ファクタリングの1つである、保証ファクタリングについて解説します。
ファクタリングというと「売掛債権の早期資金化」とだけ理解している人も多いのではないでしょうか?
しかし、ファクタリングには「売掛債権のデフォルトリスクを排除する」という効果もあります。
このデフォルトリスクの排除の効果だけを得ることができるファクタリングを保証ファクタリングと言います。
保証ファクタリングを利用することによって、新規開拓が容易になったり、売掛債権の管理コスト削減できるなどの様々なメリットがあります。
ファクタリングでの資金調達を希望しない人でも、保証ファクタリングは会社経営に寄与します。
保証ファクタリングの概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
保証ファクタリングで、前向きな企業経営ができるようになりましょう。
保証ファクタリングとは
保証ファクタリングとは、ファクターに売掛債権の保証をしてもらうことです。
売掛債権の期日前に早期資金化することができる買取ファクタリングとは異なり、保証ファクタリングは債権のデフォルトリスクの保証だけを受けるファクタリングです。
保証ファクタリングの概要について解説していきます。
売掛債権のデフォルトをファクターが保証する
保証ファクタリングとは、売掛債権のデフォルトリスクをファクターが保証するファクタリングです。
売掛債権は、期日前に売掛先が倒産してしまうことによってデフォルト(回収不能)してしまうことがあり、その場合には企業に大きな損失をもたらします。
しかし、売掛債権に対して保証ファクタリングを利用しておけば、もしも売掛先が倒産して債権がデフォルトしたとしても、売掛債権金額をファクターから受け取ることができます。
売掛債権のデフォルトによって、自社も資金繰りが悪化して連鎖倒産に陥ってしまうということは珍しくありませんが、保証ファクタリングを利用することによって売掛先のデフォルトを気にせず企業経営ができるようになります。
保証料をファクターに支払う
保証ファクタリングでは保証を受けるためにファクターへ保証料を支払う必要があります。
保証料は売掛先のリスクによって判定され、売掛先の業況が良いのであれば保証料は低くなりますし、売掛先の業況にリスクがあるのであれば保証料は高くなってしまいます。
また、売掛先のリスクがあまりにも大きい場合には、保証を断られてしまうこともあります。
一般的に、買取ファクタリングよりコストは低いものの、安くて2%程度、高い場合には10%近くの保証料がかかってしまうこともあります。
保証ファクタリングでは早期資金調達はできない
冒頭述べたように、保証ファクタリングでは早期の資金調達はできません。
あくまでも売掛債権に保証を得ることができるだけです。
そのため、保証ファクタリングの保証を受けた売掛債権が入金になるのは、売掛債権の期日で、期日前に資金化することはできません。
- 期日前に資金化したいのであれば買取ファクタリング
- 売掛債権の回収リスクを排除したいのであれば保証ファクタリング
というように、買取ファクタリングと保証ファクタリングは別物であると考えて、上手に使い分けるようにしましょう。
保証ファクタリングの手数料相場
保証ファクタリングの手数料相場は3%〜12%程度ですが、一般的には4%〜8%程度が適用されます。
同じく企業の売掛債権を保証する取引信用保険と比較すると手数料は高くなる傾向がありますが、保証ファクタリングは「売掛債権の消費税まで保証を受けることができる」という点と「保証期間が長い」という点がメリットです。
銀行系のファクタリング会社では120日まで保証を受けることができ、長い期間保証を受けられる対価として考えればメリットがあるでしょう。
また建設業で下請企業が保証ファクタリングを利用する場合には、「下請債権保全支援事業」という国が下請け企業の売掛債権保全をサポートする補助金の対象になることがあります。
「下請債権保全支援事業」が適用された場合には、保証料率の 1/3(年率 1.5%上限)の補助を受けることができるので、実質的な保証ファクタリングの手数料はさらに低くなります。
保証ファクタリングと買取ファクタリングの違い
保証ファクタリングとは、対象の売掛債権デフォルトした場合に、ファクタリング会社が当該売掛債権の金額の一部または大部分を支払ってくれるというものです。
万が一の場合の保険というような意味合いで、保証ファクタリングでは資金調達することはできません。
一方、買取ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社へ売却し、売掛債権金額から手数料を控除した金額の入金をファクタリング会社から受けることができます。
万が一売却した売掛債権が回収不能になっても、その損失はファクタリング会社が負うため、買取ファクタリングでは売却によって売掛債権のデフォルトリスクも一緒に売却できるのが大きなメリットです。
保証ファクタリングは買取ファクタリングの「売掛債権のデフォルトリスクを売却できる」という部分に特化したファクタリングです。
保証ファクタリングと買取ファクタリングは「資金調達手段として活用できるか否か」という点で大きく異なります。
保証ファクタリングと取引信用保険の違い
売掛債権を保証するものとして、取引信用保険という保険もあります。
保証ファクタリングも取引信用保険、売掛債権の保証を受けることができるという点では同じですが、以下の4点で違いがあります。
- 引受会社が異なる
- 手数料が異なる
- 保証対象が異なる
- 保証金額が異なる
保証ファクタリングと取引信用保険の違いについて詳しく解説していきます。
引受会社が異なる
保証ファクタリングも取引信用保険も売掛債権の保証を得ることができるものですが、引受会社が異なります。
取引信用保険は損害保険会社の保険商品であるのに対して、保証ファクタリングはファクタリング会社の商品です。
「損害保険会社の方が信用できるでは?」と考える人も多いようですが、保証ファクタリングは主にメガバンク傘下の大手ファクターが提供していることが多いので、取引信用保険も保証ファクタリングも安心して取引することができるという点では同じです。
買取ファクタリングには悪徳業者が混じっていますが、保証ファクタリングでは悪徳業者はほぼ存在しません。
手数料が異なる
取引信用保険と保証ファクタリングでは、手数料(保険料)が異なります。
取引信用保険の保険料は、会社が保有している売掛債権全体の3%程度であることが一般的です。
一方、保証ファクタリングの保証料は保証を受ける売掛債権の個別のリスクに応じて設定されます。
保険料(保証料)率は、取引信用保険の方が低くなるのが一般的です。
ただし、保険料(保証料)そのものは、保証ファクタリングよりも取引信用保険の方が高くなります。
この理由については詳しく後述していきます。
保証対象が異なる
取引信用保険と保証ファクタリングでは、保証する対象が異なります。
ここが、取引信用保険と保証ファクタリングの最も大きな違いです。
取引信用保険とは、会社が所有している売掛債権全部に対して保証を行うものです。
一方、保証ファクタリングは個別の売掛債権を保証します。
包括保証である取引信用保険は、全ての売掛債権に対して保険料が発生するので結果的に保険料は保証ファクタリングよりも高くなります。
一方、個別保証である保証ファクタリングは、特定の売掛債権だけを保証するので、保証料率が高くなったとしても保証料は取引信用保険よりは低くなります。
多くの会社が包括保証よりも個別保証を求めています。
取引先のすべてにデフォルトリスクがあることは少なく、保証を受ける必要があるリスクの高い債権は少ないためです。
このため、取引信用保険を利用している企業は非常に限られており、ほとんどの会社が取引信用保険ではなく保証ファクタリングを利用しています。
保証金額が異なる
取引信用保険と保証ファクタリングでは、保証金額も異なります。
取引信用保険で保証を受けることができるのは、売掛債権金額の80%~90%程度で売掛債権金額すべてに対して保証を受けることができるわけではありません。
一方、保証ファクタリングは保証を受けた売掛債権の額面金額の100%の保証を受けることができます。
取引信用保険では、保険に加入しても売掛債権の10%〜20%程度のデフォルトリスクは残ってしまいますが、保証ファクタリングでは保証を受ければ売掛債権のデフォルトリスクは全く残りません。
保証ファクタリング利用時の流れ
保証ファクタリングを利用する際には、次のような流れで手続きしていきます。
- 納入企業がファクタリング会社に保証を依頼
- ファクタリング会社による与信調査の実施
- 売掛金が未回収になった場合に保証
保証ファクタリングを利用する流れを理解して、スムーズに売掛債権に保証を受けるようにしましょう。
①納入企業がファクタリング会社に保証を依頼
保証ファクタリングを利用する場合は、まず納入企業がファクタリング会社へ保証を依頼します。
保証を受けたい売掛債権が手元にある場合には、保証ファクタリングを取り扱っているファクタリング会社を探し、保証ファクタリングの申し込みを行なってください。
保証ファクタリングは買取ファクタリングを行なっている独立系のファクタリング会社ではあまり取り扱っていないので、銀行系のファクタリング会社へ相談してみるとよいでしょう。
②ファクタリング会社による与信調査の実施
保証ファクタリングの申し込みが行われると、ファクタリング会社が与信調査を実施します。
ファクタリング会社は売掛先企業の財務状況などを調べ、「保証しても売掛債権がデフォルトするリスクがないか」または「どの程度の確率でデフォルトするのか」ということを審査して評価します。
この際に、あまりにも財務状況が悪い、債務超過の企業や、赤字が連続している企業の売掛債権は審査に通過できない可能性が高くなります。
また、ファクタリン会社が審査できない「決算状況が確認できない小規模企業や個人事業主」に対する売掛債権は審査に通過できない可能性が高くなるでしょう。
保証ファクタリングの審査は時間をかけて厳格に行うので、申込から審査完了までに1週間〜2週間程度の時間がかかってしまうものと理解しておきましょう。
審査完了後に手数料や保証割合などが通知され、問題がないのであればファクタリング会社と契約手続きを行います。
③売掛金が未回収になった場合に保証
保証ファクタリングによって保証を受けている売掛債権が未回収になった場合、ファクタリング会社から保証代金が入金になります。
保証ファクタリングは基本的に売掛債権全額について保証を受けられるわけではありません。
保証割合が決められているので、例えば1,000万円の売掛債権に対して保証割合が90%であれば900万円の保証を受けることが可能です。
売掛金が未回収になってことを申請してから数週間〜1ヶ月程度で代金が入金になることが一般的です。
保証ファクタリングの審査
保証ファクタリングには審査があり、審査によって保証料が決定し、場合によっては保証ファクタリングの引受を断られてしまうこともあります。
また、保証ファクタリングに申し込むことができるのは、売掛債権発生後になるという点に注意が必要です。
保証ファクタリングの審査のポイントについて詳しく解説していきます。
売掛先の与信のみ
保証ファクタリングで審査の対象になるのは、売掛先企業の与信状況のみです。
買取ファクタリングのように、自社の与信は審査の対象にはなりません。
ファクターとすれば、売掛先がデフォルトした場合に保証の義務があるので、「売掛先のデフォルトリスクはどのくらいか」ということを審査すれば十分で、自社の与信はファクターのリスクとは全く関係がないためです。
売掛先が優良企業や倒産のリスクが低いと判断できる企業であれば審査に通過することができますし、保証をしても高い確率でデフォルトすると判断されるような業況が非常に悪い企業の場合には保証ファクタリングの審査には通過できないこともあります。
自社の与信ではなく、売掛先の与信が保証ファクタリングにおいては審査されます。
申込は契約後
保証ファクタリングは売掛先と契約した後でないと申込をすることができません。
売掛債権に対して保証をするのが保証ファクタリングですので、売掛債権が発生した後でないと保証を受けることができないのは当然です。
しかし、保証を受けることができるのが契約後ということは、すでに発生した売掛債権の保証を断られてしまうリスクもあるということです。
ファクターが「この会社は倒産のリスクがあるから保証できない」と判断した会社の売掛債権を保有しているのですから、保証ファクタリングのかわりに何らかの資金的な手当をしておく必要があります。
保証を受けることができた会社とのみ取引をすれば、会社に全くリスクなく取引をすることができますが、保証ファクタリングな取引成立後でないと保証を得られないという点に留意しておきましょう。
保証ファクタリングの4つのメリット
保証ファクタリングには以下の4つのメリットがあります。
- 売掛先の管理コストがなくなる
- 売掛先のデフォルトの心配がない
- 工期の長い仕事も受けられる
- 新規取引先を安心して開拓できる
保証ファクタリングのメリットを上手に活用することによって、企業経営は前向きに売上拡大に走ることができるようになります。
保証ファクタリング4つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
売掛先の管理コストがなくなる
保証ファクタリングを利用することによって売掛先の管理コストが不要になります。
ほとんどの企業経営者の方は売掛先が突然倒産しないように、売掛先の管理を行なっているのではないでしょうか?
例えば取引先の業況を知るために、入金状況や受注状況に変化がないかなどを見極めたり、銀行や他の取引先の業況を確認している企業も多いのではないでしょうか?
このような管理を行うだけで時間も人手も必要になりますし、時間や人手をかけたとしても精度の高い管理ができるとは限りません。
保証ファクタリングを利用すれば、審査のプロであるファクターが審査をしてくれます。
自社で管理するのは、信頼できるデフォルトリスクがない取引先だけになるので、売掛債権の管理コストは不要になります。
管理に割いていた時間や人手を売上拡大などに向けることができるので、保証ファクタリングを利用することによって企業経営は前向きになります。
売掛先のデフォルトの心配がない
保証ファクタリングを利用することで、売掛先のデフォルトリスクがなくなります。
売掛債権のデフォルトを気にすることなく経営ができるので、手元に余計な資金を持つ必要がなくなりますし、貸倒引当金を計上する必要もなくなります。
保証ファクタリングを利用することで得られる「代金を100%回収できる」という安心感は、人手の面でも資金繰りの面でも企業経営を前向きなものとすることができるでしょう。
工期の長い仕事も受けられる
保証ファクタリングは建設業界で多く利用される方法です。
国は建設業界に対してファクタリングの利用を推奨しており、手数料の補助を受けることができる制度もあります。
建設業界は売上発生から売上金の全てが入金になるまでに時間がかかってしまう業種です。
通常、売上の100%が入金になるのは、工事完了後となるからです。
着工から工事完了まで1年以上かかることもよくあり、その期間で元請け先が倒産してしまう可能性があります。
工期が長いということは、それだけデフォルトリスクがあるということですが、保証ファクタリングを利用することでデフォルトリスクを排除できます。
デフォルトリスクがなくなれば工期の長い仕事も安心して売れられるようになるので、保証ファクタリングは工期の長い仕事や支払いサイトが長い取引先からの仕事を受ける場合も大いにメリットがあります。
新規取引先を安心して開拓できる
保証ファクタリングを利用することによって新規取引先との取引も安心です。
新規取引先との取引は「安全な会社なのか分からない」と不安に感じる経営者の方がほとんどではないでしょうか?
これまで何も取引実勢がないので、海のものとも山のものとも分かりません。
このような場合に保証ファクタリングを利用できます。
保証ファクタリングで新規取引先への売掛債権の保証を得ておけば、万が一新規取引先がデフォルトした場合も自社には何もリスクはありません。
新規取引先が期日通りに代金を払ったのであれば、「信頼できる企業」と判断して2回目以降には保証ファクタリングを利用しないこともできます。
保証ファクタリングを取引を開始するのが不安な新規取引先に対して利用することで、デフォルトリスクを気にすることなく新規取引先を開拓することができるようになります。
保証ファクタリング2つのデメリット
保証ファクタリングにはデメリットがあります。
- 取引先によっては手数料が高くなる
- 急に保証を受けられなくなる取引先も存在する
保証ファクタリングは取引先の業況などを審査しますので、取引先によって負担しなければならないコストが変わったり、取引先との契約成立後の急に保証を受けることができなくなってしまうなどのデメリットも存在します。
保証ファクタリング2つのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
取引先によっては保証料が高くなる
保証ファクタリングの保証料は個別の売掛債権のリスクに応じて決定します。
保証ファクタリングを依頼した取引先の業況が良好であれば保証料は低くなりますが、保証ファクタリングを依頼した企業の業況が悪い場合には保証料高くなるので、実際に申込を行ってからでないとどれだけの保証料が必要になるのかは分かりません。
また一般的には保証を受けたい、リスクの高いと思われる売掛債権ほど手数料が高くなる傾向があるので保証ファクタリングの保証料は総じて決して低くはありません。
保証を受けるためにはそれなりの支出を覚悟しておく必要があります。
急に保証を受けられなくなる取引先も存在する
保証ファクタリングは売掛先の業況に応じて審査の結果が異なります。
ファクターは売掛債権のデフォルトリスクに応じて保証の諾否や手数料を決定し、企業の業況は日々変化するものです。
そのため、前回までは保証を得られていた企業が、突然保証を断られてしまうケースは少なくありません。
「前回同様保証ファクタリングを利用するから、多少景気が悪そうだけど大丈夫だろう」とタカを括って取引をしても、場合によっては保証を断られてしまうことがあります。
そして、ファクターが保証を断ったということは取引先の業況が悪化しているということです。
当たり前のように保証ファクタリングが利用できると考えて、取引先の与信状況をチェックしなかった結果として大きな損失を負ってしまうこともあります。
取引先の業況が悪化すれば、保証を断られてしまうというリスクは頭に入れておくようにしましょう。
保証ファクタリングの利用に向いているケース
保証ファクタリングを利用した方がよい場面としては次の5つの状況をあげることができます。
- 売掛先の支払能力に不安があるとき
- 与信管理が業務上の支障になっている
- 1つの売掛先企業に対する依存度が高すぎる
- 新規取引先との取引限度額を知りたい時
- 1つの売掛先との取引を拡大したいが社内の規定に抵触して取引拡大が不可能なとき
保証ファクタリングは売掛債権の保全だけでなく、売掛先企業の与信状況を把握したい時にも有効に活用することが可能です。
新規取引先との取引限度額を知りたい場合、取引拡大を図りたい場合なども保証ファクタリングは活用できます。
保証ファクタリングの利用に向いている5つのケースについて詳しく解説していきます。
売掛先の支払能力に不安があるとき
売掛先の支払能力に不安があるときは保証ファクタリングが有効に活用できます。
保証ファクタリングを利用すれば、当該売掛債権の代金は全額保証されるので、売掛債権のでフォルトを心配することなく安心して取引できます。
特に、業況がよくないと噂されている企業や、これまで取引したことがない企業は支払能力が懸念されますが、保証ファクタリングを利用しておけば、売掛先の支払能力に不安があってもデフォルトリスクがなくなります。
売掛先の支払能力に不安があるときは保証ファクタリングの利用を検討しましょう。
与信管理が業務上の支障になっている
与信管理が会社の中で業務上の支障になっているケースも保証ファクタリングが活用できます。
取引先1社1社の業況を確認し、「どの程度の金額であれば取引を行っても問題がないか」ということを確認するのが与信管理です。
取引先が多くなると、与信管理は非常に大変になりますし、そもそも金融機関でもない企業が取引先企業の信用を審査していくことは簡単ではありません。
保証ファクタリングを利用してしまえば当該取引先の審査は審査のプロが行ってくれるので、与信管理に人的なコストや時間を取られる心配はありません。
保証ファクタリングを利用することで、与信管理にかかっていたコストを削減できるので、浮いたコストを他の収益部門へ注力することができます。
1つの売掛先企業に対する依存度が高すぎる
取引先1社への依存度が高すぎる場合も保証ファクタリングの利用を検討しましょう。
1社への依存度が高いと、当該取引先が万が一倒産した場合には、自社に入金がなくなって自社の資金繰りも悪化してしまうリスクがあるためです。
依存度の高い売掛先の売掛債権に対して、保証ファクタリングを利用しておけば万が一の場合も入金を受けることができます。
新規取引先との取引限度額を知りたい時
新規取引先との取引限度額をどの程度にするのが妥当なのかを知りたい時にも保証ファクタリングが活用できます。
新規で取引する企業は「どの程度の金額であれば、金額的に妥当なのか」を検討することが非常に難しいのが実情です。
保証ファクタリングを利用することによって、取引先ごとに取引限度額を客観的に把握することができるので、新しい取引先と「いくらまで取引するのがよいのか」ということを知りたい場合には、保証ファクタリングは活用できます。
取引を拡大したいが社内の規定に抵触して取引拡大が不可能なとき
取引を拡大したい取引先があるので、社内の規定に抵触して取引を拡大することが難しい場合には、保証ファクタリングが活用できます。
会社によっては「1つの取引先ごとにいくらまで」と、取引の限度額が決められているので、社内規定に抵触して取引拡大が不可能なケースがあります。
保証ファクタリングを利用すれば社内での取引枠に抵触することなく、取引拡大ができる可能性があるので、取引枠に抵触する場合には、保証ファクタリングの活用も検討しましょう。
保証ファクタリングが利用できるファクタリング会社
保証ファクタリングが利用できるファクタリング会社はそれほど多くありませんが、次のファクタリング会社であれば低い手数料で利用できる可能性があります。
- りそな決済サービス株式会社
- 三菱UFJファクター株式会社
- SMBCファイナンスサービス株式会社
- 出光クレジット株式会社
保証ファクタリングが利用できる4つのファクタリング会社について詳しくご紹介していきます。
りそな決済サービス株式会社
りそな決済サービスの特徴は次のとおりです。
- りそなグループで安心
- 保証限度額を1社ごと設定可能
- 少額の売掛債権も保証可能
りそな決済サービスは都市銀行のりそな銀行を傘下に収めるりそなグループのファクタリング会社です。
ファクタリング会社に対して「安心できる企業かどうか分からないから、不安」という思いを感じている人も多いかもしれませんが、りそな決済サービスなら安心して利用することができます。
また、りそな決済サービスは保証限度額を1社ごとに設定することができます。
信用度や売上規模の異なる取引先を多く抱えている企業も、りそな決済サービスなら取引ごと限度額が設定できるので便利です。
また、りそな決済サービスは数十万円程度の少額の売掛債権も保証ファクタリングすることができます。
銀行系ファクタリング会社は高額の売掛債権しか取り扱いをしないというケースも多いですが、りそな決済サービスなら小規模の売掛債権についても保証を得ることができます。
三菱UFJファクター株式会社
三菱UFJファクターは三菱UFJフィナンシャルグループのファクタリング会社です。
安心して利用できるというだけでなく、次のような特徴があります。
- 契約後に取引先を追加できる
- 保証限度額を1社ごと設定可能
- 保証限度額を状況に合わせて調整可能
契約した後に取引先を追加できるので、新規取引先が増えた時にも、取引先を追加して与信状況を調べたり、信頼できるようになるまで保証をつけることが可能です。
また、保証限度額を1社ごと設定できるので、規模の異なる売掛先を複数社所有している場合も取引ごと管理でき便利です。
また、保証限度額を取引状況に合わせて調整することが可能です。
取引先が増えた時には保証限度額を引き上げ、取引先が減少した時は保証限度額を引き下げるなど、自社の状況に合わせて適宜保証限度額を調整することができます。
SMBCファイナンスサービス株式会社
SMBCファイナンスサービスは三井住友銀行を傘下に収めるSMBCフィナンシャルグループのファクタリング会社です。
メガバンク傘下で安心できるという点の他にもSMBCファイナンスサービスには次の特徴があります。
- WEB上で手続きができる
- 信用調査力が高く安心
SMBCファイナンスサービスはWEB上でマイページを作成しWEB上でいつでもオンライン上で保証ファクタリングに申し込むことができます。
銀行系ファクタリング会社は手続きが面倒という先入観を持っている人も多いですが、SMBCファイナンスサービスは手続きが非常に簡単な点がメリットです。
また、SMBCファイナンスサービスは信用調査力が高いことでも知られています。
他社よりもしっかりと審査してくれるので、「取引先の信用を知りたい」という理由で保証ファクタリングの利用を検討している方にもおすすめの保証ファクタリングです。
出光クレジット株式会社
出光クレジット株式会社の特徴は次のとおりです。
- 1社から申し込みができる
- 最低保証金額10万円から利用できる
- 契約前にリスク診断ができる
出光クレジットは売掛先が1社のみ、最低保証金額10万円から申し込むことができるので、取引先の数が少なく、売上規模も小さい場合企業でも保証ファクタリングを利用することができます。
保証ファクタリングというと、規模の大きな企業しか利用できないイメージがありますが、出光クレジットであれば、規模の小さな企業も利用できるでしょう。
また出光クレジットには無料で「貸倒れリスク診断」という機能があります。
ファクタリングに申し込まなくても売掛先5社まで無料でリスクを診断できるので取引先のリスクを知りたい場合は活用しましょう。
保証ファクタリングの仕訳
保証ファクタリングを利用する際に支払う「保証料」は「支払手数料」という勘定科目を会計処理を行います。
・ファクタリング会社へ保証料として5万円支払った
借方 | 貸方 |
---|---|
支払手数料 5万円 | 普通預金 5万円 |
売掛先から代金が支払われなかった場合には「貸倒損失」という勘定科目を使用します。
・売掛先企業が倒産し、売掛金100万円が回収不能になった
借方 | 貸方 |
---|---|
貸倒損失 100万円 | 売掛金 100万円 |
ファクタリング会社から保証代金が入金になった場合には「雑収入」という勘定科目を使用します。
・ファクタリング会社から保証代金として100万円入金になった
借方 | 貸方 |
---|---|
普通預金 100万円 | 雑収入 100万円 |
手数料を支払ったとき、貸倒が発生したとき、ファクタリング会社から代金が入金になった時の勘定科目をしっかりと理解しておきましょう。
保証ファクタリングについてよくある質問
- 個人事業主でも保証ファクタリングは利用できますか?
- 個人事業主には保証ファクタリングは行わないと決めているファクターは存在しません。
そのため、理論上は個人事業主でも保証ファクタリングは可能です。
ただし、保証ファクタリングはメガバンク傘下の大手ファクターが取り扱っていることが多く、このようなファクターは数千万円規模の売掛債権の保証や買取がメインですので、売掛債権の規模が小さいと相手にしてもらえない可能性があります。
少ない金額の売掛債権の保証を受けたい場合にはまずは相談してみましょう。
- 保証ファクタリングの保証料の引き下げ交渉はできますか?
- 保証ファクタリングの保証料は売掛先の与信によって決定するため、売掛先の信用が以前より向上した場合のみ保証料が下がる可能性があります。
保証料が下がるのは、売掛先の信用が向上した時でそこには自社は関与することができません。
そのため自社の努力で保証料を下げるのは難しいと考えた方がよいでしょう。
- 保証ファクタリングの審査はどのくらいの時間がかかりますか
- 保証ファクタリングの審査は1週間程度見ておきましょう。保証ファクタリングの審査は東京商工リサーチや帝国データバンクなどの情報から売掛先の与信を判断する程度でそれほど複雑ではありません。
しかし、銀行系の大手ファクターは稟議に時間がかかるプロセスになっていますので、申込から審査結果が出るまでに1週間程度の時間がかかるものと考えておいた方がよいでしょう。
- 保証ファクタリングの審査に落ちた場合の対処法を教えてください
- 保証ファクタリングの審査に落ちたということは、売掛先の与信状況が非常に悪いということです。
売掛先が倒産したり、当該取引先の売掛債権がデフォルトするリスクも考慮して、一定の資金調達をしておく必要があります。
取引先がデフォルトするリスクを知ることはできるので、例え審査に落ちたとしても保証ファクタリングに申し込みをすることには一定の効果はあります。
- 取引信用保険にメリットはありますか?
- 会社の売掛債権全体に保険を掛けることができる取引信用保険は「個別の売掛債権ではなく全体の保証を得たい」という場合にはメリットがあります。
また個別保証の保証ファクタリングは、その都度ファクターに保証ファクタリングの申し込みをしなければなりませんが、取引信用保険ではそのような手間はありません。
保有する売掛債権全体の保証を受けたい場合や、ファクターに申し込む手間を省きたい場合などには、取引信用保険の方が保証ファクタリングよりもメリットはあります。
まとめ
保証ファクタリングとは、売掛債権のデフォルトリスクをファクターに保証してもらうもので、売掛債権を早期資金化するものではありません。
保証ファクタリングを利用すれば売掛債権がデフォルトした場合でも代金をファクターが保証してくれるので安心です。
デフォルトリスクが高いサイトが長い売掛債権や、新規取引先の売掛債権に対して保証ファクタリングを利用すると効果的です。
ただし、保証を得るためには一定の保証料がかかり、保証料は売掛先の業況の変化に応じて異なります。
また「保証を得られもの」と考えて取引を始めても、審査に落ちてしまい保証を得ることができないケースもあります。
保証ファクタリングを利用している場合でも、売掛先の与信状況について一定の注意を払うことは忘れないようにしましょう。