ファクタリングでは支払いサイトが120日先などの期間の長い売掛金も買い取ってもらうことができます。
また、支払サイトの長い売掛金ほど資金繰りが苦しくなるので、ファクタリングをしたいと思う経営者も多いのが実情です。
しかし、支払サイトの長い売掛金は手数料が高くなるものです。
「120日先が支払期日の売掛金を買い取ってもらったら入金額はいくらになるのか?」と心配になっている人も多いのではないでしょうか?
ファクタリングにおいて入金額は支払いサイトによって反比例します。
ファクタリングの入金額と支払いサイトの仕組みが分かれば、最小のコストで売掛金を資金化することができます。
120日先に支払われる売掛金がいくらの入金になるのか、ファクタリングにおける入金額の仕組みから考えていきましょう。
入金額の決まり方
ファクタリングにおける入金額は割引率と支払いサイトによって決まります。
割引率は売掛先の与信審査によって決まり、支払サイトが長い方がリスクが大きくなるためです。
つまり、割引率さえ分かっていればファクタリングによっていくら入金になるのかを知ることができます。
「この売掛金を売却したらいくらの入金になるのか」ということを心配している人もファクタリングの入金額の決まり方を理解しておくことでファクタリングをする前から資金繰りの計画が立てやすくなります。
ファクタリングにおける入金額の決まり方を解説します。
入金額は割引率によって決まる
割引率とは、ファクタリングにおいて定められる利用手数料の割合です。
ファクタリング会社は売掛債権を買い取ることによって、回収リスクを負うことになります。また人件費などの事務コストもかかります。当然ながら無料で買い取ってくれるわけではありません。
この手数料分を決める利率を割引率と言います。
銀行で言えば金利に相当する部分と考えれば分かりやすいでしょう。
割引率はファクタリング会社によって様々で3社間ファクタリングの場合には1%〜5%程度と、それほど高くはありません。
しかし、2社間ファクタリングの場合には10%〜20%もの割引率が設定されることがあります。
また、割引率は売掛先が大手企業や公共団体の場合にはリスクが低いので低くなり、中小企業の場合にはリスクが高いので高くなる傾向があります。
入金額は支払サイトによって決まる
ファクタリングの入金額は支払いサイトが長くなればなるほど少なくなります。
支払サイトとは売掛金の入金までの日数で、入金までの日数が長ければ長いと「支払サイトが長い」入金までの日数が短いと「支払サイトが短い」と言います。
割引率は1年間の割合です。
そのため、1日あたりの手数料は売掛債権×割引率÷365日で計算することができます。
つまり、支払サイトが長い売掛債権は手数料が大きくなってしまいます。
逆に30日先の売掛金などの支払サイトが短い売掛金は仮に割引率が高くなったとしても入金がはそこまで少なくなることはありません。
120日などの支払サイトが長い売掛金をファクタリングに出す場合には入金額が少なくなってしまうことも覚悟した方がよいかもしれません。
支払サイトが長ければ長いほど割引率が高くなることも
割引率は売掛先のリスクによって決定します。
そして割引率は支払サイトが長い場合にも上がってしまうこともあるのです。
支払サイトが長い売掛金は、支払サイトが短く売掛金よりもファクタリング会社にとってはリスクが大きくなるためです。
30日先であれば「現在の業況が30日先まで継続し支払いには問題ないだろう」とポジティブに評価することができます。
しかし、120日先であれば「景気が変動して業況が悪化するかもしれない」という懸念材料も出てくるためです。
要するに先のことは分からないので、支払サイトが長い売掛債権は割引率自体が高くなってしまうことになります。
つまり、支払サイトが長い売掛金は、割引率自体も高くなり、手数料が発生する日数も長くなるので基本的には支払サイトが短い売掛金よりもファクタリングの入金額が少なくなってしまうのです。
もちろん、公共団体が売掛先などの絶対安心な売掛金は支払サイトが長くても割引率が低くなることもあります。
120日のファクタリング!入金額はいくら?
おそらく売掛金の中で最も長い支払サイトが「120日」です。
日本の商慣習では3ヶ月以上先の支払いの場合には手形が発行されるため、売掛金の場合はいくら長くても120日くらいが限度でしょう。
手形での支払いでもないのに120日の支払いサイトを設けている売掛金はあまり目にすることはありませんが、現実にそのような期間の長い売掛金も存在します。
「こんなに長い支払いサイトの売掛金をファクタリングしたら大きな手数料を取られる」と思っている人も多いはずです。
ファクタリングの入金額は手数料によって大きく左右されます。
120日も売掛金をファクタリングした場合にいくらの入金になるのか、割引率ごとに見ていきましょう。
割引率5%の場合
支払いが120日先の1,000万円の売掛金を割引率5%でファクタリングした場合の入金額はいくらになるのかについて計算しましょう。
- 手数料=1,000万円×5%×365日×120日=164,383円
- 入金額=10,000,000円-164,383円=9,835,617円
割引率5%の場合には16万円と少しの手数料を控除すれば早期に売掛金を資金化することができます。
ただし、割引率5%のファクタリングはほとんどのケースで3社間ファクタリングですので、取引先にはファクタリングをしたことを知られてしまうことになります。
割引率10%の場合
では上記と同条件で割引率10%でファクタリングした場合の入金額はいくらになるでしょうか?
- 手数料=1,000万円×10%×365日×120日=328,767円
- 入金額=10,000,000円-328,767円=9,671,233円
割引率10%であれば、リスクの低い売掛債権でかれば適用される割引率です。
この場合は32万円強の手数料負担で、120日先の売掛金を資金化することができます。
割引率20%の場合
では、2社間ファクタリングで適用されることが多い割引率20%で支払サイト120日の売掛金をファクタリングした場合にはどうなるのでしょう?
- 手数料=1,000万円×20%×365日×120日=657,634円
- 入金額=10,000,000円-164,383円=9,342,366円
この場合には手数料だけで65万円以上の負担になり、こうなってしまうと決して少ない負担とは言い難くなってしまいます。
割引率20%ものファクタリングで長い支払サイトでファクタリングすることは負担が大きくなってしまうことを覚悟する必要があるでしょう。
60日のファクタリングとの比較
ファクタリングをする売掛金の支払サイトが長ければ長いほど手数料が高くなり、入金額は少なくなります。
では、120日の半分である60日でファクタリングした場合にはどの程度の入金額になるのでしょう。
120日のファクタリングと比較してみました。
割引率 | 5% | 10% | 20% |
---|---|---|---|
120日の入金額 | 9,835,617円 | 9,671,233円 | 9,342,366円 |
60日の入金額 | 9,917,809円 | 9,835,617円 | 9,671,213円 |
このように、60日の場合では割引率が20%であったとしても、120日の売掛債権を10%でファクタリングした場合と同じ入金額になります。
基本的には、支払サイトの短い売掛金を割引した方が金銭的な負担が軽くなるでしょう。
ファクタリングに向いている債権・向いていない債権
支払いサイトが120日など長い売掛金はどうしても入金額が少なくなってしまいます。
ファクタリングには向いている債権と向いていない債権があります。
効率よくファクタリングによって資金確保をしていくためにはファクタリングに向いている売掛債権から資金化していく必要があります。
ファクタリングに向いている債権、向いていない債権をしっかりと理解し、最小のコストで最適な資金繰りを行うことができるようになりましょう。
120日など長い債権はファクタリングに向いていない
支払サイトが120日などの長い売掛債権はファクタリングに向いていません。
支払サイトが長い債権は割引率が高くなり、手数料が高くなるためです。
どうしても支払いサイトが長い債権しか手元にない場合には、借入などと併せてファクタリングをするかどうかを検討した方がよいでしょう。
回収リスクが低い債権は支払いサイトが長くても後回しにすべし
そもそも、売掛先が上場企業や公共団体など回収リスクが低い場合には、わざわざ手数料を払ってまでファクタリングをする必要があるのかどうか検討する必要があります。
ファクタリング最大のメリットは売掛金の回収リスクをファクタリング会社が負ってくれるということです。
そのため、回収リスクが低いにも関わらず手数料を払ってまでファクタリングをするメリットがないのです。
どうしても手元にお金がないという状況であれば、支払サイトが長くてもファクタリングしなければならないこともあります。
しかし、手元の資金繰りがファクタリングしなくてもなんとかなるという状況であれば、回収リスクの低い債権はファクタリングに回さないか、手数料の低い3社間ファクタリングを選択するなどの検討をした方がよいでしょう。
先に支払いサイトが短い債権をファクタリングするのが定石
期間の異なる複数の売掛債権があるのであれば、先に支払いサイトが短いものからファクタリングに回すことが定石です。
ファクタリングの手数料は期間が長ければ長い方が大きくなっていくため、期間の短いものかからファクタリングした方が手数料は安くなるのです。
例えば90日と120日の売掛債権が手元にあるのであれば、同じ100万円でも90日の方が手数料は安くなります。
複数の売掛債権を持っている時には、支払サイトの短い売掛債権を先にファクタリングして、できる限り少ないコストで資金調達ができるようにしましょう。
入金額に関するよくある質問
- 支払サイトの長い手形を現金化する方法はあるのでしょうか?
- 手形の現金化には銀行で手形割引を利用することができます。手形割引はファクタリングの手数料と比較して利息が低いので、手形を持っているのであれば手形割引を利用した方がよいでしょう。
- 支払いサイトの長い売掛債権をファクタリングするデメリットを教えてください。
- 支払いサイトの長い売掛債権をファクタリングすると、短期的には手元の資金は潤沢になります。しかし、売掛債権期日になった時には予定されている入金がなくなってしまうことから、長期の資金繰りも考えてファクタリングする方がよいでしょう。
- 数ヶ月間の運転資金が手元に欲しい場合にはサイトの長い債権とサイトの短い債権のどちらをファクタリングすべきでしょうか?
- 数ヶ月分の運転資金が必要な場合にはサイトの長い債権を売却しましょう。短い債権を売却しても手元の資金が潤沢になるのは短期間だけです。サイトの長い債権を売却しておけばその債権の期日までは資金繰りが円滑になるので数ヶ月分の運転資金確保に寄与します。
まとめ
割引率を上げたいのなら120日などの支払サイトの長い売掛金はファクタリングは慎重に行いましょう。
ファクタリングの入金額は割引率と支払サイトによって決定します。
そして割引率は支払サイトが長い方が高くなってしまいます。
そのため、支払サイトが120日などの期間が長い売掛債権をファクタリングすれば、支払サイトが短い売掛債権よりも手数料が高くなり入金額は少なくなります。
できる限り支払サイトが長い売掛債権はファクタリングせず、銀行融資などで対応するか、支払サイトが短い売掛債権をファクタリングしましょう。
また、取引先との契約の中で、出来る限り支払サイトを短くしてもらう努力も必要です。
支払サイトの長い売掛債権はファクタリングで不利になるので、企業の資金繰りにとってメリットはあまりありません。
同じファクタリングでも支払サイトによって入金額が変わってきますので、最小限の負担で資金繰りができる方法を検討するようにしましょう。