ファクタリングでは、自社やファクターに対して様々な情報が照会されます。
自社が提出する書類などから照会されるものもあれば、ファクターが独自に調べる情報も存在し、審査では様々な情報から総合してファクタリングの可否を決定しています。
どのような情報がファクタリング審査で照会されているのかを調べることで、審査に通過するためのポイント等を理解することが可能になります。
ファクタリング審査において、どのような情報が照会されているのか、詳しく解説していきます。
ファクタリング会社が審査で利用する企業情報会社
ファクタリングにおいて、売掛先企業の与信状態は最も重要です。
売掛債権の代金をファクターへ支払うのは売掛先企業ですので、売掛先企業が「期日通りにお金を支払うことができるかどうか」という点がファクタリング審査では最重要になるためです。
そのため、ほとんどのファクタリング会社が信用調査会社へお金を支払って売掛先企業の情報を調べています。
どの情報会社を使うかはファクターによって異なりますが、主に以下の2社を使うことが多いようです。
- 帝国データバンク
- 東京商工リサーチ
ファクタリング審査で利用される2つの情報会社について詳しく解説していきます。
帝国データバンク
帝国データバンクは企業を専門対象とする日本国内最大手の信用調査会社です。
日本全国に83箇所の事務所を持ち、日本全国のあらゆる企業の財務情報などを保有しています。
帝国データバンクの会員になり、料金を支払うことで帝国データバンクが保有している信用調査報告書(CCR)を閲覧できるようになります。
ファクターの多くも帝国データバンクの会員になっており、名前を聞いたことがないような売掛先企業であっても、その企業の信用状態を帝国データバンクの情報からチェックして「ファクタリングしても問題ない取引先かどうか」ということを審査しています。
東京商工リサーチ
東京商工リサーチも基本的には帝国データバンクと同じく企業専門の信用調査を行なっている会社です。
帝国データバンクに次いで国内2位の調査会社となっています。
日本全国に82の事業所があり世界最大手の信用調査会社ダンアンドブラッドストリートと提携していることから、海外企業の信用調査を行うことも可能になり、今はダンアンドブラッドストリートの日本における事業の全てを承継しています。
また、保有する情報量も日本最大級の400万社以上となっており、帝国データバンクでは取得することができない小さな企業の情報も東京商工リサーチであれば調べることができる場合があります。
こちらも会員になると企業情報レポートを取得することができ、多くのファクターは会員になり審査に必要な情報を取得しています。
ファクタリング会社が審査で照会する情報
ファクタリング会社は帝国データバンクや東京商工リサーチから以下のような情報を得ています。
- 本店の確認
- 現状と将来像の把握
- 財務情報
- 登記情報
- 官公庁提出情報
- WEB等の情報
上記の情報からどのようなことを判断するのか、詳しく見ていきましょう。
本店の確認
本店や支店が本当に営業しており、実在している会社なのかという確認をすることができます。
帝国データバンクや日本商工リサーチの調査員は実際に会社の本店などを訪問し、営業実態を確認しているため、レポートや報告書を取得すると、「ペーパーカンパニーではないかどうか」ということを知ることができます。
ファクターとすれば、実在しない会社の売掛債権を買い取ってしまうリスクを排除することができないので、本店の確認から会社の実在性をしっかりと把握することは非常に重要です。
現状と将来像の把握
会社の現状を調査からチェックするとともに、その会社の将来像はどのようになるのかという予測も帝国データバンクや東京商工リサーチの報告から確認することができます。
調査会社は市場動向や当該企業の業界内での位置付け、取引先、業況などから、現状の強みや課題を分析し、将来像の予測まで行なってくれます。
これによって、ファクターは「売掛債権を買い取っても問題ない企業かどうか」ということを判断するための貴重な情報を得ることができます。
帝国データバンクや東京商工リサーチが作成したこのような報告書から審査の意思決定を行います。
財務情報
ファクタリングの際には売掛先企業から決算書を提出してもらうことができません。
そのため、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの調査会社が持っている決算情報から売掛先企業の安全性や収益性などを把握します。
売掛先企業が赤字や債務超過であれば審査に通過することが難しくなりますが、財務状態が健全であれば比較的簡単に審査に通過することができます。
なお、上場企業の場合には決算情報を公開しているので、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの情報を取得せずに審査を行うこともあります。
登記情報
法人登記の情報をチェックし会社の規模や株主や目的などを確認することもあります。
商業登記簿謄本には以下の情報が記録されています。
- 本店住所
- 代表者
- 発行済株式数
- 資本金
- 目的
このような会社の基本情報を確認し、取引を行なっても問題ない企業かどうか、本当に法人登記されている健全な企業かということなどを確認しています。
官公庁提出情報
官公庁に提出している情報なども確認します。
ここで確認することは具体的には破産や不渡りの情報です。
当該企業や破産をしていたり、不渡りを出している場合には、絶対に取引をしてはならない企業です。
そのため、官公庁提出情報に上記のようなブラック情報がないかどうかを確認し、ブラック情報がある場合には審査に通過することはできません。
WEB等の情報
WEBやメディア出演などの情報も確認します。
当該企業や商品やサービスがどの程度の知名度があり、どんな評価を受けているのかということをチェックし、企業の将来性の把握や潜在的な力を測っています。
知名度や評価が高ければ「さらに売上拡大が見込める」などと判断されて審査に通過しやすくなることもあります。
ファクタリングは、何も情報がない売掛先企業の与信をチェックすることが非常に重要になります。
帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査会社を利用することで情報が乏しい売掛先企業に対して、精度の高い審査を行うことができます。
ファクタリングの売掛先企業に対する審査は帝国データバンクや東京商工リサーチのレポートや報告書から上記のような項目を確認して行います。
ファクタリング会社が自社で調べる情報
ファクタリング会社が自ら調べる情報も存在します。
ファクター自ら調べる情報は主に、納入企業の情報になります。
提出する決算書や登記簿謄本から自社について以下のような内容をチェックしています。
- 財務情報
- 登記情報
- 資金繰り情報
- 企業経営者の定性評価
ファクタリング会社は自社に対してどのような基準で審査を行うのか、詳しく解説していきます。
財務情報
納入企業はファクタリングの申し込みの際に必ず決算書を提出しなければなりません。
ここから、納入企業の財務情報をしっかりと確認されます。
ただし、ファクタリングにおいて、ファクターへ支払いを行うのは売掛先企業ですので納入企業の財務情報はそれほど重視されません。
「すぐに倒産する状況ではない」と判断されれば赤字や債務超過でも審査に通過することができる可能性があります。
また、3社間ファクタリングにおいては、自社に売掛債権の代金が経由しないので赤字や債務超過でも売掛先に問題さえなければ高い確率で審査に通過できます。
とはいえ、必ず決算書から自社に対する審査は行われます。
登記情報
初めてファクターと取引する際には商業登記簿謄本の提出も必要になります。
前述したように、商業登記簿謄本からは会社の実在と規模などを知ることができます。
ファクターとすれば架空の法人に対して取引をすることはできないので、商業登記簿謄本から「実在が確認できる会社かどうか」ということを確認しています。
実在が確認できなければもちろん審査に通過することはできません。
資金繰り情報
提出を受けた決算書から企業の資金繰りも把握します。
2社間ファクタリングにおいては売掛債権の期日になると資金が納入企業を通過するため、納入企業の資金繰りを審査することは非常に重要になります。
もしも資金繰りがあまりにも厳しい会社とファクタリングしてしまうと、入金になった売掛債権の代金を他の使い道に流用したり、持ち逃げしてしまう可能性があるためです。
また、資金繰りをチェックするために追加で通帳のコピーなどの提出を求められる場合もあります。
企業経営者の定性評価
ファクターは審査で、企業の経営者個人の資質などもチェックしています。
特に面談が必須のファクターは面談でこの部分を非常に重視してチェックしています。
企業が成功するか失敗するかは、最後は経営者の資質や人となりに左右されることが非常に多いからです。
経営者が業界の動向や、自社の強みや弱み、経営課題をどの程度まで把握しているのか、企業の将来像にはどのようなビジョンを持っているのかなどを総合的にチェックし、「取引をしても問題ない企業(社長)かどうか」ということを判断しています。
ファクターとの会話や面談は審査の一項目だと考えて、自社の強みやビジョンを積極的にアピールするように心がけましょう。
ファクタリング審査と個人信用情報
ファクタリングの審査では経営者の個人信用情報をチェックしていません。
そもそもファクタリング会社は信用情報機関に加盟していないため、個人信用情報を確認することができないためです。
また、個人ローンではないので、個人信用情報を確認する合理性もありません。
そのため、経営者がブラックでもファクタリングを利用することができます。
ファクタリング審査で個人信用情報をチェックしない理由をもう少し深掘りしていきます。
ファクタリング会社は信用情報機関に加盟していない
個人信用情報は、CICやJICCなどの個人信用情報機関に加盟している企業でないと確認することはできません。
個人信用情報機関に加盟しているのは基本的には銀行や信用金庫などの金融機関、消費者金融や信販会社などの貸金業者や割賦販売業者だけになります。
ファクタリングはお金を貸しているわけではなく、売掛債権という資産を買い取っているだけですので、ほとんどのファクターは個人信用情報機関には加盟していません。
帝国データバンクや東京商工リサーチなどの企業の信用調査会社には加盟していますが、個人の信用情報機関には加盟していないので、ファクタリング審査で代表者個人の信用情報を確認するようなことはありません。
個人ローンではないので照会しない
そもそも、個人信用情報は、カードローンやフリーローンや住宅ローンやクレジットカードなどの個人に対する与信取引の審査に対してチェックする情報です。
ファクタリングは企業の財務状況や収益力に対して審査を行うものですので、個人の信用は無関係と考えるのが普通です。
個人ローンであれば、「この人はお金を返すことができる人か」ということを判断するために個人信用情報は非常に重要になりますが、ファクタリングで重視されるのは納入企業や支払企業の収益力や財務状況です。
そのため、本来的に審査とは無関係な代表者個人の個人信用情報を調べることありませんし、不要な個人情報を取得することは法的に違法となる可能性もあります。
経営者がブラックでも審査には影響ない
ファクタリング審査では個人信用情報をチェックされることはありません。
そのため、経営者個人の信用情報がブラックでも原則的に審査に影響することはありません。
むしろ、ファクターは経営者がブラックということを知ることもありません。
銀行とトラブルがあり、銀行から事業資金を借りられない、信用情報もブラックで個人ローンも借りられないという人も、ファクタリングであれば審査に通過できる可能性があります。
審査で照会される情報に関してよくある質問
- 架空の売掛先への売掛債権を計上したらバレますか?
- ファクタリング審査では必ず帝国データバンクや東京商工リサーチの情報をチェックします。
万が一、架空の売掛先企業名を書いて、請求書を作成したとしても、存在しない会社名であることは瞬時にバレてしまいます。
嘘がバレるとファクターのブラックリストに入り、以後ファクターと取引することは不可能になるので絶対に嘘はつかないようにして下さい。
- 自社の与信状況までチェックするのはなぜですか?
- 2社間ファクタリングにおいては、売掛債権の代金が自社を経由するため、自社の与信をチェックし資金流用のおそれがないかどうかということを審査しています。
3社間ファクタリングでも、自社の与信をチェックして「今後取引を継続していくことができる企業かどうか」ということの確認を行なっています。
業況に問題ないのであれば、手数料が低くなることもあります。
- 全てのファクターが個人信用情報をチェックしないのですか?
- ファクターによって審査の内容や方針は異なります。
そのため、ファクターによっては個人信用情報まで確認してリスクを判定することも考えられます。
実際にメガバンク傘下の大手ファクターは貸金業者登録を行っているので個人信用情報の確認をすることも可能です。
独立系のファクターは確認しないことが多いようですが、大手では確認される可能性もあるでしょう。
ファクタリング審査では必ず個人信用情報を確認しないとまでは言い切れません。
- 審査の方法はどの会社も同じでしょうか?
- 審査の方法はファクターによって異なります。銀行系の大手ファクターは銀行融資と同じくらい詳細な厳しい審査を行うこともあります。
一方、悪徳業者は何も審査をせずに高利率でファクタリングに応じることもあります。
人間の目でしっかりと審査をすることもあれば、AIやプログラムが自動で審査を行うこともあります。
審査の方法や基準はファクターによって異なるので、一社に落ちたからといって諦めずに他社にも申し込むのがよいでしょう。
まとめ
ファクタリングの審査では自社と売掛先企業の審査がそれぞれ行われます。
売掛先企業の審査は帝国データバンクや東京商工リサーチなど、企業専門の信用調査会社から情報を取得し「売掛債権を支払うことができるかどうか」という点を審査します。
自社の審査は主に提出した決算書から財務状況や収益力などを確認しています。
ファクタリング審査の基準はファクターによってかなり異なります。
一社の審査に落ちても、他の会社の審査に通過できる可能性は十二分にあるため、諦めずに複数社の審査に申し込むようにしましょう。