ファクタリングは企業が資金調達する上で融資にかわる有効な方法として注目され、今や多くの企業が利用しています。
しかし、ファクリングのデメリットは高額な手数料です。
ファクタリングを利用するためには、融資よりも高額な手数料を支払わなければならず、このコストがハードルとなってファクタリングの利用を躊躇する企業も少なくありません。
しかしファクタリングの手数料とは単に「ファクタリング会社の利益」という意味だけではありません。
自社にとっても高い手数料を支払ってファクタリングを行う意味があります。
ファクタリングの手数料の相場や決まり方、またファクタリングの手数料を引き下げる方法について詳しく解説していきます。
ファクタリングの手数料の意味
ファクタリングの手数料はファクタリング会社の利益になる部分ですが、ファクタリング会社は手数料をざっくりと決めているわけではありません。
手数料はファクタリング会社が損失を被った場合のリスクプレミアムとして設定されるものです。
売掛債権の回収リスクに伴うリスクプレミアム
ファクタリングにおける手数料とは、売掛債権の回収リスクに伴うリスクプレミアムとして発生するものです。
ファクタリングとは売掛債権の回収リスクも一緒に売却する行為ですので、ファクタリング後に売掛先企業の倒産などの理由で売掛債権がデフォルトした場合、その損失はファクタリング会社が背負わなければなりません。
ここが融資と最も大きな違いです。
ファクタリングの手数料とは、まさにこの「売掛債権の回収リスクの対価」と言えます。
融資における利息とは性質的に異なるものですので、ファクタリングの手数料は利息制限法に定められた上限金利を超えるものであったとしても違法ではありません。
逆に言えば、リスク以上に高い手数料を設定していた場合には違法行為の可能性があり、手数料設定がリスクに見合ったものであれば合法だと言えるでしょう。
ファクタリングの手数料の意味とは「売掛債権の回収リスクをファクタリング会社に背負ってもらうための料金」という言い方もできるでしょう。
ファクタリング手数料の相場はどのくらい?
ファクタリングの手数料には相場がありますが、ファクタリングの形によって手数料の相場は異なります。
ファクタリングの形態ごとの手数料相場とその根拠について解説していきます。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングの手数料相場は5%〜10%程度です。
2社間ファクタリングとはファクタリング会社と納入企業の2社だけで契約を行い、売掛先企業にファクタリングを利用したことを隠すことができます。
そのため、売掛債権の期日に、売掛先企業から納入企業へ入金になると、納入企業がファクタリング会社へ送金することによってファクタリング会社への返済が完了します。
2社間ファクタリングの売掛債権期日の資金の流れ
売掛先企業→納入企業(ファクタリングを利用した企業)→ファクタリング会社
このように、2社間ファクタリングにおいては、資金が自社を経由してファクタリング会社へ返済します。
この際に納入企業が資金を流用する可能性があるので、2社間ファクタリングにおいては、ファクタリング会社が売掛先企業のリスク加えて納入企業のリスクも背負わなければなりません。
そのため、2社間ファクタリングの手数料相場は3社間ファクタリングよりも高額になります。
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングの手数料相場は2%〜5%程度と2社間ファクタリングよりも低くなっています。
3社間ファクタリングは契約当初から売掛先企業の同意を得て、ファクタリング会社、納入企業、売掛先企業の3社で契約を行うものです。
そのため、売掛債権の期日は売掛先企業からファクタリング会社へ直接支払いが行われます。
23社間ファクタリングの売掛債権期日の資金の流れ
売掛先企業→ファクタリング会社
3社間ファクタリングにおいては2社間ファクタリングのように納入企業が資金を流用するリスクがなく、ファクタリング会社にとっては回収リスクが低い取引ということができます。
3社間ファクタリングの方が回収リスクが低いので手数料も低くなっています。
ファクタリングの手数料を決定する4つの要素
ファクタリングの手数料は以下の4つのポイントに基づいて決定します。
- 売掛先企業の業況
- 売掛債権の期間
- 売掛債権の金額
- 納入企業の業況(2社間ファクタリング)
これら4つの要素がなぜファクタリングの手数料に影響するのか、詳しく解説していきます。
売掛先企業の業況
ファクタリング手数料に最も大きな影響を及ぼすのが売掛先企業の業況です。
売掛先企業の業況が良好であれば手数料は低くなりますし、売掛先企業の業況が悪いのであれば手数料は高くなり、最悪のケースとして審査に通過することができません。
売掛債権のリスクを第一義的に決定するのは「この会社は期日通りに代金を支払うことができるかどうか」という点です。
そのため、ファクタリングの手数料決定に最も大きな影響を及ぼすのは売掛先企業の業況です。
手数料をあまり負担したくないのであれば業況の悪い企業の売掛債権をファクタリングすることは得策ではありません。
しかし「この取引先、期日通りに代金を払うかどうか心配」という場合には、あえてその売掛債権をファクタリングしてしまうというのは有効な方法だと言えるでしょう。
売掛債権の期間
売掛債権の期間もファクタリングの手数料を決定する重要な要素です。
期間の短い売掛債権の方が手数料は低くなり、期間の長い売掛債権は手数料が高くなる傾向があります。
期日までの時間が短いのであればファクタリング会社が代金を立て替える期間も長くはありません。「短い期間であれば回収には問題ないだろう」と判断するのが自然でしょう。
一方、期間の長い売掛債権はファクタリング会社の立て替え期間も長くなるので、その分リスクは高くなります。長い期間の間に業況が急変して倒産してしまうようなケースも考えられるためです。
期間の長い売掛債権をファクタリングした方が、企業の資金繰りにとってはプラスになりますが、その分手数料も高くなってしまうということを理解しておきましょう。
売掛債権の金額
売掛債権の金額も手数料に影響を及ぼします。
売掛債権の金額が大きければ手数料は低くなる傾向があり、売掛債権の金額が小さければ手数料は大きくなる傾向があります。
例えば1億円の売掛債権を5%でファクタリングした場合、ファクタリング会社の手数料収入は500万円です。
一方、1,000万円の売掛債権を10%でファクタリングした場合には、ファクタリング会社の手数料収入は100万円になります。
このように、手数料率が低くても売掛債権の金額が大きければファクタリング会社の利益は大きくなるので、金額が大きいほど手数料率は下がる傾向にあります。
反対に、金額が小さければ手数料率を低くしてしまうと、ファクタリングにかかる固定費などをペイすることができないので手数料率は高くなる傾向があります。
納入企業の業況(2社間ファクタリング)
2社間ファクタリングにおいては、納入企業であるファクタリングを利用する企業の業況も重要です。
2社間ファクタリングにおいては、売掛債権期日に資金が納入企業を経由するので、納入企業の業況や資金繰りが悪いと資金を流用されるリスクがあるためです。
自社の業況に問題ないか、何度もファクタリング会社を利用して信頼がある場合には手数料は下がる傾向がありますが、赤字、債務超過、キャッシュフローがマイナス、初めての利用などの場合には手数料が高くなるか、最悪のケースとして審査に落ちてしまう可能性があります。
ファクタリングの手数料を下げる7つの方法
ファクタリングは売掛債権を早期資金化することができ、売掛先企業の信用で審査を受けることができる非常に有効な資金調達法ですが、大きなネックが手数料です。
ファクタリングをより有効活用するためには、少しでも低い手数料で利用する必要があります。
ファクタリングの手数料を下げることができる方法として以下の7つの手段が考えられます。
- 信頼できる売掛先であることを説明する
- 業況が悪化してから利用しない
- 期間の短い売掛債権をファクタリングする
- 金額の大きな売掛債権をファクタリングする
- 規模の大きな企業の売掛債権をファクタリングする
- 担当者と良好な人間関係を作る
- 同じファクタリング会社を利用し続ける
ファクタリングの手数料を下げる7つの方法について詳しく解説していきます。
信頼できる売掛先であることを説明する
ファクタリング会社の担当者へ信頼できる売掛先企業であることを説明し、振込通帳などから「これまで期日通りに料金を支払ってきた」ということを証明することで手数料が下がることがあります。
ファクタリング会社が「リスクの低い売掛先」と判断すれば、低い手数料で審査に通過できる可能性は十分にあります。
まずは言葉と資料で、売掛先企業が信頼できる企業であることを説明しましょう。
業況が悪化してから利用しない
自社の業況が悪化してから申込をすると、「納入企業のリスクが高い」と判断されてしまいます。
納入企業のリスクが高いと判断されると、手数料が高くなるか、最悪の場合には審査に落とされることもあります。
間違いなく自社の業況が悪くなる前の方が審査に通過しやすいので、ファクタリングの申し込みはできる限り業況が悪化する前に行うようにした方が手数料が低くなる可能性が高いでしょう。
期間の短い売掛債権をファクタリングする
保有している売掛債権の中でも、期間の短い売掛債権をファクタリングした方が手数料は低くなる傾向があります。
期間の長い売掛債権の方がファクタリング会社のリスクが大きくなるので、リスクプレミアムとしての手数料も高くなります。
一方、期間の短い売掛債権はファクタリング会社のリスクが低いので手数料も低くなる傾向があります。
複数の売掛債権を保有しているのであれば、先に期間の短い売掛債権をファクタリングするようにしましょう。
金額の大きな売掛債権をファクタリングする
ファクタリングの手数料を下げるためにはできる限り金額の大きな売掛債権をファクタリングするとよいでしょう。
金額の大きな売掛債権の方が、ファクタリング会社の利益が大きいので手数料が下がる傾向があります。
金額の異なる複数の売掛債権を保有しているのであれば、先に金額の大きな売掛債権をファクタリングするとよいでしょう。
規模の大きな企業の売掛債権をファクタリングする
ファクタリングの手数料は売掛先企業の信用によって決定するので、規模の大きな企業の売掛債権をファクタリングに回すことによって手数料が下がる可能性が非常に高くなります。
ファクタリングの手数料は売掛債権の回収リスクに伴うリスクプレミアムです。
そのため、リスクの低い売掛債権に対してリスク以上の手数料を設定することはできません。
倒産の可能性が非常に低い、上場企業や官公庁に対する売掛債権を先にファクタリングすることによって、手数料は低くなります。
複数の売掛債権を保有しているのであれば、上場企業や官公庁に対する売掛債権を先にファクタリングするようにしましょう。
担当者と良好な人間関係を作る
担当者との人間関係も非常に重要です。
自社のことがよくわかっている担当者であれば、多少リスクが高いと思われる売掛債権でも、審査に通過させてくれる場合もあります。
何よりも、自社や自社の取引先についてよく把握しているので、審査通過が早くなるというのが大きなメリットです。
普段から担当者と自分の会社や取引先についてしっかりと話をしておき、良好な人間関係を構築しておきましょう。
法外な手数料が設定されることはありませんし、いざという時にも助けてくれる可能性が高くなるでしょう。
同じファクタリング会社を利用し続ける
同じファクタリング会社を利用し続けることでも手数料は下がる傾向があります。
ファクタリングには「納入企業が資金を流用するのではないか」というリスクがありますが、同じファクタリング会社を利用することによって、ファクタリング会社から信用を獲得することができるので「自社が資金流用する」というリスクは排除できます。
ファクタリングを利用し、期日通りに返済するということを繰り返すことによって、手数料は下がる傾向があるので浮気せずに1つのファクタリング会社を利用し続けることは非常に有効です。
ファクタリングの手数料についてよくある質問
- 2回目以降の利用なのに手数料が下がらない場合は業者を変えた方がよいでしょうか?
- 2回目以降の利用の場合には、手数料が下がる業者が多いのは確かです。
しかし最初から低い手数料でファクタリングした場合には、2回目だからと言って手数料が下がるとは限りません。
このような時には、他のファクタリング会社にも見積もりをとり、他よりも手数料が低いのであれば、そのままそのファクタリング会社でファクタリングをするとよいでしょう。
他よりも手数料が低いのであれば、最初からこれ以上下がる余地がないほど手数料が低かった可能性があるためです。
また、ファクタリング会社の担当者に「手数料は下がらないのですか?」と尋ねることは全く問題ありませんので、積極的に確認してみるとよいでしょう。
- 低い手数料を目当てに必要もないほどの高額債権をファクタリングするのはありでしょうか?
- 高額の売掛債権をファクタリングすれば手数料率が下がる可能性があることは間違いありません。
しかし、その分支払う手数料の金額は多くなるという点には十分に注意する必要があります。
例えば1億円の売掛債権を手数料5%でファクタリングした場合に支払う手数料は500万円です。
一方、1,000万円の売掛債権を倍の10%でファクタリングした場合に支払う手数料は100万円ですので、手数料率は低くても支払う手数料は金額が大きい方が圧倒的に多くなることがあります。
本当に必要な金額はいくらか、手数料はいくら払うのかということを十分にシミュレーションした上で、手数料率に惑わされることなく、支払う手数料で比較するとよいでしょう。
- ファクタリング会社によって手数料が異なるのはなぜですか?
- ファクタリングの手数料はリスクプレミアムとファクタリングにかかる経費です。
売掛債権のリスクプレミアム部分はファクタリング会社によって若干異なるものの、それほど大きく変わるものではありません。
しかし、ファクタリングにかかる経費の部分はファクタリング会社によって大きく異なります。
店舗型のファクタリング会社の場合には、事務所費や人件費がかかります。
また、債権譲渡登記が必須となっているファクタリング会社では登記費用も必要になります。
しかし、クラウド型のファクタリング会社の場合には人件費や事務所費を大きく節約することができ、債権譲渡登記をしないのであれば登記費用もかからないので手数料は安くすることができます。
このように、ファクタリング会社の形態や方針によって経費が大きく異なるので、ファクタリング会社によって手数料が大きく違うという減少が生じます。
まとめ
ファクタリングの手数料は
- 売掛先企業の業況
- 売掛債権の期間
- 売掛債権の金額
- 納入企業の業況(2社間ファクタリング)
という4つの要素で決まります。
手数料を下げたい場合には以下の7つの工夫で手数料が下がることがあります。
- 信頼できる売掛先であることを説明する
- 業況が悪化してから利用しない
- 期間の短い売掛債権をファクタリングする
- 金額の大きな売掛債権をファクタリングする
- 規模の大きな企業の売掛債権をファクタリングする
- 担当者と良好な人間関係を作る
- 同じファクタリング会社を利用し続ける
ファクタリングは便利ですが、手数料の高さがネックです。
できる限り手数料を下げる努力を行い、低いコストで資金調達することを心がけましょう。