デイサービスは介護保険適用の事業所ですが、開業前も開業後も外部からの資金調達を検討しておかなければならない業種の1つです。
デイサービスはとにかく開業前に多額のお金が必要になる業種であり、開業後も運転資金調達の悩みに晒されてしまう事業者も多数存在します。
デイサービスをこれから開業するという方は、開業時の資金がどの程度でいくらの借入が必要なのか、返済はいくらなのかということをしっかりと把握しておく必要があります。
また、開業後の運転資金調達についても、銀行などの金融機関以外の資金調達手段についてもしっかりと理解しておきましょう。
デイサービスの資金調達の課題と解決策について詳しく解説していきます。
デイサービスの開業にかかる費用は?
まずは、デイサービスの開業にかかる費用はどの程度なのかということについて解説します。
開業前にかかる費用の主な項目として以下のようなものをあげることができます。
- 人件費
- 3ヶ月分の運転資金
- 設備資金
- 車両費
- 備品や雑費
これらの費用はそれぞれの費用が高額ですので、場合によっては合計で1億円以上になってしまうこともあります。
デイサービス開業前にかかる費用について詳しく解説していきます。
人件費
デイサービスには最低でも5つの役割の人員を雇用する必要があり、それぞれの月給の相場は以下のようになっています。
- 管理者:月給25万円〜30万円程度
- 生活相談員:月給20万円〜25万円程度
- 機能訓練指導員:25万円〜30万円程度
- 看護職員:20万円〜25万円程度
- 介護職員:15万円〜20万円程度
デイサービスでは、最低でも上記の役割の人を1人ずつ雇う必要があり、少なくとも1ヶ月あたり100万円〜120万円程度の人件費が必要になってしまいます。
1人で始めることができる事業と比較して人件費の支出は高額になります。
詳しくは後述しますが、開業してから3ヶ月間は売上の入金がないので、3ヶ月分の人件費である300万円〜400万円程度は手元に保有していなければならないことになります。
3ヶ月分の運転資金
デイサービスの主な売上は介護保険によって賄われますが、介護保険は前月分の請求を翌月10日頃に行い、その請求分が入金になるのが、請求した月の翌月25日頃になります。
つまり、4月に開業した場合、4月分を5月に請求し、入金になるのが6月ということになります。
サービス提供から最大で3ヶ月は入金がありませんので、人件費の他にも施設の家賃や水道光熱費や食費やリース料などは同じく3ヶ月分は手元に持っていなければなりません。
運転資金が高額になる上、入金が遅いので開業当初の運転資金の確保というのはデイサービスの資金繰りの大きなポイントになります。
設備資金
また、高齢者を施設で預かりサービスの提供を行うデイサービスでは、施設を建築したり、改装するための資金が必要です。
デイサービスの居抜き物件などはほとんどのケースで存在しません。
そのため、基本的にデイサービスを始めるには、新しく施設を建築したり、賃貸物件をリフォームしなければなりません。
施設の規模によって必要な設備資金は大きく異なりますが、新しく建築する場合には数億円もの建築費がかかってしまうことがあります。
また、賃貸物件に入居する場合でもリフォーム代金やキッチン・トイレ・浴室などの専門設備の導入によって数千万円程度の投資が必要になることも珍しくありません。
デイサービスはサービス開始当初の設備投資が高額になるという点が大きな特徴です。
車両費
デイサービスは介護対象者を送迎しなければなりません。
このために必要な介護車両の購入代やリース代などが発生します。
デイサービスの規模によっては車両を複数台確保する必要があり、購入する場合には合計で数千万円にのぼることもあります。
備品や雑費
この他にも椅子やテーブルなどの備品代や、開業のためには様々な設備や備品が必要です。
こまごまとしたものを合わせて数百万円程度の支出になってしまうこともあるでしょう。
このように、デイサービスは介護事業の中でも開業時の初期投資が多額になってしまう可能性が高い業種です。
場合によっては億を超える投資が必要になることも珍しくはなく、これだけの投資を自己資金を行うことができる人は少なく、ほとんどの人が借入によって投資を行なっています。
借入をする際には「何にいくら必要なのか」という明細をしっかりと出しておくことです。
金融機関は使い道が分からないものにはお金を貸さないので、雑費まで含めていくら必要なのかという計算をしておくとともに、業者からの見積もりを手に入れておきましょう。
デイサービスの開業資金の調達方法
場合によって1億円以上も必要になるデイサービスの開業資金はどのようにして調達すればよいのでしょうか?
金額が高額になるので、基本的には以下の方法で長期資金を借りるしかありません。
- 銀行や信用金庫などの金融機関
- ノンバンクの不動産担保ローン
それぞれの借入手段の特徴やメリット・デメリットについて解説していきます・
銀行や信用金庫から長期資金を借りる
基本的な方法が銀行や信用金庫からお金を借りるという方法です。
銀行や信用金庫などは、健康保険や介護保険が適用になる病院や介護施設は「安定した商売だ」と判断する傾向があります。
そのため、開業のために必要な資格や人員の確保の基準を満たしているのであれば、高い確率で数億円単位の設備資金の融資に応じてくれる可能性があります。
特に今は、銀行や信用金庫も融資先の不足に悩んでいますので、「デイサービスの施設を作りたい」と話を持っていけば喜んで審査をしてくれるでしょう。
金利も2%を切るような低金利で借りることができるのが一般的で、15年程度の期間で分割で返済していくことになります。
金利も低く、長期で返済することができるので、高額の借入を行なっても、計画さえしっかりとしていれば無理なく返済することが可能です。
ノンバンクの不動産担保ローンを利用する
ノンバンクのビジネスローンで開業資金を借りることも可能です。
ただし、ノンバンクは無担保では1,000万円程度までしか融資に応じてくれないので、高額な開業資金を借りようと思ったら担保となる不動産を用意して、不動産担保ローンを借りなけければなりません。
ノンバンクは審査基準が銀行よりも緩いので、銀行審査に落ちた人でも借りることができます。
しかし、金利は10%以上の高金利となっており、利息負担は銀行借入と比較した圧倒的に高くなります。
ノンバンクからも開業資金を借りることはできますが、開業時には銀行や信用金庫などの低金利の金融機関から借りやすいので、基本的には開業資金は銀行や信用金庫から借りるようにしてください。
ノンバンクは銀行や信用金庫から開業資金を借りた後に「この費用を借りるのを忘れた」というような追加でお金が必要になり、その金額が少額だった場合のみ利用を検討すべきでしょう。
基本的には手を出さない方が無難です。
開業時の資金は高額になるので金融機関から長期資金を借りるしかない
前述したように、開業時の資金は高額です。
基本的には数千万円とか数億円もの高額の資金を融資してくれるのは、銀行や信用金庫などの金融機関だけです。
また、高額の借入金を短期間で返済していくことは困難ですので、10年以上の長い時間をかけて返済していくしかありません。
そして、長期で返済することができるもの銀行や信用金庫などの金融機関からの借入金だけです。
ファクタリングは一括返済、ノンバンクも基本的には5年返済程度です。
現実的に、デイサービスの開業資金の借入先は銀行や信用金庫の一択だけと言えるでしょう。
「デイサービスを開業したい」と考えたら、早めに銀行や信用金庫へ相談に行き、担当者と一緒の創業計画を作るようなイメージで、金融機関と二人三脚で進めるのがよいでしょう。
開業前に資金繰り計画を綿密に立てないと開業後の返済は困難
このようにデイサービスは開業時にかかる費用が膨大で、借入金の金額も高額になるため開業前に綿密な資金繰り計画を立てる費用があります。
この資金繰り計画を立てた上で借入などを行わないと、せっかく開業したのに借入金の返済が困難になり、倒産してしまうという可能性も十二分に考えられます。
開業前には、綿密な資金繰り表の提出が求められますので、資金繰り表作成時に「いくらの借金返済があり」「運転資金がいくらで」という支出を明確にし、「入金に関しては通所者の自己負担分の入金がいつ」「介護保険の入金がいつになるのか」などということを詳細に計算して、資金繰りにズレが生じないようにしましょう。
開業資金が高額になるデイサービスは借金の返済も膨大ですので、開業前から緻密な資金繰りの管理が非常に重要です。
そして、できればこれらの計画は資金繰り表作成などのプロである銀行の担当者と一緒に作成を手伝ってもらうのがよいでしょう。
デイサービス(通所介護)は運転資金の資金調達できる?
デイサービスは開業前の設備資金だけでも、非常に大きなお金がかかります。
では、デイサービスは運転資金の借入を金融機関から行うことができるのでしょうか?
開業前であれば金融機関から借りることは可能ですが、開業後になってしまうと一定期間は金融機関から借りることが著しく難しくなってしまいます。
デイサービスの運転資金の調達方法などについて解説していきます。
開業前に金融機関から借りておくのがベター
デイサービスは運転資金も膨大です。
開業してから最初の介護保険金が入金になるまでの3ヶ月間は最低でも300万円以上の人件費や、事務所家賃やリース代などを支払っていかなければやらず、場合によってこの3ヶ月間の運転資金だけで最低でも1,000万円以上になることもあります。
これらの最初に用意しておく運転資金は、銀行の審査では「開業に必要不可欠な資金」と判断されます。
そのため、設備導入のために必要な資金を申し込むのと同時に開業当初の運転資金の借入を申し込めば、高い確率で融資を受けることができるでしょう。
むしろ、金融機関も開業当初の運転資金を確保させなければ、別途貸し出している設備資金の返済が危うくなります。
開業前に設備資金を借りることができるのであれば、運転資金も開業前に借りられると考えておいて問題ありません。
手元に運転資金がない場合には忘れずに申し込むようにして下さい。
開業後1年以内は借りにくい
開業前であれば、開業時に必要な運転資金を借りることは可能ですか、開業後になってしまうと話は180度変わってしまいます。
銀行融資というものは基本的に前回借入日から1年以上は経過していないと借りることができません。
そのため、開業前に開業に必要な設備資金を借りてしまっていると、後から「追加で運転資金を借りたい」と申し出ても、なかなか簡単に融資を受けることはできません。
開業時に必要な運転資金は開業前であれば借りやすいものの、開業後になってしまうと借り入れは簡単ではないということを理解しておきましょう。
では、開業後にはどんな方法で資金調達すべきなのでしょうか?
開業後の資金調達は介護報酬ファクタリング
開業後1年以内のデイサービスは運転資金を金融機関から借りることが簡単ではありません。
開業後1年以内に運転資金を調達したいのであれば介護報酬ファクタリングという方法で資金調達することをおすすめします。
介護報酬ファクタリングは、開業後すぐでも利用することができ、手数料が低く、介護報酬の資金ギャップを縮めることに大きく寄与します。
介護施設の運転資金調達には介護報酬ファクタリングが向いている理由について詳しく解説していきます。
開業間も無くでも利用できる
ファクタリングであれば開業間も無くでもほぼ確実に資金調達を行うことができます。
介護報酬ファクタリングは介護報酬を買い取るものですので、介護報酬債権さえ手元にあればかなり高い確率で買い取ってもらうことができます。
「開業してから時間がたっていない」などの事情は審査ではほとんど関係ありません。
介護報酬の債務者は介護保険という公的機関ですので、支払いが期日通りに行われる可能性はほぼ100%です。
開業年数に関わらず、ほぼ確実に運転資金を調達することが可能です。
手数料が低い
介護報酬ファクタリングは手数料が低いという点も大きな特徴です。
手数料は2%程度で、中には1%未満の手数料を設定している業者も存在します。
ファクタリングというと手数料が高いイメージがありますが、介護報酬という公的債権を対象とした介護報酬ファクタリングは債権がデフォルトするリスクが非常に低いので手数料が非常に低くなっています。
また、介護報酬という公共性の高い債権の買い取りをする介護報酬ファクタリングを取り扱う業者は大手企業ばかりですので、悪徳業者と取引してしまうリスクもありません。
ファクタリングでありながら資金調達コストが低く安全というのも介護報酬ファクタリングを利用する大きなメリットと言えるでしょう。
入金までの時間を半分に短縮できる
介護報酬ファクタリングは入金までの時間を最大半分に短縮することができます。
例えば4月分の介護報酬を5月10日に請求し、その請求書をファクターへ売却すれば、5月15日くらいには入金を受けることができます。
前述したように、介護保険は請求月の翌月25日くらいに入金ですので、介護報酬ファクタリングを利用すれば請求から入金までの日数を約半分に短縮することが可能です。
最初から介護報酬ファクタリングを利用することを前提としておけば、手元には1ヶ月から2ヶ月程度の運転資金を確保しておけば問題ありません。
デイサービス(通所介護)の資金調達についてよくある質問
- 開業資金を全て借入に頼るのは危険でしょうか?
- 利用者の目処が固くついているのであれば、売上は安定するため、フルローンでも施設の運営はできるでしょう。
ただし、自己資金が少しでもあったほうが融資がうけやすく、資金繰りも楽になるので、預金や出資などである程度の自己資金を確保してから開業した方が無難です。
- 手元にはいつもどの程度の運転資金を持っていればよいでしょうか?
- 設備のトラブルなど、急にお金が必要になった時に備えて、やはり3ヶ月程度の運転資金は手元に確保しておいた方がよいでしょう。
緊急でお金が必要になった時に手元の資金を全て使ってしまうと、次の介護保険入金になるまで手元の資金が枯渇してしまいます。
そのため、1ヶ月分の運転資金では心許ないのでやはり3ヶ月分くらいがあった方が無難です。
- 資金繰りを安定させる方法を教えてください
- 資金繰りの管理を徹底することが重要です。デイサービスは毎月の売上の変動はそれほどなく、経費も月によってそれほど変わるわけではありません。
そのため、毎月いくらの流出があり、いくらの入金があるのかを経営者がしっかりと把握しておくことが最も資金繰りの重要なポイントです。
経理担当者に任せきりにするのではなく、経営者自ら資金繰り管理を徹底するようにして下さい。
- 開業から1年経過すれば銀行からお金を借りることはできますか?
- 開業から1年経過すれば、銀行からお金を借りやすくなります。
ただし、借入時には銀行に最初の決算書を提出しなければなりません。
ここで営業赤字などになっていれば融資を断られてしまう可能性があります。
計画通りに一定の利益を出すことができているのであれば、借入はそれほど難しくないでしょう。
- 施設を拡張するための設備資金は開業からどの程度になれば借りることができるでしょうか?
- 最初の施設の開業資金の借入が残っているのであれば、施設拡張のため追加で設備資金を借りることは難しいかもしれません。
借入が残っていない場合には、営業赤字にさえなっていなければ審査に通過できる可能性が高いと言えるでしょう。
まとめ
デイサービスは開業時に多額の資金が必要になる業種です。
多くの事業者が開業に必要な資金を金融機関からの借入で賄っており、審査に通過できる可能性も開業に必要な条件を満たしているのであれば高いと言えるでしょう。
しかし、開業後になってしまうと、そこから1年以内はお金を借りることが難しくなってしまいます。
開業当初の運転資金は必ず開業前に調達しておくようにしましょう。
開業後に資金調達したい場合には介護報酬ファクタリングが有効な手段です。
高い確率で審査に通過することができ、手数料も高くありません。
開業前と開業後、最適な資金調達手段は異なります。
タイミングに合わせてベストな方法で資金調達するようにしましょう。