インボイスファイナンスが注目されています。

これまでは不動産や有力な保証人を用意することができない事業者は銀行などからお金を借りることができませんでした。

しかしインボイスファイナンスであれば、不動産をもっていない事業者でもお金を借りることができます。

幅広い人に資金調達のチャンスが増えるインボイスファクアンスですが、まだまだ認知が広がっているとは言えない状況です。

インボイスファイナンスとは何か、メリットデメリットや中小事業者の活用法について詳しく解説していきます。

インボイスファイナンスを理解することで企業の資金調達の幅は広がるので、しっかりと理解しておきましょう。

 

インボイスファイナンスとは何?

インボイスファイナンスとは何?

インボイスファイナンスとは簡単に言えば請求書を利用した資金調達です。

なぜ請求書を利用することで資金調達ができるのか、詳しく解説していきます。

インボイスとは「請求書」

インボイス(Invoice)とは、商業上の送り状、つまり請求書のことを示します。

会社が取引先や顧客に対して送付する請求書をインボイスなどと言います。

金融関係ではたまに使われる言葉ですので、頭に入れておくとよいでしょう。

請求書とは「〇〇月〇〇日までに■■万円支払ってくれ」という内容の書類です。

つまり、請求書を発送した側は、請求書を送付した側に対して「〇〇月〇〇日までに■■万円受け取る権利」を持っていることになります。

これを債権と言い、債権は資産です。

インボイスは債権という資産であるということも併せて理解しておくようにしましょう。

インボイスファイナンスとは「請求書を利用した資金調達」

そして、インボイスファイナンスとは、「請求書を利用した資金調達」の方法を示します。

インボイスという資産を売却したり、担保に入れることで、銀行やファクタリング会社などの外部から資金調達することをインボイスファイナンスと言います。

これまでは、インボイスを利用した資金調達方法は日本にはそれほど多くありませんでした。

しかし、最近はインボイスを活用した資金調達方法が注目されていますし、国も推奨しているくらいです。

インボイスファイナンスを利用すれば、どのような企業でも平等に資金調達をすることができる可能性があります。

インボイスファイナンスが注目される3つの理由

インボイスファイナンスが注目される3つの理由

インボイスファイナンスが注目されるのには以下の3つの理由があるためです。

  • 不動産をもっていない企業でも資金調達できる
  • インボイスを担保利用したまま営業できる
  • 売掛先に知られないことも多い

このような理由によってインボイスファイナンスは国が推奨する資金調達方法でもあります。

インボイスファイナンスが注目される理由や中小企業にとってインボイスファイナンスが資金調達に有利になる理由について詳しく解説していきます。

不動産をもっていない企業でも資金調達できる

インボイスファイナンスは請求書に信頼があれば、銀行やファクターから資金調達することができます。

これまでの銀行融資は不動産を持っている人や企業の方が圧倒的に資金調達が有利になる傾向がありましたが、これはある意味では不平等です。

先祖代々受け継いで潤沢な不動産を持っている企業ほど資金調達が有利になるということになるためです。

インボイスファイナンスであれば、不動産や有力な連帯保証人がなくてもあらゆる企業が平等に資金調達をすることができます。

審査で評価されるのは企業が持っている請求書という資産になり、どんな企業でも一定程度の請求書を保有しているので皆が平等な条件で審査を受けることが可能です。

また、最近は不動産などの不要な資産を持たない会社の方が外部からの評価も高くなる傾向があります。

インボイスファイナンスはこの点でも現代の需要にマッチした資金調達方法ということができます。

インボイスを担保利用したまま営業できる

インボイスファイナンスを利用して銀行からお金を借りたとしても、銀行に請求書を取られてしまうわけではありません。

インボイスファイナンスで融資を受けても、これまでと同じように営業活動を継続していくことができます。

インボイスファイナンスで請求書に対して抵当権を設定しても、その請求書が銀行に差し押さえられてしまうわけではないのでいつも通りに取引先と決済することもできます。

インボイスファイナンスで資金調達を行なっても営業活動には何も支障なく利用することができます。

売掛先に知られずに利用できることも

インボイスファイナンスでは、売掛先に通知なしで利用できる場合もあります。

銀行から借入をする場合には、原則的に売掛先への通知が必要ですが、一部ノンバンクや地方銀行では通知なしでインボイスファイナンスを利用できる場合があります。

また、2社間ファクタリングを利用すれば売掛先への通知なしで資金調達可能です。

売掛先に外部から資金調達をしたことを知られることはあまり好ましいことではありません。

「経営状況が悪いのかもしれない」「今後の取引が心配」などと、ネガティブに判断されて取引継続に悪影響が生じてしまう可能性もあります。

売掛先に秘密で利用できれば、このようなネガティブな評価を受ける心配はありません。

事業者のプライバシーが守られ資金調達によって外部からの評価が下がることがないというのも、インボイスファイナンスの大きな魅力の1つです。

3つの種類のインボイスファイナンス

インボイスファイナンスには主に以下の3つの種類があります。

  • 売掛債権担保融資(ABL)
  • ファクタリング
  • インボイスディスカウントファイナンス

銀行からの借入、民間のファクターとのファクタリング、輸出企業が利用できるインボイスディスカウントファイナンスの3種類です。

それぞれの概要について詳しく解説します。

売掛債権担保融資(ABL)

銀行で利用できるインボイスファイナンスが売掛債権担保融資(ABL)です。

売掛債権担保融資(ABL)は自社の売掛債権に対して根抵当権を設定して、「〇〇万円まで借りることができる」という融資枠を設定するか、1年以内の短期資金で融資を受けることが一般的です。

元来、銀行融資は不動産担保に過度に依存した融資を行なっていました。

何かと言えば銀行から「不動産担保を入れてください」と求められるので、不動産を所有していない新興企業などは銀行からお金を借りることが難しいという問題点がありました。

しかし売掛債権担保融資(ABL)であれば、不動産を所有していない事業者でも、インボイス(売掛債権)を担保にお金を借りることができます。

ファクタリング

ファクタリングとは、インボイス(売掛債権)をファクタリング会社に売却して、インボイスの期日前に現金化する方法です。

最短即日で資金化することができる上に、審査のウェイトは自社ではなく売掛先です。

売掛先企業が「期日通りに支払いができる」と判断できるのであれば、審査に通過できる可能性が高いと言えます。

契約当事者が自社とファクターだけであれば「2社間ファクタリング」になり、自社とファクターと売掛先で契約すると「3社間ファクタリング」になります。

インボイスディスカウントファイナンス

インボイスディスカウントファイナンスとは輸出企業が輸出債権を銀行などに譲渡して資金化をする方法です。

国際ファクタリングに買取がついたイメージと考えれば分かりやすいのではないでしょうか?

債務者は海外企業ですので、国際ネットワークに参加しているメガバンクなどでしか取り扱いができない方法です。

売掛債権担保融資(ABL)とは?

売掛債権担保融資(ABL)とは?

インボイスファイナンスの1つ売掛債権担保融資は銀行から売掛債権を担保にして融資を受ける方法です。
銀行にインボイスを担保として提供して、その担保評価額の半分程度の範囲内で融資を受けることができます。

売掛債権担保融資(ABL)のメリット

売掛債権担保融資(ABL)のメリットとしては以下の3点をあげることができます。

  • 不動産がなくても融資を受けられる
  • 売掛先に秘密で担保利用できる場合もある
  • ファクタリングよりも手数料が低い

以前から銀行が担保として認めるものは不動産ばかりでしたが、売掛債権担保融資(ABL)を利用することで不動産を所有していない会社でも資金調達しやすくなります。

また、前述したように、担保設定する際に売掛先に秘密にすることができる金融機関も存在します。

また、金利は2%〜3%程度が設定されることが一般的で、ファクタリングよりもかなり低いコストで資金調達可能です。

売掛債権担保融資(ABL)のデメリット

売掛債権担保融資(ABL)のデメリットは以下の2つです。

  • 融資までに時間がかかる
  • 継続的に売掛債権を所有する取引先が複数社ないと審査には通らない

売掛債権担保融資(ABL)は売掛債権の担保価値の査定などに時間がかかるので、銀行融資の中でも審査に時間がかかる部類の融資です。

早くて2週間程度、遅い場合には3週間程度の時間がかかるので、急いでいる時には活用することが難しいでしょう。

また、売掛債権担保融資(ABL)は会社が平均的に保有する売掛債権を査定して、その平均額に対して「限度額〇〇万円」という融資枠を設定するのが基本的な融資方法です。

そのため、会社には常に一定以上の金額の売掛債権を所有していないと、銀行が担保評価を出すことができません

恒常的に複数社の売掛債権を常に持っている会社でないと売掛債権担保融資(ABL)を借りことは難しいでしょう。

1つの売掛債権を買い取ってくれるファクタリングとはこの点では大きな違いがあります。

ファクタリングとは?

ファクタリングとは?

ファクタリングとはインボイス(売掛債権)をファクターへ売却して資金化する方法です。
売掛債権担保融資(ABL)は銀行からの借入ですが、ファクタリングはインボイスの売却ですので借入ではありません

そして、ファクターへ支払うのは自社ではなく売掛先ですので、自社の与信よりも売掛先の与信の方が圧倒的に重視されます。

自社に信用がなくても売掛先の信用で資金調達することができるのがファクタリングの大きな特徴です。

売掛債権担保融資(ABL)は銀行へ返済するのは自社ですので、いかに優良企業の売掛債権を持っていても自社に信用がなければ審査には通過できません。

ファクタリングのメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。

ファクタリングのメリット

ファクタリングのメリットは以下の3つです。

  • インボイスの回収リスクも売却できる
  • 最短即日でインボイスを資金化できる
  • 売掛先に秘密でファクタリング可能

ファクタリング最大の特徴が、売掛債権の回収リスクをファクターへ売却できるという点です。

ファクタリングによって売掛債権を売却することによって、売掛債権のデフォルトリスクもファクターへ売却しています。

これによって、売掛債権が回収不能になった場合の損失はファクターが背負うことになり、自社には一切損失は及びません。

また、2社間ファクタリンなら最短即日資金化に対応しているので、2週間以上の時間がかかる売掛債権担保融資(ABL)と比較して資金調達スピードは圧倒的です、

さらに、2社間ファクタリングであれば確実に売掛先に秘密で資金調達できるので、ファクタリングをしたことを売掛先に知られて自社がネガティブに評価される心配はありません。

ファクタリングのデメリット

ファクタリングのデメリットは手数料の高さです。

ファクタリングには契約当事者の違いによって2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがありますが、それぞれの手数料は以下のように異なります。

  • 2社間ファクタリング:10%〜20%程度
  • 3社間ファクタリング:3%〜10%程度

売掛債権担保融資(ABL)の金利が2%程度であることを鑑みると、ファクタリングの手数料は圧倒的に高くなります。

売掛債権の回収リスクを売却することができるという大きなメリットがある一方、その分ファクタリングは手数料負担がバカになりません。

手数料の負担は確実に経常収支を圧迫するので、利用するタイミングは本当に困った時だけとして利用金額も必要最小限とするようにしましょう。

インボイスディスカウントファイナンスとは?

インボイスディスカウントファイナンスとは?

インボイスディスカウントファイナンスは、輸出債権を銀行へ売却する方法です。

インボイスディスカウントファイナンスはノンリコースで行われるので、輸出先企業がもしも期日通りに入金しなかった場合にも自社に責任が及ぶことはありません。

国を跨いだ取引は取引先企業のリスクがどのようなものかは分かりませんし、相手を信頼できる指標も国内企業と比較して圧倒的に少なくなります。

インボイスディスカウントファイナンスであれば、輸出先の企業の業況に問題があったとしてもその損失はファクターが被ってくれるので安心して海外の企業に対して新規開拓をすることができます。

3社間ファクタリングの国際版と考えれば分かりやすいでしょう。

インボイスファイナンスに関するよくある質問

期日をすぎたインボイスでも資金化できますか?
不可能です。
インボイスファイナンスでは期日前の請求書しか資金化のために利用することはできません。
期日をすぎた請求書を買い取ってもらいたいのであれば不良債権の買取を行なっているサービサーに相談するようにしましょう。
請求書を偽造したら罪になりますか?
請求書を偽造したら私文書偽造に罪に問われます。
そして偽造した請求書を利用して資金調達した場合には詐欺罪に問われる可能性もあります。
インボイスはかなり簡単に偽造すことができますし、銀行やファクターも偽造のリスクを十二分に認識しているので、偽造を見破るノウハウもしっかりと持っています。
偽造は必ずバレて、バレた場合のリスクは非常に大きなものがあるので絶対に不正に手を染めることがないようにしてください。
個人事業主に対するインボイスでも利用可能ですか?
利用可能です。
当該個人事業主が期日通りにしっかりとお金を支払うと判断できれば十分に審査に通過できるでしょう。
ただし、一般的には個人事業主よりも法人の方が信用度が高くなる傾向があるので、個人事業主に対するインボイスの方が手数料が高くなってしまうことはあります。
インボイスファイナンスで有利になる請求書とはどのようなものでしょうか?
銀行やファクターにとって「リスクが低い」と判断されるインボイスであることが大切です。
具体的には「規模の大きな企業」「期間の短いインボイス」「金額の大きなインボイス」これらの請求書は比較的リスクが低いと判断されるものになります。
複数の会社のインボイスを手元に持っているのであれば、できるだけ大きな企業で期間の短いインボイスを利用した方が有利な条件で資金調達することができるでしょう。
インボイスディスカウントファイナンスと国際ファクタリングの使い分けについて教えてください。
インボイスディスカウントファイナンスは、輸出債権の売却を行うもので、早期資金化という効果があります。
一方、国際ファクタリングは輸出債権の支払いをファクターが保証するというだけの効果です。
輸出債権は資金化されるまでに比較的時間がかかるので、早く資金が必要な場合にはインボイスディスカウントファイナンスを利用して、「海外企業の支払いが心配」というだけの場合には、国際ファクタリングを利用するというように、用途に合わせて適切に使い分けるのがよいでしょう。

まとめ

請求書を利用して資金調達することができるインボイス ファイナンスが少しずつ拡大しています。

インボイスファイナンスであれば、不動産担保がなくても銀行から低金利で資金調達することができる可能性がありますし、ファクタリングを利用することで最短即日で資金調達することも可能です。

インボイスは偽造しやすいので、お金に困った時などはついつ不正に手を出してしまう人もいるかもしれません。

しかし、不正に手を出してしまうとその後の企業活動は継続不可能なほどの社会的な制裁を受けることになります。

いかにお金に困っても絶対に不正に手を出さず、正しい形でインボイスを利用した資金調達をするようにしましょう。