な部分がわからなくなります。
競合他社と違いや最も重要なポイントをアピールすることで、効果的な訴求が可能です。そのため、1分前後でプレゼン部分をまとめましょう。事業の内容や収益の発生方法、見込まれる収益など伝えたい内容を絞ることで、端的にプレゼンができます。
根拠ある具体的な数値をもって書く
事業計画書に記載する売上や利益予測は、根拠ある具体的な数値の記載が必要です。あらかじめ計画している内容でも、市場は常に変化しています。根拠のない数値は実現性が薄くなるため、可能な限り裏付けしておきましょう。
また、事業計画書で根拠とすべき数値は、以下の通りです。
- 商品・組織ごとの売上高
- 月・四半期・年度ごとの売上高
- 現在の案件数
- 見込み顧客が契約に至った成約率
- 受注までにかかる平均日数
- サービスの平均的な契約期間
- サービスの更新率・解約率
- 四半期・年度の平均成長率
事業計画書に記載する数値の裏付けは容易ではありません。上記のような数値を根拠として、市場や競合調査を行い、資料作成を進めましょう。
経験者に見てもらう
事業計画書の作成が完了した後は、経験者にチェックしてもらいましょう。同業他社や金融機関に知人が勤めている場合は、説明後フィードバックをもらうことで、客観的な意見を得られます。
また、知人に専門知識を有した人がいない場合は、客観的な意見をもらえる第三者への依頼がおすすめです。
事業計画書に関するよくある質問
事業計画書を書く際は、様々な疑問が出てくるでしょう。ここでは、事業計画書にまつわるよくある質問を4つ紹介します。それぞれ順に解説するため、ぜひ参考にしてください。
事業計画書は何枚書けばよい?
事業計画書は一枚書けば問題ありません。事業計画書を作成する際に重要なのは、何枚にもわたる説明ではなく簡潔な内容です。事業計画書を元に、内容を数分説明できれば問題ないため、できる限り一枚に収めるようにしましょう。
事業計画書を提出するシーンは?
事業計画書は銀行などの金融機関から融資を受ける際や、企業・新規事業提案時などに提出するケースが多いです。
基本的に事業計画書はこれから実施する事業を第三者に説明したり、出資してもらったりするために使用します。これから始める事業の説明資料として、事業計画書を提出することになります。
事業計画書に利用するデータはどのように集計すればよいか?
事業計画書に利用するデータは、行政が発表しているデータを用いたり、自社でアンケートを実施して数値を集計します。売上予測に関しては、テスト事業を展開した際に取得したデータをもとに算出するケースが多いです。
また、事業内容によっては有効なデータ自体が存在しないことが少なくありません。このような場合は、自社独自に取得する必要があります。
収支計画は何年分書く?
収支計画は、3年から5年程度の記載が一般的です。使用する事業計画書の様式によって収支計画書の枠が定められている場合は、そのまま記載しましょう。
ただし、事業内容によっては5年以上の収支計画の記載が求められます。融資の返済期間が長い場合は、事前に確認しておくと安心です。
事業計画書を簡単に作成するためのツール3選
事業計画書の作成を考えている場合でも、どのように書き始めればいいかわからない人も多いでしょう。このような場合は、事業計画書を簡単に作成できる以下3つのツールの利用がおすすめです。
- 融資クラウドScheeme-スキーム
- 事業計画書作成ツール
- Smart Dash
それぞれ特徴があるため、順に解説していきます。
【融資を受けたい人におすすめ】融資クラウドScheeme-スキーム
融資クラウドScheeme-スキームとは、銀行などの金融機関から融資を受けたい場合におすすめの事業計画書作成ツールです。
Scheemeの月額利用料は、税抜9,800円です。年払いなら、月額払いよりも9,600円お得に利用できます。
Scheemeでは事業計画書はもちろん、日々の資金繰りの管理を自動化する機能を搭載しているため、会計ソフトではできないキャッシュフロー経営を実現します。
また、クラウド上に保存された事業情報や数値計画を元に、融資・補助金の申請ができるため、すぐに事業計画書の作成が可能です。初回登録なら5日間無料で利用できるため、気になる人はぜひ登録してみてください。
【様々な業種から選びたい人におすすめ】事業計画書作成ツール
事業計画書作成ツールとは、飲食業や不動産業など様々な業種に向けた事業計画書を作成したい人におすすめのツールです。事業計画書作成ツールは完全無料で、会員登録を行えば無制限で利用できます。
ツール内で選択できる業種は全12種類となり、ブラウザ上で簡単に事業計画書の作成が可能です。作成した計画書は常時保存でき、作成完了後はCSVやPDFなど様々な形式でダウンロードできます。
また、ツールに会員登録さえすれば、すぐに計画書の作成を始められます。作成後には、現在経営をしている企業が作成した事業所と比較も可能です。ツールは基本無料で利用できるため、ぜひ登録してみてください。
【無料で作成したい方におすすめ】Smart Dash
Smart Dashとは、ブラウザから無料で事業計画書を作成できるツールです。
サービスにかかる費用は完全無料で、登録さえすれば機能制限なしで利用できます。
事業計画書をはじめとする、新規事業を効率的に始めるための準備が可能です。初めて利用する人でもわかりやすいスライドや動画コンテンツを提供しているため、アイデア・ノウハウを学べます。
また、チャート形式で事業立ち上げの流れを把握できます。必要な要素を抜け漏れなく確認できるため、これから事業の立ち上げを検討している人におすすめのツールです。無料で登録・利用できるため、気になる人はぜひチェックしてください。
簡単に作れる事業計画書のテンプレート
事業計画書のテンプレートは、Microsoftや日本政策金融公庫が無料で配布しています。
テンプレートに沿って項目を入力していくだけで、誰でも簡単に事業計画書の作成が可能です。Excel形式のテンプレートの場合は、自動計算の書式が設定されているため、金額項目の設定は不要です。
各社が提供しているテンプレートを用いれば、自分で一から項目を設定することなくすぐに事業計画書を作成できるでしょう。
まとめ
以上、事業計画書を書くメリットや必要な項目、重要なポイントについて解説しました。
事業計画書を作成することで、事業の具体的なイメージを持つことができ、客観的に改善するポイントを抽出できます。
また、事業計画書は6W2Hの意識で文章を記載し、根拠ある具体的な数値を用いる必要があります。計画書作成前にテスト事業を行い、ロジックだけの計画書にならないように注意しましょう。
どのように事業計画書を作成すればいいかわからない場合は、専用ツールの利用がおすすめです。ツールを利用すれば、必要項目を埋めるだけで、簡単に事業計画書を作成できます。無料で利用できるツールもあるため、気になる人はぜひチェックしてみてください。