ファクタリングは、受注した仕事を完了したあと、入金待ちの請求書(売掛債権)を売却することで、早期の資金調達を可能とするサービスです。
商品・サービスの納入から支払いまでの期間が長いケースや、入金日までのつなぎ資金が必要なケースで役立ちます。
しかしながら、取引先から大型案件の話を持ちかけられたが、仕事を受注した時点で発生する人件費や仕入れ費など先出し費用のあてがないといったケースもあります。
このようなケースでの資金調達は、仕事の完了後に利用できるファクタリングでは遅きに失すると言わざるを得ません。
最近では、請求書だけでなく受注時の注文書で資金調達ができる「注文書買取サービス」という新たなファクタリングが登場しています。
本記事では、注文書買取とは具体的にどのようなサービスで、どのようなメリット・デメリットがあるかを解説します。
注文書は「仕事を注文・依頼するとき」に発行する帳票
注文書とは、商品やサービスを購入する企業(発注側)が、それらを納入する企業(受注側)に対して「仕事を注文・依頼します」という意思表示をする帳票のことです。PO(purchase order)と表記されることもあります。
注文書には、相手先との見積もり時に確認した「注文の内容」「金額」「納期」の記載が必須です。
企業によっては電話による口頭での注文など、注文書を発行しないケースも少なくありませんが、聞き違いや認識のズレなどが発生するリスクを避けるため、注文書を発行して取引の確かな証拠(証憑)とします。
なお、注文される側が「仕事を引き受けます」という意思表示をする帳票を「注文請書」と言います。
注文書と発注書の違い
注文書に似た帳票に「発注書」があります。
発注書も発注側の企業が、受注側の企業に対して仕事を注文・依頼するときに発行する帳票で、両者に法律的な違いはありません。
ただし、企業によっては形のある物品を注文する際には「注文書」を、加工や作業を伴う物品を注文する際には「発注書」を発行するという使い分けがあります。
注文書と請求書の違い
注文書と請求書は、発行するタイミングや目的が異なります。
注文書は発注側の企業が見積もりをした後に、商品・サービスを購入する意思を受注側に正式に伝えるために発行します。
一方、請求書は受注側の企業が注文書で依頼された商品・サービスを納入したとき(仕事を完了したとき)に、支払いを求めるために発行します。
請求書には、受注側が発注側に提供した商品・サービスの価格、数量、支払い期日などが記載されており、受注側の企業は請求書の内容に沿って代金を支払います。
業種によっては、注文書が発行されてから6ヶ月かけて仕事を完了、請求書を発行するというタイムラグが発生します。
注文書買取サービスの概要
注文書買取サービスは、受注した段階の注文書を現金化するファクタリングサービスのひとつです。
通常のファクタリングは、すでに納品が完了していて、入金待ちの請求書でなければ買い取ってもらうことができませんでした。
注文書買取サービスは通常のファクタリングと比べて、受注してから仕事を完了するまでのプロセスを経る必要がないため、資金調達までの時間を大幅に短縮することができます。
たとえば、受注後に人件費や仕入れ費用のあてがないケースや、受注から納入までに時間がかかるケースなど、ファクタリングの資金調達では遅きに失する問題についても、注文書買取サービスであれば解決の可能性があります。
注文書買取サービスとは、つまり通常のファクタリングよりも資金調達の期間を短縮できる方法であり、ファクタリングでは解決できなかった経営課題にも対応可能なサービスなのです。
請求書買取サービスのメリット
請求書買取サービスのメリットは、言わずもがな通常のファクタリングよりも早期に資金調達が可能なことです。
受注した段階で資金調達が可能になり、人員確保のための人件費や材料の仕入れ費用など、仕事の着手金として利用することができます。
注文書買取サービスのデメリット
注文書買取サービスは、通常のファクタリングよりも手数料が高めに設定される傾向にあります。
ファクタリング業者側からすると、注文書買取サービスは通常のファクタリングよりも未回収リスクの高いサービスです。
通常のファクタリングであれば、すでに仕事が完了しており、あとは売掛先の支払いを待つだけという段階ですが、注文書買取は仕事が完了していない段階で資金提供することになるため、通常のファクタリングよりも資金回収の時期が遅くなります。
したがって、ファクタリング業者側は未回収リスクに備え、手数料を上げざるを得ないのです。
注文書買取サービスを提供している業者
注文書買取サービスは、通常のファクタリングと比べてまだまだ取り扱っている業者が少なめです。
ここでは、現段階で注文書買取サービスを提供している業者を紹介します。
ビートレーディングの「注文書ファクタリング」
注文書ファクタリングのポイント
- 売掛先の承諾不要(2社間契約)
- 6ヶ月先の納品予定の案件まで対応可
- 「注文書」「通帳3ヶ月分」「本審査申込書」の3点が必要
- 個人事業主も利用可
注文書ファクタリングは、ファクタリングの実績が豊富なビートレーディングが、2020年11月より取り扱いを開始したサービスです。
請求書がなくても納品前の注文書があればファクタリングを利用でき、最長6ヶ月先に納品予定の案件まで買い取り対応しています。もちろん、売掛先の承諾不要な2社間契約です。
ただし、手数料については公式サイトに記載がないため、事前の見積りで確認しましょう。
仕事が始まる前にまとまった資金を調達できるため、仕事の着手金として利用することができます。また、個人事業主の方でも売掛先が法人の注文書であれば利用可能です。
GMOペイメントゲートウェイの「GMO BtoB早払い」
GMO BtoB早払いのポイント
- 売掛先の承諾不要(2社間契約)
- 6ヶ月先の納品予定の案件まで対応可
- 「決算書2期分」「発注書」「審査依頼書」の3点が必要
- 最短2営業日で資金化
GMOペイメントゲートウェイの「GMO BtoB早払い」は、東証一部上場企業によるサービスという信頼性に加え、業界最安水準の手数料1%~です。請求書の買い取りのみならず、注文書の買い取りにも対応しており、最長6ヶ月先の注文書も最短2営業日で資金化できます。
ただし、注文書買い取りの手数料は2.5%〜12.0%が目安です。請求書買取の1.5%〜10.0%と比べると、やや高めの手数料設定となっています。
注文書買取サービスに関するQ&A
注文書買取サービスに関して、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。
- Q.注文書買取とファクタリングの使い分けについて教えて下さい。
- A.注文書買取は仕事を受注した段階で資金調達が可能です。仕事の着手金を自己資金や借入等で確保できないときに利用をおすすめします。ファクタリングは納品後の段階で資金調達が可能なサービスなので、入金サイクルを早めたい場合や支払日までのつなぎ資金としての用途がおすすめです。
- Q.注文書買取サービスでは登記が必要ですか?
- A.売掛先から仕事を受注した段階で売掛債権は発生しています。したがって、2社間取引で注文書を買い取ってもらう際は、原則として債権譲渡登記が必要です。ファクタリング業者によっては登記を省略した注文書買取に対応しているところもあります。
- Q.注文書買取サービスの手数料の相場を教えて下さい。
- A.現状で注文書買取サービスを提供している業者は「ビートレーディング」と「GMOペイメントゲートウェイ」の2社です。ビートレーディングの注文書ファクタリングは手数料を明示していません。一方のGMOペイメントゲートウェイのGMO BtoB早払いは、注文書買取で手数料2.5%〜12.0%としています。請求書買取(2社間取引)よりもやや高めです。
注文書買取は通常のファクタリングよりも早い資金調達が可能
注文書買取サービスの基礎知識、および注文書買取を取り扱っているファクタリング業者について解説しました。
通常のファクタリングは仕事が完了した後のタイミングで利用できるサービスですが、注文書買取サービスは仕事を受注した段階、つまり受注後から納入までのプロセスをスキップして資金調達が可能です。
最長で6ヶ月も資金調達のタイミングを早めることができるため、仕事の着手金が確保できないケースや、納期までの期間が長いケースなどでは、ファクタリングよりも便利な資金調達方法と言えます。
一方で、手数料は請求書買取よりも高めに設定される傾向にあります。
注文書買取サービスの利用は、あくまで通常のファクタリングではカバーできないケースに限り、慎重に検討しましょう。