ファクタリングとは?図解で解説
ファクタリングとは、企業が持つ売掛債権を期日前にファクタリング会社へ売却して資金化するサービスです。企業間の取引では商品・サービスを提供した直後ではなく、後日に代金が支払われる掛け取引が一般的です。掛け取引において、商品・サービスを提供した後で代金を受け取る権利を売掛債権と呼びます。
例えば、100万円の商品を販売し、2ヶ月後に代金が入金される予定があったとしましょう。しかし、「今すぐ運転資金として50万円が必要になった……」などの状況はビジネスにおいて決して珍しくありません。
上記のような場合にファクタリングを利用すると、入金予定だった100万円の売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらえます。そして、手数料を差し引いた金額を最短即日で受け取れます。なお、一般的な2社間ファクタリングを利用して売掛債権を資金化する流れを図でまとめると以下のとおりです。

なお、ファクタリングは融資と比較して審査が比較的スピーディーに進み、担保・保証人が不要なケースも多く手続きが簡便である特徴があります。
ファクタリングには2種類の契約方式がある
ファクタリングの契約方式には、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類が存在します。2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの概要をまとめると、以下の通りです。
項目 |
2社間ファクタリング |
3社間ファクタリング |
関与者 |
利用者、ファクタリング会社 |
利用者、ファクタリング会社、売掛先 |
売掛先への通知 |
不要 |
必要 |
手数料の相場 |
2%〜20% |
1%〜9% |
資金化スピード |
最短即日 |
数日〜数週間かかる |
主なメリット |
- 取引先に知られず資金調達できる
- 申し込みから入金までが迅速
|
2社間ファクタリングより手数料を安く抑えられる |
主なデメリット・リスク |
手数料が3社間ファクタリングより高くなる |
- 取引先に資金繰りを懸念される可能性がある
- 資金化までに時間がかかる
|
2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2社のみで契約が完結する方式です。2社間ファクタリングのメリットは、取引先にファクタリングの利用を知られずに済む点です。
手続きも迅速で、申し込みから入金までがスピーディーに進む傾向にあります。ただし、利用者が売掛金を着服するなど未回収となるリスクが高まるため、3社間ファクタリングに比べて手数料は高く設定されるのが一般的です。
一方、3社間ファクタリングは利用者・ファクタリング会社・取引先の3社が関与する契約方式です。取引先から直接ファクタリング会社が売掛債権を回収するため、回収リスクが低減されて手数料を安く抑えられるメリットがあります。
しかし、取引先にファクタリングの利用を知られてしまう点に注意が必要です。「資金繰りが悪化しているのではないか?」などの懸念を抱かれ、後の取引関係に影響を及ぼす可能性はゼロではありません。また、取引先の承諾を得るプロセスが必要なため、2社間ファクタリングに比べて資金化までに時間がかかる傾向があります。
ファクタリングがやばい・危険といわれる理由
以下では、ファクタリングがやばい・危険といわれる理由について以下の2点から解説します。
- サービスの提供に免許・登録が必要ない
- ファクタリングを直接規制する法令が整備されていない
上記の理由について、具体的にみていきましょう。
サービスの提供に免許・登録が必要ない
ファクタリングがやばい・危険といわれる理由は、事業を始めるにあたって国からの免許や行政への登録が義務付けられていない点にあります。例えば、銀行・消費者金融がお金を貸す貸金業を営むためには、貸金業法に基づき貸金業登録が必須です。そのため、悪質な業者が簡単に参入できないような仕組みが作られています。
しかし、ファクタリングは法律上貸金ではなく、債権の譲渡・売買として扱われます。債権の譲渡・売買に関しては貸金業法のような登録制度が存在しないため、多くの業者が参入しやすい状況です。
参入障壁が低い状況は、誰でもファクタリング会社を名乗れてしまう事実を意味します。もちろん、大多数は誠実なサービスを提供しています。しかし、金融の知識が乏しい業者や意図的に利用者を陥れようとする悪質な業者が紛れ込むリスクは、残念ながら否定できません。
ファクタリングを直接規制する法令が整備されていない
ファクタリングそのものを取り締まる専門の法律が存在しない点も、やばい・危険といわれる理由の1つです。例えば、貸金業法では利息の上限が以下のように年率15%〜20%と利息制限法によって厳格に定められています。
- 元本の金額が10万円未満の時の上限金利:年20%
- 元本の金額が10万円以上から100万円未満の時上限金利:年18%
- 元本の金額が100万円以上の時の上限金利:年15%
引用:上限金利について【貸金業界の状況】|日本貸金業協会
そのため、利用者は上記の上限を超えるような法外な利息は請求されません。一方で、ファクタリングの手数料には上限を定めた法律がないため、手数料率は各ファクタリング会社の判断に委ねられている状況です。
法的な規制がない事実を悪用し、一部の悪質業者が相場を著しく離れた高額な手数料を請求するケースが発生しています。法的なルールが未整備であるために利用者が不利益を被るリスクがあり、「ファクタリングはやばい」といわれる大きな要因となっています。
ファクタリングで実際にあった被害・トラブルの事例
以下では、ファクタリングで実際に発生した具体的な被害事例を2つ紹介します。
- 事例①:偽装ファクタリングで違法な貸付契約を結ばされたケース
- 事例②:給与ファクタリングで違法金利を請求されたケース
上記の事例を通じて、安全にファクタリングを利用するための知識を身につけましょう。
事例①:偽装ファクタリングで違法な貸付契約を結ばされたケース
ファクタリングを装い、実際には高金利の違法な貸付を行う偽装ファクタリングの被害が増えています。実際に、大阪府警はファクタリングを装ったヤミ金融グループを摘発しています。
本事例では、関西にある加工会社の会長が約320万円の売掛債権を業者に譲渡する一方で20万円を借り入れました。会長は利息を含めて31万円を返済しましたが、驚くべきことに売掛債権は最終的に業者の求めで会長側に戻される約束だったといいます。
大阪府警生活経済課は業者が債権の代金を支払っていない事実から、債権を担保にした無登録での違法な貸付行為と判断しました。同じグループは複数の企業に対し同様の手口を繰り返し、結果として14人が貸金業法違反などの疑いで逮捕されています。
参考:ファクタリング、ヤミ金が装う 違法貸し付け、大阪などで摘発|日本経済新聞
事例②:給与ファクタリングで違法金利を請求されたケース
企業だけでなく、個人が将来受け取る給与を対象とする給与ファクタリングで被害を受けるケースも増えています。給与ファクタリングは給料日前に現金が必要な場合に将来の給与債権を業者に買い取ってもらい、手数料を差し引いた金額を受け取るサービスです。そして、給料日に給料が振り込まれた後、利用者が業者に債権額を支払う仕組みです。
しかし、給与ファクタリングは実質的な貸付とみなされ、貸金業法違反となります。実際に、東京地裁では給与ファクタリング業者に対する全額返還命令が出される判決が下されました。本案件では七福神の名称で事業を行っていた業者に対し、5都県の男女9人が総額約430万円の返還を求めていました。
裁判では、業者の手法を貸金業に当たると明確に認定しています。理由として、以下2つの項目を挙げて契約は無効と判断し、利用者への全額返還を命じた状況です。
- 貸金業を営むために必要な登録を受けていない
- 手数料名目で年利換算250%を超える違法な金利を受け取っていた
給与ファクタリングは貸金業登録を受けていないヤミ金融業者が運営しているケースが多く、金融庁も注意喚起を促しています。給与ファクタリングは、絶対に利用しないようにしましょう。
参考:給与ファクタリングで違法金利、業者に全額返還命令|産経新聞
参考:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁
ファクタリングを利用するリスク・デメリット
以下では、ファクタリングを利用する際に直面する可能性のある具体的なリスクとデメリットについて、一つひとつ詳しく解説していきます。
- 相場を超えた高額な手数料を請求される
- 繰り返し利用すると資金が目減りする
- 取引先に資金繰りを懸念される
- 債権譲渡登記を求められるケースがある
- 償還請求権を設定されるリスクがある
- ヤミ金などの違法業者に出会う可能性がある
上記の点を事前に把握しておけば、思わぬトラブルを避けてスムーズにファクタリングで資金調達ができます。
相場を超えた高額な手数料を請求される
ファクタリングにおける最も直接的なリスクは、相場を超えた高額な手数料を請求されるケースです。前述の通り、ファクタリングの手数料には法律上の上限がありません。そのため、悪質な業者は利用者の足元をみて高額な手数料を設定するケースがあります。
なお、一般的なファクタリングの手数料相場は、以下の通りです。
ファクタリングの種類 |
手数料の相場 |
2社間ファクタリング(面談) |
10%〜20% |
2社間ファクタリング(オンライン) |
2%〜12% |
3社間ファクタリング |
1%〜9% |
もし、上記の相場から著しくかけ離れた手数料を提示された場合は、注意が必要です。なお、ファクタリングを利用する際は1社だけの見積もりで即決せず、必ず複数の会社から相見積もりをとりましょう。複数社の手数料・契約内容を比較検討すれば、明らかに相場を離れた手数料を提示しているファクタリング会社を見極めやすくなります。
繰り返し利用すると資金が目減りする
緊急時には頼りになるファクタリングですが、安易に繰り返し利用してしまうとかえって資金繰りを悪化させるリスクがあります。ファクタリングはサービスの利用に手数料がかかる分、売掛債権の額面よりも受け取れる現金は少なくなります。
例えば、毎月100万円の売掛債権を手数料10%でファクタリングし続けたとしましょう。毎月10万円、年間で120万円もの金額が手数料として消えていく計算で、本来であれば会社の利益となるはずだったお金です。
上記のケースでは短期的な資金ショートは防げても、中長期的には利益を圧迫して資金が目減りしていくデメリットがあります。ファクタリングはあくまで一時的なつなぎ資金の確保手段と捉え、根本的な経営改善を並行させましょう。
取引先に資金繰りを懸念される
3社間ファクタリングの場合、取引先に資金繰りを懸念される可能性がある点も注意が必要です。3社間ファクタリングを利用する場合、取引先に対して債権譲渡通知を行う必要があります。
もし、ファクタリングの利用を通知した際、取引先は「資金繰りに困っているのではないか」と不安に感じる可能性があります。結果として、今後の取引量を減らされたり、より厳しい支払い条件を提示されたりするなど将来のビジネスに悪影響が及びかねません。
長年築いてきた信頼関係を損なうのは、事業者にとって大きなデメリットです。上記のリスクを避けたい場合は、取引先に知られずに手続きが完了する2社間ファクタリングを選択するのが一般的です。
債権譲渡登記を求められるケースがある
ファクタリングの契約条件として、債権譲渡登記を求められるケースがある点に注意しましょう。債権譲渡登記は、利用者からファクタリング会社に売掛債権が正当に譲渡された事実を法的に公示するための手続きです。
ファクタリング会社にとっては、利用者による債権の二重譲渡のようなトラブルを防ぐための対抗策となります。しかし、利用者にとっては債権譲渡登記がデメリットとなる側面もあります。
登記情報は法務局で誰でも閲覧でき、取引先や融資を受けている金融機関などにファクタリングの利用事実を知られてしまう可能性があるためです。取引先はもちろん、ファクタリングの利用を金融機関に知られれば、信用評価に影響を与えるリスクもゼロではありません。契約を結ぶ前に、債権譲渡登記が必須の条件かどうかを必ず確認しましょう。
償還請求権を設定されるリスクがある
契約内容で特に注意すべきなのが、償還請求権の有無です。償還請求権とは、売掛先が債権の支払いが不能になった場合にファクタリング会社が利用者に対して債権金額の弁済を請求できる権利です。
償還請求権のある契約は、実質的に売掛債権を担保とした貸付(融資)にあたります。金融庁も注意喚起しており、過去の判例でも貸金業法違反と認定されています。そのため、貸金業登録をせずに償還請求権のあるファクタリングを行う業者は、ヤミ金そのものです。
損失を被るかどうか以前の問題で、上記のような違法業者とは決して契約してはいけません。契約書に償還請求権に関する記載がないか、必ず確認しましょう。
参考:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁
ヤミ金などの違法業者に出会う可能性がある
最も警戒すべきリスクが、ファクタリングを装ったヤミ金などの違法業者の存在です。法整備が十分でない現状を悪用し、実態は貸金業でありながらファクタリングと偽って高額な手数料を請求する悪質な業者が後を絶ちません。特に、下記のような特徴がみられたら、違法なヤミ金業者である可能性が高いです。
- 会社のホームページに所在地・代表者名が明記されていない
- 契約書を作成せずに取引を進めようとする
- 手数料が相場から離れて著しく高い
甘い言葉に惑わされず、少しでも怪しいと感じたら、すぐに業者とのやり取りを中止しましょう。
ファクタリングで起こりうるリスクを回避する方法
今まで紹介したファクタリングで起こりうるリスクを回避する方法について、具体的に以下の6つを紹介します。
- 複数のファクタリング会社で相見積もりをとる
- 契約時に債権譲渡登記の有無を確認する
- ノンリコース契約か確認する
- 信用力の高い売掛債権で申し込む
- 2社間ファクタリングを利用する
- 悪徳・違法業者の特徴を把握しておく
「こんなはずではなかった……」と後悔しないためにも、上記の方法を実践して安全にファクタリングを活用してください。
複数のファクタリング会社で相見積もりをとる
ファクタリングで高額な手数料を請求されるリスクを避けるための、最も基本的かつ効果的な方法が相見積もりです。1社だけの見積もりでは、提示されたファクタリングの手数料が適正な水準なのかを判断するのは困難です。しかし、複数の会社を比較すれば、おおよその手数料の相場観が掴め、不当に高い金額を提示してくる業者を見抜きやすくなります。
急いでいる時ほど1社で決めてしまいたい気持ちになるかもしれませんが、安全のためにも相見積もりの手間を惜しまないでください。最低でも2社〜3社のファクタリング会社に問い合わせましょう。
契約時に債権譲渡登記の有無を確認する
取引先・金融機関にファクタリングの利用を知られるリスクを避けたい場合、契約前の段階で債権譲渡登記が必須かどうかを確認しましょう。ファクタリング会社の中には、サービスの利用に債権譲渡登記を必須の条件としている会社もあります。登記が不要な会社を選べば、第三者にファクタリングの利用を知られるリスクを大きく下げられます。
問い合わせの際に、「御社では債権譲渡登記が必須ですか」と直接質問してみてください。もし、債権譲渡登記が必要な場合でも「なぜ必要なのか」を納得できるまで説明を求めましょう。
ノンリコース契約か確認する
契約書へサインする前に、ノンリコース(償還請求権なし)の契約であるかを絶対に確認してください。正規のファクタリングは、売掛先から債権が回収不能になっても利用者に弁済を求めないノンリコース契約が原則です。
一方で、償還請求権がある契約を提示してくる業者は実質的な貸し付けを行うヤミ金である可能性が極めて高いです。金融庁も、償還請求権のあるファクタリングは貸金業に該当するとの見解を示しています。トラブルを避けるためにも、契約書に償還請求権や利用者に返済義務を負わせる条項がないか隅々まで確認しましょう。
参考:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁
信用力の高い売掛債権で申し込む
手数料が高くなるリスクを少しでも抑えたい場合は、信用力の高い売掛債権でファクタリングを申し込むのが有効です。ファクタリング会社が最も気にするのは「売掛金が期日通りに回収できるか」という点です。そのため、売掛先が上場企業などの支払い能力の高い相手であれば、ファクタリング会社にとって未回収リスクが低いと判断されます。
結果として、審査に通りやすくなるのはもちろん、より低い手数料率が適用される可能性が高まります。複数の売掛債権がある場合は、大手企業・地方公共団体など支払い能力の高い取引先のものを選びましょう。
2社間ファクタリングを利用する
取引先との関係が悪化するリスクを抑えたいのであれば、2社間ファクタリングの利用を検討しましょう。3社間ファクタリングは手数料が安いメリットがありますが、取引先にファクタリングの利用を知られてしまいます。そのため、「資金繰りが厳しいのでは?」と懸念され、関係性が悪化するリスクが高まります。
2社間ファクタリングであれば、利用者とファクタリング会社の間だけで手続きが完結するため、取引先に知られることはありません。手数料は3社間に比べて高くなる傾向がありますが、長年築き上げてきた取引先との信頼関係を維持できる大きなメリットがあります。
悪徳・違法業者の特徴を把握しておく
最も避けるべきリスクである悪徳・違法業者から身を守るためには、相手の特徴をあらかじめ知っておくことが最大の防御策です。具体的には、以下のような特徴を持つ業者には絶対に近づかないでください。
- 会社の所在地・代表者名、固定電話の番号がホームページに記載されていない
- 契約書を交わさずに取引をしようとする
- 「審査なし」「100%買取」などの話で誘ってくる
- 提示された手数料が相場を著しく超えている
少しでも「おかしいな」と感じたら安易に契約せず、きっぱりと手続きを断り、弁護士などの専門家に相談しましょう。
ファクタリングの悪徳・違法業者にみられる共通の特徴
ファクタリングの悪徳・違法業者にみられる共通の特徴として、以下の項目があげられます。
- 見積書・契約書を提示しない
- 担当者の対応に不審な点がみられる
- 手数料の基準が曖昧・設定されていない
- 実質的に融資を行う契約になっている
- 審査なしで契約できる
悪徳・違法業者からの被害を防ぐためにも、上記のポイントをしっかりと頭に入れておきましょう。
見積書・契約書を提示しない
見積書・契約書などの契約内容を記した書面の提示を渋ったり、そもそも作成しようとしなかったりする業者は利用しないようにしましょう。悪徳業者が使う典型的な手口で、手数料・支払い条件などをあえて書面に残さず、「いった、いわない」のトラブルに持ち込もうとします。口約束だけで取引を進め、後から利用者に不利な条件を一方的に突きつけてくるのが悪徳業者の手口です。
「手続きを急いでいるので、書類は後回しにしましょう」などといわれても、絶対に応じてはいけません。契約内容が明記された書面を確認し、安全だと確認できるまでは決して次のステップに進まないでください。
担当者の対応に不審な点がみられる
担当者の対応に不審な点がみられる場合も、安易に契約しないようにしましょう。もし、担当者に以下のような違和感を覚える言動があった場合は注意が必要です。
- 質問に対して、はぐらかしたり曖昧な返事しかしない
- メリットばかりを強調し、リスク・デメリットの説明をしない
- やたらと契約を急かしてくる
- 会社の固定電話ではなく、個人の携帯電話での連絡を多用する
- 高圧的な態度をとったり、無礼な言葉遣いをしたりする
誠実な会社の担当者であれば、利用者の不安・疑問に寄り添い、丁寧でわかりやすい説明を心がけるのが一般的です。自身の直感を信じ、少しでも「この人は信頼できない」と感じたら、業者との取引は見送るのが賢明です。
手数料の基準が曖昧・設定されていない
手数料の基準が曖昧・設定されていないファクタリング会社も、注意が必要です。優良なファクタリング会社は、売掛先の信用力・買取金額などに基づいた独自の料金体系や算出基準を持っています。しかし、悪徳業者は利用者の知識レベルをみながら不当に高い手数料を請求しようとするため、料金体系が不透明なケースが多いです。
「諸経費込みで〇〇円です」などの曖昧な説明しかできない場合は、無闇に契約しないようにしましょう。また、「コンサルティング料」などよくわからない名目で追加費用を請求してくる場合は悪徳業者であるリスクが高いといえます。
実質的に融資を行う契約になっている
実質的に融資を行う契約になっている場合は、特に注意が必要です。ファクタリングは、あくまでも売掛債権の売買・譲渡であり、お金を借りる融資ではありません。上記の違いを悪用し、ファクタリングを装って違法な貸付を行うヤミ金業者がいます。
以下の条件を提示された場合、ファクタリングではなく違法な融資にあたる可能性があります。
- 償還請求権が設定されている
- 売掛債権の額面以上の金額を調達できると持ちかけてくる
- 手数料ではなく利息という言葉を使う
- 分割での支払いを提案してくる
上記のような条件を提示してる業者は悪質な取り立てをしてくるリスクもあるため、絶対に関わってはいけません。
審査なしで契約できる
「審査なしでOK」「100%買い取ります」のような甘い言葉で勧誘してくる業者は、基本的に悪徳業者だと考えてください。正規のファクタリング会社にとって、売掛先がきちんと支払いを行ってくれるかどうかは事業の根幹に関わる最重要事項です。そのため、売掛先の信用力を調査する審査は、絶対に欠かせないプロセスです。
審査がない場合は、ファクタリング会社が負うべき未回収リスクを利用者に転嫁する可能性があります。そのため、償還請求権が設定されたり、高額な手数料を請求されたりなどのリスクが高くなります。
安心・安全に利用できる大手ファクタリング会社5選
以下では、安心・安全に利用できる大手のファクタリング会社を5つピックアップして紹介します。
- ビートレーディング
- 日本中小企業金融サポート機構
- ベストファクター
- No.1
- オリックス
上記の中から、自社の条件にあったファクタリング会社を選びましょう。
ビートレーディング

種類 |
- 2社間ファクタリング
- 3社間ファクタリング
- 診療報酬ファクタリング
- 注文書ファクタリング
|
買取可能額 |
下限・上限なし |
手数料 |
2%〜 |
入金スピード |
最短2時間 |
手続き方法 |
オンライン・対面・訪問・LINE |
公式サイト |
https://betrading.jp/ |
ビートレーディングはファクタリング業界のパイオニアとして知られる、安心・安全なファクタリング会社です。同社は、2012年にファクタリングの提供を開始して以来、10年以上の運営実績を誇ります。今までに7.1万社以上の取引実績があり、累計買取額は1,550億円を達成しているため、信頼性の高さが伺えます。
最短2時間での資金化が可能であり、クラウドサインを導入しているため、PC・スマートフォンから場所を選ばずに手続きが可能です。さらに、審査に必要な書類は2点のみと少なく、スピーディーな資金調達を実現しています。個人事業主も利用可能であり、幅広い事業者に対応している点も特徴です。
最大98%の買取率を誇り、受注時点で発行される注文書の売却ができる注文書ファクタリングにも対応しています。また、東京・仙台・名古屋・大阪・福岡に拠点を構え、全国対応で企業の資金調達を支援しています。
日本中小企業金融サポート機構

日本中小企業金融サポート機構は、企業の経営課題全般をサポートする経営革新等支援機関として信頼性の高いファクタリングを提供しています。同機構は今までに支援総額318億円、対応業種27種、取引社数13,190社の豊富な支援実績を誇ります。融資・M&A・クラウドファンディングなど幅広い資金調達に対応しており、顧客の状況に合わせた最適な方法を提案してくれる点が魅力です。
ファクタリングでは必要書類を提出するだけで審査ができ、最短即日で入金が可能で急な資金繰りの悪化による経営リスクを最小限に抑えられます。書類の提出から契約までオンラインで完結できるため、来店の手間などがかからず手続きが簡単な点もメリットです。
ベストファクター

種類 |
- 2社間ファクタリング
- 3社間ファクタリング
- 注文書ファクタリング
|
手数料 |
2%〜 |
入金スピード |
最短即日 |
買取可能額 |
30万円〜1億円 |
手続き方法 |
オンライン・電話・メール |
公式サイト |
https://bestfactor.jp/ |
ベストファクターは年間10,580件もの相談件数を誇る、安全に利用できるファクタリング会社です。同社は2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの両方に対応しており、利用者の目的に合わせて選択できます。特に、2社間ファクタリングでは取引先に知られずに資金調達できるため、信頼関係に傷がつく心配がなく安心して利用できます。
手数料についても低水準の2%から利用でき、資金調達にかかるコストを下げやすい点が魅力です。また、審査はオンラインで対応が可能で、面談が必要な場合も遠方の場合は訪問してくれるなど柔軟なサポート体制が魅力です。買取可能額は30万円から1億円と、幅広い資金ニーズに対応しています。経験豊富な専門スタッフが資金調達だけでなく財務コンサルティングも行ってくれるため、経営のパートナーとしても相談できます。
No.1

種類 |
- 2社間ファクタリング
- 3社間ファクタリング
- 診療報酬ファクタリング
- 介護報酬ファクタリング
|
手数料 |
1%〜15% |
入金スピード |
最短30分 |
買取可能額 |
20万円~1億円 |
手続き方法 |
オンライン・電話・メール |
公式サイト |
https://no1service.co.jp/ |
株式会社No.1は、資金繰りの悩みを解決へと導くファクタリングサービスを提供しています。No.1の大きな強みは、申し込みから最短30分で事業資金を調達できるスピード対応です。急な資金需要に直面している企業にとって、資金繰りの悪化による経営危機を乗り越える上で心強い要素となります。
また、売掛債権以外にも診療報酬・介護報酬の買取にも対応しているため、医療機関の資金繰り改善にも活用が可能です。ファクタリング以外に経営支援コンサルティングも提供しており、事業者の資金繰りを経営面からサポートしてくれます。
オリックス

種類 |
- 買取ファクタリング(売掛債権)
- 診療報酬ファクタリング
- 介護報酬ファクタリング
|
手数料 |
要問い合わせ |
入金スピード |
要問い合わせ |
買取可能額 |
要問い合わせ |
手続き方法 |
店舗 |
公式サイト |
https://www.orix.co.jp/grp/business/factoring.html |
オリックスは、大手金融グループとしての信頼と実績を背景にファクタリングを通じた安定的な資金調達手段を提供しています。大手ならではの安心感は、特に初めてファクタリングを利用する方や悪質業者を懸念する方にとって大きな魅力です。
オリックスは通常の売掛債権買取に加えて、手形買取・売掛債権を担保とした融資などのサービスも展開している点が特徴です。オリックスの各営業拠点で問い合わせや相談を受け付けており、大手企業ならではのサポート体制で安心して利用できます。
ファクタリングで回避できるリスクもある
本章では視点を変え、ファクタリングの活用で回避できるリスクについて解説します。
- 資金繰りの悪化を早期に防げる
- 融資に落ちた際の代替手段として活用できる
- 信用情報に悪影響を与えない
- 売掛債権が回収不能となるリスクを回避できる
上記のようにファクタリングにはメリットも数多くあるため、信頼できる業者を見極めた上で積極的に活用しましょう。
資金繰りの悪化を早期に防げる
資金繰りが悪化するリスクを早期に防げる点が、ファクタリングを利用するメリットです。企業経営において最も避けたいリスクが、手元の資金が尽きてしまう資金ショートです。たとえ帳簿上は黒字であっても入金と支払いのタイミングがずれて資金が不足し、倒産に至る黒字倒産は決して珍しくありません。
ファクタリングは、上記のような資金繰りが悪化するリスクを早期に防ぐための有効な手段です。通常、売掛債権の入金日は1ヶ月以上先ですが、ファクタリングを利用すれば最短即日で資金化できます。「月末の支払いに現金が少し足りない」などの場面でファクタリングを利用すれば、資金ショートを回避できます。
融資に落ちた際の代替手段として活用できる
融資を受けられずに資金調達計画が頓挫するリスクに対して、ファクタリングは有力な代替手段となり得ます。事業資金が必要な際、まず検討するのが銀行などからの融資です。しかし、「赤字決算や税金の滞納、創業から日が浅いなどの理由で融資審査に通らない」などのケースも少なくありません。
融資審査が申込企業の信用力を重視するのに対し、ファクタリング審査は売掛先企業の信用力を主に評価します。つまり、経営状況に課題があったとしても、支払い能力が高く優良な取引先の売掛債権があれば、資金を調達できる可能性が十分にあります。
信用情報に悪影響を与えない
信用情報に悪影響を与えるリスクを回避できる点も、ファクタリングを利用するメリットです。金融機関からの融資は、利用した事実が信用情報機関に記録されます。借入額が多くなれば、後の追加融資やローン審査に影響が出る可能性があります。
一方で、ファクタリングは借入ではなく資産の売却であり、信用情報機関に利用履歴は登録されません。そのため、信用情報に影響を及ぼさず、ファクタリングが原因で将来の融資で調達できる金額が減る心配もありません。
売掛債権が回収不能となるリスクを回避できる
売掛債権が回収不能となるリスクを回避できる点も、ファクタリングのメリットです。取引先の経営状況が悪化および倒産してしまうと売掛債権は回収不能となり、自社の経営に大きな打撃を与えます。
一方で、ファクタリングは償還請求権がなく、売掛債権をファクタリング会社に譲渡すると回収義務も一緒に移転します。そのため、もし売掛先が倒産したとしても、売掛債権の売却によってファクタリング会社から受け取った代金を返済する義務を負いません。ファクタリングは、売掛債権を資金化すると同時に付随する回収リスクも手放せます。
ファクタリングに関するよくある質問
最後に、ファクタリングを利用する中で多くの方が抱く以下の質問をピックアップして紹介します。
- 売掛債権の二重譲渡を行うリスクは?
- 債権流動化とは?
- IFRSにおけるファクタリングの会計処理はどう行う?
- LINEで手続きを完結できるファクタリングはある?
- ファクタリングで取り立てはある?
- ファクタリングで得られる資金は投資目的で利用できる?
- ファクタリングで違法となった判例はある?
- 個人事業主はファクタリングを利用できる?
- ファクタリングは貸金業登録が必要?
ファクタリングに関して疑問点がある場合は、上記質問への回答を参考にしてください。
売掛債権の二重譲渡を行うリスクは?
売掛債権の二重譲渡は、絶対に手を出してはならない行為です。1つの売掛債権を複数のファクタリング会社に譲渡する二重譲渡は、発覚すれば詐欺罪・横領罪などの刑事罰に問われる可能性があります。
また、民事上もファクタリング会社から損害賠償を請求されるリスクがあります。ファクタリング業界内でも悪質な利用者として情報が共有され、二度とサービスを利用できなくなるだけでなく対外的信用を失墜させる行為です。
債権流動化とは?
債権流動化とは、企業が保有する売掛債権などの資産を売却して資金を調達する手法の総称です。ファクタリングは債権流動化の一種であり、売掛債権に特化した1つの手法と位置づけられます。他にも不動産を担保にして証券を発行するモーゲージ証券など、債権流動化には様々な手法があります。
IFRSにおけるファクタリングの会計処理はどう行う?
IFRS(国際財務報告基準)では、ファクタリングが「債権の売却」か「借入金」のどちらに該当するかで会計処理の方法が変わります。ポイントとなるのは、「売掛債権のリスクと経済価値が、実質的にファクタリング会社へ移転しているか」です。上記のポイントに基づいて、以下2つの会計処理方法に分けられます。
移転していると判断された場合 |
債権の消滅として処理し、オフバランス化が可能 |
移転していないと判断された場合 |
売掛債権を担保とした借入金として計上 |
なお、IFRSでは日本の会計基準に比べて判断がより厳格になる傾向があります。IFRSを適用している場合は、必ず顧問税理士・公認会計士などの専門家に確認してください。
LINEで手続きを完結できるファクタリングはある?
LINEで手続きすべてを完結できるファクタリングはあります。たとえば、ビートレーディングではLINEで申し込みから審査までの手続きをすべて完結できます。必要書類もLINEで写真をとって送るだけと、手続き自体も簡便です。
ファクタリングで取り立てはある?
3社間ファクタリングの場合は売掛先からファクタリング会社へ直接支払いが行われます。そのため、利用者が返済に関わることはなく取り立ては発生しません。
2社間ファクタリングの場合、売掛先から入金された資金を期日通りにファクタリング会社へ送金する義務があります。送金が遅れた場合は支払いをお願いする連絡・催促は入りますが、威圧的な取り立てが行われるケースはありません。もし、自宅・会社に押しかけてきたり、脅迫的な言動で支払いを迫ってきたりする業者がいれば、警察・弁護士に相談してください。
ファクタリングで得られる資金は投資目的で利用できる?
ファクタリングで調達した資金の使途は、原則として自由です。原則として銀行融資では申し込みの際に事業計画書の提出が求められ、資金の使い道が設備投資・運転資金などに限定されます。
しかし、ファクタリングは融資ではなく自社が保有する売掛債権の譲渡・売却です。そのため、得た資金は本来入金されるはずの売上代金と同じように経営者の判断で自由に使えます。
ファクタリングで違法となった判例はある?
ファクタリングを装った偽装ファクタリングが、貸金業法違反などで違法とされた判例は多数存在します。ファクタリングで違法となった判例として、金融庁は以下の事例を紹介しています。
- ファクタリング業者が譲渡対象債権に係る債務者の不払いリスクをほとんど負っていない、債権の額面とは無関係に金員の授受がされていたといった事情等を考慮して、金銭消費貸借契約に準じるものと判断された事案(大阪地裁平成29年3月3日判決)
- 債務者が弁済しなかった場合、売主が債権額以上の金額をファクタリング業者に支払う旨の公正証書を作成するなど、ファクタリング業者が負担すべき不払いのリスクを負担していないといった事情等を考慮して、貸金業法上の貸付けに当たると判断された事案(東京高裁令和3年7月1日判決)
- 売主は債務者の資力を担保しないと規定されているものの、譲渡債権の性質や、債権譲渡日から支払日までの期間の短さからして債務者による不履行の可能性は極めて低いといった事情等を考慮して、貸金業法上の貸付けに当たると判断された事案(名古屋地裁令和3年7月16日判決)
- 売主は債権譲渡が発覚すると、取引先(債務者)の信頼を損ね、事業の継続が困難になるため、何としてでも買戻期限までに譲渡債権を買い戻さなければならない状況にあったことをファクタリング業者も認識していたなど、事実上、譲渡債権を担保とする金銭消費貸借に近い経済的機能を有していたといった事情等を考慮して、貸金に関する各種規制を潜脱するものと評価し、公序良俗に反し無効と判断された事案(札幌高裁令和4年7月7日判決)
- ノンリコースの規定は設けられているものの、抗弁事由が存在しないこと、支払い停止の状態にないこと、破産手続き開始原因が存在しないことなど、債務者における不払いの兆候等がないことについて、売主において表明保証することとされており、売主に債務の保証を求めているのに等しいといった事情等を考慮して、金銭消費貸借契約に該当すると判断された事案(東京地裁令和4年3月4日判決)
引用:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁
個人事業主はファクタリングを利用できる?
多くのファクタリング会社が、個人事業主・フリーランスも対象としています。ファクタリングを利用できるかどうかの最も重要な条件は事業形態ではなく、「法人に対する売掛債権を保有しているか」です。
ファクタリングの審査では、申込者自身よりも売掛先である企業の信用力が重視されます。そのため、個人事業主の方でも安定した企業との取引で発生した売掛債権があれば、問題なく利用できるケースがほとんどです。
ファクタリングは貸金業登録が必要?
ファクタリングを事業として行うにあたり、貸金業法に基づく登録は必要ありません。ファクタリングはあくまで債権の売買契約であり、お金を貸し付ける金銭消費貸借契約とは異なるためです。
ファクタリングのリスクを回避して安全に必要な資金を調達しよう
本記事では、ファクタリングの利用に伴う様々なリスクと回避策について詳しく解説してきました。ファクタリングは、売掛債権を早期に資金化できる迅速で有効な資金調達手段です。しかし、法整備が追いついていないなどの状況から悪質な業者が存在するリスクもはらんでいます。
上記のリスクを回避し、安全にファクタリングを活用する最大のポイントは信頼できる業者を慎重に見極めることです。必ず複数の会社から相見積もりをとり、手数料などの契約内容を徹底的に比較・確認してください。
ファクタリングは利用に伴うリスクだけでなく、貸し倒れ・資金ショートといった経営上の不安要素を回避できる側面も持っています。メリットとデメリットの両面を正しく理解し、自社の状況に合わせて賢くファクタリングを活用しましょう。