新しい資金調達方法であるPOファイナンス。

取引先から仕事を受注した時点で資金調達することができるので、あらゆる資金調達方法の中で最も資金循環が早い資金調達手段だということができます。

POファイナンスは従来のメジャーな資金調達方法である融資やファクタリングと比較した場合と比較して、多数のメリットがありますが、デメリットもあるのが事実です。

まだ金融市場に登場して間もないPOファイナンスですが、利用するのであればメリットとデメリットを明確に理解した上で上手に活用したいものです。

POファイナンスのメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。

POファイナンスとは

POファイナンスとは注文書(Purchase Order)を用いた資金調達方法です。

取引当事者が製品またはサービスの価格・数量について合意することで成立した債権(注文書)を、金融機関等が担保または買い取る形で資金の提供を行います。

例えばA社がB社から1,000万円の発注を受けた場合、1,000万円の注文書を担保にお金を借りたり、注文書を売却することによって資金調達することが可能です。

ファクタリングが請求書を売却する方法、ABLが請求書を担保に融資を受ける方法であることと比較して、POファイナンスは納品前の受注段階で資金化することができるので、資金調達のタイミングが他の方法と比較して非常に早いという大きな特徴があります。

融資やファクタリングに代る新たな資金調達方法として今後大いに普及していく可能性のある方法だと言えるでしょう。

POファイナンスの7つのメリット

従来の資金調達方法とは全く異なるPOファイナンスには従来の資金調達方法である融資やファクタリングと比較して以下のようなメリットがあります。

  • 発注段階で資金化できる
  • 手元に資金がなくても受注ができる
  • アイディアと技術だけで仕事を実現できる
  • サプライヤーの選択肢が広がる
  • 不動産等の資産がない企業でも資金調達可能
  • 企業評価判断の評価方法が増える
  • 手元資金なくしても補助金受注が可能

POファイナンスは企業のキャッシュフローを向上させるだけでなく、企業のビジネスチャンスそのものを変えてしまう可能性さえ持っています。

また、審査の概念も変えてしまうかもしれません。

POファイナンスの7つのメリットについて詳しく解説していきます。

受注段階で資金化できる

POファイナンスは受注段階で資金化することができるのが大きなメリットです。

注文書を取引先から受け取り注文契約を交わしたら、融資やファクタリングなどの方法で資金調達することができます。

「受注→納品→入金」という流れで資金化するのが従来の資金の流れですが、POファイナンスでは「受注=入金」となり、資金ギャップは0日と言っても過言ではありません。

受注がすぐに現金になるのでPOファイナンスを利用することによって会社のキャッシュフローは大きく向上することになります。

融資の資金調達のタイミング

融資による資金調達のタイミングは2つです。

  • 受注後
  • 請求後

受注後の資金調達方法とは、仕事を受注した後に「増加運転資金」の借入を銀行へ申し込んで資金調達するケースです。

このケースでは資金調達した後に仕入などを行うので、審査通過までの2週間程度は仕事を進めることはできません。

また、場合によっては審査に落ちてしまうこともあるので、「資金調達して確実に仕事を受注する」ということを受注段階で取引先に言い切ることができないという問題点もあります。

また、仕事を完了し、請求後に売掛債権を担保に融資を受けるABLという方法もあります。

このケースでは、すでに仕事が完了し、受注に対応した経費はすでに支払った状態でキャッシュアウトの方が先です。

POファイナンスよりも遅いタイミングでキャッシュインになり、少なくとも増加運転資金は手元の資金で都合しなければなりません。

ファクタリングの資金化のタイミング

ファクタリングとは請求書の売却ですので、「すでに仕事を完了している」ということが前提条件になっています。

そのため、当該請求にかかる経費はすでに自己資金で支払っている可能性が高く、やはりABLと同じくPOファイナンスよりも遅いタイミングでキャッシュインになり、経費の支払いによるキャッシュアウトが先になります。

ファクタリングとABLは「キャッシュアウト→キャッシュイン」という流れになりますが、POファイナンスは「キャッシュイン→キャッシュアウト」という資金の流れとなり、POファイナンスの方がキャッシュフローが向上することが分かります。

手元に資金がなくても受注ができる

仕事を受注すると仕入などの原価の支払いが必要になるので、手元に原価を支払うだけの資金がなければ仕事を受注することはできません。

しかしPOファイナンスは手元資金がなくても仕事を受注することができます。

受注段階ですぐに資金化することができるので、「運転資金を銀行借入などで調達するか、自己資金を用意する」という受注増加時の資金繰りの心配をする必要がないので、資金繰りの懸念をすることなく積極的に受注することができるようになるでしょう。

従来は手元資金がなければ受注できない

従来は手元の資金がある程度ないと、大口の受注をすることができませんでした。

銀行も増加運転資金を無制限に融資してくれるわけではなく、企業規模に見合った金額しか融資を受けることができないためです。

そのため「大きな仕事ができるのは、豊富な資金を持った企業だけ」という側面がありましたが、POファイナンスによってどんな資金力の企業でも大口受注をすることができるようになる可能性があります。

不動産等の資産がない企業でも資金調達可能

POファイナンスは中小企業やベンチャーにとって、従来の資金調達方法よりも非常に公平に資金調達することができる方法だと言えます。

注文書を資金化することができるPOファイナンスの審査基準は発注先の業況と受注金額が重視されるためです。

不動産担保や保証人の有無とは無関係に資金調達することができるので、有力な不動産担保などを用意することができない資産のない企業でも、不動産をたくさん保有している企業と平等な条件で資金調達することが可能になります。

融資では不動産担保や保証人の有無が審査を決定する

従来の融資では不動産担保や連帯保証人の有無が審査を決定していたのが現実でした。

例えば「取引先から大きな仕事を受注した。受注に伴う増加運転資金を借りたい」という場合には、従来は銀行へ増加運転資金の借入を申し込まなければなりません。

しかし、有力な不動産担保がない企業や、財務状態が悪い企業はいくら大手企業からの受注であっても融資を受けることができず、ビジネスチャンスを逃すこともありました。

しかしPOファイナンスであれば、不動産などの有無に関係なく非常に公平に資金調達をすることができます

アイディアと技術だけで仕事を実現できる

POファイナンスが普及すれば、アイディアと技術がある企業はどんどん大きな仕事を受注することができます。

POファイナンスでは、企業の与信や資産などとは無関係に受注段階で資金化することができるためです。

従来は素晴らしいアイディアがあっても、資金がないためにそのアイディアを実現することができないケースも多くありました。

しかしPOファイナンスでは、手元の資金とは無関係に仕事を受注することができるようになります。

いわば形にできるアイディアをお金に変えるPOファイナンスは、優秀な起業家やベンチャーを育てることができるという非常に大きな可能性を秘めています。

受注=資金繰りになる|どんな仕事も受注可能

POファイナンスは注文書がそのまま資金繰りになります。

そのため、手元資金を持っている必要もありませんし、時間をかけて銀行融資を借りる必要もありません。

銀行融資は決算内容などが重視されるので、ベンチャー企業が高額融資を受けることが難しいのが実情でした。

しかし、POファイナンスは仕事の受注さえできれば、その契約がそのまま資金繰りになります。

企業経営者は資金繰りに時間を取られたり頭を悩ませることなく、営業活動に邁進することが可能になるでしょう。

サプライヤーの選択肢が広がる

仕事を発注する側の企業にとっても、発注先であるサプライヤーの選択肢が広がることになります。

POファイナンスでは、発注企業が発注した金額がそのまま受注企業の資金調達額となるので、どんな企業でも発注金額までは手元資金を確保することができるということが発注段階で分かります。

従来であれば、「このサプライヤーの技術は素晴らしが、資金力がないので大量発注ができない」と発注を諦めていた企業に対しても発注ができるようになるでしょう。

従来は規模にあったサプライヤーしか選択できなかった

従来は、規模が大きな発注は規模の大きなサプライヤーしか選択することができませんでした。

発注先の資金繰りの状態まで発注企業は把握できないので、明らかに「規模的に問題ないだろう」と判断できる企業に大量発注を行なった方が安全だからです。

POファイナナンスでは発注企業の発注金額=受注企業の資金調達可能額となるので、規模の小さなサプライヤーに対しても大量発注が可能です。

大手企業が技術のある下請企業を大きく育て上げていくという方法でもPOファイナンスは活用できるでしょう。

企業評価判断の評価方法が増える

POファイナンスの審査基準は注文書の金額と発注企業の業況です。

つまり資金調達する側の企業の信用は「どの程度の仕事を受注しているのか」ということに基づくことになります。

また、POファイナンスの利用を繰り返していけば「どの程度仕事を受注したのか、その仕事の代金は期日通りに支払われたのか」という生の受発注と入金状況を審査側が把握することができるようになり、このような蓄積された情報から企業を評価することができるようになります。

POファイナンスでは、従来の決算書による審査とは全く異なる企業の評価方法だということができ、審査の方法もPOファイナンスが普及すれば変わっていくかもしれません。

従来の評価方法の問題点

従来の企業の評価方法は決算書による評価です。

しかし決算書による評価には以下の2つの問題点がありました。

  • 粉飾決算
  • リアルタイムの情報ではない

まず、自社の決算内容をよく見せるために決算書の内容をお手盛りする粉飾決算のリスクがあります。

売上の上乗せなどのあからさまな粉飾決算を行なっている可能性は低いとしても、生活費としての支出や友人などと飲んだお金を経費として混ぜ込むなどの軽度の粉飾はどんな企業でも行われていることです。

そのため、決算書から事業の実情を必ずしも把握できないという問題点があります。

また、決算書というのはあくまでも、前決算期末までの情報ですので、場合によって1年前の情報です。

1年も前であれば、企業の現状とは大きく異なるものとなっている可能性があるため、決算書からは企業の生の姿を把握することができないという問題点もあります。

POファイナンスであれば、生の情報を把握することができ、発注先企業も巻き込んだ注文情報ですので嘘をつくこともできません。

POファイナンスは従来の決算書の問題点を解決することができるというメリットもあります。

手元資金なくしても補助金受給が可能

また、補助金や助成金を受給する場合もPOファイナンスが活用できます。

従来は銀行借入や自己資金がないと受給することができなかった補助金や助成金ですが、POファイナンスを活用することによって銀行審査に例え通過することができなくても受給することができるようになります。

補助金は後払い|手元資金が必要だった

補助金は後払いによる支給が原則です。

例えば、創業補助金は創業にかかる経費を100万円まで補助してくれる制度です。

しかし創業補助金において100万円が支払われるのは、創業にかかる経費の支払いを終え、当該経費の領収書を事務局へ提出した後に領収書の金額が補助される仕組みとなっています。

つまり、先に手元に100万円の自己資金がなければ補助金を受給することができません。

補助金受給を条件に銀行融資でつなぎ資金を借りるという方法もありますが、融資は手続きが面倒で時間もかかります。

そこで、補助金の採択と同時にPOファイナンスを利用すれば、借入や自己資金に頼ることなく、あらかじめ手元資金を確保することができます

POファイナンスを利用すれば後払いであった補助金が先払いになったのと同義であり、これまで「事前の資金調達が面倒」と補助金や助成金調達を避けていた企業も、気軽に補助金申請をすることができるようになるでしょう。

POファイナンスの4つのデメリット

企業の資金循環を改善するだけなく、発注企業や受注企業の選択肢を大幅に広げることができるPOファイナンスですが、デメリットがないわけでもありません。

  • 受注がなければ資金化できない
  • 資金繰りのために安価で受注するリスク
  • 手数料が高くなる可能性がある
  • 取り扱いが少ない

POファイナンスの3つのデメリットについて詳しく解説していきます。

受注がなければ資金化できない

POファイナンスは受注がなければ資金化することができません。

POファイナンスは注文書による資金調達です。

当然と言えば当然ですが、POファイナンスは受注がなければ資金調達することができません。

不景気などの際には家賃、人件費、光熱費などの経常経費を支払うために運転資金を借りることは珍しいことではありません。

しかし、POファイナンスにおいては、受注がなければ資金調達することができないため、基本的には増加運転資金調達のためにしか活用することができないものと理解しておきましょう。

資金繰りのために安価で受注するリスク

POファイナンスは受注さえあれば資金調達できる可能性があります。

そのため、資金繰りが苦しい企業の中には、POファイナンスで資金調達することを目的として非常に安価で受注し、その注文書をもとにPOファイナンスで資金調達する可能性があるでしょう。

注文書があれば資金調達できるということは、原価割れになるような赤字受注でも資金調達ができてしまう可能性があるということです。

資金繰りのためだけに赤字を生み出してしまえば本末転倒ですが、資金繰りが苦しい企業は「とにかく資金調達さえできれば何でもいい」という心理状態に陥りがちになるものです。

POファイナンスという資金調達方法があることによって、かえって収益や資金繰りを悪化させてしまうデメリットがあります。

手数料が高くなる可能性がある

POファイナンスは注文段階から支払段階という比較的長い期間、金融機関が資金提供を行うものです。

請求段階から支払段階まで資金提供を行うファクタリングやABLよりもPOファイナンスの方が期間が長くなります。

融資やファクタリングでは資金提供を行う期間が長ければ長いほど手数料や金利が高くなるなるものですので、ファクタリングやABLよりも資金提供期間が長いPOファイナンスはファクタリングやABLよりも手数料や金利が高くなってしまう可能性があるでしょう。

取り扱いが少ない

企業のキャッシュフローを飛躍的に向上さえ、資金力のない企業にもビジネスチャンスをもたらす可能性のあるPOファイナンスは資金調達手段として画期的ですが、日本においてはまだまだ新しい資金調達方法であるため、取り扱う金融機関が非常に少ないという点がデメリットです。
POファイナンスは1部の金融機関が発注書を電子記録債権化するTranzax社と提携して取り扱いを行なっているだけで、多くの金融機関では取り扱いすらありません。

POファイナンスを取り扱っている金融機関として西武信用金庫、大阪シティ信用金庫、商工組合中央金庫、横浜銀行、朝日信用金庫、広島銀行、豊田信用金庫、第三銀行、文化産業信用組合、中国銀行、西京銀行、福岡銀行などで、それほど多くはないのが実情です。

一方、ABLは今やほぼ全ての銀行や信用金庫で利用することができ、ファクタリング会社も無数にあるので、申込先がないという状況はあり得ません。

しかしPOファイナンスは取り扱いを行なっている金融機関が非常に少ないので申し込むことができる金融機関が限られてしまうというのはデメリットでしょう。

まとめ

POファイナンスにはこれまでの資金調達方法にはないメリットが数多く存在し、主なものとしては以下の7点をあげることができます。

  • 発注段階で資金化できる
  • 手元に資金がなくても受注ができる
  • アイディアと技術だけで仕事を実現できる
  • サプライヤーの選択肢が広がる
  • 不動産等の資産がない企業でも資金調達可能
  • 企業評価判断の評価方法が増える
  • 手元資金なくしても補助金受注が可能

企業のキャッシュフローを劇的に向上させるので、小さな企業にも大きなビジネスチャンスを得ることができるでしょう。

さらに与信自体も大きく変えてしまう可能性も秘めています。

ただし、POファイナンスには以下のようなデメリットもあります。

  • 受注がなければ資金化できない
  • 資金繰りのために安価で受注するリスク
  • 手数料が高くなる可能性がある
  • 取り扱いが少ない

まだまだ普及していませんし、資金繰りのために受注金額を引き下げて受注するリスクもあるので利用する企業のモラルも発展向上させていく必要がありそうです。

今後、有力な資金調達手段として急拡大する可能性もあるPOファイナンスですが、メリットとデメリットをよく理解して適切に活用するようにしてください。