2社間と3社間でファクタリングのサイクルは異なる
ファクタリングのサイクルはファクタリングの契約当事者によって異なります。
サイクルは大きく分けて3つあり、
それぞれのファクタリングによってサイクルが異なります。
それぞれのサイクルについて具体的に解説します。
2社間ファクタリングのサイクル

2社間ファクタリングの申し込みから入金までのサイクルは以下のようになってします。
- 取引先へ商品やサービスを納入して売掛金発生
- ファクターへ申し込み
- ファクターの審査
- ファクターと契約
- 売掛債権を売却、入金
- 売掛債権期日に売掛先から納入企業へ売掛債権代金入金
- 支払企業が売掛債権入金額を送金
2社間ファクタリングでは申し込みから入金まではスムーズに進み、最短即日で資金調達が可能です。
ただし、売掛債権期日になると、売掛先企業はファクタリングをしたとを知らないのでいつも通りに自社へ支払いを行います。
この資金をそのままファクターへ送金しなければならない手間がかかります。
2社間ファクタリングでは、売掛先企業→自社→ファクターというサイクルでファクターは回収を行います。
3社間ファクタリングのサイクル

3社間ファクタリングの申し込みから入金までのサイクルは以下の通りです。
- 取引先へ商品やサービスを納入して売掛金発生
- ファクターへ申し込み
- ファクターの審査
- 売掛先の同意を取得
- ファクターと売掛先が債権譲渡について確認
- ファクターと契約
- 売掛債権を売却、入金
- 売掛債権期日に売掛先企業がファクターへ支払い
3社間ファクタリングは売掛先の同意を得て行うファクタリングです。
売掛債権売却前に売掛先の同意を取得し、売掛先とファクターが契約内容の確認などを行うので、契約手続きに時間がかかり1週間程度は必要になります。
ただし、売掛債権売却後は売掛先企業が直接ファクターへ支払いを行なってくれるので、売掛債権売却後は自社は何もする必要はありません。
診療報酬ファクタリングのサイクル

サイクルが異なるファクタリングとして、診療報酬ファクタリングをあげることができます。
診療報酬ファクタリングの申込から入金までのサイクルは以下の通りです。
- 患者を診察し、保険適用分の売掛債権発生
- 毎月10日頃までに国保や社保へ前月分の診療報酬を請求
- ファクターへ診療報酬ファクタリング申し込み
- ファクターと国保や社保がファクタリング内容を確認
- ファクターと医療機関が契約
- 請求額の8割程度が入金
- 請求月の翌月末に国保・社保が保険金額を確定
- 残りの2割をファクターが医療機関へ支払い
- 国保や社保がファクターへ保険金支払い
診療報酬ファクタリングは売掛先が国保や社保などの公的機関ですので、審査にはほぼ確実に通過することができます。
ただし、保険金は国保や社保の審査の結果、請求額より減額されてしまうことがあるので、債権譲渡時には請求額の8割程度までしか受け取ることはできません。
保険金が確定した後に残りの2割がファクターから入金されることになります。
ファクタリングは譲渡時に一括で支払われるのが基本ですが、診療報酬ファクタリングは代金が2段階で支払われるという点で、他の3社間ファクタリングとは入金までのサイクルが大きく異なります。
ファクタリングに最適な支払期日は?

どの支払期日の売掛債権をファクタリングするかによって、企業の資金繰りや手数料は大きく異なります。
企業には3ヶ月先の売掛債権もあれば、数週間後が支払期日の売掛債権もあるでしょう。
「どれをファクタリングしても同じ」と思う人も多いかもしれません。
しかし、支払期日によって企業の資金繰りに及ぼす影響は全く異なるものになります。
短期的に手元資金を増やしたいなら期間の長い債権を
支払期日が長い債権をファクタリングすれば、短期的に資金は潤沢になります。
3ヶ月後が支払期日になっている売掛債権をファクタリングすれば、今月末、来月末は予定通りに入金になるので、少なくとも今月と来月は手元の資金が潤沢になります。
設備投資の資金が足りない時には、支払期間が長い売掛債権をファクタリングすることで、目先の資金繰りを圧迫することなく、資金調達をすることが可能になります。
長期的には資金繰りが悪化する点に注意
支払期日が長い売掛債権をファクタリングすることで、確かに短期的には資金繰りが楽になります。
しかし、3ヶ月先の売掛債権をファクタリングするのであれば、3ヶ月先には入金がないことになってしまいます。
つまり、長期的に見れば資金繰りが悪くなってしまうのです。
資金繰りが苦しい時には「今を乗り切れれば後のことはどうにかなる」と安易な気持ちで支払期日が先の売掛債権をファクタリングしてしまうこともあります。
しかし、ファクタリングによって予定していた資金の穴埋めを、売り上げの拡大、資産の売却、銀行からの借入などによってできない限りは、ただの問題の先送りにしかなりません。
支払期日の長い売掛債権をファクタリングする時には、数ヶ月先の資金繰りをどうするかということまで考えておく必要があります。
手数料が高くなることも
支払期日の長い売掛債権をファクタリングすると、手数料が高くなってしまうこともあります。
ファクタリングでは支払期日の長い債権の売却は回収リスクが高くなり、そのリスクプレミアムとして手数料が上がってしまう傾向があります。
1ヶ月先と3ヶ月先では、企業の業況が悪化するリスクは3ヶ月先の方が大きいので、その分手数料も大きくなります。
支払期日の長い売掛債権を売却することによって、手数料が大きくなってしまう点にも注意が必要です。
短期間の資金繰りなら期間の短い売掛債権を
支払期日が短い債権をファクタリングしても、企業の資金繰りがそれほど改善することはありません。
例えば月末に入金予定の売掛債権をファクタリングしても、数週間早く資金が手に入るだけです。
取引先から「予定していたよりも早く入金になった」ということとほとんど変わらないことになります。
そのため、期日の短い売掛債権のファクタリングをしても、翌月の資金繰りまで楽になることはほとんどありません。
本当に短期間の間の資金を融通させるために利用するのが、支払期間の短い債権のファクタリングです。
急にお金が必要になった時に有効
「月末に取引先から入金が1週間遅れると連絡があった」
「手形の期日を忘れており、今日中に手形決済代金を当座預金に入れなければならない」
このように短期的にお金が必要になる場面で、支払期間の短い債権のファクタリングは有効に利用できます。
長期的に資金繰りを安定させるためではなく、短期的に急な資金の必要性が生じた時に、期間の短い売掛債権をファクタリングするとよいでしょう。
手数料が安くなることも
期間の短い売掛債権のファクタリングは手数料が安くなる傾向にあります。
期間が長くなればファクターの回収リスクは高くなりますが、期間が短くなればファクターの回収リスクは低くなり、手数料も下がる傾向にあるためです。
支払期日が数週間後であれば、経営状態が良好な企業が数週間後に急に経営悪化することは一般的には考えられません。
短期間であればリスクが低いと判断され、期間の短い売掛債権は期間の長い売掛債権のファクタリングよりも手数料が安くなる可能性が高くなるのです。
ファクタリングで資金繰りを悪化させないための3つの方法

ファクタリングは短期的には資金繰りを円滑にする効果がありますが、長期的には資金繰りを悪化させてしまうリスクもあります。
ファクタリングは将来入ってくる予定のお金を前倒しで資金化しているだけですので、将来的には予定されていた入金が無くなってしまうためです。
資金繰りを悪化させないためには、以下の点に注意しましょう。
- 支払いサイクルを理解する
- 長期の資金繰り表を作成する
- 適切な支払期日の債権をファクタリングする
資金繰りを悪化させないためのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
支払いサイクルを理解する
まずは、利用を検討しているファクタリングの支払いサイクルについて理解をしておきましよわく。
というサイクルを理解しておき、必要な資金調達を必要なタイミングで行うこともできなければファクターへの支払いに遅れてしまうことになります。
2社間ファクタリングでは、売掛先に秘密にするために自社へ入金がありますが、債権は既に売却済みですので、入金になったお金は自社のものではなくファクターのものです。
資金繰りに余裕がない会社はこのお金を他の支払いに流用してしまうことがありますが、これは他人のお金に手をつけた犯罪行為になります。
支払サイクルをしっかりと理解し、必ず期日通りにファクターへ支払いをするようにしましょう。
長期の資金繰り表を作成する
今後1年先くらいの資金繰り表を作成しておくと、ファクタリングによって資金繰りがズレてしまうのを防ぐことができます。
資金繰り表とは、手元の資金がいくらで、売上や借入やファクタリングでの入金がいくら、支払いがいくら、ということを予測し、長期的には企業の資金繰りがどうなるのか、ということを予測できるものです。
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1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
前月繰越 |
100万円 |
150万円 |
180万円 |
170万円 |
90万円 |
売上入金 |
150万円 |
150万円 |
110万円 |
40万円 |
20万円 |
経費支払 |
▲40万円 |
▲40万円 |
▲40万円 |
▲40万円 |
▲40万円 |
人件費支払 |
▲80万円 |
▲80万円 |
▲80万円 |
▲80万円 |
▲80万円 |
ファクタリング |
100万円
(4月・5月末入金分) |
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設備修繕 |
▲80万円 |
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翌月繰越 |
150万円 |
180万円 |
170万円 |
90万円 |
▲10万円 |
この場合、1月に4月と5月に入金予定の売掛債権をファクタリングしたことによって、4月と5月の入金が少なくなり、5月末には資金がマイナスになる予測になってしまいます。
資金繰り表を作っておくことによって、資金が不足するタイミングを知ることができます。
資金が不足するタイミングに合わせて、銀行へ早めに運転資金融資を申し込んでおくなどの対応を取ることができるので、資金繰り表を作成し、ファクタリングを利用することによって生じる資金繰りのズレを事前に防止しておきましょう。
適切な支払期日の債権をファクタリングする
前述したように、どの支払期日の売掛債権を売却するかによって企業の資金繰りは大きく異なります。
自社が「なぜファクタリングで資金調達をする必要があるのか」ということを明確にして、その意図に合った支払期日の売掛債権をファクタリングするようにしましょう。
支払期日が長い債権はまとまった資金調達に有効
支払期日が長い債権をファクタリングすれば、今月末や来月末は予定通りに売上が入金になるので、手元の資金はある程度潤沢になります。
そのため、まとまった時間が必要になった時の資金調達方法として有効です。
「設備の修繕代金が必要」「設備投資の頭金が必要」など、まとまった資金が必要なときには、支払期間の長い売掛債権をファクタリングするとよいでしょう。
支払期間が短い売掛債権をファクタリングしてしまうと、短期的な運転資金が不足して、会社の運転ができなくなってしまう可能性があります。
支払期日が短い債権は急な資金調達に有効
急に資金が不足して、資金が突然必要になった時には支払期間が短い売掛債権をファクタリングした方がよいでしょう。
ファクタリングのサイクルと最適な支払期日についてよくある質問
- 3社間ファクタリングで売掛先に秘密にすることはできませんか?
- 不可能です。3社間ファクタリングは必ず売掛先の同意が必要なファクタリングですので、売掛先に秘密にすることはできません。秘密にしたいのであれば2社間ファクタリングを利用しましょう。
- サイクルの異なるそれぞれのファクタリングの手数料を教えてください。
- 2社間ファクタリングは20%、3社間ファクタリングは5%、診療報酬ファクタリングは2~3%程度というのが手数料の相場です。
- 急にお金が必要になった時、支払期日が長い売掛債権しか手元にない場合はどうすればよいですか?
- 資金繰り表を作成し、資金が不足するタイミングまでに銀行融資や資産の売却などによって資金ショートしない方法を検討しましょう。
- まとまった資金が必要になった時、支払期日の短い売掛債権しか手元にない場合はどうすればよいですか?
- 資金繰り表を作成し、月末や翌月末に資金ショートする可能性があるのであれば、お金を使うことを諦めるか、急いで銀行融資を検討すべきです。
まとめ
ファクタリングは形によって、申し込みから入金、支払いまでのサイクルが異なります。
サイクルを理解して自社にとって最適な形のファクタリングを選択できるようにしましょう。
また、売掛債権の支払期日によって、企業の資金繰りに対して及ぼす影響は異なります。
「どんな理由でファクタリングをするのか」をまずは明確にして、自社の目的に合致した支払期日の売掛債権をファクタリングすることが大切です。
ファクタリングは、本来予定されていた入金を前倒しで資金化するものです。
ファクタリングをすることによって、資金繰りは絶対にズレが生じるので、必ず資金繰り表を作成して、自社の資金繰りを把握しておきましょう。