注文書ファクタリングは、2020年頃から登場した新しいファクタリングサービスです。

通常のファクタリングが仕事を納入した後の請求書を資金化するのに対し、注文書ファクタリングは仕事を受注した段階での注文書を資金化します。

従来より格段に早いタイミングでの資金調達が可能になったことで、仕事の遂行に必要な人件費や仕入れ費用など、通常のファクタリングでは難しい資金ニーズにも対応できます。

今回は注文書ファクタリングの仕組みやメリット・デメリット、通常のファクタリングとの違いについて解説します。

注文書ファクタリングとは

通常のファクタリングは納入企業が商品やサービスを納入後、支払企業あてに請求書を発行した時点での資金調達を可能とするサービスです。

一方の注文書ファクタリングは、納入企業が支払企業から仕事を受注して、注文書が発行された時点での資金調達を可能としています。

通常のファクタリングは仕事を納入してから売掛金の支払期日までの支払いサイト最大30~60日を短縮しますが、注文書ファクタリングは仕事を受注してから売掛金の支払期日までの支払いサイト最大180日を短縮します。

注文書ファクタリングの仕組み

注文書ファクタリングの仕組みは、通常の2社間ファクタリングと同じです。

売掛先への通知および承諾は不要、注文書買い取りが実行されたら最短翌日には買取代金が入金されます。

売掛金の入金日が到来したら、利用者が売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社に送金して取引完了です。

注文書ファクタリングが買い取る「注文書」とは

注文書は、相手方に対して「商品やサービスを発注する」という意思表示をするときに発行する証憑(しょうひょう)の1つです。PO(Purchase Order)とも呼ばれます。

案件の発注時に「注文書」を発行する企業もあれば、「発注書」を発行する企業もあります。いずれも法律的には同じ書類です。ただし、業界や企業によっては形のある物品を発注する際には「注文書」を、形のない作業やサービスなどを発注する際には「発注書」を発行するという区別があります。

たとえば、机やイスを注文する際は「注文書」、Webデザインや記事執筆を注文する際は「発注書」です。

注文書ファクタリングでは注文書でも発注書でも、仕事の受注を確認できる書類があれば買取対象となります。

注文書ファクタリングのメリット

注文書ファクタリングのメリットは以下のとおりです。

仕事を受注した段階で資金調達ができる

注文書ファクタリングの最大のメリットは、通常のファクタリングよりも早い段階で注文書を資金化できることです。

仕事を受注した段階の注文書や受注書、発注メールがあれば申し込みができるため、仕事の遂行に必要な材料の仕入れ費用や人員確保のための人件費などにあてることができます。

注文書ファクタリングは、これまで資金不足を理由に諦めていた大型案件や複数案件の受注を可能にして、売上増や取引先の拡大に寄与します。

最大180日の入金サイクルを短縮できる

注文書ファクタリングは最大180日先までの納入予定の注文書を買取対象としています。つまり、最大6ヶ月の入金サイクルを最短即日に短縮できるのです。

支払いサイトが長期にわたることで資金繰りに支障を来している事業者の方は、注文書ファクタリングを利用することで資金繰りを安定させることができます。

売掛先にファクタリングの利用を知られることがない

注文書ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2社間で契約する「2社間ファクタリング」の形式を採用しています。注文書を買い取ってもらうにあたり、売掛先への通知および承諾は一切不要です。

したがって、売掛先から信用を失ったり、取引に悪影響を与えたりといった心配がありません。

償還請求権がない(ノンリコース契約)

注文書ファクタリングは通常のファクタリングと同じく、償還請求権がないノンリコース契約です。

償還請求権とは、売掛先から売掛金が支払われなかった場合に、ファクタリング会社が利用者に対して買い戻しを請求できる権利を指します。

注文書ファクタリングを利用後、売掛先の倒産等で売掛金の回収ができなくなった場合でも、貴社に買い戻しの義務は生じません。

注文書ファクタリングのデメリット

注文書ファクタリングは、通常の2社間ファクタリングの手数料+2%~5%がめやすとなります。

なぜなら、通常のファクタリングよりもファクタリング会社の未回収リスクが高くなるからです。

注文書ファクタリングは最大180日までの注文書を買い取るため、ファクタリング会社が売掛金を回収できる時期が通常のファクタリングよりも遅くなります。回収までの期間が長いと、その間に売掛先が倒産してしまったり、貴社の資金繰りが悪化したりして、未回収リスクが高まります。

ファクタリング会社は通常のファクタリングよりも手数料を上げることで、未回収リスクへの備えとしているのです。

注文書ファクタリングを提供する業者

2021年4月現在、注文書ファクタリングを提供する業者をご紹介します。

ビートレーディングの「注文書ファクタリング」

入金スピード 最短2日
利用限度額 要見積もり
買取手数料 要見積もり
個人事業主の利用
必要書類 注文書、通帳3ヶ月分(表紙付き)、本査定申込書

ビートレーディングはフィンテック企業のトランザックスからノウハウ提供を受け、ファクタリング業界でいち早く注文書ファクタリングの取り扱いを開始しています。

注文書ファクタリングは売掛先の承諾が不要で、最大6ヶ月先の納品予定の案件までが買取対象です。申し込みから最短30分で審査結果がわかり、最短翌日で資金の振込を確認できます。

法人はもちろん、個人事業主の方も取引先が法人の注文書であれば利用可能です。実際の手数料や利用額については事前の見積もりで確認しましょう。

GMOペイメントゲートウェイの「GMO BtoB早払い」

入金スピード 最短2営業日
利用限度額 買取1回あたりの合計金額が100万円以上
買取手数料 【スポット】2.5%~12.0%
【継続】2.0%~12.0%
個人事業主の利用 不可
必要書類 注文書、決算書(2期分)、取引の基本契約書、審査依頼書

GMOペイメントゲートウェイは、総合的な決済関連サービスおよび金融関連サービスを事業者に提供している一部上場企業です。

法人向けの債権買取サービス「GMO BtoB早払い」は、通常のファクタリングに加え、最大6ヶ月までの注文書の買い取りにも対応しています。

商品プランには単発利用の「スポットタイプ」と、2回以上の利用が前提となる「継続タイプ」の2種類があります。初回利用は申し込みから審査まで最短2営業日、入金まで最短2営業日の計4営業日で資金化できます。継続タイプは2回め以降、利用審査が省略されます。

ただし、注文書買取の手数料は請求書買取より+0.5%~2.0%高く設定されています。また個人事業主の方は利用できません。

POファイナンスと注文書ファクタリングの違い

POファイナンスとは、日本のフィンテック企業であるトランザックスが提供する電子記録債権を活用した金融サービスです。発注者(支払企業)と受注者(納入企業)の双方の同意のもと、注文書を電子記録債権化し、金融機関がその電子記録債権を譲渡担保に受注者へ融資を行います。

POファイナンスと注文書ファクタリングの違いは以下のとおりです。

取引形態 発注者の同意 審査難易度 コスト 償還請求権
POファイナンス 融資契約 厳しい 低い あり
注文書ファクタリング 売買契約 不要 柔軟 高い なし

POファイナンスは電子記録債権化した注文書を担保に、納入企業に融資を行います。貸金にあたるため利息制限法が適用され、年率15%以下の低コストで融資を受けることができます。ただし、支払企業が倒産した場合には、金融機関の償還請求権にもとづいて受注者に買い戻し義務が生じます。

一方、注文書ファクタリングは債権売買契約にあたるため、利息制限法が適用されません。POファイナンスよりもコストが高くなりますが、発注者が倒産した場合のリスクは金融機関が負うことになります。

 

注文書ファクタリングに関するQ&A

ファクタリングに関して、よくある質問とその回答をQ&A形式でまとめました。

Q.売掛先に秘密で注文書ファクタリングを利用できますか?
A.できます。注文書ファクタリングは売掛先への通知および承諾が不要な2社間ファクタリングで契約します。信用不安や取引への影響は一切ありません。
>>「注文書ファクタリングのメリット」について
Q.注文書ファクタリングでは債権譲渡登記が必要ですか?
A.注文書ファクタリングは売掛先の承諾を得ずに注文書(=売掛債権)を買い取るため、二重譲渡対策や対抗要件の具備を目的として債権譲渡登記が必要です。ただし、注文書ファクタリングを提供しているビートレーディングとGMOペイメントゲートウェイは、債権譲渡登記を省略可能としています。
Q.注文書ファクタリングの手数料の相場を教えて下さい。
A.通常の2社間ファクタリングよりもファクタリング会社の未回収リスクが高くなるため、手数料も高めに設定されています。たとえば、GMOペイメントゲートウェイの「GMO BtoB早払い」は、注文書買取の手数料を2.5%〜12.0%に設定しています。通常の請求書買取のファクタリングは1.5%~10.0%です。
Q.注文書ファクタリングとPOファイナンスはどのように使い分けたら良いですか?
A.POファイナンスは、前提として納入企業(=利用者)と支払企業(=売掛先)の双方が注文書を電子記録債権化することに同意している必要があります。融資契約となるため納入企業の返済能力が審査されます。担保価値が重視されるとは言え、銀行の融資と同じくらいの審査難易度となるため、納入企業に赤字や税金滞納などがあると審査落ちの可能性があります。以上のことから、銀行融資の審査に通過できるくらいの信用状況や返済能力があれば、調達コストの低いPOファイナンスを検討しましょう。
>>「POファイナンスと注文書ファクタリングの違い」について

受注段階の資金調達なら注文書ファクタリング

2021年4月現在、注文書ファクタリングを取り扱っているファクタリング会社は、ビートレーディングとGMOペイメントゲートウェイの2社に過ぎませんが、今後はより拡大していくことが予想されます。

これまで仕事の着手金が確保できなかったり、受注後に資金不足に陥るリスクが高かったりしてビジネスチャンスを逃してきた事業者の方も、注文書ファクタリングを利用すれば受注段階で資金調達が可能になります。

ただし、注文書ファクタリング手数料は、通常のファクタリングよりも高めに設定される傾向にあります。

注文書ファクタリングを利用するときは、調達コストを上回る利益が得られるかを見極めましょう。また通常のファクタリングではカバーできない資金ニーズでの利用に限定し、並行して資金繰りの改善も進めていく必要があります。