「2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いとは?」
「2社間ファクタリングは本当に取引先に秘密で資金調達ができるの?」
ファクタリングによって資金調達を検討している経営者の中には、2社間ファクタリングという契約について注目されている方もいらしゃるでしょう。
2社間ファクタリングは日本国内の中小零細企業が主に利用するファクタリング契約で、「最短即日のスピード」と「売掛先に知られずに済む」というメリットがあります。
一方で、決して安くない手数料が設定されているため、利用にあたっては慎重な検討が必要です。
今回は2社間ファクタリングの仕組みやメリット・デメリット、さらには安全にファクタリングを利用するためのポイントについて解説します。
2社間ファクタリングとは
2社間ファクタリングは、債権譲渡にあたって売掛先(支払企業、元請け、クライアント等)の承諾が不要な契約です。
本来のファクタリングは売掛先の承諾が必須の3社間契約のみでしたが、中小零細企業にとって債権譲渡の承諾を取り付けることは、取引停止や発注減などのリスクが発生する可能性もあるため、非常にハードルの高いものでした。
政府は債権の活用によるさらなる経済の発展を図るため、1998年の「債権譲渡登記制度」の成立、および2005年の「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律」の成立によって条件を緩和、売掛先の承諾がなくても自由に債権を譲渡できるように法整備を行います。
そこで登場したのが、2社間ファクタリングというわけです。
現在の2社間ファクタリングは、主に「独立系」と呼ばれる中小のファクタリング会社が取り扱い、顧客も中小零細企業が中心となっています。
2社間ファクタリングの取引の流れ
2社間ファクタリングの流れ
①納入企業が商品・サービスを売掛先に納入
②納入企業が売掛先に商品・サービスの代金を請求(売掛債権の発生)
③納入企業とファクタリング会社が売掛債権を売買
④売掛先からの売掛金をファクタリング利用会社がいったん預かる
⑤ファクタリング利用会社が預かった売掛金をファクタリング会社に入金
商品・サービスの納入と代金の請求
納入企業が商品やサービスを売掛先に納入すると、後から代金を請求できる権利である「売掛債権」が発生します(①)。
また、納入企業は商品・サービスの納入時に納品書を、売掛先との間で事前に交わしておいた締め日に請求書を、そえぞれ発行します(②)。
2社間ファクタリングの契約
売掛金は、商品やサービスの納入から約1~2ヶ月後に支払われるため、早期に資金化したい場合はファクタリングを利用することになります。
2社間ファクタリングは債権譲渡に関して売掛先の承諾が不要なため、ファクタリング会社の審査に通れば、債権売買契約が締結されます(③)。
預かった売掛金をファクタリング会社へ入金
2社間ファクタリングで買取代金を受け取った後、期日が訪れれば、売掛金が売掛先からファクタリング利用会社に支払われます(④)。
この時点では、売掛債権はファクタリング会社に譲渡されているため、売掛先から支払われた売掛金の所有権はファクタリング会社にあります。
しかし、売掛先の承諾を得ていないため、ファクタリング会社は直接売掛先から売掛金を回収できません。
そこで、ファクタリング会社は売掛先から直接売掛金を回収するのではなく、ファクタリング会社と集金業務委託契約を結び、回収業務を委託します。
回収業務を委託されたファクタリング利用会社は、売掛金の期日の1営業日以内を目安として、ファクタリング会社へ売掛金を入金しなければなりません(⑤)。
2社間ファクタリングのメリット
2社間ファクタリングには、以下のようなメリットがあります。
売掛先に知られずに資金調達できる
ファクタリングで債権譲渡の事実を売掛先に知られることになると、「もしかして取引先の会社は、最近資金繰り悪いのか」などと勘ぐりをされ、取引停止や発注減などのリスクが発生する可能性もあります。
2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社で契約を結ぶため、売掛先に知られずに資金調達ができ、売掛先との信頼関係の悪化を心配する必要がありません。
最短即日で資金調達ができる
3社間ファクタリングは売掛先への通知および承諾が必要ですので、売掛先へアポを取り、債権譲渡の通知を行い、承諾書(同意書)を回収するというプロセスが発生します。
売掛先が大手企業の場合は、確認や決済のフローに時間がかかるため、どうしても資金化までに時間がかかります。
一方で、2社間ファクタリングは売掛先が関与しないため、ファクタリング会社の審査に通過すればすぐに買取代金が入金されます。
事前に必要書類などを揃えておけば、即日の入金も可能です。
2社間ファクタリングのデメリット
2社間ファクタリングにはデメリットもあります。
ファクタリング手数料が高め
3社間ファクタリング、2社間ファクタリングの手数料相場は、以下のとおりです。
- 3社間ファクタリング・・・1~5%
- 2社間ファクタリング・・・10~20%
たとえば、100万円の売掛債権を資金化する場合、3社間ファクタリングで5%の手数料では95万円、2社間ファクタリングで20%の手数料では80万円と、手元に残せる現金に15万円の差が生じます。
ファクタリングの手数料は、ファクタリング会社が負う回収リスクに対するリスクプレミアムとして設定されます。
2社間ファクタリングの手数料が高めに設定されている理由は、ファクタリング会社が負う回収リスクに加え、売掛先から支払われる売掛金が、いったんファクタリング利用者の口座を経由するからです。
期日どおりに売掛先から売掛金が支払われても、ファクタリング利用者の口座に入金された直後、他の支払いに回されたり、自動引落しされたりすれば、ファクタリング会社が買取代金の全額を回収できない可能性があります。
このため、手数料の相場は10〜20%と高めに設定されているのです。
利用条件・審査が厳しめ
前述の通り、2社間ファクタリングはファクタリング会社の負うリスクが大きく、3社間ファクタリングに比べて利用条件や審査が厳しめとなっています。
たとえば、2社間ファクタリングに必須の債権譲渡登記は法人に限られるため、個人事業主は原則2社間ファクタリングを利用できません。
個人事業主に対して2社間ファクタリングをする場合、ファクタリング会社は「債権譲渡の対抗要件」無しで売掛債権を買い取らなければならないからです。
ファクタリング会社の中には、登記不要で2社間ファクタリングを行うところもありますが、手数料が高めに設定されるなどのデメリットもあります。
大手ファクタリング会社は2社間の取り扱いがない
メガバンクの系列・グループのファクタリング会社は、基本的に回収リスクの大きい2社間ファクタリングを取り扱っていません。
2社間ファクタリングは、独立系と呼ばれる中小のファクタリング会社が主流です。
そのため、「売掛先に知られることがない」をうたい文句に、資金繰りに窮している事業者を狙う悪質な業者も存在しています。
ファクタリングを開業するにあたっては、貸金業登録のような免許や登録が不要なため、悪質業者かどうかを見極める明確な基準がありません。
悪質な業者と取引をしないようにするためにも、複数の業者から見積もりを取り、手数料の相場から大きく外れていないか、スタッフの対応に問題はないかなど、慎重に選定するようにしましょう。
違法な2社間ファクタリング
ファクタリングは債権売買契約であり、キャッシングやカードローンのような金銭消費貸借契約ではないため、利息制限法や貸金業法が一切適用されず、たとえファクタリング会社が30%を超えるような手数料を設定しても、利用者との間で合意が取れていれば、不法行為とはなりません。
しかし、手数料に制限がないとはいえ、ファクタリング会社は手数料相応のリスクを負わなければ、違法行為と判断され、利息制限法や貸金業法が適用される可能性もあります。
以下のような条件の2社間ファクタリングは、明確に違法です。
- 手数料に対してファクタリング会社が負うリスクが小さい
- 売掛債権の一部だけが買取対象
- 買取代金の全額を一括で支払わない
- ファクタリングを装った実質的な貸付
優良と言われるファクタリング会社は、上記のような取引は一切行いません。
上記に該当するような取引を持ちかけられたら、相手は悪徳業者の可能性が非常に高いです。
手数料に対してファクタリング会社が負うリスクが小さい
ファクタリング会社が利息制限法を超える手数料を設定できるのは、債権を買い取ると同時に回収リスクも引き受けるからです。
万が一、売掛先が業績不振や倒産等で支払不能に陥っても、ファクタリングは償還請求権がないため、ファクタリング利用者には支払い義務がありません。
これを「ノンリコース契約」と言い、ファクタリングは手形割引のように利用者に支払い義務がある「ウィズリコース」契約とは一線を画します。
しかし、悪質な業者の中には、手数料は2社間ファクタリングと同等化それ以上を設定しておきながら、償還請求権付きで売掛債権を買い取る者もあるようです。
手数料相応のリスクを追わないファクタリングは、利息制限法や貸金業法が適用され、違法行為として取締りの対象となります。
売掛債権の一部だけが買取対象
売掛債権のうち一部だけを買い取る行為が、なぜ違法なのでしょうか?
これもファクタリング手数料に関わる問題で、ファクタリング会社は売掛金の全額を買い取り、全ての回収リスクを負ってこそ、利息制限法を超える手数料を設定できます。
ファクタリング会社の都合によって、債権の一部しか買取に応じないことは、手数料相応の売掛債権の回収リスクを負っているとは言えません。
このようなファクタリングは実質的な貸付と判断され、利息制限法違反に問われる可能性があります。
買取金額全額を支払わない
ファクタリング会社が利用者から売掛債権を買い取り、その買取代金の全額を一括で支払わないにも関わらず、利息制限法を超える手数料を設定している場合は、違法行為になる可能性が高くなります。
悪質な業者の手口のひとつに、債権譲渡の際には買取代金の一部だけを支払い、残りは債権回収の後に支払うというケースがあります。
この場合も、ファクタリング会社は債権全額の回収リスクを負っているとは言えず、利息制限法を超える手数料を設定する合理性がありません。
ファクタリングと称した貸付
表向きには売掛債権買取のファクタリングをうたっておきながら、実際には買取ではなく、売掛債権を担保とした貸付を行っているケースです。
貸付を行うには、当然ながら貸金業法や利息制限法が適用されるため、年率20%を超える手数料(利息)は利息制限法違反、貸金業登録をしない貸付は貸金業法違反となります。
さらに、ファクタリング会社が売掛金を複数回に分割して、なおかつ分割手数料を付けて回収する場合は、これも実質的な貸付と見なされ、貸金業の登録をしていない業者には罰則が課されます。
2社間ファクタリングに関するQ&A
2社間ファクタリングに関して、よくある質問とその回答をQ&Aにまとめました。
- Q.2社間ファクタリングの審査では、自社(利用者、納入企業)の信用状況も重視されますか?
- A.2社間ファクタリングでも売掛先の信用力が優先されますが、集金業務委託契約を結ぶにあたって、税金の滞納で差し押さえの可能性がないか、利用者がしっかりと確定申告を行っているかなどが調査されます。また、利用者の人柄や会社の信頼性も重視されます。
- Q.銀行から融資を断られていても、2社間ファクタリングは利用できますか?
- A.ファクタリングは融資ではないため、金融機関の融資の審査に通らなかった場合や、各種税金の滞納がある場合でも、回収見込みのある売掛債権があれば、ファクタリングを利用できます。また、ファクタリングを利用した事実が信用情報に登録されることはないため、利用後の借入にも影響はありません。
- Q.2社間ファクタリングを利用するには、どのような書類が必要ですか?
- A.ファクタリング申込時に、経営者の身分証明書、回収見込みのある債権のエビデンスとして請求書や納品書、売掛先との継続的な取引を示す銀行の通帳(WEB通帳)が必要です。また、契約時には印鑑証明書、登記簿謄本の提出が求められます。ファクタリング会社によって提出が求められる書類が異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。また、2社間ファクタリングで即日の資金調達を実現するには、これら必要書類を予め揃えておくことが重要です。
- Q.2社間ファクタリングの高い手数料を抑えるには、どんなことが必要ですか?
- A.売掛先の信用力が高く、回収期日までの期間が短い売掛債権は、手数料が低めに設定されます。さらに、対面取引を実施しているファクタリング会社は、経営者の人柄も重視するため、資金調達の目的や経営改善計画などを具体的な書類で説明すれば、将来性を買われ、手数料を抑えられる可能性があります。
- Q.万が一、ファクタリングを装った高利の貸付を利用してしまったら、どこに相談すれば良いですか?
- A.ファクタリングに関するトラ物は、日本ファクタリング業協会が相談対応・苦情対応・紛争解決の窓口となっています。また、相場を遥かに超える手数料で偽装ファクタリングを利用してしまった場合は、過払い金請求に強い弁護士に相談しましょう。いずれも守秘義務があるため、債権譲渡の事実を売掛先に知られることはありません。
2社間ファクタリングは事前の見積もりと交渉が重要
2社間ファクタリングの取引の流れや、メリット・デメリットについて解説しました。
利息制限法を超える手数料の設定が可能なファクタリングにおいて、2社間ファクタリングは利用金額に対して10~20%の手数料がネックとなります。
手数料が高いほど、利用者が手元に残せる現金は少なくなるため、資金繰り改善のためにファクタリングを利用したはずなのに、ふたたび資金繰りに困窮してファクタリングに手を出す……という悪循環に陥る可能性があります。
しかし、ファクタリングの手数料は、「見積もり」と「交渉」で低く抑えることが可能です。
ファクタリング会社によっては、得意な業種、売掛債権の種類があり、自社とマッチングすれば、手数料を相場よりも低くすることができます。
さらに、ファクタリングは経営者の人柄も重視するため、交渉次第で手数料を抑えることも不可能ではありません。
なるべく低い手数料で資金調達ができるよう、ぜひ見積もりと交渉を実践してみてください。