銀行融資やビジネスローンの審査に落ちて、資金調達ができない中小企業が少なくありません。中小企業は経営体制が整っておらず、財務基盤が脆弱で資金調達が難しいのが現状です。
今回の記事では、中小企業が資金調達できない理由・失敗しないためのポイント・資金調達方法などをまとめました。くわえて、中小企業が資金不足に陥らずにすむ方法も解説します。
本記事を読めば、中小企業が資金調達できない理由を知って対策を講じられます。資金調達ができないと悩んでいるなら、原因を把握して解決手段を模索しましょう。
中小企業の資金調達が難しい背景
中小企業は大企業と比較し、「実績が少ない」「信用度が低い」といった理由で金融機関の融資審査に通りづらい傾向があります。
中小企業の資金調達の難しさは、日本銀行短観2023年に掲載されている資金繰り判断DIからもわかります。資金繰り判断DI(Diffusion Index)とは、資金繰りが「楽である」と回答した企業数の構成比から「苦しい」と答えた割合を引いたものです。数値が高いほど資金繰りが楽で、低いほど苦しい状況であると示しています。
以下の表が、日本銀行短観2023年の資金繰り判断DIです。
企業規模 | 2023年6月調査の資金繰り判断DI |
大企業 | 13 |
中小企業 | 8 |
さらに、freee finance lab株式会社が2020年に行った「中小企業の資金繰り・資金調達に関する調査」では、資金が必要な中小企業の6割が調達の目処が立っていないと回答しています。日本の企業の99.7%は中小企業であるため、今後は大企業以外の資金繰りをいかに円滑化するかが課題になります。
中小企業が資金調達ができない11個の理由
中小企業が資金調達できない理由は、以下の11個です。
- 経営体制が十分ではない
- 財務状況・信用力が弱い
- 実績がないのにメガバンクに申し込む
- 創業したばかりで決算書がない
- 赤字が継続している
- 債務超過に陥っている
- 担保・保証人が用意できない
- 前回の融資から時間が空いていない
- 事業規模と比べて希望額が大きすぎる
- 代表者の信用情報がブラック入り
- 事業計画・返済計画が現実的ではない
上記11個の理由に該当すると、なぜ資金調達ができないのか解説します。
経営体制が十分ではない
中小企業は組織の規模が小さく、事業運営の体制が十分に整っていない傾向があります。そのため、融資・出資の審査段階で落ちる可能性が大企業と比較して高いです。
経営体制が整っていないと、トラブルやアクシデントが起きたときに事業が破綻する恐れがあります。また、コンプライアンスの徹底が困難なため、何らかのトラブルに発展するリスクは大企業より大きい傾向が強いです。
大型の資金調達を検討しているなら、経営体制の充実や事業規模の拡大を念頭に経営戦略を立案しましょう。
財務状況・信用力が弱い
中小企業は、大企業と比べて財務基盤が弱くて融資が受けづらい傾向にあります。
財務基盤とは自己資本の比率を指しており、純利益が多いほど充実します。自己資本・内部留保が少なく、営業活動のための資金の多くを借入でまかなっている中小企業は少なくありません。
くわえて、中小企業は不動産などの担保を保有していないケースが多く、銀行・日本政策金融公庫などの融資審査において不利です。そのため、「銀行融資で資金調達ができない」「日本政策金融公庫の審査通過が難しい」といった声が聞かれます。
経営戦略の見直し・コスト削減・過剰在庫の売却などによって、利益が上がりやすく財務基盤の強い組織を目指しましょう。
実績がないのにメガバンクに申し込む
創業して間もない企業が、メガバンクの融資に申し込んでも審査通過は困難です。メガバンクの融資審査に通過するには、以下のポイントが重要です。
- 説得力があり実現可能性の高い事業計画書の作成
- 決算書が黒字という実績
- 売上・純利益・費用などを綿密に分析した返済計画書の作成
説得力があり実現可能性が高い事業計画書の作成は、実績がなければ不可能です。少なくとも起業後1年~2年が経過し、黒字の決算書が提出できる状況でなければなりません。
起業後すぐに融資を受けたいなら、地銀・信用金庫・日本政策金融公庫の創業融資を検討しましょう。綿密で将来性のある事業計画書が提出できれば、実績がなくても創業融資を受けられる可能性があります。
創業したばかりで決算書がない
創業したばかりで決算書がない企業は、資金調達する手段が限られます。創業前・創業1年未満の企業は、以下の2つの方法で資金調達するのがおすすめです。
- 地方自治体の制度融資
- 日本政策金融公庫の創業融資
なお、起業後すぐでも売掛債権があるならファクタリングで資金調達が可能です。また、手形取引をしているなら手形割引の利用を検討しましょう。
企業から1年が経過して決算書が作成できるまでは、ファクタリング・手形割引・地方自治体の制度融資・日本政策金融公庫での資金調達を検討してください。
赤字が継続している
赤字経営の企業は、銀行・信用金庫・ノンバンク系の融資審査の通過が困難です。
経営が赤字の場合、融資をしても返済されないリスクが高いと金融機関は判断します。赤字が3年ほど続くと利益を出せない経営構造になっていると判断されて、融資を断られるケースが多いです。ただし、一時的な赤字ならその限りではなく、将来の見通しや事業計画書を提出すれば融資を受けられる可能性があります。
赤字経営を解消するには、以下のポイントを見直しましょう。
- 人件費・設備費・水道光熱費などコストの削減
- 販促・広告による売上の拡大
- 取引先の新規開拓
コスト削減・売上拡大による実績を事業計画書に落とし込み、金融機関に融資を申し込んでみましょう。
債務超過に陥っている
債務超過に陥っていると金融機関から融資が受けられず、資金調達できない可能性が高くなります。債務超過とは、企業が抱える負債総額が資産総額を上回っている状態です。
債務超過を個人にたとえると、預金とあわせて不動産・自動車・宝石などの資産を売却しても借入を返済しきれない状態です。そのため、金融機関は債務超過に陥っている企業は返済できないリスクが高いと判断します。
債務超過を解消するには、以下の施策を検討しましょう。
- 増資による自己資本の増強
- 売上拡大・コスト削減による赤字体質からの脱却
- 遊休資産の売却
- ファクタリングを利用した売掛債権の早期回収・オフバランス化
- 民事再生法を適用
債務超過状態で融資の審査通過はほぼ不可能ですので、まずは経営状態を立て直しましょう。
担保・保証人が用意できない
資金調達できない理由として、担保・保証人の用意が困難で審査に落ちるケースが見られます。たとえば、以下の金融商品では担保・保証人が必要です。
- 不動産担保貸付
- ABL(動産担保付き融資)
- 経営者保証付き融資
担保・保証人が用意できると、その分だけ審査通過の可能性が上がり有利です。また、不動産の価値によっては高額な融資を受けられる可能性もあります。現在の経営状態で融資審査の通過が厳しいなら、担保・保証人を用意してください。
なお、担保・保証人の用意が困難なら、綿密で実現可能性の高い事業計画書・返済計画書を作成して融資を申し込みましょう。
前回の融資から時間が空いていない
銀行・日本政策金融公庫では、前回の借入から6ヶ月~1年ほど空けないと融資を受けられません。
たとえば、運転資金を借入して数ヶ月後に融資を申し込むと「計画性のなさ」「資金繰り計画が虚偽だった可能性」を疑われます。そのため、よほどの事情がない限り審査の通過は困難です。
どうしても融資が必要なら、別の銀行やノンバンク系のビジネスローンの利用を検討しましょう。また、資金調達に融資ではなくファクタリングを利用するのも有効です。
事業規模と比べて希望額が大きすぎる
事業規模と比較して借入希望金額が過大だと、資金調達できない可能性があります。
商品の仕入れ・従業員の給与など、事業運営のための運転資金の融資額は月商の3ヶ月分が目安です。新店舗・機械・社用車などの購入に必要な設備資金の融資額は、簡易キャッシュフローの7倍~10倍が上限と考えられています。簡易キャッシュフローとは、損益計算書から当期純利益+減価償却費で算出されます。
たとえば、年商の半分におよぶ運転資金や、簡易キャッシュフローの10倍以上になる設備費の借入は困難です。自社の事業規模を踏まえて、適切な借入希望額で融資を申し込みましょう。
代表者の信用情報がブラック入り
代表者の信用情報がブラック入りしていると、資金調達できない可能性が高いです。ビジネスローンに限り、代表者の信用情報を審査時に確認します。
信用情報機関に事故情報が登録された状況を、「信用情報ブラック」「ブラック」「ブラックリスト」などと呼びます。信用情報に記録される事故情報とは、返済の延滞・債務整理・自己破産などです。
ビジネスローンは代表者の信用情報が重視され、信用情報ブラックの場合は決算書が黒字でも審査に通過できない可能性があります。ただし、審査時に個人信用情報を確認するのはビジネスローンだけです。日本政策金融公庫・銀行・信用金庫などのプロパー融資・信用保証付き融資は個人信用情報を審査しません。
信用情報に傷がある場合は、ビジネスローンではなくプロパー融資・信用保証付き融資を検討しましょう。
事業計画・返済計画が現実的ではない
事業計画・返済計画が現実的でないと、資金調達できない可能性が高まります。金融機関の融資審査は、返済財源の根拠・返済期間を重視して検討します。
設備資金の返済財源は簡易キャッシュフロー(当期純利益+減価償却費)、運転資金は月商の3ヶ月分を基準に設定します。具体的には、設備資金の返済財源・返済期間は以下のように計算してください。
- 設備費:2,000万円
- 融資額:2,000万円
- 耐用年数:20年
- 年間利益額:50万円
融資額2,000万円÷((設備費2,000万円÷耐用年数20年)+年間利益額50万円)=返済期間13.3年
事業計画・返済計画は資金にゆとりを持って作成する必要があります。そのため、毎月の返済額は月商の10%~20%ほどを目安にしてください。
実現可能な事業計画・返済計画を作成し、融資審査の通過を目指しましょう。
中小企業が失敗しない資金調達方法の選び方
中小企業が失敗しない資金調達方法の選び方について解説します。
- 審査に通過しやすい
- 入金スピードが速い
- 資金調達コストが低い
上記の3点をしっかりチェックし、自社に最適な資金調達方法を選択しましょう。
審査に通過しやすい
資金調達に失敗しないためには、審査に通りやすい資金調達方法を選びましょう。審査通過の難易度は、以下の比較表の通りです。
資金調達方法 | 難易度 |
銀行・信用金庫(プロパー融資) | ★★★★★ |
日本政策金融公庫 | ★★★★ |
銀行・信用金庫(信用保証付き融資) | ★★★ |
ノンバンク系ビジネスローン | ★★ |
手形割引 | ★ |
ファクタリング | ★ |
信用保証付き融資とは、信用保証協会に保証してもらう中小企業向けの無担保・無保証人の金融商品です。保証料を支払う必要がありますが、プロパー融資より審査通過の難易度が低くなっています。プロパー融資とは、銀行・信用金庫などが信用保証協会を通さずに融資する仕組みです。また、ビジネスローンは金利が高めに設定されている反面、審査通過率が銀行融資より高くなります。
ファクタリング・手形割引は、ビジネスローンよりさらに審査に通過しやすいのが特徴です。資金調達に失敗しないためには、それぞれの審査の難易度を把握しておきましょう。
入金スピードが速い
財務基盤の弱い中小企業は、スピーディーに資金調達できる方法を選ぶのが重要です。資金調達スピードの比較表は、以下の通りです。
資金調達方法 | 資金調達スピード |
ファクタリング | 最短数時間~即日 |
手形割引 | 最短即日 |
ノンバンク系ビジネスローン | 最短即日 |
銀行・信用金庫(信用保証付き融資) | 2週間~3週間 |
日本政策金融公庫 | 3週間~1ヶ月程度 |
銀行・信用金庫(プロパー融資) | 3週間~1ヶ月程度 |
融資であれば、ビジネスローンが資金調達スピードに優れています。また、ファクタリングは最短数時間~即日で資金調達ができるため、急いでいるときに検討したいサービスです。
一方、期間に余裕があるなら金利の安い日本政策金融公庫・銀行・信用金庫などがおすすめです。
資金調達コストが低い
中小企業にとって、経営を圧迫しないためには資金調達コストの低さが大切です。資金調達方法別の金利・手数料は、以下の比較表の通りです。
調達方法 | 金利・手数料の相場 |
銀行系ビジネスローン(メガバンク) | 1%~14% |
銀行系ビジネスローン(地方銀行) | 3%~15% |
ノンバンク系ビジネスローン | 5%~18% |
日本政策金融公庫 | 1%~1.9% |
不動産担保貸付(銀行系) | 1%~9% |
不動産担保貸付(ノンバンク系) | 3%~12% |
手形割引(銀行・信用金庫) | 1%~5% |
手形割引(専門業者) | 5%~20% |
2社間ファクタリング(対面) | 10%~20% |
2社間ファクタリング(オンライン) | 2%~12% |
3社間ファクタリング | 1%~9% |
ファクタリング・手形割引の手数料と金利を比較するなら、年利換算しましょう。たとえば、支払いサイト90日(3ヶ月)の売掛債権を10%の手数料でファクタリングした場合、以下の計算式になります。
12ヶ月÷支払いサイト3ヶ月×手数料10%=年利換算40%
ファクタリング・手形割引は年利換算で割高なので、手数料が1桁台のサービスを選択しましょう。また、資金に余裕があるなら資金調達コストが割安な銀行・信用金庫・日本政策金融公庫がおすすめです。
中小企業が利用できる資金の調達方法5選
中小企業が資金調達する方法として、以下の5つの手段があります。
- 銀行・信用金庫
- 日本政策金融公庫
- 銀行系・ノンバンク系ビジネスローン
- ファクタリング
- 手形割引
上記5つの資金調達方法の特徴を押さえて、自社の経営課題に最適な選択肢を検討しましょう。
各資金調達方法の特徴・手数料の比較表
各資金調達方法の簡単な特徴と手数料の比較表は、以下の通りです。
資金調達方法 | 手数料 | 特徴 |
銀行・信用金庫 | 銀行(信用保証付き融資):1.5%~3% 銀行(プロパー融資):1%~3% 信用金庫:2%~6% |
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日本政策金融公庫 | 1%~3% |
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銀行系・ノンバンク系ビジネスローン | 銀行系ビジネスローン:1%~15% ノンバンク系ビジネスローン:5%~18% |
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ファクタリング | 2社間(対面):10%~20% 2社間(オンライン):2%~12% 3社間:1%~9% |
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手形割引 | 銀行:1%~5% 専門業者:5%~20% |
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銀行・日本政策金融公庫・信用金庫で資金調達できない場合は、ビジネスローン・ファクタリングの利用を検討しましょう。
銀行・信用金庫
資金調達方法 | 信用保証付き融資 | プロパー融資 | 信用金庫 |
金利 | 1.5%~3% | 1%~3% | 2%~6% |
メリット |
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デメリット |
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銀行・信用金庫の融資には信用保証付き融資・プロパー融資の2種類があります。
信用保証付き融資とは企業の返済が滞ったとき、保証を請け負った信用保証協会が立て替え払いする融資の仕組みです。信用保証協会は、中小企業・小規模事業者の資金調達をスムーズにするために設立された公的機関です。
プロパー融資とは、銀行・信用金庫が信用保証協会を通さずに融資する仕組みです。企業が返済できないと貸し倒れになるため、信用保証付き融資に比べて審査が厳しく中小企業には難しい資金調達方法になります。
資金調達コストは非常に低く、1桁台の金利で資金調達できる可能性もあります。審査期間は3週間~1ヶ月程度ですので、急ぎの資金調達には向いていません。
日本政策金融公庫
資金調達方法 | 日本政策金融公庫 |
金利 | 1%~3% |
メリット |
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デメリット |
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日本政策金融公庫は政府が運営しており、中小企業・小規模事業者・農林水産業者向けに融資を行う金融機関です。1%~3%という低金利で融資が受けられるため、資金調達が必要なら最初に利用を検討しましょう。
中小企業・小規模事業者向けには、長期事業資金・新事業支援・事業継承支援などを行っています。また、創業融資も提供しており、事業計画書次第では高額の開業資金の調達も可能です。さらに、担保・保証人なしで利用できる融資もあるため、資金調達を検討しているなら公式サイトを確認してみましょう。
たとえば、中小企業・小規模事業者向けに以下のような融資制度があります。
融資制度 | 金利 | 融資限度額 | 特徴 |
新規開業資金 | 2.23%~3.2% | 7,200万円 |
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女性、若者/シニア起業家支援資金 | 1.53%~2.5% | 7,200万円 |
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ただし、日本政策金融公庫は審査期間に3週間~1ヶ月程度かかります。時間に余裕があるなら、日本政策金融公庫はおすすめの資金調達方法です。
銀行系・ノンバンク系ビジネスローン
資金調達方法 | ノンバンク系ビジネスローン | 銀行系ビジネスローン |
金利 | 5%~18% | 1%~15% |
メリット |
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デメリット |
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ビジネスローンには銀行系・ノンバンク系の2種類があり、それぞれ金利・資金調達スピード・審査の難易度が異なります。
ノンバンク系ビジネスローンとは、消費者金融・信販会社などが提供しているビジネスローンです。ノンバンク系ビジネスローンは銀行・日本政策金融公庫の融資より審査に通過しやすく、経営状態が悪い企業でも融資を受けられる可能性があります。また、即日融資にも対応しているサービスもあり、急ぎの資金調達におすすめです。
ただし、金利は5%~18%と高めに設定されているため、慎重に返済計画を立てましょう。くわえて、借入限度額も300万円~500万円ほどのケースが多く、高額融資には対応していません。
なお、銀行系ビジネスローンは手数料相場が1%~15%とノンバンク系ビジネスローンより低く設定されています。また、信用保証付き融資・プロパー融資より審査に通りやすいのも特徴です。一方、審査には1週間ほどかかるため急ぎの資金調達には向きません。
信用保証付き融資・プロパー融資の審査に落ちた場合は、銀行系・ノンバンク系ビジネスローンを活用しましょう。
ファクタリング
資金調達方法 | ファクタリング |
手数料 | 2社間(対面):10%~20% 2社間(オンライン):2%~12% 3社間:1%~9% |
メリット |
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デメリット |
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ファクタリングは借入ではなく、会社が保有する売掛債権を売却して資金調達する方法です。
融資審査は利用者の信用状況が重視されますが、ファクタリングでは売掛先の支払い能力が重視されます。そのため、経営状態・財務状況が悪く融資審査に落ちた企業でもファクタリングで資金調達できる可能性があります。
また、ファクタリングは償還請求権なしの契約が一般的で、売掛先が倒産して売掛金が未回収になっても弁済義務は発生しません。
ファクタリングは、2社間ファクタリング・3社間ファクタリングの2つに分けられます。それぞれの契約形態の特徴は以下の通りです。
ファクタリング形態 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
特徴 | 利用者・ファクタリング会社で契約を締結 | 利用者・ファクタリング会社・売掛先で契約を締結 |
メリット |
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デメリット |
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手数料相場 | 対面:10%~12% オンライン:2%~12% |
1%~9% |
最短数時間~即日で資金調達できるファクタリングですが、資金調達コストは融資より割高です。たとえば、支払いサイト90日(3ヶ月)の売掛債権を手数料10%でファクタリングすると年利換算で40%相当になります。
12ヶ月÷支払いサイト3ヶ月×手数料10%=年利換算40%相当
時間に余裕があるなら、手数料の安い3社間ファクタリングの利用がおすすめです。
手形割引
資金調達方法 | 手形割引 |
手数料 | 銀行:1%~5% 専門業者:5%~20% |
メリット |
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デメリット |
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手形割引とは、企業が保有する約束手形を支払い期日前に銀行・手形割引業者に売却して資金調達する仕組みです。
手形割引の審査は受取人の信用状況より、振出人の支払い能力が審査で重視されます。そのため、経営状態・財務状況が悪くても審査に通りやすいのが特徴です。くわえて、手形割引業者なら即日資金調達できるスピード感も大きな魅力です。
手形割引の手数料相場は以下の通りです。
売却先 | 手数料相場 |
銀行・信用金庫 | 1%~5% |
手形割引業者 | 5%~20% |
手形割引はファクタリングとは異なり、手形が不渡りになった場合に弁済する必要があります。また、手数料を年利換算で計算すると、資金調達コストは融資より高くなるのがデメリットです。
手形取引を行っており、急ぎで資金調達をしたいなら手形割引の利用を検討しましょう。
借入で資金調達できないときはファクタリング
銀行・日本政策金融公庫・ビジネスローンで資金調達できないときは、ファクタリングの利用がおすすめです。なぜなら、ファクタリングでの資金調達には以下のようなメリットがあるからです。
- 赤字・債務超過でも審査通過の可能性がある
- 担保・保証人が必要ない
- 代表者が信用情報ブラックでも審査通過の可能性がある
- 急な資金調達ニーズにも最短即日で対応している
ファクタリングのメリットについて、わかりやすく解説します。
赤字・債務超過でも審査通過の可能性がある
融資は利用者の信用状況を重視しますが、ファクタリングは売掛先の支払い能力を審査で重視します。そのため、利用者が赤字決算・債務超過・税金滞納といった状態でも審査に通過できる可能性があります。
なお、審査基準は2社間ファクタリングより3社間ファクタリングの方が柔軟です。3社間ファクタリングは売掛先から直接ファクタリング会社に入金されるため、利用者の信用状況を審査する必要がないからです。
審査に通過する可能性を少しでも上げたいなら、3社間ファクタリングの利用を検討しましょう。
担保・保証人が必要ない
ファクタリングは担保・保証人が必要ありません。そのため、担保・保証人を準備する時間をかけずスピーディーな資金調達が可能です。
くわえて、必要書類は2点~7点とほかの資金調達方法と比較して少なめです。オンラインファクタリングなら、必要書類が請求書と通帳のコピーだけといったサービスもあります。
準備時に時間をかけず、素早く資金調達をしたいなら2社間ファクタリングの利用がおすすめです。
代表者が信用情報ブラックでも審査通過の可能性がある
ファクタリングの審査では、ビジネスローンとは異なり個人の信用情報を確認しません。
信用情報とは、信用情報機関に登録されている過去の借入に関する取引情報です。事故情報の滞納・債務整理・自己破産などが登録されている状態を、「ブラック」「信用情報ブラック」「ブラックリスト入り」と呼びます。
信用情報ブラックでビジネスローンの審査に通貨できないなら、ファクタリングを利用して資金調達しましょう。
急な資金調達ニーズにも最短即日で対応している
2社間ファクタリングなら、最短数時間~即日で資金調達できます。
銀行・日本政策金融公庫の融資は、3週間~1ヶ月程度の審査期間がかかります。そのため、急な支払いや資金トラブルによる資金調達ニーズには対応できません。
しかし、ファクタリングなら申し込みから入金までその日のうちに完了する可能性が高いです。急いで資金調達をしたいときは、最初にファクタリングの利用を検討するのがおすすめです。
中小企業が資金不足に陥らないためのポイント
中小企業が、資金不足に陥らないためのポイントについて解説します。
- 自己資本の増加を目指す
- コスト削減
- 資金繰り計画の作成
- 多角的な資金調達方法を検討
- 余剰在庫・不要資産の売却
- 買掛金の支払いを延長
資金不足で支払いが滞れば、最悪の場合は倒産に至るリスクがあります。普段から資金不足に陥らないように、十分な対策を講じておきましょう。
自己資本の増加を目指す
中小企業が資金不足に陥らないために、自己資本の増加を目指しましょう。
自己資本とは、企業が保有している総資本の中で返済が不要な資本を指します。自己資本を増やせば財務基盤が強くなり、企業の社会的な信用力の向上につながります。自己資本を増やす具体的な方法は、以下の通りです。
- 利益を上げる
- 新株発行などで増資を行う
自己資本比率が高いと安定経営とみなされ、金融機関からの評価が上がります。融資が受けづらい中小企業でも、自己資本の増加によって資金調達しやすくなり資金不足の回避が可能です。
2021年の中小企業庁の調査では、自己資本比率の全産業の加重平均値は40.92%となっています。中小企業は自己資本比率の目標値として、25%~30%を目安に経営戦略を構築しましょう。
参照元:2021年版「中小企業白書」 第1節 中小企業の財務基盤・収益構造と財務分析の重要性(中小企業庁)
コスト削減
中小企業が資金不足を回避するには、コスト削減がもっともスピーディーで効果的です。支出を削減すれば残る利益が多くなり、財務基盤の強化にもつながります。
中小企業が行いやすいコスト削減方法は、以下の通りです。
- ペーパーレス化など業務効率化
- 採用コストを下げる
- 水道光熱費を節約する
- 交通費・出張費の見直しによる人件費削減
目先の金額だけを目標とするのではなく、実行にかかる手間・労力といった見えないコストの削減も考慮しましょう。たとえば、光熱費を削減してオフィスの温度が上がり、作業効率が犠牲になっては本末転倒です。
コスト削減には、リモートワークの導入も非常に効果的です。リモートワークを導入すれば、ペーパーレス化や交通費・通勤時間の削減につながります。
コスト削減を通じて事業運営を見直し、利益の出やすい組織の体質を実現しましょう。
資金繰り計画の作成
資金繰り表を作成して資金計画を立てれば、突然の資金不足や倒産リスクを回避できます。
資金繰り表とは、今後の資金の増減を予測するために作成する現金収支をまとめた表です。資金繰り表の主な項目は以下の通りです。
- 前月の繰越し
- 経常収支
- 翌月の繰越し
- 営業収支
- 財務収支
資金繰り表をもとに資金計画を立てれば、過去の実績から将来を予測して資金が不足するタイミングを把握できます。資金繰り表はExcelでも作成できますが、以下の会計ツールを利用すると便利です。
- 弥生会計
- クラウド会計freee
- Gurinosuke
多角的な資金調達方法を検討
資金調達先をいくつか確保しておけば、選択肢が増えて資金不足に陥りづらくなります。
たとえば、複数の銀行と付き合いをしていれば、メインバンクの融資審査に落ちても他行で資金調達できる可能性があります。また、銀行融資以外にビジネスローン・ファクタリング・手形割引などの資金調達方法を知っていれば、万が一の事態でも資金不足の回避が可能です。
はじめての資金調達方法は、疑問・不安が生じてスムーズに利用できるとは限りません。資金に余裕のあるうちに、未経験の資金調達方法を利用してノウハウを蓄積しておきましょう。
余剰在庫・不要資産の売却
余剰在庫・不要資産を売却し、経営をスリム化して手元資金を確保すれば資金不足に陥りづらくなります。
在庫管理には、人件費・保管費・倉庫代など多くのコストが必要です。余剰在庫を抱えるとコストが高くなり、資金繰りを圧迫する恐れがあります。在庫管理コストと余剰在庫を安売りして発生する損益を分析し、マイナスなら早めに処分しましょう。
また、維持費がかかる・利用していない・税金が必要といった資産の売却も検討してください。資産を売却すれば手元資金の確保だけでなく、維持管理費・税金の負担軽減にもつながります。
余剰在庫・不要資産をできるだけ少なくし、スリムで利益の出やすい企業体質を目指しましょう。
買掛金の支払いを延長
買掛金の支払いを延長すれば、手元資金が残り資金繰りの改善につながります。買掛金の支払いを延長する方法には、以下の2つがあります。
- 取引先に支払いサイトの延長を交渉
- 請求書カード払いを利用
請求書カード払いとは、受け取った請求書の支払い方法をクレジットカード払いに切り替えられるサービスです。請求書カード払いは、支払いを30日~60日ほど延長できるのが大きな特徴です。
買掛金は自社名義で振り込みされるため、請求書カード払いの利用を取引先に知られる心配はありません。くわえて、取引先がクレジットカード払いに対応していなくても請求書カード払いは利用できます。
ただし、買掛金の支払いサイト延長は根本的な資金繰りの解決策にはなりません。売上向上・コスト削減・余剰在庫の見直しなど、資金繰り改善には抜本的な経営改革を行いましょう。
資金調達できないときによくある質問
資金調達できないときによくある質問へ回答します。
- 銀行・日本政策金融公庫の審査期間はどれくらい?
- 審査落ちしたら二度と借入できない?
- ファクタリングの審査基準は?
- 資金調達をするデメリットは?
あらかじめ疑問を解消しておき、資金調達できない事態を賢く回避しましょう。
銀行・日本政策金融公庫の審査期間はどれくらい?
銀行・日本政策金融公庫は、申し込みから入金まで3週間~1ヶ月ほどかかります。ただし、すでに取引のある銀行の場合は1週間~2週間ほどで借入が可能です。
資金調達を急いでいるなら、過去に取引実績のある金融機関を利用しましょう。
審査落ちしたら二度と借入できない?
銀行・日本政策金融公庫・ノンバンクなどで審査に落ちても、原因を解消すれば融資を受けられます。融資の審査に落ちるのは、以下の理由が考えられます。
- 財務状況・経営状態が悪く赤字決算が続いている
- 事業計画書・返済計画書の実現性が乏しい
- 信用情報がブラックリストに入っている
- 借入希望額が事業規模とあっていない
融資審査に落ちた理由は、どのような金融機関であれ開示されません。自社の状況を的確に分析し、審査落ちした理由を1つずつ解消しましょう。
ファクタリングの審査基準は?
ファクタリングは、売掛先の返済能力を審査で重視します。
ただし、売掛金の回収に利用者を挟む2社間ファクタリングは事業者の信用状況も審査されます。あまりにも経営状態・財務状況が悪い場合、売掛先が優良企業であっても審査落ちするケースが少なくありません。
2社間ファクタリングで審査落ちした場合は、他社に申し込むか3社間ファクタリングの利用を検討しましょう。
資金調達をするデメリットは?
資金調達は、金利・手数料といった資金調達コストがかかるのがデメリットです。
融資・ファクタリング・手形割引などで一時的に資金繰りが改善しても、将来的に返済や支払いで圧迫されて状況が悪化する可能性もあります。そのため、資金調達はできるだけ金利・手数料が安いサービスを利用しましょう。
くわえて、あらかじめ綿密な事業計画・資金計画を立ててリスクを最小限に抑えるのが大切です。
融資で資金調達ができない中小企業にはファクタリングがおすすめ
中小企業・小規模事業者は財務基盤が弱く、資金調達ができないケースが多く見られます。「資金調達ができない」「融資の審査通過が難しい」といった状況では、失敗した原因を的確に分析して解消しましょう。
今回の記事では、資金調達ができない理由や資金調達方法の選び方・種類についてまとめました。くわえて、中小企業が資金不足に陥らないためのポイントも解説しました。
もし銀行・日本政策金融公庫・信用金庫などで融資が受けられないなら、ファクタリングの利用がおすすめです。ファクタリングは利用者の信用状況より、売掛先の支払い能力を審査で重視するからです。
資金調達ができない・難しい・失敗した原因を解消し、自社に適した資金調達方法を選択して持続的な経営を実現しましょう。